お墓を長持ちさせる!お墓のリフォーム徹底解説

「お墓の表面の汚れが取れない」「お墓が傾いている」「雑草が生えて困る」など、お墓の維持管理で頭を悩ませてはいませんか?お墓は屋外に置かれているものですから、常に雨や風や日光にさらされます。維持管理はなかなかに大変で、経年劣化は避けられません。それでも大切な家族やご先祖様が眠るお墓ですから、少しでもお墓を長持ちさせ、気持ちよくお参りしたいものです。

普段の掃除や草抜きから、一歩踏みこんだお墓のメンテナンスやリフォームについては石材店に相談するとよいでしょう。この記事では、多くの人があまり詳しくは知らないであろうお墓のリフォームについて、分かりやすくまとめました。お墓の「気になる」が解消されることで、気持ちよくご先祖様に手を合わすことができるでしょう。

index 目次
  1. 1 墓石表面の汚れや劣化が気になる場合
    1. 1-1 汚れや劣化の原因
    2. 1-2 普段のお墓掃除
    3. 1-3 クリーニング
    4. 1-4 磨き直し
    5. 1-5 彫刻部分の色入れ
    6. 1-6 花立の横穴あけ
  2. 2 お墓の傾きやぐらつきが気になる場合
    1. 2-1 傾きやぐらつきの原因
    2. 2-2 墓石の傾き直し
    3. 2-3 外柵の傾き直し
    4. 2-4 花立や灯篭などの部材のぐらつき止め
  3. 3 雑草が気になる場合
    1. 3-1 雑草の原因
    2. 3-2 モルタル張り
    3. 3-3 防草マサ
    4. 3-4 ストーン・レジン
    5. 3-5 石張り
    6. 3-6 植木の除去
  4. 4 あると便利 パーツの新調
    1. 4-1 霊標(墓誌)
    2. 4-2 塔婆立て
    3. 4-3 物置石
    4. 4-4 ローソク立て
    5. 4-5 香炉
  5. 5 墓石をリフォームする時の注意ポイント
    1. 5-1 性根抜きが必要か寺院に確認する
    2. 5-2 石材店が指定されているか霊園に確認する
    3. 5-3 複数業者に相見積もりをとって比較検討する

1 墓石表面の汚れや劣化が気になる場合

お墓を建てて長い年月が経つと、墓石の表面には汚れや水あかが付着し、さらには割れや欠けが生じることもあるでしょう。こうした墓石の表面の汚れや劣化にはどのように対処すればいいのでしょうか。

1-1 汚れや劣化の原因

石はさまざまな粒子の組み合わせでできています。それを専用の研磨機で何度も何度も繰り返し磨いていくことで、墓石の表面はまるで鏡面のようにぴかぴかに光り輝きます。一見傷一つないように見えますが、実は粒子と粒子の間には目に見えないほどの小さな穴(細孔)があり、ここにホコリなどがたまることが石材の劣化につながってくると言われています。また、石材自身も水を吸いますし、時間が経つことによって中からサビが浮き出てくることもあるでしょう。そもそも地中深くに埋もれていた岩石を無理やり日の当たる場所に引っ張り出して、毎日のように日や風や雨にさらされているわけですから、経年劣化はやむをえないという面もあります。

1-2 普段のお墓掃除

お墓を長持ちさせる一番シンプルで確実な方法はこまめなお掃除です。墓石の表面に付着したホコリやゴミや排気ガスを拭き取ってあげるだけで、墓石の輝きは長持ちします。つまり、お墓参りやお墓掃除を頻繁に行うほうが良いということです。こまめなお墓参りは墓石によいだけでなく、ご先祖様も喜んでくれます。お墓参りの時の普段の掃除はシンプルに水だけで構いません。スポンジや柔らかい布でしっかり汚れを拭き取ったあとに、乾拭きで水気を取るように拭きあげましょう。

1-3 クリーニング

もしも自分たちの掃除だけでは手に負えないしつこい汚れがある場合には、石材店やクリーニングの専門業者に依頼しましょう。専用の薬剤や機材を用いて表面の汚れを落としてくれます。汚れにもさまざまな種類があり、汚れの原因に合わせたクリーニングの方法があります。

