お墓参りの時期はいつでなければならない、と決まっているものではありませんが、祥月命日や月命日、お盆や春や秋のお彼岸にすることが多くなっています。お正月や年末年始にする人もいるでしょう。お墓参りにはお墓の掃除に必要なもの(雑巾やスポンジ、軍手など)と、供養に必要なもの(線香やろうそく、供物や供花)を持っていきます。お墓に供える花(供花・きょうか)は特別に決まったものはなく、故人の好きな色や花でいいでしょう。花屋や霊園、ホームセンターなどで供花として花束も売っています。以下でお墓の掃除とお参りの手順を細かく見ていきましょう。

1. お墓参りの主な時期

お墓参りをする回数や頻度は決まっておらず、本来いつ行ってもいいものです。「仏滅」や「友引」などの六曜は仏教とは関係のない風習なので、気にする必要もありません。忙しくて、なかなかお墓参りをする時間のない方やお墓から遠方に住んでいる場合は、一般的なお墓参りの時期について知っておきましょう。意識することで、お墓参りを忘れずに行い、故人を供養することができます。

祥月命日(しょうつきめいにち)

故人が亡くなった「月日」を命日といいます。一周忌以降の亡くなった日と同月同日を「祥月命日(しょうつきめいにち)」とよび、毎月の亡くなった日と同日で祥月命日以外を「月命日(つきめいにち)」といいます。祥月命日は年に1回、月命日は年に11回です。例:2月10日に亡くなった場合、祥月命日は毎年2月10日、月命日は1月10日、3月10日、4月10日……となります。

一般的に祥月命日にはお墓参りや一周忌、三周忌などの年忌法要を行います。月命日にもお墓参りをすることがありますが、毎月めぐってくるものなので負担にならないようにしましょう。お墓参りに行けない場合は、仏壇や祭壇にお供えをしたり手を合わせたりして、故人を偲ぶといいでしょう。

お盆

お盆の時期は地方によって異なり、大きく分けて7月13日から行う地域と、8月13日から行う地域があります。お盆にお墓参りをする場合、基本的にはお盆の期間中であれば、いつお墓参りをしてもかまいません。しかし、お盆にはご先祖様の魂が家に帰ってくるといわれており、お墓参りの日程を詳細に決めている人もいます。お盆には地域や家庭によってさまざまな方法がありますが、たとえば8月12日までにお墓の掃除をする、8月13日にお墓参りをしてご先祖様をお迎えする、16日にお墓参りをしてご先祖様をお見送りする、などです。とはいえ忙しい時期や暑い時期でもあります。自分や家族の都合、体調によってお盆前にお墓参りをする、涼しい時間帯にお参りするなど、無理のないタイミングで行いましょう。

お彼岸(ひがん)

「彼岸(ひがん)」とはご先祖様がいるあの世のことです。お彼岸の時期には、私たちがいる「此岸(しがん)」と彼岸が最も近づくとされており、ご先祖様の供養をすることが習慣となっています。お彼岸は春と秋の年2回あります。春のお彼岸は春分の日(3月20日または21日頃)を中日とした前後3日の合計7日間、秋のお彼岸は秋分の日(9月22日または23日頃)を中日とした前後3日の合計7日間です。都合の良い日にお参りするといいでしょう。

年末年始

お墓は先祖が眠る場所なので「縁起の悪い場所」ではなく、年末やお正月にお墓参りをしてもかまいません。休暇が取れたり、帰省した家族が集まったりする年末年始にお墓参りをする人も多くいます。ただし、年末までにお墓の掃除とお墓参りを済ませる地域や、二重苦を連想する12月29日はお墓参りを避けるべきと考える人もいます。お墓のある地域の風習や家族・親族の考え方にならって、お墓参りをするようにしましょう。

