老後の住みかを考える第一歩に―高齢者向け介護施設の種類

高齢者を対象とした介護や生活支援が受けられる施設にはさまざまな種類があります。今回は「終の住みか」となるかもしれない、老人ホームなどの介護施設についてくわしくご説明します。自分や親の老後に備えて、施設ごとの特徴や入所条件などをあらかじめ知っておきましょう。

index 目次
  1. 1. 介護施設の種類
  2. 2. 公的介護施設
    1. 2-1. 特別養護老人ホーム(特養)
    2. 2-2. 介護老人保健施設(老健)
    3. 2-3. 介護医療院
    4. 2-4. ケアハウス(軽費老人ホーム)
      1. 2-4-1. 自立型ケアハウス
      2. 2-4-2. 介護型ケアハウス
  3. 3. 民間介護施設
    1. 3-1. 有料老人ホーム
      1. 3-1-1. 介護付き有料老人ホーム
      2. 3-1-2. 住宅型有料老人ホーム
      3. 3-1-3. 健康型有料老人ホーム
    2. 3-2. サービス付き高齢者向け住宅
    3. 3-3. シニア向け分譲マンション
    4. 3-4. グループホーム

1. 介護施設の種類

介護施設はその運営母体や受けられる介護サービスの内容によって大きく分けて8種類あります。表中の「終の住みか」とは、亡くなる最期を迎えるときまで生活する住まいのことで、その介護施設が「終のすみか」となりうるかどうかをあらわします。

介護施設の種類 運営 予算 受けられるサービス* 終のすみか
生活支援 介護 医療
特別養護老人ホーム(特養) 公的
介護老人保健施設(老健) ×
介護医療院
ケアハウス(軽費老人ホーム) 自立型 低~中 × ×
介護型 低~中
有料老人ホーム 介護付 民間 中~高
住宅型 中~高
健康型 × × ×
サービス付き高齢者向け住宅
シニア向け分譲マンション
グループホーム

*△は外部サービスも含みます

2. 公的介護施設

介護施設には運営事業者別に分けると、公的施設と民間施設があります。はじめに社会福祉法人や地方自治体などが運営する公的介護施設をご紹介します。民間施設と比べてかかる費用を抑えられる点が特徴です。

2-1. 特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は原則として、日常生活全般に介護が必要とされる要介護3以上の高齢者が入居できる施設です。65歳未満でも要介護認定を受けている場合や、要介護1~2でも重度の認知症や精神障害がある場合は入居できるケースもあります。食事・入浴・排泄などの介護や、リハビリサービスを受けることができます。初期費用がかからず、月額料金の相場は約10万~15万円です。長期入所が可能で、入居希望者は大変多くなっています。1年以上入居を待たなければいけないことも多々あります。

2-2. 介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は原則65歳以上、病院を退院した直後で自宅での生活が難しい要介護1以上の高齢者が入所できる施設です。65歳未満でも要介護認定を受けている場合は入居できるケースがあります。病院と自宅の中間的な位置付けで、リハビリサービスを中心に行いながら、自立支援・在宅復帰を目指します。入所期間は3~6カ月と短いことが多く、待機期間も比較的短い3か月~半年程です。初期費用がかからず、月額料金の相場は約9万~13万円です。

2-3. 介護医療院

介護医療院は2018年4月に新設されました。2017年に廃止が決定した「介護療養型医療施設」の転換先となる施設です(移行期間は2024年まで)。「介護療養型医療施設」との最も大きな違いは入居者が「終の住みか」として利用できるようになったことです。入居条件は原則65歳以上、長期療養が必要な要介護1以上の人で、介護・医療・生活支援を受けることができます。65歳未満でも要介護認定を受けている場合は入居できるケースがあります。医療設備が充実しており、医師や看護師も常駐しているので、対応が難しいとされるたん吸引や経管栄養(胃ろうなど)にも対応できます。入居希望者が多く、待機期間は数か月以上かかることが多いです。初期費用はかからず、月額料金の相場は約8万~17万円です。

2-4. ケアハウス(軽費老人ホーム)

ケアハウス(軽費老人ホーム)は、60歳以上で身寄りのない方や収入等の事情により家族と同居できない方で、身の回りのことはできるけれども自立した生活が困難な方が入居する施設です。自治体の助成を利用できるため、比較的安い料金で使用することができます。軽費老人ホームには食事提供がある「A型」、食事提供がない「B型」、食事・生活支援サービスが受けられる「ケアハウス」の3種類があります。2008年からケアハウスへの一元化が決定し、現在A型・B型は建て替え時にケアハウスへの転換が行われています。ケアハウスはさらに「自立型」と「介護型」の2種類に分かれています。費用が安いことから人気があり、特に介護型は1年以上待つケースもあります。

2-4-1. 自立型ケアハウス

自立型のケアハウスは、60歳以上で自立した生活に不安があり、家族からの援助が困難な60歳以上の方を対象とした施設です。食事提供・掃除・洗濯などの生活支援サービス・医療機関との提携などを受けることができます。介護が必要になった場合は外部の介護サービスを利用することになり、およそ要介護3以上で退所を求められます。入所まで初期費用は0~30万円で、月額料金の相場は約6万~17万円です。

