身内が亡くなると四十九日までは「忌中」、一周忌までは「喪中」となります。ふだんの生活とはちがった過ごし方となると迷ってしまうこともあるかもしれません。忌中・喪中の意味や由来、期間、忌中・喪中となる血縁者の範囲、忌中・喪中期間に控えた方がいいこととその対応方法をご紹介します。遺族として忌中・喪中期間をどのように過ごせばいいのか参考にしてください。
喪中と忌中-期間は亡くなった人との関係による?慶事はどうする?
1. 忌中とは?
忌中は一般的には、亡くなってから四十九日法要まで(神道は五十日祭まで)の期間で、その日をもって忌明けとされます。忌中は「死」を穢(けが)れととらえる神道に由来します。身内を亡くして死の穢れが強い時期に、その穢れを広めないように社会との繋がりを控える期間とされてきました。現在でも忌中の場合は、お祝い事や派手な行いを避けて、とくに神社の参拝は控えるべきだと考えられています。
1-1. 忌中と喪中の違い
故人が亡くなってから四十九日法要(神道は五十日祭)までを忌中、一周忌までを喪中とするのが一般的です。忌中も喪中も、故人の死を悼む期間である点は同じです。喪中は故人との続柄によって期間が異なりますが、忌中の期間はどのような関係にある人が亡くなったとしても同じです。
1-2. 忌引き期間
身内に不幸があったときに会社や学校を欠席することを「忌引き」といいます。忌引きの日数は故人との間柄により決まりますが、厳密な決まりはありません。学校や会社により期間が定められます。以下の表に忌引きの期間をまとめますが、あくまでも目安として参考にしてください。
故人 | 忌引き期間 |
配偶者 | 10日 |
父母 | 7~10日 |
子ども | 5日 |
祖父母 | 3日 |
兄弟姉妹 | 3日 |
義父母 | 3日 |
義祖父母 | 1日 |
義兄弟姉妹 | 1日 |
孫 | 1日 |
叔父叔母・伯父伯母 | 1日 |
2. 喪中とは?
身内が亡くなってからおおよそ1年、遺族は「喪中」期間として身を慎んで公の席やお祝い事を遠慮して過ごします。喪中の意味や由来を知り、どの血縁関係の人が亡くなったときに、どのくらいの期間喪中となるのかを確認しておきましょう。
2-1. 喪中とは
「喪中」は近親者が亡くなったときに、一定期間故人の死を悼みながら生活するしきたりです。日本では喪中の間、贅沢(ぜいたく)やお祝い事を避けて、静かに生活すべきとされてきました。喪中期間の振る舞いを「喪に服す」といい、「忌服(きぶく)」や「服喪(ふくも)」とも呼ばれます。
2-2. 喪中の由来
神道では「死は穢(けが)れである」と考えられてきました。遺族は周りへ穢れを広めないように人との距離を取り、行動を慎むべきとされてきました。昔は喪中の間、喪服を着て過ごし、お祝い事や娯楽、動物の肉、飲酒などを断ち、慎ましく生活してきました。現在でも喪中の間はお祝い事を避ける風習が残っています。
2-3. 喪中の範囲
どの血縁者が亡くなったときに喪中とするのか、その範囲は厳密に決まっているわけではありません。一般的には、2親等以内の親族が亡くなった場合を喪中とするケースが多いです。自分から見た2親等以内に当てはまる続柄は以下の通りです。
- 0親等:配偶者
- 1親等:父母、義父母、子供、子供の配偶者
- 2親等:祖父母、義祖父母、孫、兄弟姉妹、義兄弟姉妹、兄弟姉妹の配偶者、義兄弟姉妹の配偶者
1親等以内の親族または同居する親族が亡くなった場合を喪中とする考え方もあります。また故人が3親等以上の親族でも、同居していた場合やとくに親しくしていた場合は喪に服しても構いません。喪中とするかどうかは、故人との関係の深さや地域・家庭により異なるため、あくまでも目安として知っておきましょう。
2-4. 喪中の期間
一般的に喪中は一周忌までとされています。基本的には故人が亡くなってから1親等以内の場合はおよそ1年間、2親等の場合は3~6カ月間を喪中とし、一周忌法要を喪明けと考えるケースが多いです。近年では喪中期間を短くする家庭も増えています。故人との続柄による喪中期間は以下のとおりです。地域や家庭により考え方が異なるため、目安として参考にしてください。
故人 | 喪中期間 |
配偶者 | およそ1年 |
