本山納骨とは、各宗派の本山(開祖の廟所=墓所があるところ)の寺院に焼骨を収蔵することです。古くからこれらの寺院では昔から信徒や、経済的事情からお墓を建てられない人の遺骨を受け入れてきました。西日本ではもともと経済事情によらず分骨して本山納骨する習慣が多く見られますが、東日本ではあまり知られていません。
近年は、継承を前提としたお墓が不要である、納骨後に年間管理費や寄付を求められないといった理由から、お墓を持ちたくない人や墓じまい後の改葬先としても選ばれています。
なにしろ各宗派の「本山」なので、長期間の管理や運営を期待することができ安心感があります。納骨は分骨のみのところと分骨・全骨いずれも可能なところがあるので、事前に確認が必要です。かかる費用の目安はどの宗派も2万円~10万円程度で平均5万円といったところです。ただし納骨の方法はほとんどが合葬になりますので、遺骨の返還、改葬はできません。本山納骨のメリット・デメリットや手順をご紹介します。
1.本山納骨の特徴
西日本でより一般的な習慣
本山納骨とは、各宗派の本山(開祖の廟所=墓所があるところ)の寺院に焼骨を収蔵することです。西日本ではよく行われ一般的に知られている習慣ですが、東日本ではあまり知られていません。
例えば浄土真宗では、喉仏を2寸等の小さい骨壺に分骨して本山に納める慣習が昔からあります。
ところで、昔から西日本と東日本ではそもそも収骨方法に違いがあり、骨壺の大きさも以下のように地域によって異なります。東日本では全骨を収骨する「全収骨」(総骨)のため、収骨容器(骨壺)は大きめです。西日本ではすべての骨を収骨せず一部の遺骨を収骨する「部分収骨」が多く、骨壺のサイズは東日本より小さめになります。なお本山納骨では、喉仏のみ(「小さい方」と呼ばれる)、分骨、全骨などと納骨できる遺骨の量や必要書類が異なりますので、各寺院に確認が必要です。
各地における骨壷の一般的なサイズ
※1寸約3cmで直径を示します。
- 北海道:6寸
- 東北:7寸
- 関東:6寸か7寸
- 東海:3寸~5寸v
- 北陸:2寸
- 関西:4寸か5寸
- 中国:5寸か6寸
- 四国:徳島のみ2寸か3寸、徳島以外は5寸か6寸
- 九州:5寸~7寸
- 沖縄:7寸
(引用)
デザインを施した骨壺が増え始めたのはなぜか/ 内藤理恵子/月刊住職2015年10月
本山納骨の特徴とメリット・デメリット
本山納骨の特徴とメリット・デメリットは次のような点です。
1.宗派の本山に納骨できる
宗祖・開祖の眠る本山で供養をしてもらえるという安心感とともに、寺院の運営に対しても心配がなく信頼できます。
2.宗派が問われないことが多い
信徒であることが条件となる寺院もありますが、多くの本山納骨では、申込みがあればその意思を尊重して受け入れるため、故人の宗派を問わない場合が多くなっています。
3.納骨料がはっきりしていて比較的安い
本山納骨は一般的なお墓を建てるよりもお金がかかりません。これはそもそもの本山納骨の目的が無縁仏を集めて合祀した社会救済にあるからです。また、納骨後も年間管理料やお布施が求められません。
4.基本的に随時受け付けている
年末や大きな法要時を除いて基本的に随時受付けをしているので、時期を選ばずに納骨をすることができます。
注意点としては、本山納骨では合祀されることが多いので、一度納骨すると遺骨の返還ができないことです。あらかじめ家族や親族間で同意をした上で本山納骨を選ぶようにしましょう。手元供養と組み合わせて利用してもいいでしょう。
また、宗派を問わず受け入れといってもその宗派の方法で納骨や供養を行うのですから、宗旨をしっかりと理解し、ただ安いからといった安易な理由で利用することのないようにしましょう。古くから存在する日本の仏教各宗派には人々の生活に根付いてきたそれなりの理由と深い歴史があります。知識と教養を深める良い機会になるでしょう。SOBANIの日本の「仏教の基礎」シリーズはこちらです。
2.本山納骨の手順
多くの本山では、随時納骨を受け付けています。一般的な手続きの流れをご紹介します。
1.納骨申し込み
事務所で所定の申込書に※法名(戒名)、俗名、命日、所属寺院等を記入し、遺骨とともに渡します。
全骨納骨の場合は「火葬許可証(火葬済みの証印入り)」が必要なので、申込書に添えて提出します。
納骨・読経料を支払います。
※法名(戒名)がない場合は記載しなくてよい。
2.読経
事務所で名前を呼ばれたらお堂に移動し、読経。受付順にお経の中で名前を唱えられ、遺族は焼香します。
3.納骨
遺族も一緒に納骨堂に移動して納骨します。寺院によっては遺族が読経や納骨に参加できないところがあります。
