結婚式での祝儀や通夜、葬儀での香典等は袱紗(ふくさ)に包んで持参するのがマナーです。今回は弔事用の袱紗について詳しくご説明します。袱紗にはいくつかの形の種類があります。また、慶事用と弔事用では袱紗の色や柄、包み方が異なります。突然のお悔やみにも対応できるように、正しいマナーを知っておきましょう。
弔事用の袱紗の選び方、包み方、取り出し方
1. 袱紗について
祝儀袋や香典袋などの金封は、袱紗に包んで持参します。袱紗を使う理由や種類、購入場所を確認しておきましょう。
1-1. 袱紗を使う理由
袱紗は絹やちりめんなどの素材でできた、一重または二重の方形の布です。祝儀袋や不祝儀袋を包んだり、進物の上にかけたりします。また茶道でも使用されます。
金品を包まずにそのまま渡すことは無作法とされていますし、祝儀袋や香典袋が汚れたり、折り目が付いたりするのを防いだり、金品を渡す相手への礼儀を表すために袱紗で包んで持参するようにしましょう。
袱紗は会場までハンドバッグやジャケットの内ポケットに入れて持参します。袱紗に包まずにそのままバッグや内ポケットへ入れる方もいますが、袱紗に包んで持ち運んだ方がベターです。かさばるのが気になる方もいるでしょうが、小さいバッグや内ポケットにも収まりやすいスリムでシンプルな形の袱紗もあります。お悔やみの気持ちを表すためにも、袱紗を使うようにしましょう。
1-2. 袱紗を購入できる場所
袱紗は仏具店、デパートや大型スーパーのフォーマル服売り場・文房具コーナー等で購入できます。種類は豊富でないものの、100円ショップやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどでも販売しています。
どうしても袱紗を用意できない場合はハンカチや風呂敷でも代用できますが、案外使う機会が多いものです。ネットショップでも購入できるので、時間があるときにあらかじめ用意しておくといいでしょう。
1-3. 袱紗の相場、年齢に応じた選び方
袱紗は1,000円~3,000円程度が相場です。ただし、年齢や立場が上がるにつれて、相応のものを持つことをおすすめします。必ずしも決まっているわけではありませんが、包む金額が増えることもあり、落ち着いた色合いのものや、上質な素材のもの、略式ではない袱紗を選ぶ方が無難でしょう。二つ折りの袱紗は略式と言われています。袱紗の種類については、次の章で詳しくご説明します。
2. 袱紗の種類
袱紗には大きく分けて「包むタイプ」「二つ折りタイプ」「掛けるタイプ」の3種類があります。
2-1. 包むタイプ
風呂敷よりも一回り小さいサイズの方形の布です。金封の厚さや水引のサイズに関係なく、サイズに合わせて包むことができます。何もついていないシンプルな袱紗の他にも、「爪付き」や「台付き」の袱紗があります。包み方については「4.袱紗の包み方」をご参照ください。
爪付き
布の一角に爪が付いており、包むと最後に爪と留め糸で閉じることができるタイプの袱紗です。持ち運ぶ時に袱紗の包みが崩れにくいのが特徴です。
左側に爪がくるように広げて包む
台付き
袱紗を開くと中に金封を置く台が付いています。台を固定する紐が付いており、台や金封を置く場所が決まっているので、包みやすいのが特徴です。台付きは「金封をお盆にのせて上から袱紗をかけて渡す」という正式なマナーを簡略化した袱紗です。
慶事と弔事のどちらにも使用できるように台の表と裏で色が塗り分けられています。慶事は暖色を、弔事は寒色を表にして使いましょう。
台は弔事の時は寒色を表にして使う
2-2. 二つ折りタイプ
袋状になっている二つ折りタイプの袱紗で、「金封袱紗」と呼ばれます。金封を挟んで閉じるだけなので開閉が楽で、しまいやすいのが特徴です。略式の袱紗であり、包む金額の目安は1~3万円です。
2-3. 掛けるタイプ(掛袱紗)
本格的な袱紗で、お盆の上に贈り物を置き、上から袱紗をかけます。最近は結納品やお布施を渡すときなど、特定の場合に使用されることが多いです。
3. 袱紗の色と柄
袱紗には慶事用と弔事用があり、色と柄には気をつけて使い分ける必要があります。
3-1. 袱紗の色
慶事と弔事でそれぞれ使用できる袱紗の色は以下のとおりです。紫色の袱紗は慶弔両用で、どちらにも使うことができます。ただし薄紫色はお祝い事でのみ使える袱紗ですので気をつけましょう。
慶事用の袱紗の色
暖色系(赤色、朱色、ピンク、オレンジなど)、紫色
弔事用の袱紗の色
寒色系(黒色、グレー、藍色、紺色、うぐいす色、紫色など)
3-2. 袱紗の柄
袱紗の柄は基本的に無地のものが無難です。柄のある袱紗は華美な印象であるため、とくに弔事では無地の袱紗を使用しましょう。慶事でも無地の袱紗がよく使われますが、松竹梅や鶴、扇など縁起物の刺繍が入った袱紗もあります。
4. 袱紗の包み方
続いて金封を袱紗で包む方法をご説明します。慶事と弔事で包み方が異なるため、注意が必要です。
4-1. 弔事の袱紗の包み方
弔事の場合は左開きになるように包みます。
- 袱紗をひし形になるように広げて置く。爪付きの場合は爪が左側になるように置く。
- 中心より少し右側の位置に香典袋を置く。台がある場合は寒色の面を表にして、その上に香典袋を載せる。
- 右側を折る。
- 下側、上側の順で折る。
- 最後に左側を折り、端を右側に包み込む。爪がある場合は止める。
4-2. 慶事の袱紗の包み方
包み方の違いを確認するため、慶事の袱紗の包み方もご紹介します。慶事の場合は右開きになるように包みましょう。
- 袱紗をひし形になるように広げて置く。爪付きの場合は爪が右側にくるようにする。
- 中心より少し左側の位置に祝儀袋を置く。台がある場合は暖色の面を表にして、その上に祝儀袋を載せる。
- 左側を折る。
- 上側、下側の順で折る。
- 最後に右側を折り、端を左側に包み込む。爪がある場合は止める。
5. 袱紗に包んだ香典袋の渡し方
袱紗から金封を取り出して、相手へ渡す方法をご紹介します。袱紗はあらかじめ、受付の手前でハンドバッグや内ポケットから取り出しておきましょう。受付は混雑することがあるので、取り出しておいた方が落ち着いて受付することができます。
- 右の手の平に袱紗を置き、左手で開いて香典袋を取り出す。(右利きの場合)
- 袱紗をたたみ、受付台の上に置く。または袱紗の上に台と香典袋を載せる。
- 香典袋を反時計回りにして向きを変え、受付の人側が正面になるように香典袋の向きを変える。
- 「この度はご愁傷さまです」などお悔やみの言葉と共に、香典袋を両手で渡す。
なお、香典は通夜や葬式、告別式の受付で渡すケースが多いですが、家族葬で受付が無い場合や郵送する場合もあります。香典の書き方や渡し方については以下のコラムで詳しく説明していますので、ご参考にしてください。