世界で注目されるエコ埋葬・グリーン葬~アクアメーション、プロメッション、リコンポジションとは何か?

土葬はホルムアルデヒドのために環境汚染の元となり得る。火葬も多量の温室効果ガスを排出している。そこで、最近海外では、火葬・土葬ではない、環境に優しい葬送方法(アクアメーション、プロメッション、リコンポジション等)を模索する「グリーン・ベリアル・ムーヴメント」が静かなブームを呼んでいる。現在の日本では火葬が主流だが、海外での動きを受けてエコ埋葬・グリーン葬への関心も高まっている。今回は葬送と環境問題、アクアメーション、プロメッション、リコンポジションといったエコ埋葬・グリーン埋葬についてご紹介したい。

index 目次
  1. 1. 土葬と火葬の環境への負荷
  2. 2. 注目を集めるグリーン埋葬とは
    1. 2-1. アクアメーション
    2. 2-2. プロメッション
    3. 2-3. リコンポジション
  3. 3. 日本で「グリーン埋葬」を取り入れる際の問題点

1. 土葬と火葬の環境への負荷

アメリカでは伝統的に土葬が行われてきた。しかし最近は火葬が土葬を上回り、火葬が最も人気の高い葬送方法となっている(※1)。1960年の全米火葬率はわずか3.6%だった(※2)。しかし、2019年の火葬率は54.6%、2020年は56.1%と過半数を超えており、2025年までには65.2%、2030年までには72.8%になると予想されている(※3)。

土葬の場合、遺体からの危険な感染を防ぐために消毒・殺菌し、内臓に防腐液を入れて腐敗を防止するため、遺体に化学処置を行う(エンバーミング)。エンバーミングには500ドルから1,300ドルほどの費用がかかる上に、毎年80万ガロン(約300万リットル)もの毒性の強いホルムアルデヒドが地中に流れ込み、環境汚染の元凶と言われている(※4)。火葬であればエンバーミングが不要となり、費用が抑えられるとともに(※5)、土葬よりも環境に優しいというイメージが伴い、火葬率が増えてきたようだ。

費用を見れば確かに、土葬より火葬の方が廉価であるが、必ずしも火葬が環境に優しいとは言えない。火葬には大量の燃料が必要である。世界で火葬により年間数百万トンの二酸化炭素が排出されている。アメリカにおける一般的な火葬では、自動車のガソリンタンク2つ分のエネルギー消費に匹敵する温室効果ガスが排出される(※6)。そこで、最近は火葬ではなく、真に環境に優しい葬送方法が模索されている。これは「グリーン・ベリアル・ムーヴメント」(グリーン埋葬運動)と呼ばれている。現在はまだ、実際に行われている葬送方法のわずか5%しか「グリーン埋葬」の範疇に入らない。しかし、アメリカ人の54%が「グリーン埋葬」に関心を寄せていて、全米葬儀ディレクター協会のアンケートでは、グリーン埋葬要望の声が72%増加している(※7)。「グリーン埋葬」が注目を集めている葬送方法だということは言えるだろう。

2. 注目を集めるグリーン埋葬とは

では、その「グリーン埋葬」はどのような葬送方法なのだろうか。一つずつ見てみよう。

2-1. アクアメーション

環境への負荷が少ないと言われる葬送のひとつが、「水火葬」や「アクアメーション」である。これは、アルカリ加水分解で遺体を液状に溶かす埋葬法である。

現在、少なくともイリノイ州、フロリダ州、ユタ州、カリフォルニア州、ジョージア州等、全米50州のうち20州がこの葬送方法をすでに合法化している(2020年3月12日のU.S. News and World Report)(※8)。このアルカリ加水分解は、火葬とかかる時間は同じだが、カーボン・フットプリント(※9)が約10分の1になると言われている。さらに、分解された液を農場に撒けば、優れた肥料にもなる。また、自治体の下水設備に送られると、廃水の水質改善にも役立っているという(※10)。

