人生で一度あるかないかというお墓を建てる機会。いざ建てるとなった場合、どこから手を付ければ良いものか、皆目見当がつかない人も多いのではないでしょうか。身近にお墓を建てたことがある知人や親戚などがいれば気軽に相談ができますが、そういった人がいない場合に頼りになるのが「お墓ディレクター」です。今回は、「お墓のプロフェッショナル」ともいわれるお墓ディレクターについて紹介したいと思います。
お墓を建てるとき頼りになるプロフェッショナル、お墓ディレクターとは
お墓についての知識があることを業界団体が証明
お墓ディレクターは、「一般社団法人日本石材産業協会」が認定する資格で、お墓に関する幅広い知識と教養を備えた人物であることを証明するものです。一般社団法人日本石材産業協会は、全国のお墓および石材に関わる企業によって設立された業界団体であり、2020年6月の時点で1162社が会員となっています。
お墓ディレクター検定の対象者は、石材店のスタッフを中心とした「お墓及びお墓の関連業に携わる者」であり、消費者に対して正しい知識に基づいた適切なアドバイスを提供し、トラブルなくお墓が建てられるようにするための人材育成がおもな目的とされています。
石材の種類から法律、歴史、供養に関する知識まで
お墓ディレクターには1級と、2級とがあり、1級を受験するには2級に合格していることに加え、3年以上の実務経験が求められます。知識だけで取得可能な2級と違い、1級は経験による裏付けもないと得ることができず、合格率も3割前後というハイレベルな資格となっています。
試験の内容は、お墓の種類や形状をはじめ、葬送にまつわる歴史や文化、石材の種類や加工法、墓地や埋葬に関する法律、宗教や宗派、供養に関する知識など、幅広い知識が問われるものとなっています。
2級の試験は正誤判定と多肢選択問題で構成され、1級の試験は正誤判定と多肢選択に加えて記述式の問題も出されます。
お墓ディレクターの認定試験は2004年に始まり、一般社団法人日本石材産業協会のwebサイトによると2019年時点では1級が743名、2級が4273名、合計で5016名が合格しています。
合格者には1級、2級それぞれの認定証が発行されるほか、「お墓ディレクターのいる店」の文字とロゴの入ったのぼり旗をはじめとして、お墓ディレクター取得者限定販売グッズを購入する権利などを得ることができます。
信頼できる石材店を探すひとつの目安として
お墓ディレクターの有資格者の多くは石材店のスタッフです。お客様が安心してお墓を建て、維持していくために、墓石を扱う石材店のスタッフには、石材についての知識だけではなく、葬送に関する習俗や地域のしきたり、宗教上のマナーなどさまざまな知見が求められます。そのなかでもお墓ディレクターの資格を持つ人材は、職務にあたって一定水準以上の知識と教養を有すると客観的に認められた者として、信頼できる石材店を探す際のひとつの目安となるでしょう。
技術面は「石材施工技能士」を参考に
ただし注意しておきたいのは、お墓ディレクターはお墓に関する知識と教養についての資格であるということです。墓石の加工や設置などの技術的な部分に関しては、お墓ディレクターの資格では図ることができません。しかし、別の資格がその能力を知るための参考になります。国家資格である「石材施工技能士」です。
豊富な知識を備えたお墓ディレクターと高度な技術を備えた石材施工技能士、この両者が在籍するということは信頼できる業者を見極めるにあたって大きな拠り所となりえます。
しかし、お墓ディレクターや石材施工技能士の資格者が在籍していない石材店のなかにも、優良な業者が存在しているかもしれません。資格はあくまでもひとつの目安として捉え、実際にいくつかの石材店と顔を合わせて話をしてから、自身に合った業者を選び、お墓を建てる段取りを進めるようにしてください。