グリーフケアとは?日本での取り組みとケアの内容

「グリーフ」とは、「Grief」、悲しみ、悲嘆、嘆きのことを指します。愛する人を亡くしてしまう。それは、人生において最大のグリーフと言えるのではないでしょうか。それなのに、十分にその悲しみや喪失感をケアされることなく、多くの人が 自分で乗り越えることを強いられてしまいます。

そして「グリーフケア」とは、大切な人と死に別れたことで大きなグリーフを感じている方に寄り添い、援助することです。日本でも徐々に広まりつつあり、研究も進み、NPO や病院でもグリーフケアが受けられるようになりました。今回は、グリーフケアの歴史や内容、実際にケアを行っている団体や病院などをご紹介します。

index 目次
  1. グリーフケアは何故必要?
  2. グリーフケアの歴史
  3. グリーフケア、グリーフワークの内容と注意点
  4. グリーフケアを行っている団体や医療機関紹介

グリーフケアは何故必要?

愛する家族が亡くなる悲しみは、昔の人にとっても現代の人にとっても変わりはありません。しかし、現代の日本人の死を取り巻く環境は昔とは違います。

かつて、死者は家族だけではなく、地域の共同体の共同作業で葬られました。そのため、自分の身内や友人でなくても、人の死に触れる機会は少なくありませんでした。そうした環境のなか、人々は他人の悲嘆に寄り添い、また、自分の悲嘆にも多くの人が寄り添ってきました。また多くの家が檀家としてお寺、つまり仏教との関わりも深くあり、そんな中で仏教的死生観を学んでいました。葬式仏教と揶揄されるように、仏式の葬儀が形骸化してしまった現状とは異なり、かつては仏教の死生観が、大切な人を亡くした悲しみを癒すプロセスを支えていたとも言えるでしょう。

しかし今、そうした環境はどんどん失われています。家族との縁が薄い方、友人との関りが少ない方などは、身近な人の死を体験した時、たった一人で悲嘆に向き合う場合もあります。家族や友達がいる場合でも、先に述べたように人の死に触れる機会が少なくなっているのは誰しも同じで、適切に対処できる人は少ないかもしれません。悪意はなくても、慰めるつもりが相手を追い詰めてしまうこともあり得ます。早く立ち直ることを積極的に求めてしまうなどして、余計なプレッシャーになることもあるでしょう。

このような背景で、今、グリーフケアの正しい知識とそれを行える専門家や場が必要と考えられているのです。

グリーフケアの歴史

日本では最近になって知られるようになってきたグリーフケアですが、各国でかなり以前から研究され、実践されています。

グリーフケアの基盤となったのは、心理学者ジークフリート・フロイトが発表した「悲哀とメランコリー」という論文です。そこでフロイトは喪(悲哀)の状態と、うつ(メランコリー)状態とを分けて比較し、その向き合い方を考察しています。その後、理論的に発展した後、1960年代にイギリスで起こったホスピス運動が世界に広がるなか、遺族など生き残った人たちの心のケアにも関心が向けられるようになりました。

一方、日本でグリーフケアという言葉が広まってきたのは2005年以降のことです。きっかけは記憶に残っている方も多いであろうこの事故のようです。

2005年の4月25日午前9時18分、JR福知山線(宝塚線)の塚口駅と尼崎駅の間で起きた脱線事故は、日本でグリーフケアが広まる大きなきっかけになった。
(『ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化』島薗進著 朝日新聞社)

この事故により、107人の命が突然に奪われ、家族や友人たちは悲嘆と喪失感に打ちひしがれました。その時、遺族の心のケアに携わったのが、大学で心理学を学び、カトリックシスターとして長年グリーフケアを行ってきた髙木慶子さんでした。彼女はその後、グリーフケア研究所の所長に就任。現在この研究所は、上智大学に移管され、グリーフケアを行える専門知識を持った人材育成、講演会、セミナー、講師派遣などを行っています。

