今回は通夜または葬儀や告別式へ参列するときに持参する「香典」の書き方をご紹介します。香典の表書きには宗派ごとに異なる書き方があり、その他にも、金額の書き方や連名で出すときの名前の順番の書き方など、さまざまなマナーがあります。突然の弔事にも失礼なくお悔やみができるように、正しいマナーを知っておきましょう。
香典袋の選び方・書き方~表書きは宗派ごとに違う?連名の順番は?
1. 香典とは
「香典」とは、線香やお花の代わりにお悔やみの気持ちをこめて故人にお供えする金品のことです。遺族が支払う葬儀費用の負担を少しでも軽減できたらという「相互扶助」の思いも込められています。
訃報を受けてから、通夜または葬式・告別式に参列する際にいずれかの受付で渡すのが一般的です。香典は香典袋や不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)といわれる弔事用の水引のついた袋に入れて、袱紗(ふくさ)に包んで持参します。
遠方であることややむを得ない事情があるときなどは、香典を郵送で送ることもあります。香典の送り方について詳しくはこちらをご覧ください。
2. 香典袋の選び方
香典袋はどこで購入し、どのようなタイプを選べばいいのでしょうか。香典袋の選び方についてくわしく説明します。
2-1. 香典袋の表書き
香典袋の表書きは、故人や喪主の宗教や宗派により変わります。相手の宗派がわからない場合、キリスト教プロテスタント以外の場合は「御霊前」を使用すれば問題ありません。
宗派ごとの表書きは以下のとおりです。
- 仏教:御霊前、御香典、御香料など
※浄土真宗の葬式のみ、他の宗派は四十九日以降は御仏前 - 神道:御玉串料、御神前、御榊料など
- キリスト教:御花料
※カトリックの場合は御ミサ料、プロテスタントの場合は献花料、忌慰料なども
2-2. 購入できる場所
香典袋はスーパーや書店などの文房具コーナーや文具店、コンビニなどで購入できます。時間帯や立地などから利便性が良いのはコンビニですが、種類が少なく売り切れている可能性もあります。文具店などは豊富な種類の中から選べる可能性が高いです。お悔やみは急に訪れることが多いものです。あらかじめ香典袋を自宅に用意しておくと、突然のお悔やみにも慌てずに済むでしょう。
2-3. 香典袋の水引
香典袋の水引は「結びきり」または「あわじ結び」が用いられます。一度結ぶとほどけない、つまり「繰り返さない」「一度で終わる」という意味合いがあり、弔事用の水引です。水引の色は黒白や双銀、藍銀、黄白などがあります。
2-4. 金額に応じた香典袋の選び方
香典袋には水引が印刷されたタイプから豪華なタイプまでさまざまな種類があり、包む金額によって袋の種類が変わります。香典袋のパッケージには包む金額の目安が書いてあるので、売り場でチェックしてから購入するといいでしょう。
5,000円以下の場合
包む金額が5,000円以下の場合は、封筒に水引が印刷された袋を選びます。包むのが少額なのに袋だけ立派な場合は、失礼に当たるので気をつけましょう。
5,000円~30,000円未満の場合
包む金額が5,000円~30,000円未満の場合は右側が黒色、左側が白色で結ばれた「黒白」の水引がかかった袋を使いましょう。
30,000円以上の場合
包む金額が30,000円以上の場合は左右が銀色で結ばれた「双銀」の水引がかかった袋を使います。50,000円以上を包む場合は幅が広く立派な袋、大金封を選ぶといいでしょう。
2-5. 宗教に応じた香典袋の選び方
香典袋は宗教によって使えるものと使えないものがあります。故人や遺族へ失礼のないように、確認しましょう。
無地の香典袋
無地のベーシックな香典袋はどの宗教でも利用できます。故人や喪主の宗教がわからない場合は、無地な香典袋を選ぶと無難です。コンビニなどでも手に入りやすいので多く利用されており、急なお悔やみにも用意しやすいです。
蓮の絵や箔押しがある香典袋
蓮の絵が描かれたタイプは、故人や喪主が仏教の場合にのみ使用できる香典袋です。仏教であればどの宗派でも使用できますが、神道やキリスト教では使用できないので注意しましょう。
ユリの絵や十字架が付いた香典袋
ユリの絵や十字架が付いている香典袋は、故人や喪主がキリスト教である場合のみ使用できます。十字架が付いた香典袋は、水引が付いていないのが特徴です。
3. 香典袋(表袋)の名前の書き方
香典袋の表には、上段の宗教や宗派に応じた表書きの他に、下段に香典を差し出す人の名前を書きます。一般的にはお悔やみの気持ちを表すために、毛筆や筆ペンなどを用いて薄墨で書きます。ケースごとの名前の書き方をご紹介します。
3-1. 個人で香典を出す場合
香典袋の水引の結び目の下にフルネームで名前を書きます。表書きよりも少し小さめの字で書くといいでしょう。
会社名や団体名も記入したい場合は名前の前に小さく書き、名前は中央に書きます。
3-2. 夫婦で参列する場合
夫婦で参列する場合は、香典を2つ用意したり、2倍の額を包んだりする必要はありません。香典は夫婦一緒に包むことができ、金額も一人分のときと同じで構いません。
地域や家庭にもよりますが、香典に書く名前は夫または妻の名前のみ記入します。故人が夫の友人の場合は夫の名前を、妻の友人の場合は妻の名前を書くといいでしょう。もし故人が親族の場合や、夫婦ともに深い付き合いがあった場合には、夫婦連名にします。連名で書く場合は中央に夫婦どちらか一方の名前を書き、その左側に名字を省略してもう一方の名前を記入しましょう。
