日米両国の葬儀-新型コロナウイルス感染症への対応

全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、葬儀のあり方にも大きな影響を与えている。葬儀クラスターが発生し、遺体が感染源になる可能性も否定されていない。「葬儀とは誰のために、何のために行うのか」ということを改めて考える機会を、結果的に提供することになっている。日米両国では葬儀に関するガイダンスを提供し、伝統や慣習の変更を推奨している。それは遺体の扱いや遺族の対応、葬儀の方法や参列の仕方などであるが、どんな内容だろうか。現在進行形で進む感染症と葬儀について、日米両国の事情を紹介しながら考えてみたい。

index 目次
  1. 1. さらに増加する直葬-日本の新型コロナウイルス感染症と葬儀
  2. 2. 葬送も多様-悩むアメリカの新型コロナウイルス感染症と葬儀
  3. 3. オンラインでも人数制限した葬儀でも十分に供養はできる

1. さらに増加する直葬-日本の新型コロナウイルス感染症と葬儀

日本において、新型コロナウイルス感染症における死者が初めて出たのは2020年2月13日だった(※1)。そして、厚生労働省が各都道府県の火葬行政担当部局に対して、「新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体の火葬等の取扱いについて」と題された事務連絡を発出し、同省のホームページに掲載したのは、その12日後の2月25日のことだ(※2)。当初は、感染力の強さや遺体からの感染の可能性等わからないことがあまりに多かったため少し時間がかかった。

感染のリスクを避けるために、家族は入院中や臨終時、死後に至っても故人に寄り添うことはできなかった。葬式もできず、遺骨だけが実家に送られてきた。最初の死者が出てから5カ月以上たった7月29日になってようやく、厚生労働省と経済産業省は、「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」(第1版)(※3)を公表した。この時点で新型コロナウイルス感染症による国内死者数累計はすでに1,000人を超えていた(※4)。ここにきてようやく、条件付きで家族が臨終に立ち合うことや葬儀の方法についての指針が示された。

このガイドラインのポイントは次の通りだ。

  • 新型コロナウイルス感染症は、飛沫感染と接触感染で感染するが、遺体による飛沫感染の恐れはないので、接触感染だけに注意することとなる。手指衛生を徹底し、遺体に触れない等、ガイドラインを踏まえれば、十分に感染コントロールができる。
  • 遺族等は、臨終後の対応(病室等でのひと時のお別れの時間の設定)ができ、遺体搬送、通夜、葬儀、火葬、拾骨等にも参列できる。ただし、政府としては、代表参列やオンライン参列を推奨している。
  • 遺骨から感染しないので、拾骨時には、遺骨に対する感染対策は必要ない。

新型コロナウイルス感染症の流行前から、日本ではすでに葬儀の簡素化、小規模化が進んでいたが、コロナの前後でこうしたガイドラインを受けて、葬儀の形式はどのように変わったのだろうか。

2019年11月には、通夜や告別式を執り行う一般葬が55%を占め、火葬のみを行う直葬が45%だった。しかし、第1波に見舞われていた2020年4月には、一般的な葬儀と直葬の比率が初めて逆転し、一般的な葬儀47%、直葬53%となった。2020年秋の第2波以降は一度、新型コロナウイルス感染症の流行前の状態に戻ったが、緊急事態宣言が出された2021年1月には一般的葬儀51%、直葬49%と近接した。その後、2021年3月時点では一般葬儀54%、直葬46%と再び一般葬が多くなった(※5)。しかし4月17日現在、10の都道府県に「まん延防止等重点措置」が適用され、適用外の地域でも感染が拡大しており、再び直葬の割合が大きくなると予想される。

一般葬の全国平均費用は約90万円(お布施等は含まない)、直葬の全国平均費用は一般的葬儀の5分の1程度の約19万円(お布施等は含まない)である(※6)。多数の人が移動し、集まる機会を避けるという意味でも、葬儀にかかる経済的観点から考えても、この新型コロナウイルス感染症を契機に直葬が増えていくことは確かだろう。

2. 葬送も多様-悩むアメリカの新型コロナウイルス感染症と葬儀

アメリカでは2020年2月29日、新型コロナウイルス感染症の死亡者が初めて確認された(※7)。意外にも日本より遅かったのだ。2021年4月現在、アメリカにおけるコロナの死亡者は世界で最も多く、56万人を超えている(※8)。

アメリカでは新型コロナウイルス感染症の死亡者が急増したため、葬儀の需要に葬儀社が追いついていない。アメリカ最大の墓地を有するカリフォルニア州南部の葬儀会社では、遺体の冷凍保存をしているほどだ。通常、死亡から葬儀までは1週間程度かかるが、ピーク時には葬儀までの待機期間が1カ月にもなっていた(※9)。

アメリカで疾病の予防と管理に関する活動、環境衛生に関する活動、さらに健康増進および教育活動を行う連邦機関である疾病対策予防センター(CDC)は、次のような国民向けの葬儀ガイダンスを提供している。最新葬儀ガイダンスは2020年12月28日に更新されたものだ(※10)。

