近しい血縁関係のある人に不幸があった場合、概ね1年の期間を「喪中」といい喪に服します。喪中期間はお祝い事を慎むため正月行事を行わず、正月飾りや年賀状を控えます。喪中はがきは、喪中のために新年の挨拶を遠慮することを事前に相手へ伝える手紙です。今回は喪中はがきを買う場所やはがきデザインの選び方、書き方のポイントや使用する筆記具などくわしく説明いたします。文例もご紹介します。
喪中はがき徹底解説<はがきの選び方、買い方、書き方編>
1. 喪中はがきの準備
喪中はがき(正式には「年賀欠礼状」)に使用するはがきの準備についてご紹介します。購入場所や販売時期を確認しておきましょう。
1-1. 喪中はがきを自作する
喪中はがきは通常はがきを使って自分で作成することもできます。パソコンの年賀状ソフトや郵便局HPのお手軽テンプレート検索「喪中テンプレート」などを利用して、喪中はがきの文面を作成し、購入した通常はがきに自宅のプリンターで印刷する方法です。自分で作成して印刷するので、かかる費用を抑えることができます。
通常はがきの料額印面の図柄には「ヤマユリ」「ヤマザクラ」「胡蝶蘭」の3種類があります。そのうち寒中見舞いや喪中はがきには「胡蝶蘭」を使用するのが一般的です。「喪中はがき用のはがき」というと「胡蝶蘭」を出してくれます。自宅で印刷するのでインクジェット紙を選びましょう。はがきは郵便局やコンビニ、ネットで購入できます。
1-2. 喪中はがきを購入する
喪中はがきの購入には、あらかじめ挨拶文と絵柄が印刷されたはがきを購入する方法と、故人や差出人の情報などすべてが入った「喪中はがき印刷」を注文して購入する方法があります。
1-2-1. 挨拶文と絵柄だけ印刷された喪中はがきを買う
あらかじめ挨拶文と絵柄があらかじめ印刷された喪中はがきは以下の場所で購入できます。
故人の名前や亡くなった日付、差出人の名前や住所などは自分で、手書きで記入する必要があります。宛名面は手書き、または自宅のプリンターで印刷することになります。
私製はがきの場合は、別途切手を貼る必要があります。「弔事用63円普通切手・花文様」を使用しましょう。切手は郵便局やコンビニで購入できます。
- 郵便局(例年10月1日から販売)
- 挨拶文入り喪中はがき 5枚入り580円(税込)
- 挨拶文入り箔押し喪中はがき 5枚入り650円(税込) - 文具店、書店、量販店、コンビニなど(10月以降に販売されることが多い)
- Amazonや楽天などのネットショップ(通年販売)
1-2-2. 故人や差出人の情報などすべてが入った「喪中はがき印刷」を注文して買う
挨拶文と故人や差出人の情報が印刷された喪中はがきは、ネット印刷ショップで注文、購入できます。インターネットやスマートフォンのアプリを使って注文する方法です。デザインや挨拶文も好みのものを選ぶことができ、宛名面の印刷もオプション注文することができます。毎年9月頃から12月中旬の期間に注文受付しているケースが多く、ショップによって早期注文や注文枚数に応じて割引サービスを行っている場合もあります。忙しい人や自宅にプリンターがない人におすすめです。これははがき代に加えて印刷代も加算されるため費用がかかります。
例として、令和2年の郵便局の喪中はがき印刷サービスを紹介するので参考にしてください。郵便局の喪中はがき印刷サービスは郵便局に置いてあるカタログからも注文可能ですが、宛名印刷も併せて注文したい場合はインターネットからの申し込みになります。
令和2年9月1日~12月27日20:00
(※宛名印刷する場合は令和2年9月1日~12月23日)
令和2年9月1日~9月23日に申し込みの場合:9月25日までに発送
令和2年9月24日~12月27日に申し込みの場合:受付日から2営業日以降に発送
(※宛名印刷する場合は、上記発送日+3営業日以降の発送)
郵便局の喪中はがき印刷サービスの料金は以下のように枚数に応じて決まります。表は税込み価格で、印刷代の他に別途はがき代金が必要です。送料は商品価格に含まれています。(また会員割引(10%割引)やWEB割引(5%割引)があり、印刷代金から最大15%割引になります。)
宛名注文をする場合:基本料金1,100円+枚数×31円
宛名印刷をした場合は、投函代行サービスもあります。宛名印刷のみの注文はできません。
web限定 | カタログ | |||
枚数 | スタンダード/カジュアル/薄墨 | 箔押し喪中はがき | 薄墨/フルカラー | シンプル |
1~10枚 | ¥2,960 | ¥4,140 | ¥2,970 | ¥2,560 |
11~20枚 | ¥3,160 | ¥4,700 | ¥3,330 | ¥2,920 |
21~30枚 | ¥3,470 | ¥5,260 | ¥3,690 | ¥3,280 |
31~40枚 | ¥3,770 | ¥5,820 | ¥4,050 | ¥3,640 |
