家族や親戚が亡くなってからおよそ一年を「喪中」といい、遺族は故人を偲びながら喪に服します。昔から「喪中は慶事を控えるべき」という考え方があり、現在でも喪中のお正月は新年を迎えたお祝いをしないのが一般的です。年末年始の挨拶には、お歳暮や年賀状、メール、直接会って交わす挨拶などがありますが、相手が喪中の場合はどのように挨拶をしたらいいでしょうか。今回は、喪中の年末年始の挨拶マナーについて、言い換えやメール・LINEの文例もご紹介します。
喪中の方への年末年始の挨拶―言い換え、メール・LINE文例
1. 年末の挨拶
年の暮れには一年の感謝の気持ちをこめて「年末の挨拶」をします。相手が喪中の場合は、例年通りの挨拶を行ってもよいのでしょうか。
「よいお年を」はOKか?
年末に、職場の人や知人などと最後に別れるときは「よいお年を」と挨拶します。「良いお年を」とは「良いお年をお迎えください」という意味で、「年内を無事に過ごし、良い一年が迎えられますように」という願いが込められています。
この「お年」とは、新しく来る年を表しており、喪中の方にとって不幸があった年ではありません。お祝いの言葉ではありませんので、喪中の方に「良いお年を」と年末に挨拶をしてもかまいません。喪中の方自身も「良いお年を」という挨拶を使うことができます。
ただし、近親者が亡くなった方や不幸が起きて間もない方は、まだ悲しみが強い場合があります。「良いお年を」と挨拶をしたとしても受け取る側としては、良い年が迎えられるわけがない、失礼なニュアンスに感じる場合もあるでしょう。配慮したい場合は「今年もお世話になりました」「来年もよろしくお願いします」と言い換えて挨拶をするといいでしょう。
喪中の方への年末の挨拶メール、LINE
相手が喪中だということを自分が既に知っている場合
今年も大変お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
良い年をお迎えください。
年末に喪中であることを知らせる「喪中メール」が届いた場合
メールを受け取ったらすぐに返信するのがマナーです。たとえ「返信不要」と書かれていても、返しておく方がいいでしょう。連絡をいただいたことへのお礼と相手を気遣うメッセージを送るようにします。また、絵文字やスタンプなどの装飾はあまりしない方が無難でしょう。
ご丁寧にお知らせをありがとうございます。
謹んでお悔やみ申し上げます。
穏やかな新年を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます。
寒さ厳しい折、風邪など召されませぬようにどうかご自愛ください。
大変なところ連絡ありがとう。
心よりお悔やみ申し上げます。
寒い日が続くので、どうぞ体に気をつけてね。
来年もよろしくお願いします。
2. 喪中はがきを受け取ったら
例年年賀状のやり取りをしている方で喪中の方からは、11月下旬から12月上旬ごろに喪中はがきが届くかもしれません。喪中の場合は年賀状を出さずに、年賀欠礼を伝えるための喪中はがきをおくるからです。
喪中はがきを受け取ったときのマナーや喪中見舞いの書き方については、以下のコラムでくわしく解説しています。喪中と知らずに年賀状を出してしまった場合や喪中はがきで訃報を知った場合などの対応方法を知っておきましょう。
3. お歳暮
お世話になっている方へ感謝の気持ちをこめて、年末にお歳暮を贈る方もいるでしょう。送り先が喪中の場合は、お歳暮を贈っても良いのでしょうか?
喪中の方へお歳暮を贈っても良い?
送り先が喪中の場合でも、忌明けを迎えていればお歳暮を贈っても問題ありません。お歳暮は感謝の気持ちを伝える贈り物であり、お祝いの品ではないからです。喪中の方へお歳暮を贈る際は紅白の水引を使わずに、白無地の奉書紙か白い短冊を使います。お店の方へ贈り先が喪中であると伝え、対応してもらいましょう。
相手が忌中の場合
相手が忌中(四十九日、神道は五十日)の間は、お歳暮を贈るのを控えましょう。身内に不幸が起きたばかりで対応に忙しく、心も落ち着いていないからです。お歳暮を贈る場合は忌明けを待ってから贈ります。忌明けを待つ間にお歳暮の時期を過ぎた場合は、松の内が明ける1月8日から立春(2月4日ごろ)の前日までの期間に、「寒中御見舞い」の名目で贈るといいでしょう。
4. 年始の挨拶
年始は新年を祝い、昨年お世話になったことを感謝する挨拶をします。ただし相手が喪中の場合は注意が必要です。
「あけましておめでとう」は言い換える
年始は「あけましておめでとうございます」と挨拶するのが一般的ですが、喪中の方には「あけましておめでとう」という新しい年を迎えたことを祝う言葉は使いません。
一般的に喪中にはお祝い事を控えるので、新年を祝う挨拶だけではなく、お正月飾りやおせち料理も用意しないことが多いでしょう。喪中の方へは「おめでとう」という挨拶をしない代わりに、「昨年は大変お世話になりました」「本年もよろしくお願い致します」などと挨拶をするといいでしょう。
喪中の方への年始の挨拶メール、LINE文例
新年の挨拶を控えて喪中はがきを送ってきた喪中の方へは、年始の挨拶メールやLINEは送らない方が無難です。もし相手からメールやLINEが来た場合や、自分から送る場合でも「明けましておめでとうございます」や「謹賀新年」という言葉は使わず、「今年もよろしくお願いします」と挨拶するといいでしょう。絵文字や顔文字、LINEの場合はスタンプなど、装飾は控えめにします。ただし、気心知れた喪中の友人から先に「明けましておめでとう」と連絡がきた場合は、「明けましておめでとう」と返しても自然でしょう。いずれにしても相手に配慮して挨拶することが大切です。
昨年は大変お世話になり、ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、ありがとうございました。本年もより一層尽力してまいりますので、今年も変わらぬご指導のほどよろしくお願い致します。
おはよう!今年もよろしくね。
昨年もお世話になりました。今年もよろしくお願いします。
仕事とプライベートは別という考え方も
仕事とプライベートは別だと考えて、相手が喪中であっても例年通り、新年の挨拶をするケースもあります。取引先やお客様からの「あけましておめでとうございます」は、会社やお店に対しての挨拶だと考えるためです。状況に応じて、判断するといいでしょう。
自分が喪中のときに「あけましておめでとう」と言われたら
もし自分が喪中の場合ですが、新年に会う人がみなそのことを知っているわけではありません。「あけましておめでとうございます」と挨拶されたら、どのように答えればいいのでしょうか。
相手に気遣わせてしまうこともありますので、自分が喪中であることをわざわざ知らせる必要はありません。「おめでとう」と返さずに「今年もよろしくお願いします」や「昨年もお世話になりました」と挨拶するといいでしょう。喪中であることを察してくれる人もいるはずです。メールやSNSのやり取りも同様です。友達であれば「今年もよろしくね」と返せば、自然なやり取りになるでしょう。