クリーニングの方法

クリーニングの方法は主に次の3つが挙げられます。

散水洗浄 石材に散水しながら汚れを除去する。大きな効果は期待できないが墓石を傷める心配がない。
圧力洗浄 高圧洗浄機を使用する。叩き、バーナー仕上げなどのザラザラした面には効果的だが、磨き仕上げの箇所は鏡面を粗面化する恐れがある。
薬液洗浄 専用の特殊薬剤を用いた汚れの除去。汚れに原因に応じた薬剤を適切に選ばなければ墓石の劣化につながる。

薬液の種類と汚れ物質

お墓に薬液を用いるのは石材店に任せておくのが安心です。慣れない人が市販の薬液でお墓掃除しようとしても、適切なものでなければ逆にお墓を汚しかねません。以下、代表的なものをまとめました。

アルカリ系 石材を傷める危険性の少ない薬液。油脂の汚れの脱脂効果が期待できる。
酸系 さまざまな汚れに対して強い洗浄力を発揮するが、石材を溶かして劣化させる可能性もある。
溶剤系(中性) 水に溶けない汚れ(主に油や樹脂)などを落とす効果が期待できる。ただし石材の表面を傷める可能性もある。

1-4 磨き直し

薬液を使ったクリーニングでも汚れが落ちない場合も、研磨機で表面を磨くことで汚れを除去できます。墓石用の研磨機にはダイヤモンドが使われており、ミクロ単位で表面の汚れを取り除けます。ただし、部分的な汚れ落としであれば現場で作業できますが、墓石全体の磨き直しとなると、一旦工場に引き取らなければならないため、解体や据付、さらには寺院のお性根抜きやお性根入れ(5-1章を参照)などの費用が余分にかかります。

1-5 彫刻部分の色入れ

墓石には文字や家紋などを彫刻しますが、彫刻部分に色を入れて文字の見やすくします。白や黒や赤や金などの色を入れますが、主に水性塗料を用いるため年月が経つとどうしても落剝してしまいます。色を入れ直すことで、墓石全体の見栄えが見違えるように良くなります。

1-6 花立の横穴あけ

お花を供える花立ての中には、お供え時の水や雨水が溜まりがちです。逃げ場のない水は花立ての中で汚れ、さらにはその汚れた水が内部から石の中に沁み込んでいきます。衛生的に汚く悪臭を放ちますし、常に水が染み込む状態のため石材にとっても悪影響です。その解決策として花立ての側面に小さな穴を開け、中の水が外に排出されるようにします。最近の新しいお墓では標準施工となっていますが、建立された年代が少し古いものであれば、横穴が開いていない可能性があります。気になる人は石材店に相談しましょう。

2 お墓の傾きやぐらつきが気になる場合

お墓の重量は約700kgにも及ぶと言われています。そのため、長い年月が経つことで少しずつ傾きやぐらつきが生じます。もしも手を合わす時に目の前のお墓が傾いていたら、そればかりが気になってしまい心のこもったお参りができません。こうした問題に対してのどのようなリフォームが行われるのかをまとめました。

2-1 傾きやぐらつきの原因

墓石の傾きやぐらつきにはどのような原因があるのでしょうか。

墓石の傾きは地盤工事がなされていない、あるいは不十分であることに原因があります。墓石の重量は1基当たり700kgにも及ぶと言われています。これだけ重い石がずっと置かれているわけですから、時間が経つことによって地盤が徐々に沈んでしまいます。とはいえ、最近の墓石工事では、必ず地盤の基礎工事を行うため、ひと昔前に比べるとお墓の傾きは比較的解消されていると言えるでしょう。

また、花立や香炉などの部材を据える時には、接着剤の役割としてノロ(セメントを水だけで混ぜたもの)や石材用のボンドを用いますが、年月が経つことでこれらの効果が弱まり、ぐらつきの原因になります。

2-2 墓石の傾き直し

墓石の傾き直しは、きちんと地盤を固め直さなければなりません。一度墓石を撤去して、砕石や割栗石を敷き詰めた地面に鉄筋コンクリートを流し込んで基礎を作ります。また、応急処置で済ますのであれば、墓石を持ち上げて、その下に石を敷いて水平を作ることもできるかもしれませんが、あくまでも応急処置なので、時間が経過するとまた墓石が地面に沈んでお墓全体が傾いてくる可能性があるでしょう。

