大切な家族が眠るもうひとつの我が家ともいえるお墓。昨今ではセキュリティ体制の整った霊園や墓地が多く存在し、安心して利用できることで支持を得ています。今回は、これまで私が約200件の霊園や墓地を取材した経験を踏まえて、「民営霊園」「公営霊園」「寺院墓地」それぞれのお墓のセキュリティ事情について紹介したいと思います。
お墓選びのヒント ―セキュリティで選ぶ
お墓のセキュリティ対策が大切な理由
霊園や墓地における犯罪被害としてまず挙げられるのが、管理者が不在となる夜間に墓域に侵入して窃盗を行う、いわゆる「墓荒らし」です。海外に持ち込んでまとめて売りさばくとある程度の金額になることから、花立や香炉などの金属類がおもに狙われます。そのほかに、遺骨に副葬されている故人が生前身に着けていた指輪などの宝飾品がターゲットとなるケースもあるようです。
また、お墓参りに来た人を狙った「置き引き」や「車上荒らし」への注意喚起を行っている霊園もよくみられます。日中といえども犯罪の被害にあう可能性はあるので、お墓を建てる際には、できるだけ防犯意識の高い霊園や墓地を選ぶのが無難だといえるでしょう。
民営霊園はセキュリティ対策に積極的
公営霊園や寺院墓地と比べると、管理費が高めに設定されていることの多い民営霊園。利用者の獲得に積極的なこともあり、十分に安心できるセキュリティ対策がとられているところがほとんどです。
園内の造りをみると、墓域に入る手前に管理事務所が建っていて、そこを通らないと園内に足を踏み入れることができないケースが多くみられます。管理者が常駐している日中は、この時点でまず挨拶や声掛けが行われ、防犯意識の高い霊園であるというアピールがなされるとともに、一般の利用者と比べて不審な態度や行動をとっていないかのチェックが入る仕組みになっています。また、大抵の管理事務所のドアや窓には大手警備会社のステッカーが貼られており、管理者が不在となる時間帯の警備対策もなされていることがわかります。
以前訪問したある民営霊園では、近隣の霊園での不審者情報を受け、夜間対策に赤外線センサーを導入したというところもありました。霊園の周囲を取り囲むようにセンサー機器の付いたポールが立てられており、目には見えませんが、夜になるとスパイ映画のごとく赤外線が張り巡らされるという徹底ぶり。侵入者を察知し多彩には、直ちに警備会社に通報が行き、警備員が駆け付けるとのことでした。
ここまで綿密なセキュリティ対策は珍しいにせよ、公営霊園や寺院墓地と比べてセキュリティ意識の高さがうかがえる民営霊園は、ごく一部の例外はあるかもしれませんが、お墓の安全面という点では基本的に問題はないといえます。
公営霊園は千差万別
各自治体が運営する公営霊園のセキュリティ対策は、霊園ごとに千差万別なのが実情です。 管理事務所が設置されていて、開門中は管理人が常駐しているところも多いほか、管理を民間業者に委託して民営霊園と変わらないセキュリティ対策をとっている公営霊園も珍しくありません。また、斎場を併設している公営霊園のなかには、霊安室を備えていることから夜間でも安心できる警備態勢がとられているところもあります。
一方、いわゆる「共同墓地」のような公営霊園には、管理事務所が設置されていないところもあり、なかには墓域を囲む塀や門さえないこともあります。同じ自治体が運営していても、霊園によってセキュリティ体制が大きく異なる場合があるので、公営霊園の利用を検討する際には、それぞれの霊園に足を運んで実際に自分の目で確かめてみるのが大切です。
寺院墓地も意識高まる
菩提寺と檀家という関係によって、お墓の管理者と利用者の結びつきが宗教的にも強い寺院墓地には、まず部外者が足を踏み入れにくい雰囲気があり、気づかぬうちに心理面での防犯対策が講じられているといえます。
設備面では、最近は寺院そのもののセキュリティ対策が意識されるようになってきていることもあって、民営霊園と同様の大手警備会社のステッカーが貼られているなど、墓域についてもしっかりとしたセキュリティ対策が施されるようになってきている印象があります。
以前取材で訪問した寺院墓地では、入り口に監視カメラが設置されており、住職がカメラを通して私が訪れたのをチェックしていて、こちらが挨拶に伺う前に出迎えに来られたというケースもありました。
民営霊園や公営霊園と比べて古くから存在するところが多い寺院墓地では、特に設備に手を入れていないところが依然あるものの、セキュリティへの意識は大きく高まり、相応の対策をとるところが増えてきている様子がうかがえます。
霊園・墓地のセキュリティ事情まとめ
「民営霊園」「公営霊園」「寺院墓地」と、運営形態に分けてそれぞれのセキュリティ事情を見てきましたが、まとめると次のようになります。
民営霊園
全般的に管理費相応の十分なセキュリティ対策が講じられている。安心面を重視してお墓を建てる場合には最有力候補となる。
公営霊園
霊園ごとにセキュリティ対策がまちまち。高水準な民営霊園レベルのところもあれば、管理者が常駐していないところもある。同じ自治体が運営していても、霊園によって大きな差がみられることもあるので注意。
寺院墓地
民営霊園や公営霊園と比べて管理者と利用者の結びつきが密接であり、まず部外者が足を踏み入れにくい雰囲気がある。最近はセキュリティへの意識が高い寺院が増え、民営霊園と同様に民間の警備会社と連携して対策をとるところも多くなってきている。
このように「民営霊園」「公営霊園」「寺院墓地」で三者三様となっているお墓のセキュリティ事情。現地に見学に赴いた際には、忘れずにチェックするようにしてください。