2020年8月現在、日本では依然新型コロナウィルス感染に対する警戒が必要です。感染の広がりを防ぐには密閉、密集、密接の3密を防ぐことが大切。しかし、葬儀や法事では、大勢の人が集まり、会話はもちろん、会食をするので、感染のリスクが高まります。実際に2020年3月に愛媛県松山市で行われた葬儀で、クラスターが発生してしまいました。
新型コロナウィルスは感染しても無症状の場合も多く、誰が感染しているか分かりません。そういう状況で、高齢者や基礎疾患のある方などリスクのある参列者をどのように守ったら良いのでしょうか。各葬儀社が行っている対策や、感染予防を意識した新しい葬儀のプランをご紹介します。
密になる機会を減らす、一日葬
日本では、通夜と葬儀・告別式を別々の日に行うのが一般的です。一日葬は、通夜を省き、葬儀・告別式のみを行うことをいいます。遺族、参列者双方の負担が軽減されるため、近年増えているスタイルですが、新型コロナウィルス感染予防の観点から一日葬を選ぶというケースもでてきているようです。
一日葬の懸念点
一日葬のデメリットを先にあげておくと、仕事の後でも参列していただきやすい通夜の利点が失われることです。通常、通夜は夕方からはじまるもので、そのことから葬儀・告別式よりも通夜のほうが参列者の方が多いというのは最近ではよくあることです。
一日葬は9時~14時までの間で行われるが一般的(後に火葬を控えているので遅い時間にできない)。一日葬を平日に行う場合、参列できない方が増えると考えられます。しかしそもそも一日葬は、参列者を最小限に想定していることが多いようなので、参列していただきたい方の都合が合えば問題ないでしょう。
一日葬の費用相場
地域や参列者の人数にもよりますが、一日葬の費用相場は25万円~60万円ほどのようです。一般的に葬儀の費用は130万円前後と言われているので、かなりリーズナブルと言えます。
一日葬の場合、プランによっては僧侶による読経や、精進落としなどの料理がなかったり、オプションになっていたりする場合もあります。必要に応じて内容を取捨選択することで費用を抑えることができるでしょう。
通夜ぶるまい、精進落しを避ける
弔い行事につきものの、通夜ぶるまい、精進落しなどの会食を避けることは、前向きに検討してみましょう。時間や費用の軽減のみならず、感染予防には最善策です。コロナ禍の状況では参列者も理解してくれるはずです。
一日葬の各社のサービス事例
各社で現在提供されている一日葬のプランの内容をご紹介します。
イオンの一日葬
お迎えから遺体安置、納棺、告別式、お別れの儀式、火葬までがセットになったプラン。参列者の目安が20名ほどで、32万5千円(税別)。精進落としの料理や香典返しはオプションになっています。
告別式を夕刻より行うプランもあるようなので(火葬してから告別式という、いわゆる前火葬・骨葬の順番になっている)、家族以外でも参列してほしい方がいる場合などに検討するとよいでしょう。
イオンの夕刻一日葬/イオン(外部リンク)
コロナ時代のお葬式
感染防止対策に特化した一日葬のプラン。1,000件以上の葬儀社の中から、いい葬儀が独自に設定した感性対策の項目をクリアした葬儀社のみを紹介してもらえます。
お迎えから遺体安置、納棺、告別式、初七日、火葬がセットになっており、59万8千円(税別)。料理や香典返しは料金に含まれていません。
コロナ時代のお葬式/いい葬儀(外部リンク)
一日葬墓
熊本県にある金剛宝寺天空陵が打ち出した、葬儀だけではなく埋葬まで簡素化し、1日で全てを完結させる葬送のプラン。
直葬のような形で火葬までは先に済ませておく必要がありますが、火葬後、遺骨を金剛宝寺天空陵に送ると、その本堂で葬儀、納骨まで全て済ませてくれ永代供養をしてくれます。葬儀の様子はYoutubeによる配信を行うことも可能です。日本全国どこでも対応可能で、宗教も問いません。
オンライン葬儀の費用は10万円(税込)から。葬儀と樹木葬をセットで50万円(税込み)、葬儀と合祀墓への納骨がセットで15万円(税込)。
感染のことだけではなく、家族に迷惑をかけたくない、一人身の方には需要が高そうです。
一日葬墓/金剛宝寺天空陵(外部リンク)
完全に3密を防ぐ!オンライン葬儀
オンライン葬儀は、リモート葬儀、web葬儀と呼ばれ、コロナ以前よりその試みはありました。宗教儀礼が形骸化し、檀家制度が衰退していく中、日本の葬儀や法事は簡略化していく傾向が以前からあったものの、実際に一般化するまでにはいたっていません。しかし、今回の感染拡大を受けて、徹底的に感染リスクを避けられることはもちろん、利便性でも注目されつつあります。
昨今のオンライン葬儀の優れた点は、葬儀のライブ配信だけではなく、記帳、香典、供花、返礼品などが全てオンラインで手続きできることです。足を運ばないことは不義理と感じる方もまだ多いでしょう。しかし、遠方の方、身体が不自由な方、高齢の方、出産直後の方など現地に来られない方が、参列を諦めずに縁をつなぐことができることは大きなメリットです。
オンライン葬儀の懸念点
学校の授業のオンライン化でもこのことが問題になりましたが、インターネット環境が整っていなくてはライブでの参列はできません。動画なので高速回線は必須ですし、ハードの機能も十分でないと困るでしょう。厳粛な葬儀の映像も、頻繁に途切れたり、遅くなったりしては、後味の悪さを残すでしょう。
また、オンラインでの参列を受け入れがたい親族などもいるかもしれません。そういう方に遺族がオンラインでの参列を提案した場合、不快に思われることもあります。理解を得ることが難しいかもしれません。
