現代の霊柩車事情と遺体搬送サービス、自家用車で遺体を搬送することは可能?

遺体を火葬場に運ぶ霊柩車。少し前までは、霊柩車といえば、絢爛豪華な彫刻が施された、お神輿のようなものが載っている車のイメージが強かったですね。実際にしばしば見かけました。とても目立つため、「ああ、お葬式なんだな」と思ったものです。しかし、最近では、そうした車体はあまり見かけません。お葬式に出席する機会がしばらくない方は「一体今はどうやってご遺体を運んでいるんだろう?」と思っているかもしれませんね。

今日本では遺体はどのように運ばれているのか。今回は霊柩車の歴史や種類、遺体搬送サービスの紹介、霊柩車でのマナー、霊柩車を使わずに自家用車で遺体を運ぶ方法を紹介します。

index 目次
  1. 消えた「葬列」霊柩車の歴史と意義
  2. 霊柩車の種類
  3. 遺体搬送サービスの紹介と費用の相場
  4. 火葬場まで向かう際のマナー
  5. 業者に依頼せず、自家用車で、自分で遺体を運ぶには?

消えた「葬列」霊柩車の歴史と意義

霊柩車が登場する前、人々が棺と共に列になり、火葬場や墓地まで運んでいました。「野辺送り」「葬列」という風習です。この儀式こそは、葬儀の中で最も重要な儀式の一つとされてきました。しんみりしたものばかりではなく、東京、大阪などの大都市では、明治時代にはさながら祭りや大名行列のような盛大なものもあり、大商人などはお葬式ともなると大変な出費だったとか。

風俗史研究者の井上章一は著作『霊柩車の誕生』の中で、大正時代に大都市で葬列が霊柩車に取って代わられた理由として以下の3点を挙げています。

1. お金がかかりすぎるため

なぜ大正二、三年ごろから、葬列が廃止されだしたのか。鈴木勇太郎は、「世上一般の不景気」が原因だという。(※1)

鈴木勇太郎は、当時の大阪の代表的な葬儀社である「駕友」の社長です。彼は葬列廃止に反対するパンフレットを発行しています。

2. お祭り騒ぎのような華美すぎる葬列への批判

山下重民は、白昼堂々の葬列を嫌っている。「儀式の華麗を示」す必要はない、「驕を省」くべきだ、という主張である。(※1)

明治31年に発行された『風俗画報』に掲載された「葬儀論」にて、編集者山下重民は華美な葬列を批判しています。明治時代にもそうした声は常に少なからずあったようです。

3. 車や電車の普及

葬列を出す場合は、警察にとどけなければならなくなった。デモ行進なみのあつかいである。ぞろぞろと歩く葬列は、交通体系の近代化の前に、路上からの撤退を余儀なくされたのである。(※1)

一番大きな理由は車と電車の理由です。当時の大金持ちの葬列は親類縁者だけではなく、葬儀人足を雇っての大人数の行列でした。車や電車に合わせてすばやくよけるのは困難でしょうから、実施は難しくなったのもうなずけます。

(※1)『増補新版 霊柩車の誕生』 井上章一 朝日新聞出版

そんな中、霊柩車の利用が増えていきます。日本では霊柩車をはじめに使い出したのは主にお金のない庶民でした。葬列を行うより、霊柩車を使うほうが遥かに安く済んだからです。 そして、本格的な自動車の時代を迎えると、大都市の経済力のある商人たちも移行せざるを得なくなりました。一方で、華々しい葬列への思い入れは捨てきれず…その結果、登場したのが、お神輿に似た装飾が施された宮型霊柩車。葬列を知らない世代にとっては派手すぎると思えるあの装飾は、葬列文化のなごりと言えます。

また、この頃から「告別式」が登場しているという指摘もあります。

大正時代になると、都市部では交通事情の問題で「野辺送り」の葬列が減少してきました。葬列は死出の旅路を表現するだけではなく、近隣やお世話になった人達とのお別れ(告別)の意味もありましたので、葬列が廃止されると、それまでなかった告別式が行われるようになりました。(※2)