所属寺院がないと納骨できないところ(信徒のみ受付)や、納骨方法、必要な書類や受付時期や時間等は直接問い合わせをして確認してください。
3.本山納骨のできる寺院一例
本山納骨は下記以外にも多くの寺院で行っています。
真言宗高野山金剛峯寺
真言宗高野山金剛峯寺(しんごんしゅうこうやさんこんごうぶじ・和歌山県高野山町)。
和歌山県にある真言宗の総本山。高野山は古来より、死者の霊が向かう浄土であると考えられ、日本仏教の聖地としても名高い場所です。
金剛峯寺の納骨場所は奥の院燈籠堂。宗旨や宗派を問わず受け入れています。納骨申込み用紙を提出し、約1時間読経供養を行った後、納骨堂に遺骨を納められます。1年後に御廟の土に還されます。一霊位5万円(読経料込、管理費なし)、小さい骨壺(喉仏の骨)を預かる分骨のみになります。
浄土真宗本願寺派本山(西本願寺)
浄土真宗本願寺派本山(西本願寺)(じょうどしんしゅうほんがんじはほんざん・京都市東山区)。
浄土真宗の宗祖親鸞の墓所である大谷本廟(おおたにほんびょう)。納骨は浄土真宗の門徒のみ対象にしています。納骨方法には「祖壇納骨」(そだんのうこつ)、「無量寿堂納骨」(むりょうじゅどうのうこつ)、「墓地納骨」の3種類があります。それぞれ納骨場所、納骨方法、必要な書類と手続き、費用が異なります。
中でも一般的な納骨である「祖壇納骨」は明著堂奥の墓所に合葬されます。かかる費用は遺骨の容器の大きさによって、1体につき3万円以上(小型容器)か5万円以上。永代経は3万円以上納めることになっているので、例えば祖壇納骨(小型容器)永代経の場合は1体につき6万円以上になります。全骨納骨の場合は火葬許可証、改葬の場合は火葬許可証が必要です。
真宗大谷派本山(東本願寺)
真宗大谷派本山(東本願寺)(しんしゅうおおたにはほんざん・京都市東山区)。
浄土真宗の宗祖親鸞の墓所である大谷祖廟(おおたにそびょう)。納骨方法には特別~4種まで5種類がありますが、3種(当日読経と彼岸会に永代読経)の納骨・永代経4万円が一般的です。4種は当日読経のみ2万円。
日蓮宗本山身延山久遠寺
日蓮宗本山身延山久遠寺(にちれんしゅうみのぶさんくおんじ・山梨県南巨摩郡)。分骨、全骨ともに納骨可能ですが、全骨は「五十年納骨」のみになります。供養の内容によって「普通納骨」(5万円)、「五年納骨」(10万円)、「十年納骨」(20万円)、「二十年納骨」(30万円)、五十年納骨(50万円)の5種類に分かれています。
「普通納骨」は、ふだんのお勤めと併せて法要をした後に合祀されます。場所は日蓮聖人のお墓がある御廟所になります。「五年納骨」「十年納骨」「二十年納骨」は、遺骨を6cm立方の「お骨箱」に納め、法要後にそれぞれ申し込みの年数だけ納牌堂に安置し供養されます。その後、「普通納骨」と同様に合祀されます。分骨証明書は要りません。
全骨納骨は「五十年納骨」のみで、一霊位につき200万円になります。全骨を納める場合は、「菩提寺がないこと」、菩提寺がある場合は「菩提寺の許可を得ていること」、「火葬許可証(火葬済みの印入り)」、「親族の承諾」が条件になります。
浄土宗総本山知恩院
浄土宗総本山知恩院(じょうどしゅうそうほんざんちおんいん・京都市東山区)。
どの宗派でも納骨が可能です。ロッカー式の納骨壇に個別に納骨する寶佛殿(ほうぶつでん)と、地下納骨室に合祀する納骨堂があります。分骨、全骨、改葬の3種類があり、全骨納骨の場合には火葬許可証、改葬の場合には改葬許可証が必要です。
普通納骨は一体につき3万円以上で、仏名会(ぶつみょうえ、12/2~4)納骨総供養の案内が一度だけ届きます。特別納骨は一体につき7万円以上で、萬部会(まんぶえ、10/23~25)日月牌・特別納骨総供養の案内が5年間送付されることになっています。
天台宗総本山比叡山延暦寺
天台宗総本山比叡山延暦寺(てんだいしゅうそうほんざんひえいざんえんりゃくじ・滋賀県大津市)。
天台宗総本山比叡山延暦寺阿弥陀堂では、「10万円以上」から「150万円以上」まで5段階の納骨が設定されています。分骨、全骨ともに可能。
曹洞宗総本山永平寺
曹洞宗総本山永平寺(そうとうしゅうそうほんざんえいへいじ・福井県吉田郡)。
曹洞宗には福井県にある大本山永平寺と横浜市にある大本山總持寺の2つの大本山があります。永平寺では分骨のみ受け付けており3万円。寂光苑の納骨堂に合祀されます。全骨での納骨は受け付けていないとのこと。
臨済宗妙心寺派大本山妙心寺
臨済宗妙心寺派大本山妙心寺(りんざいしゅうみょうしんじはだいほんざんみょうしんじ・京都市右京区)。
納骨は分骨、全骨ともに可能ですが費用は公開されていません。遺骨は涅槃堂地下室に安置され、永代にわたり日々供養されます。