近年、居住者のいない「空き家」の数が増加しています。親が介護施設へ入居したり亡くなったりすることで実家が空き家となり、管理に困っている方もいるでしょう。空き家はトラブルを招きやすく、管理するのも大変です。今回は空き家のリスクや管理方法についてくわしく説明します。トラブルが起きないように対処方法を知っておきましょう。
空き家が招くリスクと管理方法
1. 空き家の劣化が早い理由
人が住んでいる建物に対して、空き家は老朽化しやすいため注意が必要です。なぜ空き家は劣化が早いのか、理由を確認しましょう。
湿気がこもりやすい
家が老朽化する1番の原因は「湿気」です。湿気がたまってジメジメとした状態はカビが繁殖しやすく、家具や建物を傷める要因になります。 人が住んでいる家は換気やドアの開閉により、室内の空気を循環させることができます。空き家は玄関や窓を閉め切った状態が長く続くため、湿気がこもりがちです。
雑草、シロアリ、ネズミ・・・
雑草が生い茂り人気のない空き家は、野良猫やネズミなどの小動物が住み着きやすい環境です。糞尿は悪臭を発生させたり、家財を腐らせたりします。カビやダニも発生しやすく衛生的にもよくありません。
ジメジメとした環境を好むシロアリが発生した場合はさらに深刻で、家に大きなダメージを与えます。建物を支える柱や梁が食い荒らされると、家が倒壊する恐れもあります。
ダメージの発見が遅れる
空き家はこまめに手入れがしづらいため、ダメージの発見が遅れがちです。定期的なメンテナンスが行えず、「雨漏り」や「外壁の剥がれ」など建物に深刻なダメージを起こすトラブルを見逃してしまうのも、家の老朽化を進める原因です。
ガス・水道を使用しない
ガスや水道を長い間使用しないため、ガス管や水道管の内部に付着した汚れが乾燥し、ひび割れや破損が起こりやすくなります。使用を再開した場合も、不作動を起こしやすくなります。
2. 空き家を放置するとどうなる?
放置したままの空き家は、さまざまなトラブルを招く恐れがあります。
倒壊の危険性
空き家は人が住んでいる建物よりも劣化が進みやすい上に、傷みや破損の発見が遅れがちです。放置し続けた結果、家の老朽化が進み、気づいたときには倒壊の危機にさらされているケースもあります。
さらに被害は空き家だけではなく、近隣の建物を壊したり、空き家の近くを通りかかった人に怪我をさせたりする恐れもあります。地震や台風などの自然災害では大きなダメージを受けやすく、屋根瓦が落ちたり外壁の一部が崩れたりすると大変危険です。
防犯上の問題
老朽化した空き家があることで、地域の景観が損なわれます。雑草が生い茂った空き家は外からの見通しが悪くなり、犯罪の温床になる可能性があります。不審者や浮浪者が住み着いたり、不良や犯罪者のたまり場になったりする恐れがあるのです。
また誰も住んでいないことから詐欺などの犯罪に住所が使われるケースもあります。
火災の可能性
空き家は管理がしづらいため、敷地内にゴミを不法投棄される可能性があります。散乱したゴミは、放火の標的になりやすいといわれています。 屋内からの火災にも気をつけなければなりません。放置された室内にはホコリがたまりやすくコンセントから発火したり、ネズミが配線をかじって電気設備が故障したりして、火災が発生する危険性があります。人が住んでおらず火災に気がつきにくいため、消火が遅れる可能性が高いです。
衛生上の問題
空き家には野良猫や野良犬が住み着きやすく、糞尿が悪臭を発生します。 さらにネズミや害虫も繁殖しやすいため、衛生面の低下も問題視されています。
3. 空き家の管理のチェックポイント
空き家の管理方法を紹介します。掃除は月に1回程度が目安です。
1. 換気
こもった湿気は家を劣化させます。まずはしっかりと換気をして、室内に空気を循環させましょう。クローゼットや押し入れ、靴箱、天袋も湿気がこもりやすいので、扉を開けて風通しをしましょう。
2. 郵便ポストの整理
郵便ポストから手紙やダイレクトメールがあふれかえっていると、空き家であることが一目瞭然です。防犯面を高めるためにも、定期的に郵便ポストの整理をしましょう。
定期的に点検できない場合は、「無断投函お断り」のステッカーを貼るなどして、対処しましょう。
3. 通水
排水管の中は水が溜まる構造になっています。水がフタの役割をして下水の臭いが部屋に広がるのを防いでいるのです。 長期間水を使用しないと排水管の中の水が蒸発してフタがなくなり、部屋に下水の臭いが立ち込めてしまいます。悪臭や水道管の破損を防ぐためにも、月に1回以上は水を流す「通水」を行いましょう。 蛇口をひねって通常通り水が流れるのを確認したら、1分以上水を出しっぱなしにします。 冬場は水道管が凍結して破損の恐れがあるので、通水後に給湯器などの水抜きを忘れずに行いましょう。
4. 目視
家の中や敷地内に変化が起きていないかチェックしましょう。 壁や屋根に破損しているところはないか、ハチの巣や動物の糞が落ちていないか、雨漏りの跡がないかなどを確認します。 必要に応じて業者に駆除を依頼したり、メンテナンスしたりしましょう。
5. 雑草や庭木の処理
雑草や庭木が生い茂った状態は、外からの見通しが悪く犯罪などのトラブルを招きます。ポイ捨てされたタバコの火が雑草に引火して、火災に発展する恐れもあります。敷地内のゴミ拾いや除草、剪定をしましょう。 枯れ葉や折れた枝が飛んで近隣に迷惑をかけている可能性もあります。折れた枝で怪我をさせたり、ご近所トラブルに発展したりする恐れもあるため、思い切って伐採することも検討しましょう。
6. 家の中の掃除
空き家内はホコリがたまりやすく、アレルギーを発症するカビも生えている可能性があります。電気を止めている可能性もあるため、次の道具を用意すると便利です。
- マスク
- 汚れてもいい長袖・長ズボン
- 室内履き(土足履きの場合は不要)
- 軍手・ゴム手袋
- 雑巾・バケツ
- スポンジ
- 洗剤
- ゴミ袋
- ほうき・ちりとり
上から下に向かってホコリや汚れを掃除します。ゴキブリなどの害虫がいる場合は、くん煙剤などを使って駆除しましょう。 掃除が終わったら、最後にしっかり戸締りをします。
7. ご近所の方へ挨拶
ご近所の方へ挨拶もしましょう。空き家に変わったことがないか、迷惑をかけていないか確認します。
空き家があると、近所に住む人は防犯面や安全面が気になるものです。挨拶することはご近所トラブルを防ぐことにも繋がります。また定期的に挨拶することで、空き家を気にかけてもらえます。夜に明かりが点くなど万が一不審者が滞在しているときに、早めに知らせてもらえるかもしれません。
4. 空き家の管理は大変
空き家の管理は想像以上に大変です。手伝ってもらえるのであれば、一人で管理しようとせずに、きょうだいや親族と手分けして行いましょう。
業者に頼る方法もある
空き家の管理は自分でする方法以外にも、「空き家管理サービス」を行っている業者を頼る方法があります。とくに遠方に住んでいて月に1回の管理が難しい場合は、検討してみましょう。
生前整理をしよう
空き家の管理は想像以上に大変です。 元気なうちに、親世帯と子ども世帯が一緒に生前整理を進めたり、空き家になったときのことを想定して準備を進めたりしましょう。