現在のお墓はこれまでの家単位の墓石を建てるお墓以外に、供養や埋葬のスタイルによって、永代供養墓、納骨堂、樹木葬、散骨、本山納骨、手元供養などさまざまな種類があります。お墓の選び方は、承継者の有無や遺骨の祀り方、誰と埋葬されたいかなどによって変わってきます。供養や埋葬の仕方を決めるには以下のような3つの考え方があります。
お墓選び入門:お墓の分類(2) 供養や埋葬のスタイルによる分類
1. 承継者の有無
一つ目の考え方は、「承継者の有無」です。子どもや孫が承継していく場合は「累代墓」、承継しない場合は「永代供養墓」になります。子や孫、甥や姪がいるか、いる場合にもお墓を継承していくのかどうかによって、「永代使用権」のあるお墓にするのか、承継しない「永代供養墓」にするのかが変わってきます。
1-1. 承継するお墓「累代墓」
子や孫など承継者が「永代使用権」を承継していく「家族墓」(代々墓、累代墓)のことです。「家」を単位とし「○○家」と墓石にも刻まれることが多いですが、一人っ子同士や長男長女同士の結婚などで承継者がいる「両家墓」の場合もあります。
1-2. 承継しないお墓「永代供養墓」
永代供養墓とは承継者を必要としないお墓や納骨堂のことです。これまでの「家」単位のお墓の承継に対して、個人や夫婦単位で生前に購入して寺院等に永代(寺院が続く限り)供養してもらう形です。子どもがいるいないに関わらず、自分の死後にお墓の管理の負担をかけたくない個人や夫婦が利用するケースや、子どもが海外に移住したり別の信仰をもっているといった理由も見られます。寺院などに永代供養料をあらかじめ支払い、一定期間(十三回忌や三十三回忌を目安に)管理、供養してもらい、多くの場合一定期間を過ぎると合葬墓に移されます。
永代供養墓のメリット
- 運営や管理は寺院や霊園管理者が行うため、自分が亡くなった後のお墓の管理の心配をしなくていい。
- 無縁仏にならず半永久的にお寺が供養してくれる。
- 一般のお墓よりコストを抑えることができる。
- 宗教宗派を問わず、寺院の檀家にならなくてもいいケースが多い。
永代供養墓のデメリット
- 生前購入が原則のところが多い。
- 檀家にならなくていい反面、葬式でお経をあげてもらえないなど供養の面で難しくなることも。
- 合葬墓の場合は、後々遺骨の返還を申し出ても返してもらえない。
2. 誰と入るか?遺骨を納める範囲
二つ目は「誰と埋葬するか」という遺骨を納める範囲です。先祖代々の遺骨を一緒に埋葬する「家族墓」や「両家墓」、承継者がいないまたは子どもや孫の負担を少なくするために承継を前提としない「夫婦墓」、自分一人の「個人墓」、血縁関係や親族でない人と一緒に供養してもらう「合葬墓」などがあります。家族や自分のライフスタイルや希望する供養の方法を相談しておきましょう。
2-1. 家族墓(代々墓、累代墓)
- 家単位のお墓。先祖代々の遺骨が一緒に祀られる。
- 墓石に「○○家之墓」「○○家先祖代々之墓」などと刻む。また納骨する度に、墓誌等に戒名や俗名などを加えていく。
2-2. 夫婦墓
- 夫婦単位で一つの墓石。墓石には2人分の俗名や戒名が刻まれる。
- 子どものいない夫婦の場合は永代供養にする。
2-3. 個人墓
- 一代限りで、個人が自分のために建てる。
- 生前に建て、永代供養にする場合が多い。
2-4. 両家墓
- 長男、長女同士が結婚した場合や一人っ子同士が結婚した場合などに、双方のお墓を1つの家で承継する形。
- 墓石には両家の姓が刻まれる。
2-5. 共同墓(集合墓、合同墓、納骨堂)
- 血縁関係のない、友人や知人あるいは信仰を同じにする人同士を1つのお墓で祀る。永代供養。
- 現在はまだ少ないが、ライフスタイルが多様化する中で今後注目されるスタイル。
3. 埋葬の方法
