喪主の挨拶は1~3分を目安に、「葬儀・告別式の参列へのお礼」「亡くなるまでの経過」「故人の人柄や印象に残っていること、晩年の様子」「生前のお付き合いに対するお礼」「今後についてのお願い」などを話します。喪主挨拶は準備をする時間がほとんどない中で考えなければなりません。うまく話そうとせずに、内容は簡潔に分かりやすい言葉でまとめ、率直な感情を表現するといいでしょう。
葬儀・告別式 出棺時の喪主挨拶
1.喪主挨拶の構成と内容
喪主挨拶は1~3分を目安にまとめましょう。準備期間が十分あったわけでも、とりわけ上手くスピーチをしなければならない場面でもありません。挨拶の内容を全て暗記しなくても大丈夫です。メモを見ながらでもいいので落ち着いてゆっくりと話しましょう。
構成は主に5つの内容で組み立てます。1.葬儀・告別式の参列へのお礼、2.亡くなるまでの経過、3.故人の人柄や印象に残っていること、晩年の様子、4.生前のお付き合いに対するお礼、5.今後についてのお願い、です。それぞれの内容を順に説明します。
1.葬儀・告別式の参列へのお礼
寒い中、暑い中、忙しい中など、時間を割いて参列してくれたことへのお礼を述べます。
2.亡くなるまでの経過
亡くなった経緯を詳細ではなくても、例えば「○○年前から△△を患い、○○日の夜に家族に見守られながら穏やかな顔で旅立ちました。」というように、大まかな様子を知らせるといいでしょう。とくに突然亡くなった場合は、会葬者の側も一体何があったんだろう、という気持ちがあるのである程度説明した方がいいでしょう。
3.故人の人柄や印象に残っていること、晩年の様子
故人の性格や家族から見てどんな人だったのか、印象的な出来事について一言触れると会葬者も故人の顔を思い出し、温かい気持ちになるでしょう。また、ここ数年の故人の生活(仕事、ボランティア、趣味など)について触れてもいいでしょう。
4.生前のお付き合いに対するお礼
「皆様方には、生前○○と親しくお付き合いをいただきまして、故人に代わりまして心よりお礼申し上げます。」など、故人の代わりに感謝を述べます。
5.今後についてのお願い
故人が結んでくれた縁を今後とも大切にしたいというお願いを伝えます。
ただし、もし気持ちの整理ができない、混乱してあれこれ考えが及ぶべくもないなどの場合は、1.参列へのお礼、と4.生前のお付き合いに対するお礼、だけでも短く述べられれば十分です。
2.避けるべき言葉(忌み言葉)
喪主の挨拶のときに気をつけるべき忌み言葉は以下のようなものです。
- 不吉なことを連想させる言葉:浮かばれない、迷う、九や四、消える、落ちる
- 重ね言葉:重ね重ね、ますます、しばしば、たびたび、返す返すも、くれぐれも、再三
- 不幸が続くことを連想させる言葉:重々、追って、続いて、なお
- 死に関する直接的な表現:死亡、死ぬ、急死 →(「亡くなる」と言いかえる)
- 生に関する直接的な表現:生存、生きている →(「生前」と言いかえる)
「死ぬ」は「亡くなる」に、「生きている」は「生前」などやわらかい表現にいいかえましょう。 また、忌み言葉ではありませんが宗教上の違いで気をつけるべき点もあります。仏教では「天国」は使わないようにします。さらに浄土真宗では、亡くなると同時に阿弥陀様に救われて浄土に生まれ仏となる「往生即成仏」という考えから、「冥福」「霊前」といった言葉は使いません。
キリスト教や神道では「成仏」「供養」「冥福」「往生」「お悔やみ」といった仏教の言葉を使わないようにします。
3.喪主挨拶文例
ケース別のポイント、挨拶文例をあげますのでご参考ください。1章でも述べたように、気持ちの整理ができていないや、悲しみの只中でなんと言っていいかわからない場合には、参列のお礼と生前のお付き合いに対するお礼だけでも短く述べられれば十分です。
喪主が故人の配偶者の場合
最期の様子や、喪主にとってどんなパートナーだったかにふれるとより温かみのある挨拶になるでしょう。
本日は○○な中、故○○の葬儀・告別式にご参列いただきありがとうございます。おかげさまで滞りなく式を終えることができ、ここに出棺の運びとなりました。故人が生前に賜りましたご厚誼(こうぎ)に、故人に代わりまして心より感謝申し上げます。
(妻または夫)は○日○時〇分、家族に看取られながら息を引き取りました。享年△△でした。○年前に健診で△△(病気)が見つかり、その後は入退院の繰り返しながら頑張ってきましたが、最後は穏やかな顔で旅立ちました。入院中はご丁寧なお見舞いをいただきまして、ありがとうございました。努力家で優しい(妻または夫)は子どもや孫に囲まれにぎやかに晩年を過ごすことができました。
今後とも私たちをご支援いただきたくお願い申し上げます。また、本日は最後までお見送りいただきまして、誠にありがとうございました。
喪主が故人の子の場合
どんな人生だったのか、どんな母、父だったのかについて触れると、より故人の人となりが思い出されるでしょう。
本日は亡き父(または母)、○○(故人の名前)の葬儀並びに告別式にご参列いただき、誠にありがとうございました。○○の生前中にはひとかたならぬご厚誼に預かりまして、深く感謝しております。
また入院中にはご丁寧にお見舞いいただきまして、故人に代わりましてお礼申し上げます。
○○は○○で生まれ育ち、約△年間にわたって□□業を営んできました。30代半ば、私たち子どもがまだ幼い時には○○を患い2度の手術と入院をしましたが、持ち前の真面目さでここまで頑張ってまいりました。ここ数年は孫の面倒をみることと趣味の○○を楽しみにしてきましたが、△歳の天寿を全うし、幸せな人生を閉じました。
本日はこのように大勢の方々にお見送りいただき、さぞかし故人も喜んでいることと存じます。
残された私どもは未熟者ではございますが、今後とも故人同様、ご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたしまして、ご挨拶に代えさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
突然亡くなった場合
会葬者も驚いているので、亡くなるまでの経緯と突然の死に対する無念を素直に表現してもいいでしょう。
本日は、皆さまご多用のところ〇〇(父、母など故人との関係性)、〇〇(故人の名前)のためにご会葬いただきまして誠にありがとうございました。
○○は、○日朝に脳出血で倒れて□□病院に救急搬送されましたが、そのまま帰らぬ人となってしまいました。私どもとしても急なことで、正直に申し上げてまた実感がありません。○○歳でしたが、最近は△△のボランティア活動を熱心に行い、仲間の皆さまとの交流を楽しみにしていました。今後も旅行で行きたいところや挑戦したいことがたくさんあったようですが、そんな折の急逝とあり、家族としても残念な思いでいっぱいです。
突然のことにもかかわらず、本日はこのように大勢の方々にお見送りいただきましたこと、改めてお礼申し上げます。○○もきっと喜んでいることと思います。
最後になりましたが、○○が生前賜りましたご厚情に深く感謝申し上げて、ご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。