41~50枚 | ¥4,180 | ¥6,380 | ¥4,410 | ¥4,000 |
51~60枚 | ¥4,540 | ¥6,890 | ¥4,710 | ¥4,300 |
61~70枚 | ¥4,890 | ¥7,400 | ¥5,010 | ¥4,600 |
71~80枚 | ¥5,250 | ¥7,910 | ¥5,310 | ¥4,900 |
81~90枚 | ¥5,560 | ¥8,420 | ¥5,610 | ¥5,200 |
91~100枚 | ¥5,960 | ¥8,930 | ¥5,910 | ¥5,500 |
141~150枚 | ¥7,080 | ¥11,230 | ¥7,210 | ¥6,800 |
191~200枚 | ¥8,260 | ¥13,280 | ¥8,310 | ¥8,100 |
201枚以上 10枚ごとに |
¥160 | ¥360 | ¥160 | ¥160 |
501枚以上 10枚ごとに |
¥110 | ¥310 | ¥110 | ¥110 |
郵便局の総合印刷サービス(外部リンク)
2. 喪中はがきのデザインの選び方
喪中はがきのデザインは、華美なデザインを避け、色数を抑えてシンプルで落ち着いた雰囲気にします。派手な色・ポップな色でなければ、白色・黒色以外の色が多少入っていても構いません。喪中はがきの絵柄には、花のモチーフがよく使われます。どのデザインにしようか迷った場合は、花言葉や花が持つ意味・故人が生前好きだった花でデザインを選ぶ方法もあります。喪中はがきのモチーフによく使用される花の中から、いくつか花言葉や使用される意味を確認してみましょう。
- 蓮(ハス): 花言葉「清らかな心、神聖」
仏教で極楽浄土に咲く花とされており、如来像の台座や仏具などにも施されています。 - 桔梗(キキョウ):花言葉「変わらぬ愛、誠実、気品」
昔から日本で愛されてきた花です。紫色の桔梗は高貴で気品があり、白色の桔梗は控えめで清楚な雰囲気があります。 - 胡蝶蘭(コチョウラン):花言葉「純粋な愛」
冠婚葬祭に利用されるポピュラーな花で、贈答品にも選ばれます。とくに白色の胡蝶蘭は清楚で上品で悲しみに寄りそう花として、弔事にも向いています。 - 菊(キク):花言葉「清浄、高貴、高尚」
皇室の家紋のモチーフで日本の国花でもある高貴な花です。お葬式やお墓にもお供えされる花です。 - 百合(ユリ):花言葉「純潔、無垢」
香りが良く上品で美しい花が特徴です。とくに白い百合は清楚な印象で、喪中はがきにも使用されます。 - 椿(ツバキ):花言葉「控えめな優しさ、誇り」
古くから日本人になじみ深い花です。冬に凛と咲く姿から、品格や清らかさが感じられます。
3. 喪中はがきの文面のチェックポイント
喪中はがきを選ぶときや書くときのポイントをくわしくご説明します。
はがきを出す時期やはがきを送る人の範囲など、喪中はがきのマナーについては以下を参考にしてください。
3-1. 使用する筆記具
喪中はがきに使用できるペンは、格式順に「毛筆」「万年筆」「筆ペン」「サインペン」です。中でも使いやすさ・書きやすさ・購入しやすい点から、現在もっとも一般的に使用されているのが筆ペンです。一方で使用しない方がいいのは、ボールペンや黒色以外の色ペンです。喪中はがきは厳粛で正式な書面であるため、ボールペンや色付きのペンは控えましょう。
弔事の香典や供物の表書きなどにはふつう薄墨のペンを用いますが、喪中はがきを書く場合は、絵柄面の文は黒色または薄墨色のどちらで書いても構いません。黒色で書くと文字が明確になるので、相手が読みやすく「喪中で年賀欠礼する」という内容がより伝わりやすくなるでしょう。薄墨色で書くと喪中らしさが表れ、読み手に控えめな印象を与えます。ただし黒色に比べると文字が読みにくくなるので、高齢者など受け取り手によっては見えにくいと感じる可能性があります。
喪中はがきの宛名面は黒色のペンで書きましょう。薄墨では郵便番号を機械で読み取れない可能性があるためです。郵便配達員が宛先を読み取りやすくするためにも、郵便番号や住所、宛名は黒色で書きます。
3-2. はがきの向き・フォント
日本語の文章はもともと縦書きであることから、弔事に関わる書面は縦書きが一般的です。とくに目上の方へ送る場合は失礼がないように縦書きにしましょう。現在では故人の人柄を伝えたり悲しみをやわらげたりするために、横書きのデザインを用いるケースもあります。カジュアルな雰囲気になりすぎないように注意しましょう。印刷する場合は、フォントは楷書体・明朝体にし、カジュアルな書体や装飾された書体は避けましょう。
3-3. 書くときの注意点
- 前文を省略
喪中はがきは前文(「拝啓」「前略」などの頭語や時候の挨拶など)を省略して、主文から書き始めます。 - 句読点を使わない、一字下げをしない
喪中はがきに限らず、結婚式の招待状や挨拶状、表彰状など儀礼的な書面では行頭の一字下げを行わず、句読点を使用しないのがマナーです。 - 年賀欠礼以外のことを書かない
