現代の「棺」事情と選び方

日本で遺体を埋葬する際にどんな場合でも必要なのが棺です。通夜や葬儀をしなかった場合でも、棺桶は用意しなくてはいけません。多様な種類があり、人の死に際してその役割や存在はとても大きいものです。誰もがいずれは入ることになる棺。すぐに燃やしてしまうけれど、最期をともにする道具、棺桶の役割、種類や選び方、納棺式、入棺体験会など、現代の棺事情についてご紹介します。

index 目次
  1. 1. 棺とは?
  2. 2. 棺は何故必要?
  3. 3. 棺本体の形状
  4. 4. 棺の蓋の部分の形状
  5. 5. 棺の材質
  6. 6. 棺の相場
  7. 7. 安すぎる棺には注意が必要
  8. 8. 棺選びではまずサイズを確認
  9. 9. 棺に入れる副葬品
  10. 10. 納棺式とは?
  11. 11. 死生観が変わる?入棺体験会

1 棺とは?

棺「ひつぎ」は遺体を納めるための入れもののこと。同様の言葉に「柩」があり、これも「ひつぎ」と読みますが、音読みにすると棺は「かん」、柩は「きゅう」と読みます。この二つの言葉には使いわけがあるという説があります。棺のほうは遺体が納められていない状態のひつぎのこと、柩は遺体が納められたひつぎのことだそうで、例えば遺体を納める儀式である「納棺式」は「棺」が使われ、遺体を運ぶ車の「霊柩車」は「柩」が使われている、といった理屈です。しかし既に遺体は納まった状態にも関わらず火葬場に向けて出発することを「出棺」といいます。実際のところ、使い分けについて神経質にこだわる必要のないことのようです。

2 棺は何故必要?

「遺体は棺に入れなくてはいけない」という法律があるわけではないようです。しかし、日本では遺体は99%以上火葬され、火葬の際、遺体を棺に入れます。遺体を焼くだけなら何故棺が必要なのかと疑問ではありますが、火葬炉にしても、火葬場内の運搬台車にしても、霊柩車にしても、遺体は棺に入っていることを前提にしています。そのため、例えば遺体を棺に入れずに、火葬炉に入れたとすると、遺体が転がり落ちてしまうことがあり得るようです。そうした事情から、日本で棺無しで火葬することはないようです。

3 棺本体の形状

棺本体の形状は、主に以下の2種類ですが日本で使われているのはほとんどがキャスケット型です。

キャスケット型

細長い長方形の形。日本ではこちらの形が使われています。

コフィン型

頭部の部分だけが広くなっており、足先なるにつれて細くなっているもの。映画で吸血鬼が眠っているイメージですね。主にイギリスなどで使われています。

4 棺の蓋の部分の形状

棺の蓋は以下のような異なる形状、使用のものがあります。

棺平

蓋が平面で、もっともシンプルな形状。非常に安価なものもあるが、天然木だと高価な場合も。

山型棺

蓋部分が台形の形に盛り上がっている四角い形状。キリスト棺はこの形状のものが多い。

アール型

蓋がちょうどかまぼこのように、なだらかな曲線を帯びているもの。柔らかい印象で女性に好まれる。

インロー型

蓋の部分が二段になっているもの。棺本体にかぶさるような形状。彫刻など装飾が施されたものが多い。

5 棺の材質

現在、日本で使われている棺の材質を紹介します。

木棺

木材では、檜、もみ、桐が使われています。天然木材以外にはフラッシュ棺といって、ベニヤ材や芯材を貼り合わせて木の風合いをいかしたものなどがあります。彫刻がほどこされた豪華なものもあれば、シンプルで安価なものまであり、価格の幅は広いです。

プリント棺

合板に木目をプリントした棺のこと。水に強く、汚れにくく、傷つきにくいというメリットがあります。木目プリントの他に、思い出の風景や写真など、様々なプリントを施したオリジナルデザインも最近では可能です。

布棺(布張棺)

表面に布を張った棺のこと。シンプルな白い布が張っている場合だけもありますが、凝ったデザインや美しい刺繡の布が張られていることもあります。デザインが豊富なため、故人のイメージに合わせたものが選びやすいです。

エコ棺

近年注目されているのが、段ボールを素材に使った棺です。合板製よりも使用する木材が少なく済み、火葬の際、窒素酸化物など有害物質の排出を抑えられるため、環境に優しい、エコ棺と呼ばれています。3層の強化段ボールを使い、表面に布張りしたもので、一見すると、木製のものと区別つかず、軽いというメリットもあります。なによりも、後の人のためにも、環境を汚さないように最後まで配慮するという故人の姿勢を示せるという点で人気が高まってきているようです。牛乳パックを再利用して作られた棺も登場しています。

エンバー棺

蓋の上半身部分が開くようになっていたり、上半身部分が透明のアクリル板に覆われていたりと、顔が見えるようになっている棺を指します。エンバー棺のエンバーとは、エンバーミングのこと。長期間遺体が腐敗しないために施される遺体保存技術のことです。ちなみにエンバーミングには15万円~20万円ほどの費用がかかりますが、遺体と触れることも可能になりますので、最後の時を心ゆくまで過ごしたい方などの間で最近は利用が広がっています。

キリスト棺

キリスト教を象徴する、十字架が施された棺です。

6 棺の相場

棺の価格は材質によって大きく幅があります。安いものは2万円以下のものからあり、彫刻が施されているなど豪華なものだと30万円以上のものも多いです。ほとんどの場合、葬儀社で用意しているものを購入することと思いますが、5万円~20万円の棺を選ぶ方が多いようです。天然木の無垢材の棺では200万円以上のものまで。因みに、エコ棺は3万円~10万円ほどで、木材の棺と比較して特別安いわけではありません。