三つ目は「どのように埋葬するか」です。もともとある先祖代々の墓なのか、新たにお墓に墓石を建てて遺骨を埋葬するのか、それとも墓石を建てないお墓(「納骨堂」や「樹木葬」など)にするのか、など。その他に、供養の方法として「お墓」という形ではなく「散骨」や「手元供養」という方法もあり、そもそもお墓に入るのか、入らないのか、というところからも選択肢が存在します。
3-1. 一般墓
寺院や霊園の墓地の一区画に墓石を建てて、カロート(納骨棺)に遺骨を納めます。
3-2. 納骨堂
寺院、公営、民間の納骨堂があります。遺骨を埋葬しないで屋内の専用スペースに収蔵します。永代使用権(代々継承する墓地の使用権)が認められるものと、契約時に定められた期間や一時的に利用するものがあります。檀家になる必要や墓石を建てる必要がないため、費用や管理の負担が少なくなります。ロッカー型(マンション型)と呼ばれる、ロッカーのような個々に区切られたスペースにご遺骨を安置して供養されるタイプや、霊廟(れいびょう)型と呼ばれる仏壇のような装飾が施された個々に区切られたスペースに遺骨を安置して供養されるタイプがあります。一般的にこのスペースは上段と下段に分けられており、上段は仏壇スペースで、下段は納骨スペースになっています。上段の仏壇スペースには、本尊・燭台・花立てなどが用意されています。
多くが立地の良いところにあり、室内なのでお参りがしやすい、その後お墓を建てたときに改葬しやすいというメリットがあります。反面、室内になので線香が手向けられない、スペースが限られているので時期によっては混み合うといったデメリットがあります。
3-3. 本山納骨
本山納骨とは、宗派の開祖・宗祖と縁が深いお寺で遺骨を収蔵してもらうことです。本山が遺骨を預かるので、長期間の管理や運営を期待することができ安心感があります。お墓を建てずにすべてを本山納骨するか、遺骨の一部を分骨します。分骨する場合には、あらかじめ火葬時に分けておきましょう。本山納骨は、納骨後に年間管理費や寄付を求められることはありません。ただし納骨の方法はほとんどが合葬になりますので、遺骨の返還と改葬はできません。
本山納骨の手順
- 事務所に申込書、納骨料を出し、遺骨を渡す。全骨納骨の場合は埋葬許可証も必要。
- お堂にて読経。受付順にお経の中で名前が呼ばれるので遺族はその順番に合わせて焼香する。
- 御廟で読経、納骨をする。
本山納骨のできる寺院一例
- 真言宗高野山金剛峯寺(和歌山県高野山町)
- 浄土真宗本願寺派本山(西本願寺)(京都市東山区)
- 真宗大谷派本山(東本願寺)(京都市東山区)
- 日蓮宗本山身延山久遠寺(山梨県南巨摩郡)
- 浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)
- 天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)
3-4. 樹木葬
墓石の代わりに樹木を植えて墓標とし、埋葬します。樹木葬の多くは永代供養墓なので、継承者がいなくても利用できます。費用の負担は少ないですが、遺骨を取り出すことはできないので改葬はできません。
3-5. 手元供養
自宅供養ともいいます。一部の遺骨を小さい骨壺に入れて仏壇やリビングにおいて供養したり、加工して身に着けるようにすることもできます。遺骨の一部を自宅に置くのに証明書や手続きは必要ありません。しばらく手元に遺骨を置いた後に遺骨をお墓に埋葬したり、納骨堂に収蔵する場合は誰の遺骨なのか証明する必要があるため、火葬場か墓地で分骨を行い「分骨証明書」を発行してもらっておきます。
3-6. 散骨
散骨は遺骨を砕き2ミリ以下の粉末状にした遺灰を海や山などにまく供養の方法です。散骨については、遺骨を埋葬・収蔵しないため具体的な法律がなく、自治体によっては禁止や規制をしているところ、ルールを設けているところがあるのでどこにまくのか事前に確認が必要です。遺骨のすべてを散骨にするのか、一部を散骨し、散骨しない遺骨はお墓に納めるか手元供養にします。
大野屋テレホンセンター監修『小さな葬儀と墓じまい』自由国民社 2017年10月