年賀欠礼以外の近況報告はしません。結婚・出産・引越しなどを知らせたい場合は、喪中はがきとは別に報告はがきを出しましょう。 - 和暦を使う、縦書きの場合は漢数字を使う
日付を記載する場合は、西暦ではなく和暦(令和二年など)を使うのがマナーです。また縦書きの場合は、亡くなった日付や差出人住所、送り先住所などで漢数字を使います。
3-4. 構成
喪中はがきにとくに決まった形式はありませんが、以下の構成で書くのが一般的です。文例やポイントは次の章でくわしく紹介します。
- (1)喪中で年賀欠礼することを伝えるあいさつ文
- (2)亡くなった月・続柄・名前・享年
- (3)先方への挨拶文
- (4)日付
- (5)差出人の住所・名前・電話番号
4. 喪中はがきの文例とポイント
前章で紹介した喪中はがきの構成に沿って、文例とポイントをくわしく紹介します。
4-1. 喪中のため年賀欠礼することを伝えるあいさつ文
前文を省略して主文から書き始めます。「年賀」ではなく、「年始」や「新年」などの言葉を使いましょう。
喪中につき新年のご挨拶を謹んでご遠慮申し上げます
喪中につき年末年始のご挨拶を失礼させていただきます
4-2. 亡くなった月・続柄・名前・享年
続柄:差出人との続柄です。差出人は個人あるいは連名で書きますが、連名の場合は、連名の一番目の名前の人との続柄を記載するのが一般的です。
[夫婦連名で出す場合]
配偶者の親が亡くなった場合は、差出人からみた続柄―「義父」「義母」「妻の父」「妻の母」「夫の父」「夫の母」などと記載します。
差出人から見た故人との続柄の記載方法は以下の表を参考にしてください。
親等 | 差出人から見た関係 | 続柄の表記例 |
0親等 | 夫 | 夫、主人 |
妻 | 妻、家内 | |
1親等 | 父 | 父、実父、亡父、義父 |
母 | 母、実母、亡母、養母 | |
配偶者の父母 | 父、母、義父、義母、岳父、丈母など | |
子ども | 長男、次男、息子、長女、次女、娘など | |
子どもの配偶者 | 長男の妻、長女の夫、息子の妻、娘の夫など | |
2親等 | 兄弟姉妹 | 兄、姉、弟、妹、長兄、次兄、長姉、次姉、末妹など |
孫 | 孫、孫息子、孫娘 | |
祖父母、義祖父母 | 祖父、祖母、義祖父、義祖母 | |
兄弟姉妹の配偶者/ 配偶者の兄弟姉妹 |
兄、姉、弟、妹、義兄、義姉、義弟、義妹 |
名前:苗字が差出人と同じ場合は名前のみの記載でも構いません。
享年:数え年で記載しますが、最近は満年齢で書くケースも増えています。「享年八十一歳(満八十歳)」など両方記載することもあります。
続柄、名前、年齢など、伝えたくない項目がある場合は、記載しないケースもあります。
本年七月 祖母〇〇が享年八十歳にて永眠致しました
かねてより病気療養中の妻××の父○○が本年二月に七十五歳にて他界致しました
令和二年一月 妻○○が四十五歳にて急逝致しました
本年二月に祖母○○が九十歳にて
七月に父〇〇が六十五歳にて永眠致しました
4-3. 先方への挨拶文
先方へお世話になったお礼や、変わらぬ付き合いをお願いする文を書きましょう。
永年にわたるご厚情を深謝いたします
寒さに向かう折から皆様のご健勝をお祈り申し上げます
新年のご祝詞を申し上げるべきではございますが
喪中につき勝手ながら欠礼させていただきます
時節柄一層のご自愛の程お祈り申し上げます
新年のご挨拶を申し上げるべきところでございますが
喪中につきご遠慮させていただきます
明年も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
4-4. 日付
はがきを書いた日付や投函日ではなく、喪中はがきが相手に届く年と月を書きます。年は和暦で書き、縦書きの場合は漢数字で記載しましょう。日にちはいりません。
令和二年 十二月
4-5. 差出人の住所・名前
住所と名前、必要に応じて電話番号を記載します。喪中はがきは年賀欠礼を伝えるはがきで、個人名でも夫婦連名でも構いません。例年、夫婦連名で年賀状を出している場合は、喪中はがきも夫婦連名で出すといいでしょう。連名で出す場合は、右側に代表となる人の氏名を書きます。
ただし、例えば家族連名で年賀状をやり取りしている相手であっても、子供(未成年)の名前は連名に含めないのが一般的です。喪中はがきは大人同士のやり取りであり、子供の名前を書くのは非常識と考える人もいるからです。また、差出人が複数人になると、続柄においても相手を混乱させてしまう可能性があります。「子供の名前を記載しないと差出人が誰かわからない」という場合を除いて、親子連名は避けた方がいいでしょう。
また、兄弟など別世帯の家族連名で喪中はがきを出したい場合は、喪主または年齢順に右側から名前を書きます。スペースが限られているので、住所は代表者の住所を書きます。