仏壇を選び時に、私たちは何を基準に選べばよいのでしょうか。宗派、大きさ、デザイン、価格、さまざまな条件の中から仏壇を1つ決めなければなりません。仏壇にはさまざまな種類がありますが、まずは大きく「唐木仏壇」、「金仏壇」、「家具調仏壇」の3種類に分けられることを把握しておきましょう。この記事を読み進めることで、あなたにぴったりな仏壇が見つけられるよう、心を込めて丁寧に解説します。参考にしていただければ幸いです。
仏壇の種類と選び方――唐木仏壇、金仏壇、家具調仏壇
1 伝統的な仏壇はお寺の本堂を模している
仏壇は、「家の中のお寺」と呼ばれるほどで、伝統的な仏壇はお寺の本堂を模しています。たとえば伝統的な仏壇は、2枚扉、つまり、扉と障子が取り付けられています。これは利便性のためでもあるのですが、お寺の扉の構造を再現しています。ちなみに外側の扉は寺院の「山門」を表し、内側の障子は本堂内の「巻障子」(本堂の内陣と外陣の境界に用いられる)を表しています。
また金仏壇(くわしくは後述)の場合、「宮殿柱」と呼ばれるご本尊の左右に立てられる柱がありますが、これもお寺の本堂が浄土真宗の大谷派と本願寺派で様式が異なるように、仏壇のしつらえもそれぞれの宗派で異なっています。伝統的な仏壇は、一見意味の分からないものばかりが装飾されているように思われますが、それらはお寺の飾りを再現したものであり、細かい仏具や仕様ひとつひとつに伝統的な意味が含まれているのです。
一方、家具調仏壇と呼ばれる仏壇がありますが、これらはお寺の本堂を模すよりは、現代の居住空間やライフスタイルにあわせ様式が簡略化され、合理性が重視されたデザインとなっています。
2 仏壇は大きく分けて3種類
仏壇は大きく3種類に分けられます。唐木仏壇、金仏壇、家具調仏壇です。それぞれ材質や加工方法の違いによって区別されます。
唐木仏壇 | 金仏壇(塗り仏壇) | 家具調仏壇 | |
---|---|---|---|
宗派 | 主に、天台・真言・浄土・臨済・曹洞・日蓮 | 主に浄土真宗、一部で浄土宗など | 全宗派 |
様式 | 伝統的 | 伝統的 | 新しい |
材質 | 表面:銘木 芯材:天然木材やMDF |
表面:漆塗りや金箔 芯材:天然木材など |
木材など |
雰囲気 | 重厚木目が美しい | 豪華装飾がきらびやか | リビングに合うモダンデザイン |
2-1 唐木仏壇
唐木仏壇とは、銘木、つまり希少性のある高級木材を用いて作られた仏壇の総称です。
見た目や材質の特徴
唐木仏壇は、高級銘木を用い、きれいな木目を活かした仕上がりが特徴です。外国の銘木である紫檀や黒檀や鉄刀木(タガヤサン)、国内の銘木である欅(ケヤキ)や槐(エンジュ)や屋久杉などが代表的な原材料です。ただし***の記事で細かく解説していますが、芯材には合板やMDF(木材と樹脂で板状に成型された素材)が使われ、表面材にのみ銘木が使われていることが多いでしょう。
宗派
唐木仏壇は主に、浄土真宗以外の宗派(天台宗、真言宗、浄土宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗など)で使用します。浄土真宗は本来金仏壇が正式ですが、手入れが大変なことから、唐木仏壇を用いる人も増えてきました。
中の構造
唐木仏壇の内部は基本的には4段構造です。
1段目(最上段)はご本尊(仏様)の段。仏像や掛け軸など、それぞれの宗派で礼拝する本尊を祀ります。
2段目はご先祖様の段、位牌を並べます。
3段目は「五具足」を並べます。五具足とは、仏教における大切なお供え物のことで、線香、ローソク等の灯明(1対)、お花(1対)の合計5点のことです。
4段目(最下段)はお供え物の段です。
天井からは「灯籠」と呼ばれる灯りや、「瓔珞(ようらく)」と呼ばれる装飾用の仏具を吊るし、このあたりもお寺の荘厳を忠実に再現します。
2-2 金仏壇
金仏壇とは、漆塗りや金箔押しが特徴の仏壇の総称です。「塗り仏壇」と呼ぶ地域もあります。
見た目や材質の特徴
金仏壇は一目見るとすぐに分かります。漆塗りや、金箔、金具、さらには蒔絵や彩色などが施されているからです。これは、阿弥陀如来作られたとされる「極楽浄土」を表現しています。阿弥陀如来を礼拝する浄土真宗の寺院では、本堂全体が漆や金箔などで荘厳されています。金仏壇はこの寺院のお飾りを再現しているのです。
宗派
金仏壇は主に浄土真宗で使用します。浄土真宗は主に本願寺派(お西)と大谷派(お東)に分けられます。それぞれ本堂様式が異なるために、それに合わせて仏壇の特徴も異なります。
