【行政書士監修】法定相続情報証明制度

今回は相続手続きの負担を軽減するために使える制度、「法定相続証明制度」をご紹介します。

相続手続きでは、不動産や銀行口座など、実に多くの名義を変更する必要があります。その際、故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本、被相続人と相続人の関係がわかる書類、相続した人の印鑑証明の提出など、多くの書類を用意しなければなりませんでした。そして、一件ずつ地道に名義変更をしていくという、膨大な手間と時間がかかっていました。この負担を軽減するために、2017年から導入されたのが「法定相続情報証明制度」です。

この法定相続情報証明制度はまだ認知度が低いものです。しかし実は、この制度を使えば各種の名義変更がかなり省力化でき、手続きにかかる時間も短くなるのです。今回は法定相続情報証明制度とは何か、どんな手続きが要るのか、取得した証明書で何ができるのか、詳しく解説いたします。

本文中で何度も出てくる用語ですが、以下のように定義します。

用語の定義

被相続人:財産を残して亡くなった人。この人の財産を分けるのが遺産相続。
法定相続人:民法によって定められた被相続人の財産を相続する権利を持つ人。被相続人との婚姻関係や血縁によって決まる(例:配偶者や子どもなど)。詳しくはこちらの記事をご参考ください。
相続人:一般的には相続人=法定相続人と解釈されている。稀に相続人=法定相続人+法定相続人以外で財産を受け取ることになった人や団体、と何らかの形で遺産を受け取る人や団体全体をさす場合がある。
相続登記:相続による不動産等の所有者名義の変更について登記すること。登記所では「相続による所有者移転登記」と呼ぶ。
登記所:登記事務を担当する機関のこと。一般名称として「登記所」と呼ばれているが、正式名称は「法務局」、「地方法務局」、「支局」、「出張所」。

index 目次
  1. 1. 法定相続情報証明制度ができた理由
  2. 2. 法定相続情報証明制度のメリット
    1. 2-1. 発行手数料は無料、何通でも取得可能
    2. 2-2. 5年間なら何度でも何通でも発行が可能
    3. 2-3. 登記官が戸籍関係書類一式を確認したうえで証明書を発行してくれる
    4. 2-4. 代理人による申請も可能
    5. 2-5. 郵送でも申請が可能
  3. 3. 法定相続情報証明制度を利用する際の注意点
    1. 3-1. 戸籍関係書類の収集が1回は必要になる
    2. 3-2. 制度の利用可能者が限られる
    3. 3-3. 従来通り戸籍関係書類の原本が必要な場合も
  4. 4. 法定相続情報証明を取る手続き
    1. 4-1. 必要な書類一式を集める
    2. 4-2. 法定相続情報一覧図の作成
    3. 4-3. 申出書を記入する
    4. 4-4. 登記所へ申出をする
    5. 4-5. 各種相続手続きに利用
  5. 5. まとめ

1. 法定相続情報証明制度ができた理由

法定相続情報証明制度とは、平成29年(2017年)から始まった制度です。

それまでは、相続した財産を相続人の名義に変更するために、被相続人が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本や除籍謄本、被相続人と相続人の関係がわかる戸籍など、多くの戸籍関係書類を集めて手続きをする必要がありました。この戸籍関係の書類一式は、不動産の相続登記や株式の名義変更、銀行口座の解約などの相続手続を行う際にも必要になります。

もし不動産や株式、銀行口座などが複数あれば、

  1. 名義変更が必要な数と同じ数の戸籍関係の書類一式を揃える。
  2. 戸籍関係の書類一式の数が少ない場合、A銀行の手続きを終えてから、B銀行の手続きに使うなど、戸籍関係の書類一式を使い回す。

というステップを踏むしか方法がありませんでした。

法定相続情報証明制度は、こうした煩雑な相続手続きを簡略化するために生まれた制度です。被相続人が生まれてから死ぬまでの戸籍・除籍謄本等の必要書類を提出すれば、登記所が「法定相続情報一覧図」を保管し、その写し(法定相続情報証明)を発行してくれます。これによって相続関係を証明することができるので、何通もの戸籍謄本を集める必要がなくなったのです。

2. 法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報証明制度は、相続の手続きをシンプルにすることを目的とした制度です。上記のように、相続人は、登記所に一度、法定相続の情報を登録しておけば、登記所発行の法定相続情報一覧図の写し(法定相続情報証明)を相続手続きの際に提出すれば済むようになりました。それ以外にもこの制度は、相続人にとって次のようなメリットがあります。

2-1. 発行手数料は無料、何通でも取得可能

戸籍謄本を取得する際には、1通あたり300~750円の手数料がかかります。遠隔地の場合には、さらに郵送・返送代もかかることになります。そして、これらの手数料は、相続人が負担しなければなりませんでした。しかし、法定相続情報証明の交付は、無料で何通でも受けることができます

2-2. 5年間なら何度でも何通でも発行が可能

法定相続情報証明は、5年間なら何度でも交付が可能です。相続では、不動産名義の変更や株式の名義変更、さらに銀行の口座の解約など、いくつもの手続きを行わなければならない場合がありますが、それぞれの機関に法定相続情報証明を提出すればいいので、戸籍等関係の書類を使い回す必要がなくなりました。さらには、最初の発行から5年以内なら、必要なときに無料で取得できます。

なお、相続税の申告書に添付が必要だった戸籍謄本等も、この法定相続情報証明を添付すれば手続きを行うことができるようになりました

2-3. 登記官が戸籍関係書類一式を確認したうえで証明書を発行してくれる

法定相続情報証明制度では、登記官が戸籍の内容を確認してくれるので、自分で確認するより確実です。さらに手続き先でも、法定相続情報証明があれば法定相続の関係が一目でわかるので、手続きがスムーズにできることが期待されています。