父母、義理父母 | およそ1年 |
子ども | およそ1年 |
祖父母 | 3~6カ月 |
兄弟姉妹 | 3~6カ月 |
3. 忌中・喪中に控えること
忌中・喪中期間は、公の席や慶事は避けるべきとされてきました。最近では少しずつ意識も薄まりつつありますが、具体的にどのようなことを控えたらいいのか、忌中・喪中期間の過ごし方を知っておきましょう。ただし忌中・喪中のふるまいについては、家庭や地域によりさまざまな考え方があるので、迷う場合は親戚や周囲の人に相談しましょう。
3-1. 正月祝い
死後1年以内に新年を迎えるときは、新年を祝う正月行事は避けましょう。年賀状の送付、しめ縄や門松などの正月飾り、初詣、おせち料理などです。厳密にいえばお年玉も控えるべきですが、もし渡したい場合は地味なポチ袋に「お小遣い」と書くといいでしょう。
年賀状を欠礼する旨を知らせるために、年賀状のやり取りをしている人には喪中はがきを出します。
喪中はがきの書き方やマナーについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。相手も喪中の場合や自分の喪中に年賀状を受け取った場合、年末に不幸があった場合の対応についても確認しておきましょう。
3-2. 慶事の開催や参加
忌中には・喪中期間には、結婚式やお祝いのパーティーなどの慶事の開催は控えます。とくに忌中の場合、結婚式を延期するのが一般的です。結婚式の場合は、式場の予約や相手の都合もあるため、亡くなった方との関係性にもよりますが、喪中であっても忌明けであれば開催するケースが多いでしょう。親族や相手とよく相談してから決めましょう。
慶事に招待された場合、喪中の場合は慶事への出席は問題ありません。忌中の場合は出席を控えるべきとされています。おめでたい行事に喪中の人が参加するのは不謹慎であり、招待した側に気を使わせてしまうこともあるからです。出席を断る場合は、丁寧にお断りの返事をしましょう。
しかし近年は、忌中前から予定されていた慶事には出席することも多くなっています。招待した側は出席してほしいと考えている、すでに予約済みでキャンセルすると逆に手を煩わせてしまう場合もあります。忌中であっても先方が気にしていない、了承しているといった場合や、本人の悲しみが落ち着き心からお祝いできるのであれば、出席した方が良いという考え方もあります。
3-3. 神社への参拝
神道では死を穢れとして考えられてきました。忌明けまでは神社への初詣や参拝、祭事への参加を控えましょう。神道の忌中である50日を過ぎれば参拝しても構いません。仏教は死を穢れとして考えないため、お寺にお参りするのは問題ありません。
3-4. 旅行・レジャー
以前は派手なことや贅沢も慎むべきとされていたため、旅行やレジャーは控えるべきとされてきました。しかし近年は仕事などの事情からすべてのレジャーを避けるのは困難な場合が多いです。それほど気にしなくてもいいケースが多いですが、忌明けまで控える、節度をもって派手になりすぎない行動をするなど心がけましょう。
3-5. お歳暮・お中元
お中元やお歳暮は、ふだんお世話になっている方へ感謝の気持ちを表す贈り物です。
自分が忌中・喪中の場合、お中元やお歳暮は祝いごとではありませんが、贈るのを控えた方がいいでしょう。かえって相手に気を使わせてしまったり、忌中の人からの贈り物は縁起が良くないと気にしたりする人もいます。
忌明けを迎えれば喪中であっても、お中元やお歳暮を贈ってかまいません。ただし、熨斗(のし)や水引はお祝いを表すものなので使用しません。白無地の奉書紙か白い短冊を用います。包装する際にお店の方へ喪中であることを伝えれば、対応してもらえるでしょう。
忌明けを待っているうちに、お中元やお歳暮の時期を過ぎる場合もあります。お中元の場合は「残暑御見舞い」と書いて贈ります。お歳暮の場合は、松の内(元旦から1月7日までの期間)が明ける1月8日から立春(およそ2月4日頃)の前日までに「寒中御見舞い」の名目で贈るようにしましょう。
送り先が忌中の場合もお中元やお歳暮は贈りません。身内を亡くしてまだ悲しみに暮れている時期であり、さまざまな手続きなど忙しい時期でもあります。また、先方が贈り物を香典と勘違いする可能性もあります。