今ではグリーフケア研究所以外にも、グリーフケアの専門知識が学べる講座が開講されています。資格としては、グリーフケア研究所 の「臨床傾聴士」、一般社団法人グリーフケア協会の「グリーフケアアドバイザー」、一般社団法人グリーフ専門士協会の「グリーフ専門士」があります。

上智大学のグリーフケア研究所での「グリーフケア人材養成講座」は2年制であり、臨床実習も行うハードルの高い講座ですが、その他の講座や資格には一般の方でも学びやすい内容のものがあります。

グリーフケアの講座で学ぶ方や資格取得を目指す方は、人の生死に関わる仕事である医師、看護師、ウンセラー、社会福祉士、宗教家などの職業の方が多いようです。

グリーフケア、グリーフワークの内容と注意点

グリーフケアでは具体的などのようなことが行われているのでしょうか。主だった方法をご紹介しておきます。

1. 悲しむことを肯定し、存分に悲しんでもらう

日本人は人前で感情を出すのが苦手なことが多いです。大切な人が亡くなったからといって、泣いてばかりいると相手に迷惑、困らせてしまうのではないという気づかいをする方も。しかし、押し殺してしまうことで、孤独感や悲しみが強くなり、立ち直りが困難になってしまうことも考えられます。

グリーフケアの第一人者である髙木慶子さんは、悲しむことにいてこう述べています。

「涙を流すことによって、心の中のもやもやは少しずつ整理されていきます。涙は心を浄化するんですよ」
『悲しみの処方箋』主婦の友社

グリーフケアではまずその人の悲しみを無条件に肯定することが第一歩となります。

2. 悲しんでいる人の話を「聴く」

グリーフケア研究所で学ぶと得られる資格は「臨床傾聴士」。その名称が象徴するように、グリーフケアでは「聴く」ことはとても大切です。そして、グリーフケアでの「聴く」はなんとなく「聞く」ことではなく、身を入れて耳を傾けることです。

どんな人に話を聴いてもらうべきかという質問に髙木慶子さんは以下のように答えています。

「あなたの気持ちを受け止めてくれる人、お説教や批判などせずに話を聴いてくれる人です」
『悲しみの処方箋』主婦の友社

自分の気持ちを隠さずに話すことも、それをただ黙って聴き、受け止めることは簡単ではありません。誰でもいいわけではなく、相手を選ぶ必要があります。実はそれは必ずしも家族ではありません。

2010年、神戸新聞が阪神・淡路大震災での家族を失った方へのアンケートでは以下のような結果がでているそうです。

「あなたを支えてくれたものは何ですか?」という質問には、6割の人が「家族」と答えた。しかし、「大切な人を亡くした苦しみ悲しみを誰と話しましたか?」には、「友人や親友」が一番多く、家族は15%だけだった。
『悲しみの処方箋』主婦の友社

身内が亡くなった場合、家族も同じように悲しみや苦しみを抱えているからこそ、話せないという面があります。また、家族だからこそ、早く立ち直ってほしいという思いも強く、つい「いつまでも泣いていないで頑張りなさい」と聴くのではなく、励ましてしまうことも。

よって、話を聴くのにふさわしいのは、一緒に住んでいる家族よりは、少し距離のある、しかし、愛情の通いあった人が良いと言われています。

もちろん、グリーフケアを行っている団体や、病院の精神腫瘍科、遺族外来でも話を聴くケアを行っています。

3. 故人を弔う

悲しんでいる人自身が、自分自身に対して行えるグリーフケアもあります。それは「弔い」。花を手向けたり、お焼香をしたり、手を合わせたり。心静かに弔いの行為を重ねることで、故人をきちんと見送れたと感じ、ホッとした思いになれます。大切な人を思って行うひとつひとつの行為は、単なる儀礼ではなく、また故人のためだけでもなく、遺された人たちが自らを慰める、セルフケアになるのです。

