お葬式の喪主を務めるのは、人生のうちで一度あるかないかのことでしょう。誰にとってもそうそう経験するものではないため、どこに何をどう依頼するべきなのか途方にくれるかもしれません。とはいえ葬儀は大切な家族を送り出すとても大切なものですし、高額な費用がかかるため、失敗したくはありません。この記事では、葬儀社選びに困っているあなたに、よい葬儀社と出会えるためのポイントをご紹介いたします。最後まで読み進んでいただければ幸いです。
葬儀社選びのポイント―賢い葬儀社の選び方
1. よい葬儀はよい葬儀社で決まる
どうして葬儀社選びが大切なのか。それは、よい葬儀は、よい葬儀社との出会いで決まるからです。その理由をお話しします。
1-1. 葬儀社が何から何まで手配する時代
よい葬儀はよい葬儀社で決まります。お葬式の満足度を決める要素はたくさんあります。落ち着いた会場、きれいな祭壇、久しぶりにあった親戚たちとの時間、お坊さんのお話、などなど。しかし現代ではこれらすべてを葬儀社が主導となって準備、手配します。ひと昔前であれば、葬儀は地域共同体の行事として行っていましたが、現代、とくに都市部では会場からお坊さんまですべてを葬儀社が手配してくれる時代です。だからこそ、葬儀の満足度は葬儀社のクオリティで決まるのです。
1-2. 人は人に救われる-担当者の見極めが重要
そして、もうひとつ付け加えるならば、「人は人に救われる」生き物です。だからこそ葬儀社の評価は、価格や会社の規模だけではなく「担当者の一生懸命さ」で決まることが多いようです。どこでもいいので葬儀社のサイトの中にある「お客様の声」を閲覧してみてください。ほとんどの場合、担当者への感謝の言葉でしめくくられています。価格やサービスなどももちろん大切な要素ですが、人は人に救われる、つまり、よき担当者のとの出会いがよい葬儀に結びつきます。後述3-3章にて、担当者の見極め方についても述べますのでご参考ください。
2. 葬儀社の種類
よい葬儀社を選ぶには、まずは葬儀社がどのように分類されるかを知っておかなければなりません。葬儀社は、主に次の4つに種類に分けることができます。
- 葬儀専門業者
- 冠婚葬祭互助会
- JAやコープなど協同組合の葬祭事業
- ネット受注による紹介業者
まずはそれぞれにどのような特徴を持っているのかを理解しましょう。ひとつずつわかりやすく解説いたします。
2-1. 葬儀専門業者
葬儀専門業者とは、葬儀事業を専門に行う業者のことです。葬儀社なのだから当たり前じゃないかと思うでしょうが、実は葬儀以外の事業を手がけている葬儀社というのがたくさんあります。たとえば冠婚葬祭互助会は葬儀以外にも婚礼事業も取り扱っていますし、JA(農協)やコープ(生協)などの協同組合は組合員向けに葬祭事業を展開していますが、そもそも販売事業や金融事業も手がけるJAやコープは「葬儀専門業者」ではありません。
葬儀専門業者の特徴
葬儀専門業者と言ってもその業態はさまざまです。もっとも多いのは地域密着型。「街の葬儀屋さん」をイメージしてもらえれば良いでしょう。しかし最近では、死亡人口の増加から新規参入が多く、それも大手による葬儀事業もあればフリーランスの葬儀社まで、実に多岐にわたります。
驚く人も多くいるかもしれませんが、葬儀はすべてアウトソーシングでできるために、新規参入がしやすいのでしょう。特に都心部など、貸し式場の利用が多い地域では、自社式場の所有がアドバンテージに働かないため、顧客獲得さえできれば誰もが葬儀を請け負うことができるのです。葬儀担当者は遺族との窓口となり采配をふるうのみでよく、式場は借りればよし、その他、ご遺体の搬送車、祭壇の設置や棺の準備、料理や返礼費の手配、式場内のスタッフ手配まで、実作業は何もしなくてもすべてアウトソーシングでまかなえます。
2-2. 冠婚葬祭互助会
冠婚葬祭互助会とは、経済産業省の許認可事業で、会員からの毎月の掛け金をもとに運営している葬儀社です。もとは戦後の貧しい世の中で、お金を出し合って積み立てたお金を葬儀費用に充当していく、いわば「助け合いの精神」から始まったものでした。
しかし時代が下るごとに互助会はビジネス色を増し、強引な勧誘は社会問題にまでなりました。互助会側制度では、会社が万が一倒産するようなことがあった場合、掛け金の半額は保証されます。それはつまり、残りの半額は保証されないことを意味します。この元手となる掛け金でさまざまな先行投資をしていきます。