2-4. 代理人による申請も可能

法定相続情報証明書の発行申請は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士などに代理で申請してもらうこともできます。外出が難しい高齢者の方などは、こうした士業の人に依頼することもできます。

2-5. 郵送でも申請が可能

法定相続情報証明書の発行申請は、郵送で申請をすることもできます。郵送による申請を行う際には、その旨を申出書に記入した上、返信用の封筒及び郵便切手を同封して郵送すれば、証明書を作成して返送してもらえます。

3. 法定相続情報証明制度を利用する際の注意点

上記2. のように相続人にはメリットがたくさんある法定相続情報証明制度ですが、一方で次のような気を付けるべき点もあります。

3-1. 戸籍関係書類の収集が1回は必要になる

法定相続情報証明制度は、従来の戸籍収集作業を簡略化するためのものです。しかし法定相続情報証明の交付を受けるためには、従来どおり、戸籍関係の書類一式すべてを1度は集める必要があります。登記官は提出されたこれらの戸籍関係書類一式を元に、法定相続情報が確かであることを確認、認定するからです。つまり、この制度によって、戸籍収集が一切免除されるわけではない、ということです。

3-2. 制度の利用可能者が限られる

この制度は、「法定相続情報証明制度」という名前の通り、「法定相続」についての情報を証明します。そのためこの制度を利用することができる方(申出人となることができる方)は、被相続人の相続人に限られます。

法定相続人の範囲については、以下の記事をご覧ください。
法定相続人とは?―法定相続人の範囲と順位、相続の割合

3-3. 従来通り戸籍関係書類の原本が必要な場合も

金融機関などによってはまだ、従来通りの戸籍関係書類一式の原本が必要な場合もあります。その際には収集した戸籍関係書類一式の原本を提出して手続きをするしかありません。

4. 法定相続情報証明を取る手続き

法定相続情報証明を取り、利用するためには、以下のステップで手続きを進めていきます。

4-1. 必要な書類一式を集める

法定相続情報証明の交付を受けるためには、まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と住民票(除票)の写し、相続人の戸籍謄本、住民票の写し等を収集する必要があります。

参照

法務省 法定相続情報証明制度の具体的な手続きについて
必ず用意する書類/必要となる場合がある書類[pdf](外部リンク)

4-2. 法定相続情報一覧図の作成

被相続人および戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした、次のような図を作成します。

(例)

法定相続情報一覧図
参照

法務省HP(外部リンク)

4-3. 申出書を記入する

「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入し、4-1. で用意した各種書類と4-2. 法定相続情報一覧図をと併せて登記所へ申出をします。申出書には、

  1. 申出人の住所、氏名、連絡先、被相続人との続柄
  2. 利用目的
  3. 交付を求める通数
  4. 申し出の年月日

等を記載します。この申出書には、必要な証明書の数を書くことができるので、複数の機関で手続きをする予定がある人は、必要な数だけ証明書の交付を申し出ておくのがポイントです。

申出書の記入例

参照:法務省HP

4-4. 登記所へ申出をする

申出書と法定相続情報一覧図に必要書類を添付して、以下の登記所に申し出を行います。提出された書類を登記官が確認して、間違いがなければ法定相続情報証明が交付されます。

申請できる登記所

(1)被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地

窓口で申請して受け取る場合には、本人確認のために「申出人の表示」欄に記載した住所及び氏名と同一のものが記載された公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票記載事項証明書(住民票の写し)等)を持参してください。なお、申し出の際に添付した戸籍謄本などの書類は返却されます。

4-5. 各種相続手続きに利用

不動産名義変更や株式の名義変更、また銀行口座の閉鎖と預金払い戻し等、相続手続きの際に、法定相続情報一覧図の写しを持参して、それぞれの窓口に提出します。ただし3-3. のように、機関によっては戸籍関係書類一式を求められる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

5. まとめ

相続手続きとは、「多くの名義変更をしていくこと」と言っても過言ではありません。不動産の登記変更(=相続による所有者移転手続き)や株式、各種金融機関の口座の閉鎖・預金継承の手続き、電気・ガス・水道などライフラインの契約者名など、故人の名義だった契約とその変更の数に驚くほどです。

ライフラインの名義変更は比較的簡単に行えますが、不動産や株式、金融機関関係の変更には、亡くなった方や相続する方の戸除籍謄本等を何通も収集し、手続きのたびに提出する必要がありました。その過程で、A銀行で手続きを終了するまでは、戸籍関係の書類一式がA銀行に留め置かれていたので、A銀行とB銀行、同時に手続きを進めることができず、名義変更は1か所ずつ行っていくしかありませんでした。

しかし、この法定相続情報証明制度がスタートしたことで、法務局が発行する法定相続情報一覧図の写しがあれば、名義変更のために戸籍関係の書類を提出する必要がなくなりました。また複数の法定相続情報証明を発行してもらえば、いくつもの手続きを並行して行うことができるようになりました。まだ一般に浸透していないこの制度ですが、名義変更する機関が多い方が利用すればよりメリットが大きいでしょう。賢く使って、相続手続きのストレスを少しでも軽減してくださいね。

監修
アイリス綜合行政書士事務所
行政書士・FP 田中真作
早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
相続や離婚などの一般市民法務相談や各種許認可業務など幅広く対応。
田中真作のFacebookページ
Text by:西山千登勢
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