(※2)『図解入門業界研究最新葬儀業界の動向とカラクリがよーくわかる本』/吉川美津子(外部リンク)

霊柩車の種類

日本で現在使われている霊柩車を種類ごとに紹介しておきます。

宮型霊柩車

黒い高級車やリムジンの上にお神輿やお寺のような装飾が施されています。以前はよく見かけましたが、霊柩車の製造・配車を専門にしている会社でも保有台数はかなり減っています。メンテナンスに費用がかかり、料金が高額になること、目立ちすぎるという理由から人気がなくなりました。ちなみに、日本文化を感じる独特の外観が珍しがられ、役目を終えた中古霊柩車が外国に輸出販売される、ということがあるそうです。

洋型霊柩車

宮型同様、高級車やリムジンが棺を出し入れしやすいように改造された車です。シンプルですが、モダンな外観で人気。黒だけではなく、白やシルバーのものもあり、車種も輸入車だけではなく、トヨタ、日産などメーカーも色々。大きさも車種によって異なるので、好みのものを選べます。

バン型霊柩車

ステーションワゴンを寝台や棺が入るように改造した機種。特別な装飾がないため、外からは普通のワゴン車に見えます。近隣の目が気になる方に選ばれています。霊柩車としてだけではなく、病院から自宅や遺体安置場に遺体を運ぶ寝台車、搬送車として用いられることもあります。

霊柩車と寝台車(搬送車)の違い

宮型や洋型の場合、後部座席の部分は棺を納めるスペースしかなく、棺の隣に誰かが座ることはありません。しかし、バン型の場合は、棺や寝台を入れられますが、その横に人が座ることも可能。

宮型や洋型は寝台車として使われませんが、霊柩車として使われることも、寝台車として使われることもあるのがバン型です。つまり、同じ車種の呼び方が変わるだけです。病院から遺体を自宅や安置場に運ぶ時には寝台車と呼ばれ、火葬場に行く場合はバン型霊柩車と呼ばれます。

遺体搬送サービスの紹介と費用の相場

遺体搬送業者の決め方

病院で亡くなり、自宅などに搬送したい場合、病院に出入りしている葬儀社に依頼することが多いです。ここで気をつけたいのはその時に勧められるままに、搬送を担当した葬儀社に葬儀まで全て依頼してしまうこと。精神的に余裕がなく、時間も限られている中で任せてしまえるのは楽である一方、言われるがままに不本意な内容・金額の葬儀を行ってしまうリスクがあります。

搬送を担当した葬儀社で葬儀もやるので良いのかどうか、しっかり検討することをおすすめします。せめて、その葬儀社だけではなく、他の葬儀社数件に見積もりを依頼するほうが良いでしょう。

また、病院と提携している業者に必ずしも遺体搬送を依頼しなければいけないわけではありません。もし、亡くなった方がエンディングノートを作成していて、既に葬儀を依頼する葬儀社を決めていたなら、搬送もその会社に依頼することもできます。連絡してみましょう。

また、葬儀社だけではなく、遺体搬送だけを専門にしている会社もあります。電話1本で、24時間、日本のどこへでも車とドライバーを手配してくれるサービスもあります。

遺体搬送サービスを行っている業者と、サービス内容をご紹介しておきます。

ご遺体搬送のアイム

有料道路やフェリー使用の場合は実費ですが、東京から埼玉、千葉、神奈川なら3万円と、分かりやすい定額制。安置サービス、空輸も可能です。発着地の10㎞以内なら思い出の場所に立ち寄ってくれるサービスも。24時間、365日、深夜でも依頼可能です。

ご遺体搬送のアイム(外部リンク)

墓地ナビのご遺体搬送

出発地は東京、神奈川、埼玉、千葉限定ですが、日本全国に搬送可能です。軽バンを使用しているため、10㎞以内9000円と価格が抑えられているのが魅力。目立たず搬送でき、タクシー感覚で依頼できます。フェリーでの搬送は可能ですが、航空機での搬送はできません。