3-3. 姓が変わって間もない場合
結婚して間もない場合や故人と結婚前に交流があった場合など、旧姓で香典を出したいこともあるでしょう。大切なのは香典を受け取った遺族が、差出人が誰か把握できることです。旧姓も書き足したい場合は、香典の下段中央に現在の新しい名字で名前を書き、名字の左側に小さめの字で(旧姓○○)と書きます。または中袋の名前の横に(旧姓〇〇)と書きましょう。
3-4. 代理で香典を渡す場合
やむを得ぬ事情により参列できないため、家族などが代理で参列するケースもあるでしょう。配偶者の代わりに参列する場合や高齢の親の代わりに参列する場合などです。
基本的には依頼者(本来参列する人)が香典を用意します。香典袋には依頼者の名前を書き、依頼者の名前の左下に代理で香典を渡すという意味の「代」を記入します。
3-5. 友人などと複数人の連名で出す場合
2、3人の連名
一番目上の人の名前を中央に書き、左へ順に名前を書きます。立場や年齢が同じ場合は、右から五十音順に書くといいでしょう。
4人以上の場合
代表者の名前を中央に書き、左下に「外一同」や「他三名」などと書きます。会社の同僚などと複数人で香典を出す場合は、代表者名とその左側に「〇〇部一同」と記入しましょう。そして、香典袋の中には差出人全員の名前、住所、金額を書いた別紙(白い便せんや半紙など)を入れます。ただし香典返しのこともあるので、香典返しを辞退するか、できれば一人ずつ香典を出す方がいいでしょう。
4. 香典袋(中袋)の書き方
つづいて香典袋の中袋の書き方についてご説明します。中袋には差出人の住所や名前などをネームペンやサインペンなどを使って書きます。小さい字を筆で書くと字が潰れてしまうことがあり、遺族が香典返しの際に困ってしまうからです。
4-1. 中袋の表面の金額の書き方
中袋の表面には包んだ金額を記入します。金額の記入の際は、改ざんを防ぐために「大字」を使うのが一般的です。頭に「金」の文字を付けて、旧字体の漢数字を使って金額を書き、「圓」と記載します。最後に「也」は付けなくても構いません。
1万円→ 「金 壱萬圓也」
3万円→ 「金 参萬圓也」
5万円→ 「金 五萬圓也」
10万円→ 「金 壱拾萬圓也」
1→ 「壱」
2→ 「弐」
3→ 「参」
5→ 「五」「伍」
7→ 「七」
8→ 「八」
10→ 「壱拾」「拾」
100→ 「壱百」「百」
万→ 「万」「萬」
円→ 「円」「圓」
4-2. 中袋の裏面の差出人の書き方
中袋の裏面の左側には、差出人の郵便番号、住所、フルネームで名前を書きます。香典返しの際などに遺族が参考にするため、わかりやすく書くことが大切です。
香典袋によっては中袋が無い場合があります。中袋が無い場合は、香典袋の表面に表書きと名前を、裏面に住所と金額を直接記入します。その場合は薄墨を使って書きましょう。
5. 香典の金額の目安とお札の入れ方
香典袋に包む金額の目安やお札を入れるときのマナーについてご説明します。
5-1. 包む金額の相場
香典袋に包む金額の相場は、故人との関係性や渡す人の年齢により変わります。家庭や地域によっても考え方は違うのであくまでも目安ですが、一般的な相場を知っておくといいでしょう。また四は死、九は苦を連想させるため、枚数や金額に気をつけて入れます。
祖父母
3万~5万円が相場。包む人が20代の場合は1万~2万円。
きょうだい
5万~10万円が相場。金額に迷う場合はきょうだい間で金額を話し合っておくといいでしょう。
親戚
いとこやおじ・おばなどの親戚は1万円が相場。故人との関係が深い場合は3万円程の場合も。
友人
5,000~1万円が相場。
友人の親、近所の人など
20代であれば3,000~5,000円、30代以上では5,000~1万円が相場。
仕事関係
5,000~1万円が目安。会社関係の場合は、会社ごとに金額が取り決められているケースも多く、部署や連名で包むこともあります。
香典の金額の相場については以下のコラムでくわしく説明しています。
5-2. お札の入れ方
香典袋にお札を入れるときのマナーについてご説明します。
香典袋の中袋
水引が付いた香典袋はほとんどの場合、中袋が付いています。中袋がある場合は、香典袋に直接お札を入れるのではなく、中袋に入れましょう。中袋がついていない香典袋や、不幸が重なることを連想するため中袋を使用しない地域もあります。中袋が無い場合は、直接お札を香典袋に入れます。
お札を入れる向き
お札には人物の絵が描かれた「表」と人物が描かれていない「裏」があります。香典袋にお札を入れるときは、お札の裏が袋の表面になるように入れます。袋からお札を取り出したときに人物の顔を見えないように入れることで、故人へのお悔やみの気持ちを表すためです。諸説ありますが、人物の絵が袋の下側にくるようにお札の向きをそろえて入れるのが一般的です。
新札は入れない
通夜や葬儀などの弔事では、新札を使わないのがマナーです。事前にお悔やみがあることを予測して用意していたという印象を遺族に与えてしまうためです。新札を使う場合は、真ん中で一折してから包むようにしましょう。
破れている、汚れているお札はNG
弔事では新札を使わないのがマナーですが、破れたり汚れたりしたお札も失礼に当たります。香典は故人へお供えするものなので、比較的きれいなお札を使うようにしましょう。