祭祀財産とは何か

相続では故人(以下、被相続人)から仏壇や神棚、お墓など先祖や神様を祀るものを引き継ぐ場合があります。こうした先祖や神様を祀るものは「祭祀財産」といいます。では相続人が複数いる場合には、祭祀財産をどのように引き継げば良いのでしょうか。引き継いだ人はその分、相続税を多く払うことになるのでしょうか。また祭祀財産には具体的にどのようなものが含まれるのでしょうか。今回は祭祀財産の相続についてお伝えいたします。

index 目次
  1. 祭祀(さいし)とは?
  2. 祭祀財産とは何か
  3. 祭祀財産の相続に関する特別なきまり
  4. 祭祀財産と相続税
  5. 祭祀財産で節税は可能?

祭祀(さいし)とは?

神々や先祖に対して感謝や祈りを捧げたり、慰霊や鎮魂の目的のためにまつることを祭祀(さいし)といいます。祭祀は神道由来のことばです。皇室の宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)や、五穀豊穣を祈る新嘗祭(にいなめさい)も祭祀です。祇園祭などの各地の神道のお祭りや、神式のお葬式である神葬祭(しんそうさい)も祭祀です。またこうした祭祀に使われる道具類などの財産を「祭祀財産」と呼びます。

神道以外の宗教でも、同様に先祖や神々、仏を祀る概念があります。そのため神道以外の宗教でも、先祖を祀ったり神や仏に祈りを捧げるための財産を「祭祀財産」と呼びます。

祭祀財産とは何か

具体的に祭祀財産とはどのようなものかについて、民法897条では以下のとおり定めています。

民法897条

第1項 系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する。

民法で定める「系譜」「祭具」「墳墓」の具体例をあげます。

系譜

系譜とは祖先から現在までの血縁関係を記した家系図や家系譜です。多くの場合、冊子や巻物、掛け軸などの形で作られています。

祭具

骨壺、位牌、仏壇、仏像、仏具、神棚、神体、神具、家庭祭壇、キリスト像、十字架、庭内神祠など、祭祀や礼拝のために用いる器具や道具を祭具といいます。

骨壺は宗教を問わずに火葬後にすぐご自宅でお迎えして祀る大切な祭具です。近頃では特定の宗教にこだわらずに無宗教式の「家族葬式」などの小さなお葬式をして、ご遺骨を骨壺に収め、手元で供養される方も増えてきました。

仏教式の場合、ご遺体の枕飾りとしても使った三具足(みつぐそく)と呼ばれる「花立(はなたて、花を生ける道具)」「香炉(こうろ、お線香を立てる道具)」、「燭台(しょくだい、ろうそくをともす道具)」。仏壇やそこに収める仏像、仏具は宗派ごとにります。

神道式の場合、一般的に思われている神棚は厳密には「宮形(みやがた)」と呼び、神社を模した白木で作られています。「神棚」は厳密には宮形を置く棚のことを指しますが、現在では神棚=宮形と理解されていますので、以後、宮形を神棚としてご説明します。神棚には神社から授かった「お神札(おふだ)」を張ります。これが「ご神体」です。神棚に置く神具は「ご神鏡(ごしんきょう)」、「榊立て(さかきたて)」一対、「徳利(とっくり)」一対、「水玉(みずたま)」、「皿」一対です。神棚には聖域を分かつためにしめ縄を取り付けますが、これは毎年お神札と共に取り替えます。

神道ではご先祖を祀る場所は神棚とは別にあり、それを「祖霊舎(それいしゃ)」「霊舎(みたまや)」「霊床(たまどこ)」または「神徒壇(しんとだん)」。そこに仏教のお位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。

霊璽は基本的に目に触れてはいけないものなので、お仏壇に置くお位牌とは異なり鞘(さや)というカバーのようなもので覆って祖霊舎の内扉の奥に祀ります。これ以外の神具は「神鏡(しんきょう)」、「真榊(まさかき=五色の絹で作られた三種の神器を意味するもの)」一対、「榊立て(さかきたて)一対」、「瓶子(へいし=お酒を入れるもの)一対」、水玉、皿1対、三宝一対、かがり火立て一対です。

キリスト教の場合にはカトリック・プロテスタントともに「家庭祭壇」と呼ばれる現代仏壇のような小さな祭壇を使うことがあります。けれども家庭祭壇は必ず使うものでもなく、飾り方なども決まりはありません。遺影とキリスト像や十字架を飾るだけの場合もあります。