2. 持参するもの

お墓の掃除に必要なものと、供養に必要なものがあります。寺院や霊園で貸し出しているものや売っているものもあります。

2-1. お墓の掃除に必要なもの

お墓参りはお参りとともにお墓の掃除、メンテナンスのために行います。寺院や霊園にお墓がある人の場合、6割程度の人がお盆やお彼岸を機に年に1回程度お墓参りをするようです(*1)。1年に1、2回のお墓参りだとお墓には水垢やコケ、カビや焼けなどの汚れがついています。お参りの前に汚れを落として掃除をしておきましょう。もし墓地が近いならお墓参りの前日に行ってもいいでしょう。

ほうき、ちりとり、バケツ、ひしゃくなどは墓地や霊園で借りることができる場合が多いでしょう。墓地や霊園によってはゴミ捨ての場所が設けられているところもあります。お墓の状態によっては、草刈り鎌やスコップが必要なことがあります。

掃除にあるとよいもの

  • 軍手、ゴム手袋
  • 雑巾
  • たわし(スポンジ、歯ブラシ)
  • ゴミ袋

※墓地での貸し出しがない場合はほうき、ちりとり、バケツ、ひしゃくなど。

参考

2-2. お参りに必要なもの

手桶やひしゃくは墓地や霊園で借りることができる場合が多いでしょう。「お墓参りセット」「お参りBOX」といった線香、ロウソク、風よけライターが一箱にセットになったものもホームセンターや仏具店、ネットショップなどで売っています。

  • 線香
  • ろうそく
  • マッチ・ライターなど火をつける道具
  • お墓に供える花・花ばさみ
  • お供え(果物、酒、菓子など)、お供えを置くための半紙

3. お墓に供える花の選び方・種類

お墓に供える花(供花・きょうか)の選び方に特別な決まりはないので、故人の好きな色や花を選びましょう。お墓の前の左右に水鉢があるので一束ずつ、または左右バランスよく供えます。

花の種類としては、一般的には長い間お墓を彩ることができるように日持ちする「菊」が代表的ですが、その他にもカーネーション、アイリス、キンセンカ、スターチス、りんどう、グラジオラス、ケイトウ、ユリなどもいいでしょう。葉ものとしては樒(しきび/しきみ)や槙(まき)、柴などがあります。

法事では白・紫の花を供えることが一般的ですが、お墓に供える花は華やかな色でも問題ありません。ただし、故人が亡くなってから日が浅い場合は、白を基調とした淡い色の花を供えましょう。

自分で花を選ぶのが難しい場合は、花屋であらかじめ供花として売っているものを選んでも、花屋で故人の好みを伝えて花束にしてもらっても良いでしょう。スーパーやホームセンターでも墓花、仏花、供花として売っています。お彼岸など多くの人が訪れる時期なら寺院や霊園でも購入することができます。


墓花例
参考

4. お墓参りの服装

法事・法要に合わせてお墓参りをする場合には喪服や準礼服などになりますが、お彼岸をはじめ、ふだんのお墓参りには決まった服装はありません。ただし他のお墓にもお参りに来られている方がいますので、極端に華美な服装や香りの強い香水などは避けるのがマナーです。

5. お墓参りの手順

まずは、お寺への挨拶、そしてお掃除、さらにお参り、という流れになります。

1. 本堂・本尊にお参り

寺院であれば到着したら掃除をする前にまず住職に挨拶し、本堂・本尊にお参りします。

2. お墓の掃除

詳しくは6章をご参照ください。

3. 手を洗い、手桶に水をくんで墓地に向かう

手桶とひしゃくを借りられる墓地もあります。

4. お墓の前についたら一礼、合掌

両手を合わせて合掌します。

5. 墓石に水をかける

お墓を掃除したら、墓石のてっぺんから手桶のきれいなお水をかけて清めます。

6. 供花・供物を供える

左右の水鉢にお花を供えます。半紙または持参した器などの上にお供えをし、お参りが終わったら持ち帰るようにします。

7. ろうそく、線香に点火する

燭台があれば、ロウソクを立て、ロウソクにマッチなどで点火します。ろうそくから線香の束に火をつけます。炎が出てしまったら口で吹き消すのではなく、手であおいで炎だけを消します。線香立てに線香をお供えします。