2-3 外柵の傾き直し

外柵とは、墓域の境界となる延石(長尺の石)のことで、隣の墓域との境界の役目をも果たします。外柵が傾いてしまうと、隣のお墓に迷惑がかかりトラブルの原因にもなりかねません。施工方法は墓石の傾き直しと同じで、外柵を一度撤去して基礎を打ち直します。また、外柵の接合部にステンレスのジョイント金具を打ち込んで外柵と外柵が離れないように固定することで、傾きやズレを防げます。

2-4 花立や灯篭などの部材のぐらつき止め

花立てや灯篭などの部材は、底面をがぐらつく場合は、底面に石材用のボンドを塗り直すことで固定できます。

3 雑草が気になる場合

お墓の維持や掃除で一番大変なのが雑草だと言われています。抜いても抜いても生えてくる雑草対策にはどのような方法があるのでしょうか。

3-1 雑草の原因

雑草の原因は土です。雑草はわずかな水分と光があれば発芽して根を張ります。お墓における地面の仕上げは玉砂利が主流ですが、その玉砂利の下に土が敷かれているのであれば、飛来した種子はすぐに発芽して根を張り、玉砂利の隙間から草が生えてきます。また、土ではなく砕石の場合でも、土ほどではないのですが若干の雑草が生えてきます。いかに雑草の生命力が強いかがわかります。

3-2 モルタル張り

もっともシンプルで安価な方法として、墓域内の地面をすべてモルタルで固めてしまうという方法が挙げられます。ほぼ100%雑草は生えないでしょうし、材料費も砂とセメントだけなので費用も安く抑えられます。ただし見た目が殺風景という短所があります。モルタル張りの上に玉砂利を敷き詰めることで見栄えを良くすることもできますが、モルタルで固めてしまうと雨の水が地面に吸い込んでいかないため、玉砂利も一緒に墓域外に流れ出てしまう可能性があります。

3-3 防草マサ

「防草マサ」とは、株式会社松井文ショウ堂が製造販売する防草効果のある土砂です。固まるタイプと固まらないタイプがあります。固まるタイプは見た目は土のようですが、表面はガチガチに硬化し、雑草が生える隙間がありません。ただし透水性がないため、時間が経つことによってコケやカビの繁殖の恐れがあります。固まらないタイプは天然鉱物を主原料とした真砂土で土色や白色のものがあります。固めないために透水性はよいのですが、効果が弱まるとところどころから草が生えてきます。

3-4 ストーン・レジン

「ストーン・レジン」とは、株式会社松井文ショウ堂が製造販売する、天然石と樹脂を混ぜ合わして自然の風合いを生かした舗装材です。玄関周りや広場や通路などで使われていますが、墓地でも用いられます。防草マサが真砂土の風合いであるのに対し、ストーン・レジンでは玉砂利を敷き詰めたような景観になります。天然石と樹脂を混ぜあわせているため、透水性があるにもかかわらず、表面が硬化し草が生えないという優れものの商品です。

3-5 石張り

墓域内の足元全体を御影石で敷き詰めることで、雑草を防ぐことができます。高級感ある見栄えになり、表面もきれいに磨かれているためお掃除も簡単でしょう。ただし、石碑や外柵と同様の石材を用いるため、高額な費用がかかります。

3-6 植木の除去

低木を植えているお墓をよく見かけます。植木自体は悪いことではないのですが、落ち葉が墓域内を汚してしまう、根が張ってしまうなどの問題を引き起こしがちです。また、お墓参りが疎遠になってしまった墓地では植木が伸びて隣のお墓にまで越境し、迷惑をかけることもあります。しっかり根元から除去しないとまた新たな根や幹が生えてきます。石材店や造園業者に相談しましょう。

4 あると便利 パーツの新調

お墓を新しく建てたときにはなかったものでも、お参りするときにあると便利なものがたくさんあります。お墓を建てたあとでも新設できる部材をご紹介いたします。

4-1 霊標(墓誌)

霊標とは、ご先祖様の名前を並べて記した板石のことです。主に石碑の左右に据えられます。霊標にはご先祖様の戒名、俗名(生前の名前)、命日、年齢などを彫刻します。従来は、仏石(「●●家乃墓」や「南無阿弥陀仏」などと書かれた中心となる石材)の左右側面に戒名を記していました。文字の大きさにもよりますが、両面で8名程度彫刻するとスペースがいっぱいとなるため、新たに霊標を設置する家が増えています。霊標があれば、片面だけで10名前後の名前が刻めます。また、仏石に彫刻する場合は、そのつど寺院にお性根抜きやお性根入れをしなければなりませんが、霊標の場合はその手間が省けます。

