コンパクトでモダンなデザイン――家具調仏壇とは

ライフスタイルが多様化する中で、仏壇の形も大きな変化を遂げています。唐木仏壇や金仏壇などの伝統的な仏壇よりも、コンパクトでモダンなデザインの新たなタイプの仏壇が主流になりつつあります。他の家具との調和が取れるように作られていることから、これらの仏壇は「家具調仏壇」として分類されます。この記事では、家具調仏壇の選ばれる背景、種類や工法、さらには価格や購入の際の注意点など、詳しく解説いたします。

index 目次
  1. 1. 家具調仏壇の特徴と選ばれている理由
    1. 1-1. 狭小化や移動社会 選ばれるのはコンパクトな仏壇
    2. 1-2. リビングや洋間に合うモダンなデザイン
    3. 1-3. 伝統様式や抑制された宗教性
  2. 2. 家具調仏壇の種類
    1. 2-1. 上置き仏壇
    2. 2-2. 台付き仏壇
    3. 2-3. 壁掛け仏壇
    4. 2-4. オープンステージ
  3. 3. 家具調仏壇の材質、仕上げ
    1. 3-1. 外国の木材
    2. 3-2. 塗装の美しさを活かした仏壇
    3. 3-3. ガラスや金属
    4. 3-4. さまざまな表面仕上げ
  4. 4. 家具調仏壇の仏具
    1. 4-1. 本尊
    2. 4-2. 位牌
    3. 4-3. 五具足
    4. 4-4. りん
    5. 4-5. その他の仏具
  5. 5. 家具調仏壇の設置場所、向き
    1. 5-1. 家具調仏壇はどこに置いてもなじむように作られている
    2. 5-2. 法事の有無を考える
    3. 5-3. 向きに決まりはない
  6. 6. 家具調仏壇の費用、購入時の注意点
    1. 6-1. 家具調仏壇の相場
    2. 6-2. 店舗かインターネットか
    3. 6-3. 寺院に確認を取っておく
  7. 7. まとめ

1 家具調仏壇の特徴と選ばれている理由

家具調仏壇とは、仏壇の種類のひとつです。従来の仏壇(唐木仏壇や金仏壇)は、お寺の本堂を自宅用に再現するために作られていましたが、家具調仏壇はそうした伝統様式よりも、文字通り、リビングに置いても違和感のない、まるで家具のようなデザインと機能性が重視されています。ひと昔前の日本家屋には当たり前のように仏間がありましたが、昨今の住宅には仏間がないことが多く、居間やリビングなどの生活空間になじむ仏壇が受け入れられています。各社メーカーにおいては「現代仏壇」「モダン仏壇」「新仏壇」などの商標が用いられていますが、伝統的な仏壇に対し、これらを一般的に「家具調仏壇」と呼んでいます。

家具調仏壇にはさまざまな特徴がありますが、代表的なものを挙げるならば「コンパクト」と「モダンなデザイン」、この2つが思い浮かびます。「コンパクト」というキーワードからは、住宅の狭小化や自由に引っ越しする移動社会、「モダンなデザイン」というキーワードからは、宗教観の変化といった社会的な背景が考えられます。

1-1 狭小化や移動社会 選ばれるのはコンパクトな仏壇

家具調仏壇の普及の理由のひとつに住宅の狭小化があります。住宅全体が小さくなっているだけでなく、マンションやアパートなどの仏間がない家に住む人が増えています。さらには、転居も当たり前の時代ですから、移動がしやすく、どんな家でも祀られるコンパクトな仏壇が求められています。

1-2 リビングや洋間に合うモダンなデザイン

「家具調」と呼ぶくらいですから、居間やリビングに置かれている家具との調和が重視されます。デザインの自由度が高く、カラフルな配色、鏡面仕上げ、左右非対称、象嵌細工など、家具調仏壇ゆえの遊び心や高度なデザインは見るこちらを楽しませてくれます。

1-3 伝統様式や抑制された宗教性

コンパクトなサイズ、そしてデザイン性や機能性を追い求めると、必然的に伝統様式は簡略化され、宗教性は抑制されています。「寺離れ」や「宗教離れ」などと言われている昨今の風潮では伝統性や宗教性はそこまで重点をおかず、むしろ手を合わす側の希望や個性が優先されるようになったのです。

2 家具調仏壇の種類

家具調仏壇はデザインの自由度が高いためさまざまな形状のものがあります。共通するのは、コンパクトなサイズであり省スペースであること。種類別にさらに細かい特徴をまとめました。

