東京の火葬料はなぜこんなに高い?多死社会と都の検討会、「外資」の噂の真相

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(c) Gemini / AI Generated

東京23区の火葬料が「9万円」まで上がり、SNSでは「外資(中国資本)が釣り上げている」という声も見られます。一方で、東京都は2026年6月に有識者による検討会を設置し、10月14日に第2回を開く予定です。何が起きていて、何が確認された事実で、何がまだ検証が必要な言説なのか。一次情報にもとづいて整理します。

index 目次

何が起きているのか:東京都「火葬場に係る検討会」、10月に第2回

東京都は2026年10月5日、「火葬場に係る検討会(第2回)」を10月14日に開催すると発表しました。この検討会は、東京都が火葬場を「地域住民にとって必要不可欠な公共インフラ」と位置づけ、将来にわたって安心して火葬を行える体制を確保することを目的に、2026年6月4日に設置されたものです。都内自治体の首長や有識者が参加し、火葬場の新設・増強といった対応策や、公営・民営の役割分担、料金の考え方などを議論しています(※1)。

7月以降は検討部会で実務的・専門的な議論が進められており、第2回では、これまでの議論の整理(火葬需要の増加への対応、整備手法など)が議題に予定されています(※1)。

この検討会が設置された背景には、後述する「多死社会」による火葬需要の増加見通しと、東京23区特有の「火葬料金の高騰」という2つの課題があります。

東京23区の火葬料金帯(公営・民営)の比較イメージ図

なぜ東京の火葬料はこんなに高いのか

東京23区の火葬のうち、約7割は民営事業者が担っています。中心的な事業者である東京博善の火葬料は、2021年の5万9,000円から、現在は9万円まで上がりました(※2)。23区の年間火葬件数は約9万件にのぼります(※2)。

一方、公営火葬場の料金は4万4,000円〜5万9,600円程度です(※2)。東京都保健医療局が令和8年3月に公表した実態調査(都内公営18・都外公営12・都内民営8・都外民営6の計44施設が対象)によると、公営火葬場では住民向け料金が無料または2万円未満の施設が約9割を占めるのに対し、民営火葬場では8万円以上の施設が約7割を占めています。また、都内の民営火葬場は調査対象期間中にすべての施設で料金改定(値上げ)を行っていた一方、公営火葬場で料金改定を行ったのは18か所中わずか4か所でした(※3)。

東京に公営火葬場が少ない背景には、明治時代にさかのぼる歴史的な経緯があります。東京博善は1887年(明治20年)、実業家の木村荘平によって設立されました。前年に東京でコレラが大流行し、遺体の増加と埋葬場所の不足が社会問題になっていたことが、火葬場の整備が進んだ一因とされています(コレラと火葬の普及の関係については、SOBANIの別記事「コレラの流行と火葬の普及 ―火葬の近代史」でも詳しく解説しています)。その後、1920年代には僧侶が社長を務める時期もあり、宗教的な使命感をもって運営されてきた歴史があります。1990年代以降は出版・印刷業の廣済堂グループが資本面で関わるようになり、2020年には廣済堂の完全子会社となりました(※9)。

23区内には火葬場が9施設ありますが、公営は臨海斎場・瑞江葬儀所の2施設のみで、残る7施設(堀ノ内・四ツ木・町屋・代々幡・桐ヶ谷・落合の各斎場など)は東京博善が運営しています(※7)(※9)。公営に比べて民営の割合が高いという構造そのものが、東京の火葬料が全体として高くなりやすい理由のひとつです。

他の大都市と比べても、東京の火葬料の高さは際立っています。葬儀業界の情報サイトの集計(※7)では、横浜市は1万2,000円、大阪市は1万円、名古屋市は5,000円程度とされており、関東・関西の主要50施設の平均は1万7,910円という数字も紹介されています。この集計は東京博善の9万円への値上げ前の時点のデータを含む可能性がありますが、それでも東京と他都市の料金差の大きさが分かります。立川市や八王子市など、都内でも自治体によっては住民向けに無料で火葬場を提供している例もあります(※7)。東京博善の社長は取材に対し、人件費やエネルギーコストの上昇を理由に「9万円でも赤字だ」と説明しています(※4)。