  • アメリカでは伝統的に土葬が主流だったが、最近は火葬率が増え、54.6%となっている。しかしCDCガイダンスでは、新型コロナウイルス感染症で亡くなったからといって火葬しなければいけないというわけではなく、通常の死亡と同じように火葬か土葬かの選択をすることができる。
  • 新型コロナウイルス感染症を理由に、葬儀を延期する必要はない。
  • 葬儀屋等が整えた遺体であれば、新型コロナウイルス感染症に罹患していた遺体と直接対面しても、感染の危険性はない。
  • 無症状者を含め、葬儀参列者間で新型コロナウイルス感染症が拡大しないように、万全の対策を施すことが重要である。

この「参列者間の感染への注意」はつまり、遺体からの感染よりも、葬儀に参列する生身の人間同士の方が危険だというメッセージだ。葬儀の場では悲しみに打ちひしがれ、感情的になり、CDCが推奨している6フィート(約3メートル)の人との距離を取れないことが多い。また、葬儀では会食も行われ、参列者の間での感染リスクは高く、クラスターが発生することもあるからだ。

しかしながら最近の事例では、遺体にも注意が注がれている。確かにCDCが言うように、遺体からの飛沫感染で新型コロナウイルス感染症に罹患するリスクはない。しかし、接触感染のリスクはある。アメリカ南部サウスカロライナ州北部で2021年3月初旬に行われた、新型コロナウイルス感染で亡くなった人の葬儀で、6人の参列者が感染し、翌4月中旬までに6人全員が死亡した。当局は現在、遺体から感染した可能性があるとして調査している(※11)。

アメリカは多民族、多人種国家であり、民族、人種、地域等によりさまざまな文化的伝統がある。その中には、葬儀屋等が遺体を整える前に遺体に触れることを推奨する場合もある。CDCは、亡くなった人が新型コロナウイルス感染症に罹患していた場合、不用意に遺体に触れることで、感染するリスクがあると警告している。また、たとえ葬儀屋等が遺体を整えた後だとしても、遺体に触れるリスクが全くないとは言えず、「感染する機会が減少する」としか発表していない。新型コロナウイルス感染症に関しては、変異株もあり、いまだにわからないことが多く、CDCも確定した情報を言いにくくなっている。

3. オンラインでも人数制限した葬儀でも十分に供養はできる

新型コロナウイルス感染症は日本においても、アメリカにおいても、葬儀に大きな影響を与えている。大好きな祖父母が、愛する妻・夫が、かわいい子どもが新型コロナウイルス感染症に感染し、あっという間に亡くなり、死に目にもあえず、遺体を見ることもできず、遺骨だけが手元にある、ということは想像を絶する心境である。

ところが見方を変えると、「葬儀とは誰のために行うのか」ということを改めて考える機会になっているともいえる。前述のCDCも「伝統」や「慣習」という言葉に何度も言及し、「伝統的な儀式や慣習を変えるよう考慮して下さい」と呼びかけている。たとえば、宗教的儀式を行っている際に祈祷書等を共有することや、教会から墓地まで自動車やリムジンで行く際に同居者以外の人と同乗すること、参列者が一同に会して会食をすることなど、伝統的な儀式や慣習を止めるか簡素化することを勧めている。

端的に言うと、葬儀は「この世に残された人間のために行われる儀式」だ。民族・人種・コミュニティ等の伝統や慣習、世間体等も影響し、一定の暗黙の規則に従いながら、粛々と一連の儀式を進めていく。人が「葬儀」という非日常的行事を行わなければならないとき、葬儀業者に任せれば卒なく一連の行事を取り仕切ってくれるので、お金(特に日本では多額)と時間を費やして葬儀を行ってきた。しかし、葬儀に貴重なお金と時間を遣うことだけが本当に有意義なのだろうか。新型コロナウイルスを契機に、人数制限を実施し、オンラインによる葬儀も行われ、葬儀の簡素化、軽費化が進められている。この傾向を進めることも十分に供養になるし、トランプ流で言うならば、葬儀の簡素化も「亡くなった人ファースト」に合致するといえるのではないだろうか。

※1 日本経済新聞「新型肺炎、国内初の死者 神奈川県の80代女性」(外部リンク)

※2 厚生労働省「新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体の火葬等の取扱いについて」[pdf](外部リンク)

※3 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」(第1版)[pdf](外部リンク)

※4 NHK特設サイト 新型コロナウイルス(日本国内の感染者数)(外部リンク)

※5 コロナ禍における葬儀・法要の実態を調査。初めて "直葬" が過半数に。【小さなお葬式】(外部リンク)

【最新版】コロナ禍の葬儀・法要の実態を調査。緊急事態宣言をへて第3波は直葬が減り、一周忌法要は大幅回復【小さなお葬式】(外部リンク)

※6 葬儀レビ「葬儀の費用」(外部リンク)

※7 Derrick Bryson Taylor, “A Timeline of the Coronavirus Pandemic,”The New York Times March 17, 2021(外部リンク)

※8 Centers for Disease Control and Prevention (CDC) “COVID Data Tracker”(外部リンク)

※9 「コロナ死者急増で葬儀出来ず遺体を冷凍保存、米最大の墓地」CNN(外部リンク)

※10 Centers for Disease Control and Prevention (CDC) “Funeral Guidance for Individuals and Families”Updated Dec. 28, 2020(外部リンク)

※11 ENCOUNT編集部「新型コロナの葬儀参列者6人がコロナ感染で死亡『遺体によるものか調査中』米紙報じる」2020年4月19日 ENCOUNT(外部リンク)

Text by:杉田米行
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