2-1 上置き仏壇

上置き仏壇とは、棚や机など、すでにある家具の上に置くタイプの仏壇です。高さは50cm~70㎝くらい、幅は40cm~50cmくらいのサイズが一般的です。自宅の中に仏壇を置くスペースがない人、あるいはいつか引っ越すことが決まっている人たちが上置き仏壇を選んでいます。また、仏壇用の専用台も販売されており、この上に仏壇を祀るケースも多く見られます。

2-2 台付き仏壇

台付き仏壇とは、床に直に置くタイプの仏壇です。上段が仏壇部分で、下段が収納スペースとして用いられます。大きさはさまざまで、小さいもので高さが120cm程度、大きなもので150㎝程度でしょう。仏壇スペースも収納スペースも、上置き仏壇よりは広く使えるので、毎日のお給仕(ごはんやお花の交換)などがしやすいでしょう。また、経机やお参り用のイスが内蔵されているものもあり、スペースに余裕があれば台付き仏壇の方が何かと便利です。

2-3 壁掛け仏壇

壁掛け仏壇とは、壁に直接取り付けるタイプの仏壇です。スペースに余裕がない人や、限られたスペースを有効活用したい人などに選ばれています。モダンなデザインのものが多く販売されており、壁掛けにすることでよりインテリアとの調和を取りやすいという面もあります。ただし、取り付けの際には工務店に依頼しなければならないこともあります。

2-4 オープンステージ

オープンステージとは、屋根も扉もない新しいタイプの仏壇です。これまで仏壇の形状といえば、伝統仏壇であれ家具調仏壇であれ、周囲を囲むいわゆる「箱型」で、正面に扉が取り付けてあるものばかりでした。箱という閉ざされた空間だからこ閉塞感を覚える人もいましたが、それに比べてオープンステージは明るく解放的で、かつコンパクトなデザインが特徴です。家具の一部として、周囲のインテリアになじんだ場所で故人様を偲べるでしょう。

3 家具調仏壇の材質、仕上げ

家具調仏壇のモダンなデザインを実現させるために、さまざまな材質、工法の上で作られています。家具調仏壇がどのように作られているのか、詳しく見ていきましょう。

3-1 外国の木材

従来の仏壇で用いられていた木材は、黒檀や紫檀など、「唐木」と分類されるものでしたが、家具調仏壇で最も多く見られるのは、モダンな家具に用いられる欧米の木材です。

その代表格がウォールナットです。紫色を帯びた深い暗褐色は、国内外問わず大変な人気を誇り、世界三大銘木のひとつに数えられるほどです。狂いが少なく、加工性が良いという点からも、仏壇によく選ばれています。

この他にも、タモやメープルなどの明るい木材も人気ですし、和モダンな風合いを表現するために黒檀などの唐木が用いられることもあります。

3-2 塗装の美しさを活かした仏壇

ウッディ―な仏壇が多い中、上品な塗装を施した家具調仏壇も多く見られます。主材は木質繊維板(MDF)や合板であることが多いのですが、ウレタンで厚い塗膜を作り、着色することによってカラフルな仏壇が仕上がります。また、表面を深みのある漆塗りと色鮮やかな蒔絵で仕上げたものもあります。特に輪島塗で仕上げられたものは美しく、伝統的な仏壇とはまた異なった、現代の住宅に合う和モダンな仏壇です。

3-3 ガラスや金属

仏壇の中にガラスや金属を用いているものもたくさん見られます。特にガラスは扉に用いられます。居間やリビングに仏壇を置くと、来客の目が気になり、中が見えないように扉を閉じる人が多くいますが、一方で仏様やご先祖様を閉じ込めることに違和感を覚える人もいます。扉をガラスにしておくことで、傍目には露骨に仏壇と分からない上で、内部が透けて見えます。また、部分的に金属を使用することでよりモダンなデザインが実現できます。

3-4 さまざまな表面仕上げ

仏壇に使用する木材は、家具と同じで必ず表面を塗装します。塗装は木材の表面を保護するためと、美しく見せるために行われるとても大切な工程です。家具調仏壇ではそのデザイン性が重視されますが、塗装による仕上がりの違いによって印象はがらっと変わります。ここでは、代表的な塗装をご紹介します。

3-4-1 ウレタン仕上げ

ウレタン仕上げとは、木材の表面にウレタン樹脂による特殊な膜を作る仕上げ方法です。柔らかさと密着性の高さが特徴で、部材の多い仏壇ではもっとも多く用いられている塗装方法でしょう。水や熱に強く、木の呼吸を制御するために反りや割れを防いでくれますが、耐用年数が短いというデメリットもあります。

