精霊棚、迎え火、送り火といったお盆の一般的な風習にくわえて、地域ごとに独特の風習をもつ場所があります。今回は大分県のお盆についての紹介です。大分では初盆を盛大に行うのが特徴的で、親しくしていた方が亡くなると、お盆前に籠盛り(かごもり)を贈ります。
大分のお盆 地域色豊かな食文化、盛大な初盆、籠盛り(かごもり)の風習
1. 大分のお盆の食文化
大分のお盆は、8月13日から8月15日(16日までとする場合もある)の期間です。大分ではお盆に、米こうじを発酵させて作る「酒まんじゅう」や、練った小麦粉を平たく伸ばしたものにきな粉をまぶす「やせうま」をお供えし、食べる風習があります。
さらに地域ごとに特色ある食文化も残ります。大分県北西部の日田(ひた)地方では、タラのエラと内蔵の干物で作った煮物「たらおさ」が、お盆の時期に食卓へ上がる一品です。
大分県北部の宇佐(うさ)市長洲(ながす)地区などでは、初盆のときにみとり豆を使って作る「みとりおこわ」が食べられ、近所や親戚にも配る風習が残っています。
2. 大分の初盆にお供えする籠盛り(かごもり)
家族・親族などが亡くなってから初めて迎えるお盆を「初盆」といいます。大分県の初盆は盛大で丁寧に行うのが特徴です。近所の方や親しくしていた方が、ひっきりなしに初盆のお参りにくることも珍しくありません。家には、お返しの品が入った紙袋がずらりと並びます。
祭壇は大きな提灯(ちょうちん)や灯籠(とうろう)で飾られ、お供えものも豪華です。とくに大分ならではのお供えが「籠盛り(かごもり)」です。
籠盛りとは
籠盛りは、近親者や生前親しかった人から初盆を迎える家庭に贈られるお供えもので、篭盛り(かごもり)とも表記されます。送り主の名前を記した熨斗を矢立に付けて飾るため、高さ120~150cmほど、横100cmほどの大きさです。
脚台の上に海苔やお菓子、缶詰めや線香などが詰め合わせられたかごを盛り、かごの周りは造花で華やかに飾られます。親族や身近な人から贈られてくるため、仏間中に籠盛りが並びます。大分の初盆は、他のお飾りや供え物と共にたくさんの籠盛りが飾られ、非常に華やかです。
籠盛りの価格と種類
籠盛りの価格は10,000~30,000円ほどで、夏になると県内のデパートのお中元コーナーの隣などに並び始めます。ネットショップからの購入も可能です。
LEDランプが用いられた灯籠が脚部分にあるタイプや、光ファイバーにより光る造花が飾られたタイプ、エコを考えて脚台が段ボール製のタイプなど、さまざまな種類の籠盛りが販売されています。
余裕をもって贈る
籠盛りは贈られた家庭で組み立てる必要があります。お盆の前に到着するように届けるのが一般的です。籠盛りの受付期間も7月末や8月初旬までとしているお店が多いため、注意が必要です。贈る場合は余裕をもって手配しましょう。
籠盛りの風習がある地方
故人と特に親しかった人が、告別式や葬儀で「盛籠(もりかご)」といわれるお供えを贈る習慣は、さまざまな地域にあります。籠盛りと同じように、フルーツや線香、飲料などを籠に盛り、造花で飾ったお供えものです。 しかし初盆で豪華な籠盛りを贈るのは、全国でも珍しい風習です。大分県以外では、静岡県西部の遠州地方でも、初盆に籠盛りを贈る風習があります。