一部、阿弥陀如来を礼拝する浄土宗でも金仏壇を用います。浄土真宗以外で用いる金仏壇には位牌を並べる位牌段が設置されています。
中の構造
金仏壇は、そのほとんどが浄土真宗の仏壇として用いられています。内部構造において唐木仏壇との一番の違いは、位牌段(唐木仏壇でいうところの2段め)があるかないかです。なぜなら、浄土真宗では仏壇に位牌を祀らないからです。
日本の仏教は、インドで発祥した仏教と、仏教伝来以前の先祖祭祀が組み合わさって発展してきました。そのため、多くの宗派において、同じ仏壇の中に各宗派が本尊として礼拝する諸仏と、自分たちのご先祖様である位牌を祀ります。しかし浄土真宗の教えでは、阿弥陀如来だけを拝むべきだとしているため、基本的には位牌は不要なのです(一部位牌を祀るケースもあります)。金仏壇では、位牌を並べない代わりに、「過去帳」と呼ばれるご先祖様の名前や命日を記す帳面を仏具として置きます。
また、「上卓(うわじょく)」と「前卓(まえじょく)」と呼ばれる机があるのも金仏壇の特徴です。それぞれ、お寺の本堂では、阿弥陀如来の前に上卓を、さらにその手前に前卓を置き、その上に五具足などを並べます。
上記が一般的な金仏壇の構造ですが、地域性があり、前卓(まえじょく:詳細は後述)を置くタイプや置かないタイプ、3段のものもあれば4段のものもあります。
2-3 家具調仏壇
家具調仏壇は、お寺の本堂を模すよりも、ライフスタイルや居住空間に合うよう合理的に簡略された新しいデザインの仏壇と言えます。そもそも仏壇は仏間に納まるものとして考えられていましたが、いまではマンションどころか一戸建てでも仏間のない家が多く、このような住居では居間やリビングに置かれます。そのため、昔ながらの仏壇よりも、周りの家具などとうまく調和するデザインのものが求められ、いまや家具調仏壇はスタンダード化しつつあります。
見た目や材質の特徴
家具調仏壇は、家具に見間違えるようなモダンでおしゃれなデザインです。主に木製の仏壇が多く、ウォールナット、タモ、メープルなどの洋風家具に好んで用いられる木材が選ばれています。その他、ピアノ塗装や、鏡面仕上げ、漆塗りの家具調仏壇もあります。デザインや仕上がりに制約がないため、自由度が高く、利用者のライフスタイルやニーズに合わせたさまざまなものがリリースされており、コロ付き仏壇や壁掛け仏壇などもあります。
宗派
家具調仏壇は宗派を問いません。中にご安置する本尊を変えるだけで、どの宗派でも利用可能です。
中の構造
前段でも述べたように、デザインの自由度が高いため、内部構造もさまざまですが、基本は3段〜4段構造です。上段に本尊、2段目に位牌、3段目や4段目に五具足やお供え物を並べます。
3 台付き仏壇に上置き仏壇 置く場所によって異なる仏壇の形状
仏壇は大きく3種類に分けられることをすでに説明いたしましたが、それぞれの仏壇にさらに置く場所・置き方の違いで「台付き仏壇」と「上置き仏壇」とがあります。
3-1 台付き仏壇
台付き仏壇とは、床に直に置くタイプの仏壇です。上の仏壇部分と下の収納部分とが分かれるのが特徴です。
総高さは、唐木仏壇も金仏壇も、背の低いもので130cm程度、背の高いものですと180cmを超えるものもあります。伝統的な仏壇は、仏間に納まることを前提に作られています。仏間寸法は家屋によっても異なりますが、一般的に框(かまち、床から約10cm程度上がる)から長押(天井からの垂れ壁)が170cm〜180cmで、この中に仏壇を納めます。仏壇を仏間に納める場合は、台付き仏壇がおすすめです。
台付きの家具調仏壇では、120cmから大きいもので150cmくらいまでのものがあり、伝統的な唐木仏壇や金仏壇よりはコンパクトに作られています。これは、仏間ではなく居間やリビングに置かれることを想定してあるためです。
台付き仏壇は、下が収納になっていて、お線香やろうそくなどの仏具を納めるのになにかと便利です。もしもスペースに余裕があれば、台付き仏壇の方が使い勝手がいいでしょう。
3-2 上置き仏壇
上置き仏壇とは下台のないタイプの仏壇です。台や棚の上に置かれるために「上置き」と呼ばれています。
上置き仏壇の一般的な寸法は、高さが50cmから75cmくらいまでです。台付き仏壇ほど大きくないため、仏壇内部も狭く、お参りやお供えの時には窮屈さを感じるかもしれません。