墓地ナビのご遺体搬送(外部リンク)

ご遺体搬送どっとこむ

出発地点も目的地も、日本全国どこでも対応しています。距離による定額制ですが、深夜料金があるので出発の時刻は工夫したほうが良いでしょう。長距離の場合、別途定額料金を設けられているので、遠方に配送したい方にもおすすめです。葬儀経験が豊富なスタッフが対応するので安心して任せられます。

ご遺体搬送どっとこむ(外部リンク)

株式会社藤交通

宮型、洋型、バン型、寝台車、マイクロバスと保有する車種が豊富。そのため、遠方で亡くなった方を寝台車に乗せて帰宅させ、お葬式を終えて宮型で火葬場へ向かうことも可能。遠距離の遺体搬送サービスでは、遺族や関係者が3名まで同乗できる車種を用意しており、24時間対応しています。早朝、深夜は割増料金なので、依頼する時間帯は気をつけましょう。

株式会社藤交通(外部リンク)

遺体搬送の費用

遺体搬送については、距離で決まる場合、車種で決まる場合、その両方で決まる場合があります。寝台車、搬送車は距離が基準となり、相場は10Kmまでなら8000円~1万6000円ほど、20Kmまでなら1万2000円~2万円ほどです。その他に棺やドライアイスなどの費用や、距離が長い場合、ドライバーが2人必要で人件費が加算されます。

霊柩車の車種を指定すると、同じ距離でも、2万円~10万円と費用に開きがあります。宮型霊柩車より、現在はキャデラックやキャデラックリムジンが人気。そのため、費用もこちらのほうが高額です。

火葬場まで向かう際のマナー

一般的には葬儀、告別式を終えて、遺族、親戚、親しい友人など、火葬場へは故人に最も近しい人たちのみで向かいます。車の順は、霊柩車、遺族が乗っている車、その他の人が乗っているマイクロバス。霊柩車に喪主が乗る場合と乗らない場合がありますが、それは葬儀社の誘導に任せましょう。

マイクロバスの席順は故人との関係によって決まります。前から親、兄弟姉妹、親戚、友人の順になるので注意しましょう。霊柩車が出発することを出棺と呼び、火葬場に行かない人にとってこれが本当の別れです。しっかりお見送りしましょう。

業者に依頼せず、自家用車で、自分で遺体を運ぶには?

道路運送法により、霊柩車の運用に関しては、一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)の許可を得た業者に限定されています。しかし、身内の遺体を自家用車で運ぶことは法的には実は問題ありません。

ただし、棺が入れられない車種の場合、火葬場には運べません。火葬場へは棺での搬入が必須だからです。

病院から自宅に運ぶ場合でも、座席に遺体を座らせたり、寝かせたりするのは、遺体から体液が漏れることもあり、衛生上問題があります。少なくとも、棺や寝台が入りきるサイズで、しっかり固定できなくてはいけません。また、遺体を運べるほど力のある大人が数人必要です。また季節によってはドライアイスを使うなど、遺体を正しく管理する必要もあります。警察に職務質問された場合困るので、必ず死亡診断書を所持しましょう。自家用車での遺体搬送のノウハウを有料で教えてくれるサービスもあります。自家用車で遺体を運びたいというニーズがあり、実際に実行している方もいるのでしょう。しかし、プロに頼らず自分で運ぶのはかなりハードルが高いように思います。

遺体搬送についてはこちらの記事も参考にして下さい。

>>死んだらかかる「本当の最小限費用」とお金をかけずに葬儀をする方法 ―葬祭費・埋葬料給付金制度や葬祭扶助についても解説/1. 人の死に際して最低限必要なものとその費用

かつては遺体を火葬場まで運ぶことは葬儀の大切な儀式の1つでした。葬列は廃れましたが、出棺のあの時はドラマの一場面のように感じられ、思わず涙ぐむ方も多いですね。人々の価値観は少しずつ変わってはいきますが、別れを惜しむ弔いの心は、形が変化しても、どこかで現れるものなのでしょう。

Text by:AY
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