焼香は通夜や葬儀、法要、お墓参りなどの際に行う仏式の儀式です。焼香には「線香」または「抹香」を用います。線香は粉末にした香木や天然香原料を混ぜ合わせて、スティック状などの形にしたものです。抹香は刻んだ香木や香原料を調合した粉末状のもので、炭を熾して(おこして)灰の上に置き、その上に載せて焚くものです。一般的に、通夜や法事では線香を、葬儀や告別式では抹香(粉末状)が使われることが多いようです。
焼香は僧侶による読経の間に行われます。焼香の種類は、一人ずつ前に出て線香または抹香で焼香する方法と、香炉を回す回し焼香があります。また、宗派によって焼香の作法が少しずつ異なります。
1. 焼香の基本的な作法
1-1. 座礼焼香(畳敷きの会場が多い)
自宅や寺院など、畳敷きの会場で座って焼香する場合の手順は以下のとおりです。
座礼焼香の手順
1. 前に出て正座で数珠を左手に持ち僧侶に一礼、遺族に一礼、腰をかがめた姿勢で前に進む。
2. 祭壇前の座布団に正座をして遺影に手を合わせて、一礼。
3. 抹香を親指と人差し指・中指の3本でつまみ、目~額の高さに押しいただく。数珠は左手にかけて持つ。
4. 香炉の中に静かに落とす。これを1~3回繰り返す。左手は軽く添えるか、次の合掌に備えて自然な形に。
5. 再び、手を合わせて遺影に向けて一礼。
6. 最後に僧侶とご遺族に一礼、腰をかがめた姿勢で席に戻る。
1-2. 立礼焼香(椅子席の会場が多い)
基本的な手順は座礼焼香と同じです。
立礼焼香の手順
- 1. 数珠を左手に持ち僧侶に一礼、遺族に一礼、前に進む。
- 2. 遺影に手を合わせて、一礼。
- 3. 抹香を親指と人差し指・中指の3本でつまみ、目~額の高さに押しいただく。数珠は左手にかけて持つ。
- 4. 香炉の中に静かに落とす。これを1~3回繰り返す。左手は軽く添えるか、次の合掌に備えて自然な形に。
- 5. 再び、手を合わせて遺影に向けて一礼
- 6. 僧侶とご遺族に一礼して席に戻る。
1-3. 回し焼香(会場が狭く移動しづらい場合や参列者が多い場合)
立礼の場合と座礼の場合があります。
回し焼香の手順
- 1. 僧侶、喪主(施主)、近親者、参列者の順に香炉を回す。
- 2. 香炉が回ってきたら、軽く会釈して受け取る。
- 3. 香炉を自分の正面に置く。
- 4. 遺影に向かって一礼
- 5. 左手を添えて抹香を親指と人差し指・中指の3本でつまみ、目~額の高さに押しいただき、香炉の中に静かに落とす。数珠は左手にかけて持ち、軽く添えるか、次の合掌に備えて自然な形に。
- 5. 手を合わせて一礼。
- 6. 香炉を次の人に回す。
1-4. 線香による焼香
線香による焼香の手順
- 1. 焼香台の手前まで進み出る。僧侶とご遺族に一礼。
- 2. 座礼なら座布団に正座、立礼なら焼香台の正面に立ち、遺影に向けて一礼。
- 3. 線香を手に持ってろうそくの炎に近づけ、線香に火をつける。
- 炎が出たら手であおぐか、線香を上から下にすっと下げて消す。
- 息を吹きかけて消すのはNG。
- 線香の本数は宗派によって違い、天台宗・真言宗は3本、浄土宗は1本か2本
線香の数は、浄土真宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗1本、と決まっていますが、必ずしもこの通りでなければいけないというわけではありません。
- 4. 線香を香炉に立てて手を合わせる。
- 5. 座礼なら膝をついたままの姿勢で座布団から下り、立礼ならそのまま数歩下がり、遺族に一礼、席に戻る。
2. 宗派別焼香の作法
宗派によって焼香の回数(抹香をつまんで香炉に落とす回数)に違いがあります。自分の宗派がはっきり分かっていれば、その宗派の回数を焼香します。自分の宗派が分からない場合や他宗教、無宗教の場合は、前の人や周囲の人に合わせて行います。最近は、儀式が簡略化される傾向もあり、また参列者が多い場合は焼香を1回にしたり、会食の時間の関係などから「1回にしてください」と言われることもあります。
天台宗:1回または3回
真言宗:3回
浄土宗:とくに決まりはない
浄土真宗本願寺派:額に押しいただかずに1回
浄土真宗大谷派:額に押しいただかずに2回
臨済宗:1回または2回(1回目は額に押しいただき、2回目はそのまま落とす)
曹洞宗:2回(1回目は額に押しいただき、2回目はそのまま落とす)
日蓮宗:1回または3回