4-2 塔婆立て

塔婆とは、故人様やご先祖様を供養するために立てられる木の板のことです。土葬の時代では塔婆を地面に突き刺してそれを墓標としたり、石塔供養の補助的な意味がありました。基礎工事をきちんとする昨今では、塔婆を地面に突き刺して立てるということはなかなか難しく、お墓に立てかけるだけになってしまいます。そんな塔婆を立てるための部材が塔婆立てです。主に石製とステンレス製のものがあります。前者は墓地の形状やお墓に使われる石材にあわせてオーダーメイドされるので費用が高くつきます。後者は既製品のものを設置します。

4-3 物置石

物置石とは、読んで字の通りで手荷物などを置くための石です。お墓参りの時に掃除用品やお供え物などを置けてあると便利なものです。天面だけをつるつるに磨いたものや、内部をくりぬいて扉を付けた収納付きのものなどがあります。

4-4 ローソク立て

お墓参りをする時にはローソクを立てて火を灯しますが、ローソク立てにもさまざまな種類があります。墓石に埋め込んで固定するタイプのもの。これに風よけの筒を取り付けたもの。さらには屋根付きのローソク立てを別に用意して墓石の左右に設置するものなど。ローソクたてをしっかり固定することでよりお参りがしやすくなります。

4-5 香炉

お線香を立てるための香炉も、墓石に埋め込むタイプと、墓石の手前に設置するタイプがあります。また、立てるタイプのものと寝かせるタイプのものがあり、使いやすさによって選びましょう。

5 墓石をリフォームする時の注意ポイント

墓石のリフォームをする時にはどのようなことに注意しなければならないのでしょうか。

5-1 性根抜きが必要か寺院に確認する

墓石には、仏様やご先祖様の性根(しょうね:魂のようなもの)が込められています。この性根が入った状態で墓石工事を行うのは仏さまやご先祖様に対して大変失礼な行為とされています。ですから墓石工事の際には寺院に墓前で読経をしてもらい、お墓の性根を抜いてもらうのが慣例です。これを「お性根抜き」と呼びます。

ただし、すべてのリフォーム作業でお性根抜きが必要なわけではありません。たとえば、解体を伴う作業ならお性根抜きをしなければならない、クリーニングだけならお性根抜きは不要など、このあたりは寺院によって考え方が異なります。また、礼拝の対象である墓石とは別で、霊標などの周辺の部材にはお性根抜きは不要とするのが一般的です。石材店に作業に入ってもらう前に必ず寺院に確認しましょう。

また、リフォーム工事が完了したら「お性根入れ」をしてもらいます。お性根抜きの時と同じように、寺院に墓前で読経してもらいます。

5-2 石材店が指定されているか霊園に確認する

墓地や霊園によっては施工業者が指定されていることがあります。特に多いのが寺院の境内墓地や民営霊園です。この場合、施主が任意で業者を選ぶことができず、寺院や霊園側が指定する業者の中から選ばなければなりません。霊園や石材店とのトラブルに発展しかねないことなので、必ず事前に確認しておきましょう。

5-3 複数業者に相見積もりをとって比較検討する

もしもあなたの霊園がどの石材店でも出入りできるのであれば、複数業者に相見積もりをとって比較検討することをおすすめします。墓石業界には相場こそあるものの統一的な定価がなく、費用の内訳のほとんどは職人の手間賃であるため、同じ仕事でも石材店によって価格設定が異なるのは日常茶飯事です。また、作業の質も石材店によって異なるため、複数の業者と話をして信頼が置けそうなところに依頼しましょう。

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お墓は、家族や先祖がいつまでもつながりを確認しあえるとても大切な場所です。世代を超えたつながりはいつまでも長く続いていてほしいものです。だからこそ、そのシンボルであるお墓も長持ちするものの方がよいでしょう。まずはこまめなお参りとお墓参りが基本です。そして、困ったことがあれば石材店に相談してみましょう。きれいなお墓とみなさんのお墓参りに、きっとご先祖様も喜んでくれるでしょう。ご先祖様が喜んでいると思うと、私たちの気持ちも晴れ晴れするものです。

Text by:玉川将人
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