2-2. プロメッション

また、「プロメッション」と呼ばれるエコ埋葬もある。

まず、液体窒素で遺体をマイナス196度で冷凍状態にする。遺体を乾燥させた後、粉々に粉砕し、粉砕した粉から、強力な磁石を使って金属(歯の詰め物や義肢等)を除去する。すると、無菌状態の粉だけが残る。

火葬では、必ず二酸化炭素等の温室効果ガスが発生するが、プロメッションでは有害物質の発生は起こらない。土葬では、エンバーミングによって有害物質が発生するとともに、埋葬する土地が必要になるが、プレメッションではどちらの心配も全く不要となる(※11)。そのため、プロメッションは火葬と土葬の欠点を克服できると言われている。2019年12月の時点で、この葬送を法的に承認している国はスウェーデン、イギリス、韓国の3か国である(※12)。

2-3. リコンポジション

それから「リコンポジション」という葬送方法もある。

2019年4月、アメリカのワシントン州で、埋葬や火葬の他に「遺体を『有機還元』と『加水分解』というプロセスでも処理することを認める」という内容の法案が可決され、2020年5月1日に施行された(※13)。この“Natural organic reduction”と名付けられた堆肥葬は、遺体を自然な形で生分解し、堆肥に変え、養分として新しい命へ循環させる画期的な葬送方法である。

これまでにも、農場で牛が死ぬと、一体丸ごと堆肥化されることがあり、それは何十年も実施されてきた方法という。牛の遺体の堆肥化が可能なら、人間の遺体の堆肥化も可能ではないだろうか、という発想が、このリコンポジションの起源である(※14)。

リコンポジションは、次のような手順で行われる。
まず、遺体は再利用可能な規格化された棺に収められる。この棺には、オーガニックなウッドチップが敷き詰められている。遺族や友人が最後の別れを告げて、告別式が終わると、遺体にオーガニックな素材で作られたものを被せ、棺ごと堆肥化する専用カプセルに納める。

その後、落葉が土に取り込まれていくように、骨や歯までもが約30日間かけて土に還っていく。容器内は微生物やバクテリアが活動する最適の環境に整えられており、効率的な分解が促される仕組みになっている。

分解後は、1立方ヤード(0.76立方メートル)程度の豊穣な土に変わる。遺族や友人はこの土を持ち帰って畑の土などで再利用することもできる。もしくは、ワシントン州ピュージェット湾地域に寄付することもできる。人間は死後、自然の一部として循環することができるということだ。遺体を焼かないので、火葬と比較すると、かかるエネルギー量を8分の7程度、二酸化炭素の排出を1体につき1平方メートル削減することができる(※15)。

リコンポジションは、遺体や遺骨を保管する必要がないので、墓をつくる必要もなく、土地の節約にもなる。現在、遺体を納める棺には、多くの金属と木材が使われており、棺のリサイクルは行われていない。リコンポジションの場合、棺に使われる素材はオーガニックで、使い捨てではなく、再利用可能なものである(※16)。

費用面に関しては、リコンポジション法を制定したワシントン州における土葬費用の平均が8,000ドル(約87万円)、火葬費用が1,000〜7,000ドル(約10万円〜76万円)と言われている。一方、リコンポジションによる葬送の費用は5,500ドル(約60万円)ほどになる予定だ。リコンポジションは、費用面を見ても妥当な価格設定であり、今後拡大する可能性もある(※17)。

3. 日本で「グリーン埋葬」を取り入れる際の問題点

現在、日本では火葬が大部分だが、エコ埋葬への関心も高まっている。先に述べた様々なエコ埋葬の方法は、果たして日本で受け入れられるだろうか。

アクアメーションは確かに環境への負荷が少ない葬送方法である。しかし、遺体を溶かすという葬送手法が、死者への敬意を欠く行為ではないか、と心理的な抵抗感を持つ人も少なくないだろう(※18)。

プロメッションはどうだろうか。まだ世界で3か国でしか合法化されていないので、日本でも法制化するまでには時間がかかるだろう。しかし、日本では、故人の遺骨を使って「メモリアル・ダイヤモンド」を作ることに人気が高まっている。愛しい人を肌身離さず一緒にいたいという純粋な気持ちと、墓を持ちたくないという実用的な理由が一致しているようだ(※19)。プロメッションにおいても、最後に残った無菌の粉を使ってペンダントや指輪にするように工夫すれば、今後広まっていく可能性もある。