なお、仏間については仏壇や神棚などを設置していても建物の一部なので、祭具とは認められません。

墳墓

遺体や遺骨を葬ってある設備が墳墓です。具体的には遺体や遺骨が埋葬してある墓碑(墓石)、霊屋(たまや)、遺体を入れる棺です。
墳墓の敷地である墓地も墳墓です。ただしその面積については限定されています。判例により「墳墓と社会通念上一体の物ととらえてよい程度に密接不可分の関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地は,民法897条 1項に規定する墳墓として祭記財産に属する」(広島高裁判例 2001年8月25日 (家月五三・ー ~O六,判ター二・二二九)平1O(ネ) 509. ))とされています。つまり墓石や霊屋と一体と考えられる程度の広さの土地は墓地として認められますが、墓地と考えるにはあまりにも広い土地は民法897条で定める墳墓としては認められません。

祭祀財産の相続に関する特別な決まり

民法897条で祭祀財産について定めてありますが、その前条である896条では故人(以下、被相続人とします)が生前に作った財産はすべて相続財産として、相続人と受贈者(受贈者=法律による相続人ではないが、遺言などにより相続財産を受け取る人)の間で分け合う対象になる、と定められています。けれども祭祀財産は897条に書かれたとおり、896条の例外となります。つまり祭祀財産は相続財産ではありません。

祭祀財産は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とされているので、祖先の祭祀をするべき人が祭祀財産の全部を一人で受け継ぎます。例えばその家では代々長男が先祖を祀る行事を執り行っている場合には、長男一人が全祭祀財産を受け継ぎます。また被相続人が慣習とは違う人、例えば長女を指名して祭祀をするように遺言している場合には、長女が全祭祀財産を受け継ぎます。いずれの場合にも、祭祀財産を分割して受け継ぐことはできません。またこうした慣習が明確でない場合には、家庭裁判所が祭祀財産を受け継ぐ権利を持つ人を指名します(民法897条2項)。

なお祭祀財産は相続財産ではありませんので、相続放棄をしても祭祀承継者になれます。また祭祀承継者になったからといって、祭祀財産の価額分、相続分が減らされることもありません。

祭祀財産と相続税

祭祀財産を受け継いだ人は、祭祀財産の分相続する財産が多くなります。では相続税もその分多くなるのか、と思われるかもしれませんが、ご安心ください。相続税が多くなることはありません。祭祀財産は相続財産ではないので相続税の対象にならない、つまり相続税非課税の財産です。

祭祀財産が相続財産から除外されている理由としては、祭祀財産をその他の相続財産と同様に扱った場合、複数の相続人の間で分け合う対象になり、祭祀を行うことが難しくなる可能性があるからです。例えば仏壇は長男が、仏具は次男が、本尊の仏像は長女が、と別々に所有してしまうと、先祖の法要や供養などの祭祀を行う際に不都合が生じる可能性があります。そのため民法では祭祀財産を相続財産とは別にして、祭祀を主宰する人を決め、その人が「祭祀承継者」として全祭祀財産を一人で受け継ぐことにしています。

そして相続税は基本的に相続財産に対して課税されるため、相続財産ではない祭祀財産は相続税の課税対象にはならず、非課税になります。

祭祀財産で節税は可能?

祭祀財産が非課税ならば、相続税節税のために祭祀財産として高額なものを購入したらいいのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれません。また確かに「節税対策」として祭祀財産を購入することを指南する情報もあります。ここで気を付けなければいけない点は2つあります。

1つめは祭祀財産の範囲内のものであっても純金の仏像や仏具など、社会通念上妥当な金額を超えた極端に高価なものは祭祀財産ではなく、美術品または骨とう品とみなされて課税対象になる場合がある点です。

2つめは遺族に墓地や墓石を購入させて迷惑をかけたくないし、節税にもなるからと生前に墓地と墓石一式を購入することです。被相続人の生前にすべての支払いが終了していれば祭祀財産として非課税になります。一方墓地と墓石をローンで購入し、完済前に被相続人が亡くなった場合は問題です。相続では相続財産のうち、ローンなどの債務はマイナスの相続財産と考えられ、プラスの相続財産から差し引かれる(=債務控除)ます。その結果、課税対象額が減ります。しかし祭祀財産は相続財産ではないため、墓地と墓石のローン残額は債務控除の対象になりません。節税対策として墓地や墓石を購入する場合には、被相続人が存命中に確実に支払いが終わるように、即金で購入しておくのが理想的です。

祭祀財産が非課税になっているのは、祭祀財産が先祖や神々を祀る祭祀を催す際に必要とされるものだからです。人々の信仰の妨げにならないように非課税とされた経緯がありますので、その主旨を尊重して悪用しないようにしましょう。

Text by:西山千登勢
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