定年退職後に悠々自適な老後生活を夢見ている方は多いでしょう。しかし近年、老後の生活が貧困状態に陥る「老後破産」が問題になっています。誰にでも起こりうる老後破産。今から老後生活に備えて、対策しましょう。
老後破産と、今から準備できる対策
1. 老後破産とは
老後破産とは
「老後破産」は老後に生活が困窮し、破産状態に陥ることをいいます。定年後は収入が年金だけになる方が多いでしょう。年金だけで生活費がまかなえない場合は、貯金を切り崩しながら生活することになります。高齢により仕事も得られず、年金収入だけでも足りず、貯蓄や生活をまかなえる他の資産も底をつきた状態、それが老後破産です。
老後破産は所得や年金額が少ない家庭だけの問題ではなく、定年まで真面目に働き、しっかり貯蓄してきたような人にでも起こりうることです。思いがけない病気やトラブルで出費がかさんで貯蓄が底をつく可能性もあるからです。
生活保護受給世帯の過半数は高齢者世帯
65歳以上の者のみで構成される世帯、または65歳以上の者と18歳未満の未婚の者で構成される世帯を「高齢者世帯」といいます。生活保護(令和2年6月分)の被保護世帯のうち、もっとも高い割合を占めるのはこの高齢者世帯で、全体の55.6%を占めています。55.6%の内訳は51.0%が単身世帯、4.6%が2人以上の世帯です。生活保護を受給している高齢者世帯のうちの多くは、一人暮らしの高齢者です。
いかに高齢者の家庭で生活の困窮が生じているか、日本の実態をよく表している数字といえます。
2. 老後破産の引き金
老後破産に陥る引き金は以下のようにさまざまのものがあります。
生活レベルを落とせない
定年退職後は収入が年金だけになる方も多いでしょう。退職金も出たし貯蓄もしっかりしているからといって安心はできません。収入が減ったのに働いていた頃と同じように暮らせば、貯金を切り崩しながら生活していくことになります。退職金が多かったからとぜいたくをして生活レベルを上げてしまうような場合も注意が必要です。やがて貯蓄が底をついてしまうと、老後破産に陥ります。
医療費・介護費がかかる
高齢になるにつれて、ケガや病気のリスクが高まります。大きな病気にかかって入院したり、受診の頻度が上がったりすることで、思いがけず医療費がかさむ可能性もあるのです。
親やパートナー、自分自身の介護費用がかかり、家計を圧迫する恐れもあります。在宅介護が困難になった場合は、介護施設や老人ホームへの入居も検討しなければなりません。入居費用や月額費用は高額であることが多く、長期で入居するほど支出も増えます。
思わぬ支出・トラブル
子供が離婚して孫を連れて実家に帰ってくる、子供が無職になり養うことになった、などの理由で生活費が増え、思わぬ支出が増える可能性があります。
また投資に失敗する、詐欺被害にあうなどで貯蓄が減ってしまうトラブルもあります。とくに詐欺は注意が必要で、近年高齢者をターゲットとした詐欺が多発しています。
住宅ローンの支払い
住居にかかる費用も考慮しておかなければなりません。とくに持ち家やマンションで定年退職後も住宅ローンの支払いが残っている場合は、注意が必要です。収入が年金だけの状況でのローン支払いは、家計の大きな負担になります。
住宅ローンを完済していても、持ち家の場合は土地や建物の固定資産税や修繕費はかかるので、蓄えておく必要があります。マンションの場合は管理費や修繕積立金などが必要です。
3. 老後破産に陥らないための対策
老後破産をしないためには、どのような対策ができるのでしょうか。今から備えられることもあるので、チェックしてみましょう。
定年後の家計の収入と支出を計算する
受給できる年金額は、加入している保険の種類や納入期間により、人それぞれ異なります。定年退職後に収入が年金だけになる方も多いです。年金額や退職金はどれぐらい受け取れるかしっかり把握しておきましょう。
一方で老後に必要な生活費も大まかに計算しておきます。収入と支出を照らし合わせ、年金と退職金で足りない分は、今、働いているから「計画的に」貯蓄する必要があります。
元気なうちは仕事をする
令和元年の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳です。(*)60歳で定年退職する、としてもその後人生は20年以上続く可能性が大いにあります。よって定年後も、元気なうちは無理のない範囲で、できるだけ長く働いて収入を得ることを考えましょう。仕事をすることで社会とのつながりを保つこともでき、精神面でもプラスに働きます。
定年までに住宅ローンを完済する
住宅ローンが定年後に残っていると、収入が大きく減った状況で返済しなければならず、家計にとって大きな負担になります。繰り上げ返済や退職金で全額返済するなど、定年までに住宅ローンが完済するようにプランを組みましょう。
健康寿命が増えるように気をつける
健康を損ねると、治療費や入院費、介護費がかさみます。逆に健康であれば仕事もでき、収入を得ることも可能です。健康寿命が伸びるように、健康的な生活を心がけましょう。快適な老後生活を送るためにも、適度な運動とバランスの良い食事、規則正しい生活を心がけましょう。
居住スタイルを検討する
例えば、マンションや持ち家に一人暮らししており、自分の死後に空き家になる可能性がある場合は、売れるうちに売却してしまうのも手です。賃貸物件に引っ越せば月々の家賃がかかりますが、十分な売却利益が見込めるならばそれを生活費に充てることができます。
空き家にはさまざまなリスクがあり、管理するのも大変です。管理が行き届いていないと判断された場合は、納税額が上がる可能性もあります。元気なうちに、自分の財産を相続する人と住まいについて相談しましょう。