また、ライフスタイルが大きく変わった昨今では四十九日になったら遺骨は納骨するというような、慣例通り進める弔いだけが正しいというわけではありません。自由で自分らしい弔いの選択肢が多くあります。ミニ骨壺や骨壺ペンダントなどを利用して、手元にいつも置き、故人を身近に感じていることも供養であり、自分を癒す方法のひとつと言えます。

4. 新しい自分に出会う

例えば、パートナーを亡くした場合なら、2人暮らしが1人暮らしになったり、話し相手を失ったり、未来の計画が一気に白紙になってしまったり、大きな変化を強いられます。自分自身もゼロになってしまったように感じ、途方に暮れる方も多いでしょう。

しかし、髙木慶子さんは以下のように述べています。

「故人が生きていたときとまったく同じ自分に戻ることもできません。しかし、時間とともに普通の生活ができるようになります」
『悲しみの処方箋』主婦の友社

だからこそ、時間はかかりますが、以前よりも命の大切さを感じたり、かつての趣味に集中できるようになったり、新たな世界の扉を開いたりする方もいます。いつかくるその日に希望をどこかで感じることも大きな癒しになるのでしょう。

グリーフケアを行っている団体や医療機関紹介

自分や家族に今グリーフケアが必要と感じている方のために、グリーフケアを行っている団体や医療機関お例を紹介します。

1. ほほえみネットワーク・グリーフサポート

ほほえみネットワーク・グリーフサポートでは、配偶者と死別した方を対象とした立ち直りを支援するため、以下のような活動を行っているようです。

グループミーティング

8人前後のメンバーでセッション行う。

カウンセリング

個別に話を聴き、その人に必要な手助けをする。

セミナー

テーマを設けた小人数制での気軽なセミナーを行っているようです。無料で公開されているセミナーもあるので、入会前にまずはセミナーに参加するのもよいかもしれません。

ほほえみネットワーク・グリーフサポートは、配偶者を亡くした方限定の会のため、同じ立場の方は共感し合える仲間ができそうです。入会金2,000円、年会費3,000円と、負担も少なく親しみやすい会といえるでしょう。

ほほえみネットワーク・グリーフサポート(外部リンク)

2. 死別体験者の分かち合いの会

身近な人を亡くした方であれば、故人との関係や死因は問わずに参加できます。テーマも指導者も設けずに、話したいことを自由に話せる会なので、参加のハードルは低いでしょう。

毎月第1土曜日は「自殺によって大切な方を亡くした方」、第2金曜日は「主に子どもを亡くした方」、第3火曜日と第4土曜日 は「故人との関係や死因を問わず」、第3土曜日は「20代から30代の方」と、日によって設定が変わります。

予約の必要もなく、その時、参加したいという気持ちがあるなら参加するというスタイルでOK。場所は東京都千代田区なので、首都圏の方におすすめです。

死別体験者の分かち合いの会(外部リンク)

3. 遺族外来

埼玉医科大学国際医療センターでは、がん患者と、その家族や遺族の心のケアを行う精神腫瘍科を設けています。そのなかに、がんで家族を亡くされた方のための外来「遺族外来」があります。精神腫瘍医、心理士により、集団精神療法などの治療が受けられます。

どこの地域でもあるわけではありませんが、全国に遺族外来を設けている病院は増えてきていて、がんの遺族以外でも対象となる病院もあります。また、遺族外来以外にも、病院では「遺族会」などでグリーフケアを行っている場合も。そうした会がある時は、「自分は大丈夫」と感じていても、参加してみると良いでしょう。

埼玉医科大学国際医療センター 遺族外来(外部リンク)

参考

「遺族外来-大切な人を失って」 大西秀樹 河出書房新社

大切な方を失った時、その衝撃はあまりにも大きく、普段元気な方でも立ち直るには時間がかかります。10年以上経ってグリーフケアを受ける方も少なくないそう。それほど痛みは大きく、長引くものと言えるでしょう。けっしてそれは他人事ではありません。グリーフケアの知識は一般の方でも持っておくべきもののように思えます。

Text by:AY
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