愛媛県で葬儀に参列していた人の中で新型コロナウイルスの集団感染が発生したというニュースが出ておりました(※)。人が集まるという意味では通夜や葬儀も細心の注意が必要です。実際に通夜、葬儀を行う際にどのような対策が必要なのでしょうか。また新型コロナウイルスの流行は、日本の、世界の通夜、葬儀にどのような影響を与えているのでしょうか。2020年3月31日現在の情報をお伝えします。
新型コロナウイルス流行下では「要」「急」こそ気をつける!通夜、葬儀の際の感染予防
1 結婚式だけではない!葬儀の参列者も減少
新型コロナウイルスの流行によって「不要不急」の外出は控えろと言われても、葬儀や通夜は親族や親しい友人にとって間違いなく「要」であり「急」といえます。しかし現在、感染が爆発的に広がり多くの死者を出しているイタリアやスペインでは一般の葬儀は禁止されているのも事実です。
葬儀は多くの場合、延期することも難しいため、日本では現在のところ参列者の人数を抑えて行われる、という傾向になっているようです(※)。参列者の数は少ないだけではなく、通夜、葬儀での食事や会食もかなりの割合でキャンセルされているとのこと。必然的に、通夜や葬儀の時間も通常よりも短縮されているでしょう。
まずは火葬のみの直葬を行い、後日落ち着いてからの「後日葬」やお別れの会の実施を提案している葬儀社もあるようです。しかし、現在、事態の終息する時期を予想するのが難しい状態なので、後日葬でも一体いつ行えるのかという疑問はあります。実際に葬儀を執り行ったり、参列したりする場合にはどんなことに注意する必要があるでしょうか。
2 実際の通夜、葬儀で葬儀社行っている感染対策
各葬儀社では新型コロナウイルスを警戒しており、自社のホームページなどで以下のような対策を発表しています。
施設の見学会や葬儀に関するイベントなどの開催を控える。
従業員は出勤前に検温を行い、発熱なその症状がない場合、業務に従事。こまめに手洗い、うがいを行う。
マスクを着用して業務に従事。
お客様の葬儀の際以外でも、大人数で会議、集会を行わない。
斎場では定期的に換気を行い、ドラノブやスイッチ、手すりなどは消毒液で拭き取る。
遺族として葬儀を行う方は一層心配事が多いでしょう。ただでさえ大変な時ではありますが、喪主家の責任としては葬儀社に上記にあげたような感染対策を行っているか念を押すべきでしょう。生前の付き合いによっても規模は異なるものですが、多くの参列者が来ると考えられるケースでは遺族はより慎重になるべきでしょう。感染対策のため親族のみなど小規模な葬儀にするという選択は今はやむを得ないでしょうし、理解は得やすいものと思われます。後にお別れの会など検討するのも手です。
コロナに限らず、感染症で亡くなった場合の火葬や葬儀についてはこちらの記事を参照してください。
また厚生労働省が、コロナで亡くなった方の遺体の扱い方や火葬についての情報を発信しています。こちらをご参照ください。
3 通夜、葬儀に参列する際の感染対策
この記事は2020年3月31日現在の状況で執筆していますが、現在も感染は日々拡大するいっぽうです。通夜も葬儀も「人が集まるイベント」です。自粛要請や行動制限について必ず政府や自治体が発信する最新の情報を参照してください。
通夜、葬儀を行うのであれば、喪主・遺族としても、参列者としても、互いを守るため以下のような感染対策を行いましょう。
例えば、参列者や葬儀社のスタッフがマスクをしていることは通常はマナー違反ですが、今回は感染予防が一番と考えマスクは着用するようにしましょう。場合によっては、僧侶もマスク着用での読経もあり得るでしょう。感染予防のため食事が提供されないこともありえます。親せきなど近しい立場であってもそうした常ならぬことに難色を示さないようにしましょう。
マスク不足が続いていますが、ある程度の人数が参列する場合はマスクを着用したいところです。手作りの布のマスクでも、参列するならマナーとしてしておきましょう。喪主の側であれば参列者向けに配布できるよう準備したいところです。手配可能かどうか葬儀社に確認してみましょう。
くしゃみ、咳だけではなく、会話することで飛沫感染のリスクは大きくなるとが分かっています。葬儀、通夜では懐かしい人との再会もあり、つい長話もしたくなるかもしれませんが、慎みましょう。
感染しないためには人間同士密集しないことです。焼香の際なども、前後の人との間隔を意識して保ちましょう。
マスクよりも最も効果的な予防対策は手洗い、うがいだと言われています。一日何度も定期的に手洗い、うがいを行いましょう。