冠婚葬祭互助会の特徴
事前に会員からの掛け金があるため、豊富な資金力があります。そのため、互助会の葬儀式場は豪華なものが目につきます。
また、実は会員とのトラブルをよく耳にするのも互助会の特徴で、訴訟問題にまで発展したものもあります。互助会では元気なうちから毎月の掛け金を支払って葬儀費用を積み立てておきますが、勧誘員はなんとか成約しようと、「安い費用で葬儀ができる」など、あの手この手のセールストークを繰り出してきます。しかし実際に葬儀を行うとなると、「掛け金だけでは葬儀ができない」「アップグレードを勧められた」「解約を希望しても応じてくれない」などの不満の声が上がっています。互助会にとっては会員による掛け金こそが会社を営んでいく上での生命線であるため、過剰な説明や強引な勧誘になりがちなのです。
2-3. JAやコープなど協同組合の葬祭事業
協同組合とは、農業や漁業や生活者など、共通の目的を持った人たちが出資金を出し合って、共同で所有、運営していく相互扶助組織です。協同組合と聞いてぱっと頭に浮かぶのはJA、かつての農協(農業協同組合)ではないでしょうか。
農協はそもそも農業を営む人たちが出資しあって成り立っている協同組合で、葬儀が専門の組織ではありません。農産物・農薬・農機などの販売、農家向けの金融事業(JAバンク)、保険事業(JA共済)がJAの主な事業で、それ以外にも組合員向けの病院、介護、不動産、そして葬祭事業も行われているのです。
また、協同組合にはJA以外にもJF(漁業協同組合)や、コープ(生活協同組合)などがあります。ここでは分かりやすく、JAの場合を例にとって話を進めます。
協同組合型葬祭事業の特徴
JAの特徴はその資金力。多くの組合員の出資金により成り立っているため、他の葬儀社と比較しても資金力は豊富です。そのため、比較的立派な葬儀会館が目につきます。また、組合員は、組合員価格で葬儀が執り行えること、なにより農家にとっては普段から生活に密着し親しく付き合っている組織であるため、絶大な信頼があります。また最近では非組合員の利用も可能になってきました。ただし、組合員と非組合員で価格が異なることもあるので事前に確認が必要でしょう。
2-4. ネット葬儀社
インターネットの普及により、葬儀の世界でもインターネットを活用した新規参入が相次いでいます。とはいえ既存の葬儀社も当たり前のようにホームページを持ってインターネットを活用しているため、一概に「ネット葬儀社」とその他、というはっきりした分類があるわけではありませんが、ネット葬儀社は主に次の3つのタイプで捉えることができます。
自社施行の葬儀社
葬儀専門業社の中でも、インターネットによる受注に特化している葬儀屋です。
紹介業者
日本全国の葬儀社を地域別に紹介してくれる、いわゆる比較サイトです。最大手として、株式会社鎌倉新書が手がける「いい葬儀」があります。あくまでも紹介サイトなので、葬儀の施工は、各地の葬儀社ということになります。
請負業者
紹介業者と実際の葬儀を施工する業者の関係がさらに組織化されている形態が請負業社です。「小さなお葬式」や「イオンのお葬式」がこれに該当します。日本全国に点在する登録葬儀社が葬儀を施行するのは通常の紹介業者と変わらないのですが、価格もすべて定額制にしているため、安い費用で葬儀を行えるかもしれません。ただし実際どの葬儀社で施工するか、喪主が決められないためあたりはずれがあるかもしれないというリスクがあります。
3. 賢い葬儀社の選び方
たくさんある葬儀社の中で、どうすればよい葬儀社に出会えるのでしょうか。もちろん、「よい葬儀社」の定義もなければ、そのプロセスの答えもないため、これといった正解はありませんが、少しでも信頼できる葬儀社と出会えるため方法をお伝えします。参考にしてみてください。
3-1. インターネットで4~5社程度を探す
まずはインターネットで葬儀社について調べてみましょう。あなたの希望するエリアでどんな葬儀社があるかを把握して、あまり深く考えず、まずは直感で良さそうなところをピックアップして、そこから4~5社程度に絞り込みます。
種類別に絞り込む