2-4-2. 介護型ケアハウス

介護型のケアハウスは、65歳以上で自立した生活に不安があり、家族からの援助が困難な要介護1以上の方が入居できる施設です。人員数や施設設備の基準を満たす、都道府県や市区町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。介護者が常駐しており、生活支援に加えて、介護サービスも受けることができます。介護依存度が高くなっても住み続けることができ、施設によっては「終の住みか」とすることも可能です。初期費用は数十万~数百万円、月額費用は6万~20万円が相場です。

3. 民間介護施設

つぎに民間事業者や医療法人などが運営する民間の介護施設をご紹介します。公的施設と比べて幅広いサービスを受けられるのが特徴で、価格帯や受けられる支援も施設によりさまざまです。

3-1. 有料老人ホーム

有料老人ホームは、「介護付」「住宅型」「健康型」に分かれます。ホームごとに特色があり、選択肢が多いのも特徴です。ホームの絶対数が多いので、比較的すぐに入居できるケースがほとんどです。長期入所が可能で「終の住みか」にすることもできます。初期費用に0~数千万円かかり、月額料金はホームにより大きく異なります。10万円程のホームもあれば、数十万円以上かかる高額なところまでさまざまです。

3-1-1. 介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、都道府県や市区町村から「特定施設入居者生活介護」に指定された老人ホームです。施設には介護職員・看護職員の配置が義務付けられており、入浴や着替えなどの介護を受けながら、食事提供などの生活援助を受けることができます。基本的には60歳以上で要介護1以上からの入居とするケースが多いですが、施設によっては要支援者や認知症になった40歳以上の方でも入居できる場合があります。

3-1-2. 住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、上記の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない老人ホームです。介護職員は常駐していませんが、食事提供や掃除・買い物などの生活支援を受けることができます。万が一、介護が必要になった場合でも、外部の介護サービスを利用しながら住宅型老人ホームで生活を続けることができます。

3-1-3. 健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、介護が不要で、自立した生活ができる高齢者が入居できる老人ホームです。見守り・食事提供・掃除など生活の援助を受けながら、温泉やジムなど、老後生活がより充実するレクリエーション設備が設けられています。自立した生活を送れることが前提なため、介護や医療ケアが必要となった場合は退去しなければなりません。

3-2. サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して暮らせるように、見守りや生活相談などのサービスが受けられる、バリアフリーの賃貸住宅です。物件により受けられる支援は異なりますが、食事提供や病院送迎、買い物代行などのオプションサービスを受けることができます。通常の賃貸住宅と同じように、プライバシーを守りながら生活することができます。「心身共に元気だけれども、高齢での一人暮らしに不安がある」という方に、おすすめの居住スタイルです。入居時に敷金が必要で、毎月家賃・管理費などで約10万~30万円がかかります。

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3-3. シニア向け分譲マンション

シニア向け分譲マンションは、より充実した老後生活が送れるように高齢者に配慮した、バリアフリーの分譲マンションです。マンションによって受けられるサービスはさまざまで、食事提供や病院送迎、買い物代行などの生活支援サービスが受けられます。またレストランや温泉、カラオケなどが併設されている物件もあり、高級な高齢者住宅といえます。介護サービスは提供していないので、別途業者に依頼しなければなりません。通常の分譲マンションと同じように購入すれば自分の資産となり、売却・贈与・相続などが可能です。まだ多く普及していないため、選択肢が限られる点がデメリットです。入居には数百万~数千万円が必要で、1億円以上かかる物件もあります。固定資産税や毎月の管理費なども支払う必要があります。

3-4. グループホーム

グループホームは、医師から認知症の診断を受けている65歳以上で要介護1以上の認定を受けている方が入居できる施設です。住民票がある自治体の施設に入居しなければなりません。しかし、遠く離れて暮らす親を子世帯の家から近いグループホームへ入居させたい場合などは、施設のある自治体へ住民票を移せば入居できます。ただし、グループホームへの入居は住民票を移してから一定期間(3カ月や半年など)が必要という条件を設けている自治体が多いようです。お住まいの地域以外の施設へ入居を検討する場合は、早めに役所や施設へ問い合わせをしましょう。

グループホームは、5~9人の「ユニット」といわれる少人数で生活をし、1つの施設に対して2ユニットまでしか設けられません。少人数なので職員と入居者との距離が近く、アットホームな介護が受けられます。認知症高齢者にとっても、日常生活で接する人数が限られるため、誰が誰だか分からなくなってしまうような混乱も招きにくいです。心穏やかに過ごしながら、食事・入浴の介助や介護サービスを受けることができますが、医療依存度が高くなると退所しなければならないことがあります。1施設に入居できる人数が少ないため、待機期間が長くなることもあります。初期費用に0~30万円、月額料金の相場は約13万~20万円です。

Text by:Licca
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