3-4-2 鏡面仕上げ

鏡面仕上げとは、仏壇の表面を文字通り鏡のように輝かせ、家具調仏壇の中でも高級品に用いられます。塗膜の厚みのため、木の質感こそ失われますが、その厚みが独特の深み生み、高級感のある美しさを実現します。使用する塗料はウレタン樹脂ですが、塗膜の厚さを調整しながら吹き付け、その上でサンドペーパーで光沢が出るまでに磨き上げなければならないため、熟練の職人の技術を要します。

3-4-3 オープン仕上げ

オープン仕上げとは、木の質感を残したまま仕上げる塗装のことです。塗膜を極端に薄くすることで、木材の細かい凹みなども埋めることなく塗装します。木材本来の木目や色合いが好まれています。

3-4-4 オイル仕上げ

オイル仕上げとは、木材の表面に植物性のオイルを塗りこむ塗装方法です。見た目や手触りから木の本来の質感を感じられることから、オイル仕上げの家具調仏壇は大変人気です。また、植物性のオイルを使用しているため人体に影響が少ないというメリットもあります。特に家具調仏壇で用いられているウォールナットでは、オイル塗装にすることで素材のよさがより引き立ち人気があります。ただし、塗膜を作るわけではないので、木材の割れや反りの可能性があり、ウレタンに比べると水や熱に弱いという性質があります。

3-4-5 漆仕上げ

日本古来より愛されてきた漆塗りは、漆の木の樹液を精製したものを塗料とした伝統工芸です。丹念に塗り重ねて仕上げられた仏壇には独特の光沢と温かみがあり、さらに年月を経ることで味わい深さが増していくという他にはない特徴があります。ただし、国内の漆の生産量が激減していること、膨大な手間と熟練の技術を要することで、大変高価で、家具調仏壇の中でも一部の最高級仏壇でしか使われません。

4 家具調仏壇の仏具

仏壇がモダンなデザインになると、それにあわせて仏壇の中で飾られる仏具もモダンなものが選ばれます。

4-1 本尊

本尊とは、それぞれの宗派で定められた礼拝の対象となる仏様のことです。どの宗派でも三尊一組(中央に祀られるご本尊と左右の脇仏)が基本です(三尊一組についてはこちら)。本尊を表すものとしては仏像や掛軸が安置されます。家具調仏壇の本尊は、仏像にせよ掛軸にせよ、仏壇の雰囲気に合うものが好まれています。仏像はよりスタイリッシュでシンプルなものが作られています。また掛軸も、従来は金襴や緞子で表装された掛軸を吊るしましたが、家具調仏壇ではスタンド型(置き型)のモダンなデザインのものが選ばれています。

4-2 位牌

位牌も家具調仏壇に合わせて、モダンで斬新、デザイン性に富んだものが選ばれています。また材質も、これまでは漆塗りや唐木の位牌が一般的でしたが、ガラスやクリスタルや水晶を用いたものも販売されています。

4-3 五具足

五具足とは、従来は、香炉と花立(1対)と燭台(1対)のことを指していました。香炉、花立1つ、燭台1つ、湯飲、仏飯器の5つを指して五具足と言う場合もあります。陶製、ガラス製、金属製、などさまざまな材質、デザイン、色合いのものがあり、どの五具足を選ぶかによって仏壇全体の雰囲気がぐっと変わります。仏壇との調和を考えながら選ぶのも楽しいでしょう。

4-4 りん

りんは、手を合わす前に「ちーん」と叩いて音を出す仏具です。従来のりんは、台と布団の上に乗ったものでしたが、最近ではおしゃれでかわいらしいものが作られています。フォルムだけでなく、色もさまざまで、デザインのこだわりはりん棒にまで及びます。ぜひとも仏壇店に足を運び、そのかわいらしさと、澄んだ音の響きを体験してほしいものです。

4-5 その他の仏具

その他にも、高杯、仏膳、木魚、経机、主に浄土真宗で用いられる過去帳や過去帳台などでも、家具調仏壇に合うデザインのものが作られています。まずは仏壇を決めて、その雰囲気に合う仏具を選んでいきましょう。

5 家具調仏壇の設置場所、向き

最近の住宅では仏間が作られないことが当たり前になっています。そのため、仏壇をどこに置くべきか迷ってしまうものです。仏壇の設置場所や向きについて、どのように考えればいいのかをまとめました。

5-1 家具調仏壇はどこに置いてもなじむように作られている

家具調仏壇は、どの部屋に置いてもなじむようにデザイン設計がなされています。リビングや居間に置く人が多いようですが、中には台所や寝室に設置する人もいます。もちろん、和室や仏間に置いても構いません。自分自身の普段の生活から、一番納まりのいい場所に置くのがよいでしょう。