「外資・中国資本が釣り上げている」は本当か

2024年の値上げ以降、SNSやブログを中心に「中国資本が火葬料を釣り上げている」という言説が広がりました。東京博善の親会社である広済堂ホールディングスの筆頭株主(会長CEO)は羅怡文氏で、同氏は免税店「ラオックス」の買収などで知られる経営者です(※5)。この資本関係自体は事実ですが、「だから値上げされている」という因果関係については、慎重に見る必要があります。

ITmediaビジネスの検証報道(2025年12月17日)によれば、東京博善の火葬料(9万円)は、同業の民営火葬場である戸田葬祭場(8万円)や日華多摩葬祭場(9万円)とおおむね同程度の水準であり、「外資系だから特別に高い」とは言い切れない実態が示されています(※5)。民営火葬場は公的な補助を受けずに独立採算で運営する必要があるため、どの事業者であっても料金は公営より高くなりやすい、という構造的な事情も指摘されています。

一方で、2025年6月には国会でも「中国資本の影響による火葬・葬儀に関する質問主意書」が提出されており(※6)、個人情報の管理や重要インフラとしての安全保障上の懸念などが論点として挙がっています。こうした懸念自体は国会で正式に取り上げられた事実ですが、現時点では「懸念が示された」という段階であり、「実際に問題が起きている」と確定した話ではありません。特定の国籍や民族を一括りに非難する形ではなく、個別の企業統治・情報管理・料金の妥当性という具体的な論点として受け止めることが大切です。

多死社会という大きな背景:2065年に死者数20万人の推計

火葬料の問題の根底には、「多死社会」という大きな構造変化があります。厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年(令和7年)の日本全体の死亡数は158万9,489人でした(※8)。出生数は67万1,236人で、自然減少数は91万8,253人にのぼり、19年連続で人口の自然減少が続いています(※8)。

東京都の将来人口推計では、都全体の死亡者数は2065年頃に年間約20万人に達する見通しとされています(※3)。高齢化が進むにつれて死亡者数が増え、火葬の需要が増加する一方で、火葬場という施設はすぐには増やせません。炉の増設や新設には数年単位の計画と、近隣住民との合意形成が必要になるためです。

このため東京都の検討会では、料金の問題だけでなく、将来の火葬能力をどう確保するか(新設・増強の方法、公営・民営の役割分担)が主要な論点になっています(※1)。多死社会は東京だけの課題ではなく、日本全体で火葬場の受け入れ能力が追いつかなくなる「火葬待ち」が各地で懸念されている、より大きな社会課題の一部でもあります。

論点の整理:運営会社・行政・利用者、それぞれの立場

この問題には、立場によって異なる見方があります。結論を決めつけず、それぞれの考え方を整理します。

運営会社側の説明:人件費・燃料費などのコスト上昇により、現在の料金でも経営は厳しいとしています(※4)。

行政・議会側の動き:公明党の東京都本部などは、火葬場の経営主体を地方自治体に限定することや、火葬料を都知事の認可制とする墓地埋葬法の改正、23区内への公営火葬場の新設などを要望しており、2025年10月時点で都内9つの区議会が意見書を採択しています(※2)。東京都も検討会を通じて、公営・民営の役割分担や行政の関わり方を整理しようとしています(※1)(※3)。

利用者側の実感:急な死別の中で、火葬料だけで公営の数倍かかることへの戸惑いや、選択肢の少なさへの不満が指摘されています。

法律・制度の改正や料金のあり方は、専門家や行政の議論を通じて決まるものであり、本記事はいずれの立場が正しいかを断定するものではありません。検討会の議論の行方は、今後も公式発表を確認していく必要があります。

