約5万年前のネアンデルタール人が、死者に花を手向けていたということをご存じですか?また釈迦は、入滅(にゅうめつ:高僧が息を引き取って死ぬこと)直前に弟子のアーナンダに修行完成者には花輪を供えて礼拝するように教えました。釈迦入滅と同時に沙羅双樹の花が釈迦の遺体に降り注いだとも語り継がれています。
死者に花を手向ける習慣は、古くから世界中で行われていました。現代の日本の葬儀でも、さまざまな方法で故人に花が手向けられています。葬儀に参列すると、さまざまな場所でお花を使われているのを目にします。この記事では、葬儀と花について、またその贈り方についてもお話しいたします。
1. 人気の「供花」
供花とは
供花と書いて「きょうか」または「くげ」と読みます。お花のお供えで最もポピュラーなお供えで、いわゆる籠花です。祭壇脇に芳名札を立てて、飾ってもらいます。葬儀では、祭壇の左右に花を供えます。芳名札には「喪主」や「親族一同」など、出した人の札が立てられます。菊やユリなど、白を基調にしたお花がよく用いられていますが、最近では明るく華やかな洋花も好まれています。
葬儀場にお供えするには
供花を葬儀式場に手配する場合は、葬儀社に依頼するのがよいでしょう。式場や祭壇に見合ったお花を用意してくれますし、なにか行き違いがあってもすぐに対応してくれます。その他、一般の生花店に依頼して式場まで届けてもらう方法もありますが、式場によっては持ち込みができないこともあるので注意しましょう。
供花の相場は10,000円からです。15,000円、20,000円、30,000円など、値段に応じてさまざまなボリュームの供花があります。ひとりでも多くの人がお花を供えることで、式場内をより華やかにして故人様を送り出せます。
2. 最近減ってきた「花環」
花環(はなわ)とは、生花や造花などでつくられたリング状のものです。弔事用のものは白と黒を基調に作られ、花環の下に差し出した人の名前を掲げます。明治期から海外から素材や技術が輸入されて導入されたと言われている花環は、葬儀式場の外などに並べて掲げられます。しかし最近では、葬儀の縮小化や、家族葬の増加などから、花環を贈る人は減ってきています。
3. 一般家庭の葬儀にも浸透した「花祭壇」
花祭壇とは、花で作られた葬儀用の祭壇のことです。もともと葬儀の祭壇は白木祭壇が用いられていました。白木祭壇は葬列に使われる葬具を様式化したもので、伝統的な葬儀の形を残すものでした。社葬などの大規模葬儀では花祭壇が飾られていましたが、2000年代後半くらいになると一般家庭の葬儀でも飾られるようになりました。
生花で作られた祭壇は使用する花や色合いなども喪主や遺族の希望を形にすることができます。また、祭壇用に使用された花は、出棺の際に棺の中に納めることができます。式場内を華やかにし、オリジナルの祭壇を故人のために飾れるという点が人気の理由でしょう。
4. 棺の中をお花いっぱいに
供花や祭壇で用いられた花は、出棺の際にはすべて切り取られ、棺の中に納められます。喪主や遺族や親族だけでなく、葬儀に参列した全ての人にお花を納めてもらいます。お花に囲まれた故人様は、どことなく、穏やかで安らかな表情に見えます。少しでも明るく華やかな花を手向けることで、残された者は、辛い別れを新たな旅立ちに転化して、少しでも前向きな気持ちで送り出す。古今東西で葬儀に花が用いられるのは、そうした理由があるのかもしれません。
5. 自宅に「枕花」を贈る方法も
お花を贈る先は何も葬儀式場だけではありません。自宅に安置された故人の枕元に供える花を「枕花」と呼びます。訃報を聞きつけたら、すぐに自宅に枕花を贈るのもよいでしょう。生花店で購入したものを持参してお悔やみを述べてもよいでしょうし、生花店に届けてもらってもよいでしょう。枕花は、アレンジメントがよく選ばれています。色花を指定しても構いませんが、菊やカーネーションなどの白い花が無難でしょう。相場は5,000円から10,000円くらいでしょう。
6. 葬儀後の法要に自宅にお花を届ける
葬儀を終えたあとも、自宅では後飾りが飾られて、遺族は毎日故人に手を合わせます。そんな祭壇脇のお供えとして、あるいは四十九日法要のお供えとして、アレンジメントを贈ってもよいでしょう。基本は菊やカーネーションなどの白の花で、相場も枕花と同じで、5,000円から10,000円くらいです。