葬儀社の経営者でありながら、上智大学グリーフケア研究所の客員教授も務める作家の一条信也さんは、「葬儀とは人類の存在基盤である」と語っています。人間は、仲間の死を悼む生き物です。私たちは、身内に不幸が起きると親族や知人が集まってその死を悼みます。直接会って共に悲しみを共有するだけでなく、お花を飾り、清らかなお香を焚き、お菓子や果物を供えて、そして現代ではお金を包んで遺族の負担を援助しながら故人を送り出しました。これらはすべて、残された人たちの弔意を形に表したものです。実際に身近な人に不幸が起きたときに、私たちはどのような形で弔意を表すことができるのでしょうか。弔問、香典、供花・供物、弔電など、さまざまな弔意の表し方の基本とポイントをご紹介します。

1. 弔問

弔問とは、最もシンプルで心のこもった弔意の表し方でしょう。自宅や葬儀式場までわざわざ足を運んで、故人を悼み、遺族にお悔やみを述べることこそが、葬儀で最も大切なことではないでしょうか。古い時代から、あらゆる地域で葬儀は行われてきました。儀式やしきたりやマナーなどがない時代から、人々は弔問し、死者を悼んだのです。

1-1. 通夜・葬儀前の自宅への弔問

訃報を聞きつけて、すぐに自宅に弔問したい時には、まずは遺族に連絡を入れてからにしましょう。最近では家族葬が多いため、自宅への弔問が逆に迷惑になることもあります。また、遺体を自宅ではなく斎場に安置するケースも増えています。

ひと昔前は、親族や近所の人たちが自宅に弔問して、故人の枕元でお線香を上げたものでしたが(いまでも地域によってはそうした習慣が残っているところもあるでしょう)、現代の葬儀では弔問の場を通夜式や葬儀式に集中させることが多くなっています。

1-2. 通夜や葬儀への弔問

通夜や葬儀への弔問は、遺族の意向を最優先させましょう。最近では家族葬が多いため、弔問や香典を辞退する家も増えています。参列は、通夜と葬儀のどちらでも構いません。都合がつく方でよいですし、両日参列すればなおのこと丁寧な弔いになるでしょう。弔問する時には、喪服を着用し、数珠(仏式葬儀の場合)と、香典を持参しましょう。

1-3. 葬儀後の自宅への弔問

訃報をあとから耳にしたというケースが増えています。家族葬の普及で、葬儀を終えたあとに不幸を知らせる家が多いからです。葬儀後に自宅に訪問してお線香を上げたい、あるいはお香典を渡したい時は、まずは喪主に連絡をとりましょう。遺族は葬儀後もあわただしく、迷惑をかけない形での弔問が望ましいでしょう。

自宅への弔問の際は、故人の遺骨が祀られている後飾りの祭壇でお線香を手向けます。もしも仏間まで上がることで迷惑をかけてしまうのであれば、玄関先でお悔やみを述べましょう。

2. 香典

香典とは、遺族に渡すお金のことです。葬儀が起こるとさまざまな方面への出費が増えるため、香典を包んで経済的な援助をします。不祝儀袋を用意して、その中に紙幣を納めましょう。

2-1. 香典の金額、相場

香典の相場は、親族であれば1万円以上、親族以外であれば5千円以上です。香典は想いを形にしたものですし、故人や喪主との関係性もあれば地域による相場もあります。ただし、喪主は参列者へのおもてなし(料理や返礼品)や、香典返しなども用意するため、たとえ遠い間柄でも最低3千円以上くらいの金額は包みましょう。

親族でも、子や孫や兄弟など、特に近い関係にあるならば3万円や5万円や10万円といったような高額な金額を包むこともあります。差し出す側の年齢によっても包む金額が変わるという考え方もありますが、これは年齢によって相対的に経済力に差があることを前提としています。若年、中年、高年に限らず、経済的に無理をしすぎると、逆に遺族に気を遣わせることになります。香典金額は相場を参考にした上で、自分にとって無理のない範囲で決めるのがよいでしょう。

2-2. 不祝儀袋

紙幣は不祝儀袋に入れて納めます。不祝儀袋や表書きの書き方はさまざまな種類がありますので、相手の宗派にあわせましょう。また、葬儀の香典の表書きを黒ではなく薄墨で書きます。悲しみの涙で墨が滲んでしまったことを表します。

表書きの上段には宗教や宗派別の書き方の決まりがありますが、ほとんどの葬儀では「御香典」「御霊前」と書くのが一般的です。下段には差し出す人の名前をフルネームで書きます。中袋の表面に額面を、裏面に住所、氏名、電話番号を書きます。

香典は袱紗に入れて持参します。弔事で用いる袱紗は、紫や緑や灰色などの地味目の色のもので、次のように包みます。

  1. 袱紗をひし形にして広げる
  2. 香典袋を置く位置の印が4点の角にあるのでそれに合わせて置く
  3. 右から左、下から上、上から下の順で包む
  4. 最後に左から右に包み、端を折り込む。あるいは爪でとめる

最近では使い勝手のいい、折り畳み式の略式袱紗も販売されています。

仏式の場合

袋は無地や蓮柄で、水引は白黒や双銀のものを用います。表書きには「御霊前」「御香典」と書きます。浄土真宗では「御霊前」とは書かずに「御仏前」と書きましょう。

神式の場合

袋は無地で、水引は白黒や双銀のものを用います。表書きには「御玉串料」「御神前」「御霊前」などと書きます。

キリスト教

袋は無地や十字架が印字されたもので、水引は白黒や双銀のものを用います。表書きには「御花料」や「献花料」などと書きます。

2-3. 香典の渡し方

香典は、葬儀式場に弔問する場合は受付に差し出せばいいのですが、自宅に弔問する場合や、弔問そのものができない時はどうすればいいのでしょうか。

葬儀式場に弔問する場合

葬儀式場に弔問する場合は、袱紗に入れて香典を持参します。弔問客用の受付が設けてあるので、まずは記帳をして「このたびは誠に御愁傷様でございます」という言葉を添えて、香典を差し出します。小規模の葬儀で、受付がない場合は、お悔やみの言葉を述べて喪主に直接渡しましょう。