私たちにできること:もしものときに困らない準備

火葬料をめぐる制度の議論は時間がかかりますが、私たち一人ひとりができる備えもあります。

まず、お住まいの自治体に公営火葬場があるかどうかを事前に確認しておくと、いざというときの選択肢が広がります。公営・民営の料金差は数万円単位になることもあるため、葬儀社に依頼する際は火葬料を含めた見積もりを複数比較することも有効です。

また、家族が急に亡くなった場合、火葬場や葬儀の手配は数日のうちに判断を迫られます。費用面や供養の方針について、落ち着いているときに家族で一度話し合っておくことも、終活の一環として意味があります。

葬儀費用の見積書とペン、湯呑みが置かれたテーブルの様子

遠方に住んでいて火葬場やお墓に頻繁に足を運べない方、費用や管理の負担を抑えてご自宅で供養をしたいという方には、自宅納骨のミニ骨壺「ZAYU」のような手元供養という選択肢もあります。火葬場や墓地をめぐる制度がどう変わっても、供養そのものは手元で続けられる形を選ぶことができます。

よくある質問

Q. 公営火葬場は誰でも使えますか?
多くの公営火葬場は、その自治体に住民登録がある方(またはその遺族)を対象にした「住民料金」を設定しており、住民以外は割高な料金になるか、利用できない場合があります。利用条件は自治体ごとに異なるため、事前にホームページ等で確認しておくと安心です。

Q. 火葬料は今後も値上がりしますか?
東京都の検討会がどのような結論を出すかによって変わってくるため、現時点で断定はできません。人件費やエネルギーコストの上昇が続けば、民営施設では値上げの動きが続く可能性がありますが、都による関与の強化や公営施設の新設が進めば、選択肢が増えて状況が変わることも考えられます(※1)(※2)。

Q. 火葬料が高い地域に住んでいる場合、対策はありますか?
生前から葬儀社に相談して見積もりを取っておく、公営火葬場の利用条件を確認しておく、家族間で費用や供養の方針を共有しておく、といった準備が有効です。急な費用負担が心配な場合は、互助会や葬祭費用の給付制度(国民健康保険等の葬祭費)の有無も自治体に確認してみましょう。

東京の火葬・お墓についてもっと知る

東京の火葬事情や費用について、関連する記事もあわせてご覧ください。遠方でのお墓参りや管理が難しい方には、自宅で供養できる方法もあります。

火葬料約30%値上げ!葬儀社側は反発も〜東京の火葬場が抱える特殊事情を見る/ 自宅納骨のミニ骨壺「ZAYU」を見る

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法律・税務・宗教上の判断を要する内容については、個別の事情により対応が異なる場合があります。具体的な手続きやご判断にあたっては、専門家(弁護士・行政書士・税理士・菩提寺など)にご確認・ご相談いただくことをおすすめします。

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※1 東京都「火葬場に係る検討会(第1回・第2回)の開催について」(都庁総合ホームページ、2026年6月・10月公表)
※2 公明党東京都本部「東京23区で高騰する火葬料」(2025年10月17日)
※3 東京都保健医療局「火葬場の運営等に係る実態調査<概況>」(令和8年3月公表)
※4 日経ビジネス「東京の火葬料高騰問題、渦中の東京博善社長に聞く『9万円でも赤字だ』」
※5 ITmediaビジネス「『中国資本が火葬料を釣り上げている』は本当か」(2025年12月17日)
※6 衆議院「中国資本の影響による火葬・葬儀に関する質問主意書」(第217回国会 質問第二五二号、2025年6月11日提出)
※7 葬儀情報サイトの集計記事(東京都内の火葬場数・公営民営の料金帯、他都市との比較。本記事公開時点の最新価格〈東京博善9万円〉への反映は要確認)
※8 厚生労働省「令和7年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
※9 ウィキペディア「東京博善」(設立年・沿革・資本関係の記述。企業の公式発表との照合を推奨)

Text by:SOBANI編集部
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