リコンポジションについては、倫理面が最大の問題なるだろう。たとえ法律、費用、宗教観等の課題を克服できたとしても、自分の父親の遺体を自分の裏庭で堆肥として使えるだろうか。その肥料を使って作ったきゅうりやキャベツを抵抗なく食べることができるだろうか。自分はよくても、親族、近所の人から後ろ指を指されないだろうか、と日本では人の目や世間体が気になるかもしれない。祖先崇拝は宗教というよりも、倫理観や道徳観に近い感覚だからだ。だからこそ、先祖代々のお墓が廃れてしまうことに違和感を覚える人が多いのではないだろうか(※20)。

このように考えると、予見し得る未来において、温室効果ガス削減を目指して、火葬の税金を高くするなどの政策誘導でもない限り、日本では火葬が主流という現状に大きな変化は起きにくいだろう。技術革新により、火葬場の装置をできるだけ温室効果ガスを削減できるようにするのが、現在最もエコ埋葬に近い道である。

※1 「火葬で良いのか? その環境負荷と新たな選択肢 増える人生最後の選択肢、液状に分解 する方法や堆肥化も」NATIONAL GEOGRAPHIC 2019年11月7日(外部リンク)

※2 “Why Is Cremation Becoming More Popular in the US?” National Cremation(外部リンク)

※3 “Industry Statistical Information: 2021 Annual Statistics Report,” All things cremation. Cremation Association of North America(外部リンク)

※4 TalkDeath, “History of Embalming and Facts,” May 29, 2017(外部リンク)
HAGS, 「『ホルムアルデヒド』とは何か?|誰でもわかるリノベ用語集2019.03.23(外部リンク)

※5 “Why is cremation becoming more popular? Five reasons more people are choosing direct cremation,” Tulip Cremation, Inc. 27 February 2019(外部リンク)

※6 「火葬で良いのか? その環境負荷と新たな選択肢 増える人生最後の選択肢、液状に分解 する方法や堆肥化も」NATIONAL GEOGRAPHIC 2019年11月7日(外部リンク)

※7 “The History of Green Burial,” Green Cremation Texas(外部リンク)

※8 Adina Solomon, “More States Legalize Dissolving Bodies in Water,” 12 March 2020(外部リンク)

※9 Carbon Footprint of Productsの略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイク ルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みである。(外部リンク)

※10 「火葬で良いのか? その環境負荷と新たな選択肢 増える人生最後の選択肢、液状に分 解する方法や堆肥化も」NATIONAL GEOGRAPHIC 2019年11月7日(外部リンク)

※11 Chris Raymond, “What is Promession and How Does it Work?” Funeral Help Center, 1 September 2020(外部リンク)

※12 Cassie Barthuly, “How Promession Burials Work: Process, Cost & Legality,” cake, 6 December 2019(外部リンク)

※13 Joke vander Leij, 「『人間の遺体を堆肥にして葬る』という堆肥葬を認める法律がアメリカで初めて承認される」2019年5月23日(外部リンク)

※14 Britta Lokting「死後は土に還る『堆肥葬』、米スタートアップが開始」2020年11月13日(外部リンク)

※15 takumiko, 「人間を土に還す。シアトルで始まる、世界初の『堆肥葬』」2020年1月6日(外部リンク)

※16 takumiko, 「人間を土に還す。シアトルで始まる、世界初の『堆肥葬』」2020年1月6日(外部リンク)

※17 takumiko, 「人間を土に還す。シアトルで始まる、世界初の『堆肥葬』」2020年1月6日(外部リンク)

※18 「火葬に代わる!?アクアメーションとは何か」葬研 2019年7月24日(外部リンク)

※19 「遺体を堆肥にして埋葬 スウェーデン発『プロメッション』、考案科学者の思いとは」 NewSphere, 2017年11月5日(外部リンク)

※20 「第77回 堆肥葬」『F.I.N.的新語辞典』2020年12月18日(外部リンク)

Text by:杉田米行
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