7 安すぎる棺には注意が必要

遺体の体重を支える必要のある棺桶の作りはしっかりしている必要があります。そのため、製作には材料費だけではなく、技術料、人件費が加算されます。材料費のみのような価格の棺の場合、粗悪な商品もあるようです。最悪な場合、棺の底がぬけ、遺体が飛び出してしまうことも。予算があまりない場合でも慎重に選びましょう。

8 棺選びではまずサイズを確認

棺選びは究極には好み次第になります。しかし、好みの前に念頭においておかねばならないのは棺の「サイズ」です。体のサイズにあった棺でなければいけません。

棺のサイズにつかわれる「尺」という単位は約30㎝です。基本のサイズは、6尺(180cm)です。遺体は寝かせると足の甲が延びるので、身長+10~15㎝の棺を選ぶ必要があります。よって、160㎝前後の方なら6尺(180cm)のもので余裕があると思われます。170㎝を超える方なら、6尺よりも大きなサイズを選ばなくてはなりません。身長が低くても、体型によってはサイズアップが必要なこともあります。

ちなみに、火葬場の火葬炉には通常炉と大型炉があり、棺の大きさによっては大型炉でないと使用できないこともあります。施設によって通常炉の長さは異なっており、通常炉でも2mを超している場合もあれば、190㎝以下の場合もあるようです。いざという時は、葬儀社に任せていれば対応してくれますが、身長の高い身内のいる方は頭に入れておくと良いでしょう。

9 棺に入れる副葬品

日本では古来より棺の中に遺体と共に弔いの思いを込めて副葬品を入れる習慣があります。写真や思い出の品などを入れてあげたい方は多いと思いますが、地方自治体の取り決めで許可されていないものもありますので注意が必要です。

副葬品として許可されていないもの
  1. 燃やして有害となるもの
    ビニール、プラスチック、ポリエステルなどの素材を使用したもの
  2. 燃えないもの
    金属、ビンなどのガラス製品、陶磁器など
  3. 完全に燃えつきにくいもの
    大きなぬいぐるみ、水分の多い果実、分厚い書籍など
  4. 燃やして危険なもの
    スプレー缶、電池、ペースメーカーなど(故人の遺体にペースメーカーがある場合、申告が必要です)
  5. 火葬炉が故障する原因になるもの
    釣り竿、ゴルフクラブなどのカーボン製品(電気炉のヒューズが飛んでしまうことがあるため)
  6. 紙幣(お札)
    紙幣を燃やすのは法律で禁じられているため

副葬品に適したもの

副葬品にできるものはあまり多くはありません。まずは生花、他には、手紙、色紙、千羽鶴、写真など。服を入れる場合は、天然素材のもののみ可です。もしも故人が持っていたら入れてあげるとよいかもしれないのは朱印帳です。朱印は寺社に参拝した際にもらえるもので、それだけで功徳を積んだ証になるといわれています。

生きている人が写っている写真は避ける

禁止されているわけではありませんが、生きている人が写り込んでいる写真を副葬品にするのは一般的には避けます。死者と共にあの世に引き込まれてしまうという考え方があるからです。

10 納棺式とは?

納棺式の内容

納棺式は、納棺師と遺族で行われる、故人の身支度を整え、棺に入れる儀式のことを指します。方法や内容は地域差がありますが、一例としてはまず湯灌を行います。これは専用の湯船とシャワーを使用して故人の身体を洗い清めるというものです。その後、故人の口元に綿棒に含ませた水をあげ、末期の水とします。旅支度として、白い仏衣や白装束、を着せ、足袋を履かせるなどします。最近では、故人の気に入っていた洋服や着物を着せることも多いそうです。顔色が良くみえるよう、死化粧を施し、数珠を持たせることもあります。納棺は納棺師と力のある男性が中心で行い、その後、副葬品を納め、合唱し、棺の蓋を閉じます。

納棺式を行うタイミング

納棺式は一般的に亡くなってから通夜までの間に行います。ドライアイスの冷気が棺の中に溜まるため、納棺したほうが、遺体が傷みにくくなるので、早めに納棺式を行うよう推奨されていますが、立ち合いたい方の都合も大切にされます。

納棺式の意義

布団に横たわっている状態ですと、ただ寝ているようにも見え、亡くなったという気がしないものです。棺に納める儀式を経ることで、本当に亡くなったことを遺族はより強く実感します。大切な人の死を受け入れ、気持ちの整理をするための1つのプロセスと言われています。

11 死生観が変わる?入棺体験会

今密かなブームとなっている「入棺体験会」のことをご存じでしょうか。亡くなってからしか通常はいることのない棺に実際に入ることができます。単に入ってみたというだけにとどまらず多くの人にとって、自分のこれまでの人生を思ったり、亡くなった大切な人を思い出したりと衝撃的な体験になることも多いようです。

入棺体験は葬儀社、お寺、終活関係のNPOなどが行っており、主宰者によって内容が異なります。インターネットで検索すると様々な体験会の情報がでてきます。一例では、棺に入った状態で読経が聴けるもの、友人からの弔辞を聴けるもの、アロマテラピーをしてもらえるものなどがあります。

特に自分の棺桶を自分で選びたいと考えている方は、一度そうした体験会に参加してみるのがおすすめです。実際に自分はどのような棺桶に入りたいか、どのように見送られたいか、入ってみることで、明確なイメージが湧いてくるからです。

遺体と一緒に燃やされてしまう棺。しかし、実は故人にとっても遺族にとっても特別な意義があるものと言えます。エンディングノートを作る際にもきちんと考えておきたい項目です。

Text by:AY
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