熱がある、なくても体調が悪い場合は無理せず欠席してください。
最後のお別れをしたいという気持ちはあっても不安が大きすぎると落ち着いて参列するのは難しいことと思います。後日伺うようにするか、取り急ぎ、弔電を打つ、香典を郵送する、花や供物を送るのも良いでしょう。不義理になるのでは…と気に病む方もいるでしょうが、喪主家としても人の密集は避けたいところですし、今の状況で欠席は仕方のないことです。
他にも、もし喪主の側であれば、式場選びについては、十分な広さであること、換気のよい空間であることを重視して選んでください。
4 新型コロナウイルスによって変化した世界の葬儀
日本よりも感染が広がっている国では葬儀はどのようになっているのか。アメリカ、オーストラリア、イタリア、スペインの例を紹介します。
4-1 アメリカでは参列は近親者のみの勧告、ライブストリーミングで参列も
BBCニュースの2020年3月19日配信の記事(※)によると、アメリカでは、米疾病対策センター(CDC)より、全国葬儀ディレクター連盟と全米各地の葬儀業者に対して以下のような勧告があったようです。まず葬儀の計画を立てる際は、近親者のみなど人数を限定する、参列できない方に対してはライブストリーミング、動画配信での参列が望ましいとのこと。具体的に人数については、CDCは会合を最大50人までとし、トランプ大統領は集会を10人以下での実施を指示しています。
この制限は新型コロナウイルスで亡くなった方のお葬式に限っていません。人々が大人数集まってしまうことでの感染リスクを懸念してのことであり、特に70歳以上の高齢者、基礎新患のある方に対して注意喚起しています。牧師ですら現場には行かずにウェヴカメラを通して葬儀を執り行った例もあるようですが、アメリカでは以前から葬儀のライブストリーミングのサービスは普及しているようなので、それほど違和感はないのかもしれません。また、イギリスでもアメリカ同様に葬儀のライブストリーミングが提供されているとのこと。日本でもお墓参りのライブストリーミングのサービスがありますが、高齢化社会であることも考えると、今後葬儀でも導入される可能性はありそうです。
4-2 オーストラリアでは葬儀の参列は10人までに制限
オーストラリアでも2020年3月24日の閣議後にスコット・モリソン首相は「結婚式は5人まで、葬儀は10人まで」という対抗処置を発表しました(※)。5人の結婚式とは挙式のみでしょうか…。本格的な結婚披露宴というわけにはいかない人数です。葬儀もごく近しい親族のみでということになりそうです。
4-3 イタリアでは葬儀自体が禁止
感染が広がり、致死率も高いイタリアでは2020年3月31日現在、全土に移動制限処置が敷かれています。患者の数が増え続ける中、ベッド数も医療器具も不足し、医療現場は危機的な状況が続いています。イル・ジョルナーレという現地メディアには、ロンバルディア州の医師の衝撃的な証言が。「60代以上の患者には挿管しなくなった。若い人や他の病状のない人を選んで挿管する人の選択をしなければならない。人工呼吸器を必要とするすべての人に挿管できなくなった」(※1)
危機的な状況にある現地での証言は断片的なものが多いそうですが、このことに対して、ベルギーで自身も新型コロナウイルスの治療に当たっている医師は「人工呼吸器の数を上回る患者がいるとすればそれは戦時下のような状況」と解説しています。
患者が増え、死者が増えていく中、葬儀の現場にも大きな影響が。集団感染のリスクから、イタリアでは葬儀を含めた全ての一般の宗教的儀式も禁止されているようです(※2)。
キリスト教では、医者によって信者が危篤と判断されたとき、神父や牧師が枕元に呼ばれて宗教的儀式を行いますが、その際に感染し、命を落としている聖職者もでてきているようです(※3)。
4-4 スケート場を遺体安置所に転用したスペイン
イタリアに次いで深刻な状況のスペインの首都マドリードでは3月24日から火葬や埋葬を停止。マスクなど葬儀社の従業員を守る装備が行き渡っていないことから、急遽スケート場を遺体安置所に転用しているとのこと(※)。死者や弔いをめぐる状況はいずれの国でも深刻です。
日本では2020年3月31日現在では大人数での集まりについて、今のところ個人の意思と責任による“自粛”となっています。感染の拡大と共に、葬儀の行い方に規制がかけられる事態もありえるかもしれません。善意から海外の病床より日本に向けて警告を発してくださる方もいます。その声を真摯に受け止め、今は自分や周囲の人を守るできる限りの努力をしていくしかありません。