自宅に弔問する場合

自宅に弔問する場合は必ず事前に連絡を入れておきましょう。自宅への弔問でも不祝儀袋や袱紗を用いるのは同じですが、渡し方は状況によって異なるでしょう。仏間まで上がってお参りができるのであれば、霊前で喪主に手渡したり、後飾りの祭壇にお供えします。

玄関先のみでお悔やみを述べる時には、袱紗から外して丁重に喪主や遺族に手渡しましょう。喪主側からすると香典返しをしなければなりません。住所などの連絡先が必要なので帳面があれば記帳しましょう。状況によっては記帳できないこともありうるため、香典袋の内袋には必ず住所、氏名、電話番号を書いておきましょう。

郵送する場合

遠方であったり、どうしても弔問ができない時には、香典を郵送で送ります。 送り先は、葬儀後に喪主の自宅に送るのがよいでしょう。また、現金を送るため、普通郵便ではなく、現金書留で送ります。書留の袋の中に香典を入れ、あわせてお悔やみを述べた手紙を同封しましょう。

2-4. 香典に同封するお悔やみの手紙の書き方

お香典に沿えるお悔やみの手紙は、次の4つの内容を順に綴りましょう。

  1. お悔やみの言葉
  2. 参列できないことのお詫び
  3. 香典を同封している旨
  4. 故人の冥福と、家族への気遣いの言葉

下の文例を参考にしてみて下さい。

例文

〇〇様の訃報に接し、ただただ驚いております。みなさまのお悲しみはいかばかりかと拝察し、心よりお悔やみ申し上げます。本来であればすぐに駆けつけてお悔やみを申し上げたいところですが、遠方のためままならず、誠に心苦しく思っております。心ばかりではございますが、御香料を同封させていただきます。御霊前へとお供え下さいませ。ご家族の皆様には、どうぞお気を強くお持ちになり、くれぐれもご自愛ください。〇〇様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

3. 供花や供物

弔意の表し方に、供花(きょうか・くげ)や供物(くもつ)があります。供花とは祭壇脇に飾る花のことで、供物とは果物や乾物などのお供え物のことです。故人と近い友人、親しくした人、あるいは会社関係など社会的つながりからお花を出し、差し出した人の名前はお花に芳名札を立てて掲げます。また、最近人気の花祭壇に供花を組み込むこともあり、この場合、芳名札は別の場所に並べて掲げます。

3-1. 供花や供物の費用

供花や供物は1基につき10,000円からが相場です。この他にも、15,000円や20,000円など、金額別に複数用意されています。また、花の種類も白菊に限らず、洋花も注文できます。ただし、祭壇や全体とのバランスを重視して、種類や金額を統一することが多いので、喪主や葬儀社の案内に従うのが無難でしょう。

3-2. 供花や供物の手配の仕方

注文は担当葬儀社に連絡しましょう。供花や供物の金額、芳名札に書かれる差出人の名前、請求先などを伝えます。また、個別に生花店に注文して葬儀式場に届ける方法もありますが、他の供花と中身が異なり調和を欠いてしまうので、できれば担当の葬儀社に注文しましょう。

4. 弔電

弔電とは、お悔やみの言葉を述べた電報のことです。遠方や事情で葬儀に参列できない場合、あるいはお悔やみの言葉を形に残して喪主に渡したい人が弔電を送ります。

4-1. 弔電の種類と費用

弔電の費用は、台紙の料金文字数に応じた料金の合計です。台紙にも様々な種類があり、紙製のもの、布張りのもの、漆塗りのような高級電報や、お線香やプリザーブドフラワーのようなお供え物を添えた電報もあります。台紙の費用は、安いもので0円からです。最もよく出る価格帯は3000円前後で、高価なものは10000円くらいのものもあります。

文字の費用は文字数によって異なります。NTT東日本の「D-MAIL」の場合、25文字までが660円、以降、26~30文字が750円、31~35字が840円と、5文字増えるごとに90円が加算されます。弔電は文例を用いることが多いのですが、一般的には50字前後、短いもので20字程度、長いもので100字程度でしょう。だいたい1000円前後となることが多いようです。

4-2. 弔電の注文方法

弔電はNTTをはじめ、さまざまな業者が取り扱っています。局番なしの115や、インターネットから注文ができます。電話申し込みであれば、オペレーターの案内に従って注文します。申し込む前には必ず次のことを確認しておきましょう。

  • 葬儀式場(式場名と住所)
  • 通夜と葬儀の日程
  • 喪主の名前

また、弔電は通夜の開式前までに式場に届けるのが基本です。NTT東日本の場合、0時から19時の注文であれば当日配達、19時から24時の注文であれば翌日配達です。万が一のことに備えてなるべく早く注文しましょう。

4-3. 弔電の文例

ご尊父様のご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。(※ご尊父様=喪主の父の敬称)

ご母堂様の訃報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福をお祈りいたします。(※ご母堂様=喪主の母の敬称)

〇〇様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。お焼香に駆けつけるべきところ伺えず残念でなりません。心から哀悼の意を表しますとともに、安らかにご永眠されますようお祈りいたします。