しかし、昨今は住宅の狭小化が進むだけでなく、供養そのものをコンパクトにしようとする傾向があるため、仏壇を小さくしたいと考えている人も多くいます。もしも自宅に仏壇を置くための台や棚がない場合は、専用の仏壇台も販売されています。仏壇台を別に買うくらいなら、台付き仏壇を買えばよさそうに思えますが、別の住まいに移った時のことを見越して、あえて上置き仏壇を購入するという人も多いようです。次にどんな家に住むか分からない。大きな仏壇だと納まらないかもしれない。こうした心理が働くのも、現代ならではですね。
4 その他のさまざまな形状の仏壇
ほとんどの仏壇は、台付き仏壇か上置き仏壇に大別されますが、その他にもさまざまな形状の仏壇があります。
4-1 地袋用仏壇
地袋とは地板に設置された袋戸棚のことです。家によっては地袋付きの仏間も多くあります。地袋の上に台付き仏壇を置くと極端に高くなりますし、上置き仏壇だともの寂しい感じがします。そのため、地袋専用の仏壇が用意されています。地袋の高さは一般的に30cm〜45cmくらいです。地袋用仏壇の高さは100cm〜130cmくらいで、地袋に載せることで総高さが130〜160cmくらいのちょうどいい高さになるように設計されています。
4-2 壁掛け仏壇
家具調仏壇の中には、マンションなどでスペースが限られている人向けに壁掛けタイプも登場しています。大きさは上置きタイプよりも狭いものが多く、設置は自分でできるものもあれば、工務店による工事が必要となるものもあります。
5 あなたにおすすめの仏壇タイプ
それでは、さまざまな仏壇がある中で、自分の家にはどのタイプの仏壇が適しているのでしょうか。コンセプト別にまとめましたので、参考にしてもらえれば幸いです。
5-1 法事や寺院のお参りを大切にしたい人は「唐木仏壇」「金仏壇」
自宅できちんと法事をしたい。宗派の作法に則って供養してもらいたいと考える人は、唐木仏壇や金仏壇のように伝統的な仏壇をおすすめします。ただし、法事をする時には親戚の人たちも集まることが予想されます。住宅事情もありますが、可能であれば仏間に納めるのが望ましいでしょう。
5-2 仏間がある家は「唐木仏壇」「金仏壇」
もしも自宅に仏間があれば、伝統的な仏壇をおすすめします。仏間に家具調仏壇を納めても構いませんし、家に仏間があっても仏間を利用しないという人もいます。とはいえ、仏間は仏壇を安置するための空間で、家の中に小さな祈りの空間、聖地を作るにふさわしい設計があらかじめなされているといえます。そのような場所には伝統的な仏壇もきっとしっくりくるでしょう。心を落ち着けて手を合わせる場所、ご先祖様と向き合う場所として、せっかく仏間があるのであれば、居間やリビングではなく仏間を利用し、伝統的な仏壇をお祀りすることをおすすめします。
5-3 故人様を身近に感じたい人は「家具調仏壇」
リビングでくつろぐ時、あるいは食事の時、故人様を身近に感じたいと考える人は、家具調仏壇を購入してリビングに置かれてみてはいかがでしょうか?伝統的な仏壇を置くと部屋との調和がとりづらく、サイズ的にも威圧感を覚えることもあるでしょう。家具調仏壇は生活空間の中にとけ込むように設計されています。
5-4 スペースに限りがある人は「家具調仏壇」
自宅が狭く、スペースに限りがある人は家具調仏壇をおススメします。家具調仏壇は台付きでも上置きでも、伝統型仏壇よりも一回りコンパクトに作られている傾向にありますし、ワイドな上置き仏壇や、スリムな台付き仏壇など、多様なニーズに合わせたさまざまなサイズのものが販売されています。ご自身の住まいに合わせた最適な大きさの仏壇がきっと見つかることでしょう。
6 心落ち着く仏壇を
ライフスタイルの多様化にあわせて、供養も形も様変わりしてきています。しかし変わらないのは、亡き人に手を合わす想いではないでしょうか。仏壇選びの際は、しきたりや宗派などももちろん考えなければならない事柄ですが、まずは気に入った仏壇に出会えるかどうかです。その仏壇の前に座って、なんだか心がほっとする、心を落ち着けて手を合わせられる、そんな仏壇と巡り会えればよいですね。
仏壇・墓石の素心は、兵庫県下の3店舗(加古川本店・姫路店・高砂店)を拠点に日本全国に展開する仏壇・墓石・寺院仏具の専門店。伝統様式からモダンまで、あらゆるタイプの仏壇仏具が取りそろう。各店舗ではさまざまなセミナーや教室も開催され、地域の人たちの”祈り”を支える仏壇店としても親しまれている。インターネット販売にも注力。遠方であれば楽天市場店でのオンライン購入も可能。
お問い合わせ先:0120-20-9987(姫路店)
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