この時のポイントとして、前の章段で挙げたような葬儀社の種類別にピックアップしてみるということです。葬儀専門業者から1社、冠婚葬祭互助会から1社、JAやコープなどに加盟している人はそこから1社、インターネットから1社といった具合です。異なる業態の葬儀社を比較することでよりその特性の違いが把握できて、あなたによりあった葬儀社と出会える可能性が高まります。
サイト閲覧時のチェックポイント
葬儀社サイトを閲覧するときには次の点に注意してその葬儀社の透明性や信頼性を図りましょう。信頼できる葬儀社ほど会社の情報をオープンにしている傾向があります。
- 葬儀社の所在地、連絡先など、会社概要がはっきり明記してあるか
- 社員やスタッフの顔写真が掲載されているか
- 定期的にサイトの更新を行っているか
- ブログやSNSなどの情報発信を積極的に行っているか
- 費用が明記してあるか、プラン内容がわかりやすく示されているか
インターネットでピックアップした葬儀社には、電話問い合わせと資料請求を行っていきます。
3-2. 電話問い合わせと資料請求
インターネット上で信頼できそうな業者を4~5社程度にピックアップしたら、次はより踏み込んでそれらの業者について調べていきましょう。電話問い合わせと資料請求をします。
電話問い合わせ時のチェックポイント
電話問い合わせでは以下の点を注意してみましょう。
- 自分の名前をきちんと名乗るか
- 丁寧な言葉遣いか
- 事務的ではなくこちらに寄り添う話し方をしてくれるか
- 専門的な用語を用いずに分かりやすい言葉で話してくれるか
- 夜間でもすぐに電話に出るか
資料請求時のチェックポイント
資料請求は電話やインターネットで申し込みます。ここでは大体の葬儀の希望(場所、参列人数、葬儀の規模感など)を伝えて、葬儀社に大体の見積もりをしてもらいます。送られてきた資料は次のポイントで見極めます。資料は概ね3日ほどで、郵送にて送られてくることが多いでしょう。時間がない場合は、FAXやメールで、資料や見積もりを送ってもらうことができるか尋ねてみましょう。
- 会社紹介の資料が用意されているか
- 希望する会館(式場)の情報が明瞭か
- 費用細目が明瞭か(どのプランにはどの品目が含まれているかなど)
- 素人が見ても分かりやすい見積書になっているか
- 見積書が示す品目を画像付きで説明しているか
- 葬儀社以外への支払い(会館使用料、火葬料金、寺院へのお布施など)も記載されているか(「総費用」が把握できるか)
送られてきた資料では、その資料の見やすさだけではなく、予算や施行内容など、自分たちに合ったものかをきちんと比較します。
上記のような過程を経て、安心できそうな葬儀社をさらに2社に絞り込みます。
3-3. 対面相談での見極め方
対面相談は2社
葬儀社を2社に絞ると、次はいよいよ葬儀社スタッフと直に話してみましょう。いわゆる「事前相談」というものです。時間があれば葬儀式場の見学を兼ねて自ら出向くのもよいでしょう。時間が無ければ自宅まで足を運んでもらいましょう。
対面相談では担当者の「人」を見極めます。人柄、誠実さ、傾聴力、説明力、経験の豊富さ、そして何より、好感度があるかないかを重視しましょう。葬儀というのは遺族と葬儀社が1つになって作り上げていくものものですから、「なんとなくこの人がいい」「好感が持てる」などの感覚的な部分も大切にしましょう。次に挙げるポイントを参考にしてみてください。
- 服装や髪型など、身なりに清潔感があるか
- 言葉遣いが優しく、丁寧で、しっかりしているか
- 約束の時間を守るか
- 専門的な用語を用いずに分かる言葉で説明してくれるか
- なぜ葬儀の仕事をしているか自分の言葉で語れるか
4. まとめ
葬儀はその人の人生の集大成、最初で最後のものです。もしもあなたに自分自身の葬儀について考える時間があるのであれば、元気なうちから余裕を持って葬儀について勉強し、どこにどんな葬儀社があるかを調べておくことをおすすめします。そして生前申し込み、あるいは生前契約をすることをおすすめします。いざという時に本人の希望を理解してくれているので、話が早く、喪主にとっても労が少なく精神的な安心感は計り知れません。
もちろん、葬儀はいつ急にやってくるか分かりません。ここに挙げたような調べ方をする時間がない場合は、信頼おける人で葬儀を経験したことがある人に相談してみましょう。ネットの情報以上に、信頼おける人からの口コミが有効です。