5-2 法事の有無を考える

もしも法事を自宅で行うのであれば、そのことを事前に考慮しておきましょう。法事の時には仏壇の前に僧侶が座りますし、親戚が数人でも集まるのであれば、それなりの広さの部屋が必要です。居間やリビングであればまだしも、台所や寝室は不向きでしょう。中にはお寺の本堂や会館を使って法事をする人もいますので、自分たちの事情を予め考慮しておきましょう。

5-3 向きに決まりはない

仏壇の向きにこだわる人は意外に多いのですが、決して決まりがあるわけではありません。昔から仏壇の方角には3つの説(東や南を向く説、本山寺院を向く説、西を向く説)がありますが、これらすべてを総合するとどちらを向いても構わないということになります。しかも昔は、家を建てる時に仏間が作られることが前提だったので、それをもとに間取りを決めていたのですが、今はそうではありません。向きにこだわるよりも、そこに仏壇を設置することによって、手を合わせる時に落ち着ける場所を選びましょう。

6 家具調仏壇の費用、購入時の注意点

仏壇を買う上で気になるのが費用。家具調仏壇を購入するのにどれくらいの費用がかかるのでしょうか。注意点と合わせてご紹介いたします。

6-1 家具調仏壇の相場

家具調仏壇の相場は、上置き仏壇で5万円~20万円、台付き仏壇で20万円~50万円くらいでしょう。これに位牌や仏具の費用が選ぶ内容にもよりますが、これらが最低でも5万円~10万円くらいはかかるものと思っておきましょう。とはいえ、相対的には唐木仏壇や金仏壇などの伝統的な仏壇よりは安く抑えらえれる傾向にあります。

6-2 店舗かインターネットか

仏壇を実店舗で買うべきか、それともインターネットで購入するべきか、これは意見が分かれるところです。それぞれにメリットがあるからです。

実店舗のメリットは、なんといっても現物を見て触って確かめられることです。また、販売員には仏壇の性能や品質を説明してもらえるだけでなく、仏事の相談にも乗ってくれるでしょう。仏壇の配達や設置も通常は仏壇店が無料でしてくれます。購入後のアフターフォローもしてくれるため、仏壇に不具合が起きた時、あるいは仏事で分からないことがあった時もすぐに相談できるというメリットがあります。

一方、インターネットの最大のメリットは価格の安さです。実店舗を持たないために販売コストが抑えられ、価格に反映されます。また、日本全国の仏壇店のサイトから商品を選べるため、1つの仏壇店が保有する商品よりもはるかに多くの選択肢の中から、より自分の好みにあった仏壇と出会えるかもしれません。

唐木仏壇や金仏壇の場合は、その宗派にあった様式で設置しなければならないため、実店舗での購入をおすすめします。しかし、家具調仏壇は設置や飾りつけがそう難しくはないため、必ずしも専門店による配達が必要かと言えばそうではありません。自分たちにとってメリットが多く感じられる方で購入しましょう。

6-3 寺院に確認を取っておく

家具調仏壇は宗教性を抑制した仏壇といえますが、とはいえ、いざ法事の時には寺院に拝んでもらうという人が大半です。新しく購入した仏壇は寺院に開眼供養をしてもらい、はじめて手を合わすことができるようになります。購入の際には、家具調仏壇にする旨を事前に寺院に伝え、必要な仏具や注意しておかなければならないことなどを確認しておきましょう。

7 まとめ

昨今多くの人に選ばれている家具調仏壇には、現代人の生活習慣や住環境、さらには宗教観が反映されているように思えます。自分たちのライフスタイルにあった仏壇を選びましょう。手を合わす時に気持ちがすっと落ち着く仏壇。この記事が、そんな仏壇とのご縁の一助になれば幸いです。

写真提供:
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仏壇・墓石の素心は、兵庫県下の3店舗(加古川本店・姫路店・高砂店)を拠点に日本全国に展開する仏壇・墓石・寺院仏具の専門店。伝統様式からモダンまで、あらゆるタイプの仏壇仏具が取りそろう。各店舗ではさまざまなセミナ-や教室も開催され、地域の人たちの”祈り”を支える仏壇店としても親しまれている。インタ-ネット販売にも注力。遠方であれば楽天市場店でのオンライン購入も可能。

お問い合わせ先:0120-20-9987(姫路店)
URL:素心 公式ホ-ムペ-ジ http://www.so-shin.jp/
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Text by:玉川将人
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