オンライン葬儀の各社のサービス事例
現在、サービス利用できるオンライン葬儀サービスをご紹介します。
スマート葬儀
オンラインでの通夜、告別式、法要、お別れ会の参列だけではなく、SNSやメールでの訃報お知らせ、記帳、香典、弔電、返礼品などのオンライン決算が可能となるサービスです。
導入している葬儀社のみで使用可能なので、まだ、多くの方が利用できるわけではありません。しかし、遺族や参列者にとってメリットのあるサービスなので、今後導入する葬儀社が増えそうです。
スマート葬儀/ライフエンディングテクノロジーズ株式会社(外部リンク)
無料ウェブ葬儀配信サービス
感染を広げないために、それぞれが移動しない、できるだけ近場で留まることが求められています。そんな状況を踏まえて、葬儀社によっては、独自にwebによる葬儀の配信を無料で行っている場合もあります。
特に現在感染者の多い地域に住んでいる方の場合、参列するのは迷惑なのではないかと悩むことも多いでしょう。このようなサービスがあれば、助かる方も多いのではないでしょうか。
無料ウェブ葬儀配信サービス/株式会社ドリーマー(外部リンク)
直接安全に焼香ができる!ドライブスルー弔問
長時間多くの人と一緒にいるのは心配だけど、オンラインで参列では物足りない。記帳や焼香は直接して、きちんと最後の挨拶をしたい。そんなニーズにこたえるのが、ドライブスルー弔問です。
自家用車に乗ったまま、会場に入ることなく、記帳し、香典を渡し、焼香ができるというサービスで、感染のリスクを避けながら、最後のお別れもできます。
ドライブスルー弔問の懸念点
ドライブスルー弔問では、主に葬儀社や葬儀場の従業員が対応します。そのため、車に乗ったままだとせっかく参列したのに、遺族に直接お悔やみを言えないこともあるでしょう。
また、利用する人の人数にもよりますが、場合によっては渋滞になってしまう可能性も。通常通り参列するよりも時間がかかってしまうこともあるかもしれません。
ドライブスルー弔問の各社のサービス事例
現在利用できる、ドライブスルー弔問サービスをご紹介します。
車上焼香システム(ドライブスルー方式)
全国で初めてドライブスルー弔問を取り入れたのは、長野県上田市にある葬儀場上田南愛昇殿です。
この葬儀場では、車の中で焼香をするための専用レーンが設けられています。タブレットで記帳し、香典を渡し、焼香するまで、全て車内で行うことが可能です。葬儀場自体が車上焼香を前提としているので、滞りなく焼香ができます。
車上焼香システム/上田南愛昇殿(外部リンク)
今だけのドライブスルー焼香
葬儀場によっては、感染予防を優先せざるを得ない現在の状況に対応して、リスクの大きい今だけドライブスルー焼香を行っている場合があります。兵庫県のピュアグループでは感染予防の一環として期間限定で導入しています。
今だけのドライブスルーの御焼香をはじめました/ピュアグループ(外部リンク)
安全になってから供養を!後日葬、後葬、やり直し葬
特に緊急事態宣言が発令され、外出制限が要請された時期は、結婚式も中止、お葬式ですら大勢には声が掛けられない状況でした。そこで、葬儀の内容に心残りのある遺族の方のために、感染の流行が収まった後に改めて弔いの会を行う、後日葬を提案している葬儀社もあります。
感染リスクのある中の葬儀は様々な制約があり、常になく気を使います。そのため、十分に供養できなかったと後悔する方もいることでしょう。ならば、亡くなった直後は火葬式のみや家族葬などで簡単に済ませて、後でじっくり本当のお葬式をするのも悪くないように思えます。
後日葬、後葬、やり直し葬の懸念点
通常のお葬式なら、それ自体が火急、最優先の事態であり、参列者の都合を考慮する必要はありません。しかし、改めて日程や場所を調節して…となると、どうせならということで参列者の都合を考慮し日程調整に手間を取られることは考えられます。
2回葬式をすることになるので、1回で済ますよりも費用がかかることも多いでしょう。参列者にしても、いつ香典を渡すべきなのか、金額はどうすべきなのか迷うところです。
後日葬、後葬、やり直し葬の各社のサービス事例
現在提供されている、後日葬、後葬、やり直し葬のプランの内容をご紹介します。
コロナ対策(クラスター感染防止)葬
「コロナ対策(クラスター感染防止)葬」と銘打った涙そうそうのプランは、通夜や告別式を行わず、まずは火葬を行い(直葬)、感染の流行が収まった後、お寺や斎場でお葬式を行うというプランです。
費用は直葬が11万5千円、お寺での後日葬が10万円とかなりお手軽。質素でもゆっくりと供養してあげたいという方にはおすすめです。
コロナ対策(クラスター感染防止)葬/涙そうそう(外部リンク)
つばさの後葬
心ゆくまで供養と故人との最後の思い出を作るためのプランである、家族葬のつばさホールが提案している「つばさの後葬」。100名収容可能の式場と、写真を飾れるコーナー、親族控え室などの使用、人数分の返礼品、花祭壇などがセットで24万8千円です。
火葬は別で、後日葬のみのプランですが、お別れの会に近い形で後葬を行いたい方にはおすすめ。
つばさの後葬/つばさホール(外部リンク)
後悔のないようきちんと供養はしたいけれど、葬儀によってクラスターが発生するのは絶対に避けたいというのが多くの人の考えだと思います。
地域によっても違いますが、リスクの度合いを考えて、こうしたプランやサービスの利用も一考の価値はありそうです。