※線香の本数は宗派によって違い、天台宗3本、真言宗3本、浄土宗1本や2本(2つに折ることもある)、浄土真宗1本(香炉の大きさに合わせて適当に折って火を左側に横に寝かせる)、臨済宗1本、曹洞宗1本、日蓮宗1本、と決まっていますが、必ずしもこの通りでなければいけないというわけではありません。

8. 合掌

礼をして両手を合わせて先祖や故人のために祈ります。

9. 後片づけ

線香が消えていることを確認し、お供え物を引き上げて、手桶やひしゃくなどをもとの場所に戻します。

参考

6. お墓の掃除の仕方

持参したスポンジやたわし、雑巾などでお墓とその周辺をきれいに清めて整えます。ホームセンターなどでお墓用の洗剤も売られていますが、墓石の材質にもよりますので洗剤は使わずに水洗いで十分です。

1. 墓石を洗う

墓石に水をかけてスポンジやたわしで汚れや苔を落とします。文字の彫り込み部分など細かいところは歯ブラシを使います。

2. 雑巾で拭く

汚れが落ちたら水で洗い流し雑巾で拭きます。

3. 水鉢に水を注ぐ

きれいな水を水鉢にひしゃくで注ぎます。

4. 周辺の掃除

周りの雑草をぬいたり、落ち葉を掃き集めます。花立に枯れた花が残っていれば取り除いておきます。

5. 古い卒塔婆を処分する

古くなってボロボロになってしまった卒塔婆は寺院や霊園の管理事務所などで処分してもらいましょう。

7. 親族以外のお墓参りをする際のマナー

友人や知人、恩師など親族以外のお墓参りをする際のマナーをご紹介します。

7-1. お墓参りをする時期・タイミング

お墓参りは命日やお盆、お彼岸にすることが多いですが、いつ行くか、行ってはいけないかは決まっていません。自分が行きたいと思ったとき、行ける時期に行ってかまいません。ただ、友人や知人のお墓参りをする時期やタイミングについては、はじめてお墓参りをするのか、それとも複数回目なのか、お墓の場所を知っているかどうか、故人や遺族との関係によって変わってきます。一般的に納骨前は自宅を訪問して仏壇などにお線香をあげ、お墓参りは納骨後に行います。命日のお墓参りは法要と重なってしまうことも多く、お盆やお彼岸は遺族が墓参することも多いので避けた方がいい場合もあります。

7-2. お墓参りをする際の連絡

お墓参りをする際に遺族に連絡を必ずしもしなければならないわけではありません。しかし、初めて墓参する場合やお墓の場所が分からない場合は連絡する必要があります。

通夜や葬儀に参列しているなど、遺族と面識があり親しい間柄であれば納骨までに弔問し、その際に後日お墓参りをしたい、お参りをしてもいいか、と聞いた上でお墓の場所を確認しておきましょう。はじめてお墓を訪れる際には電話連絡し「○日にお墓にお参りに行かせていただきます。」と伝えましょう。その後のお墓参りについてはその都度連絡する必要はありません。

お墓の場所が分からない場合や直接お墓の場所を聞いていない(共通の友人や知人づてに聞いたなど)場合は、一度遺族に連絡を入れてお墓の場所を直接聞いてから墓参するのがマナーです。遺族と面識がない場合は、自分が故人の方とどのような関係であったかなどを話し、お墓参りをしたいことを伝え、お墓の場所などを聞いてからお墓に伺うようにしましょう。

中には面識のない人にお墓の場所を教えるのに抵抗がある方や、面識があっても墓参りを歓迎しない場合があり、「お気持ちだけでけっこうです」「お気持ちだけありがたく…」とやんわり断られる場合もあります。その場合は自分の家の仏壇に線香をあげたり、心の中だけで故人の冥福を祈りましょう。

7-3. 持ち物と服装

お墓参りに特別決まった服装はありませんので、華美になりすぎず故人や遺族に失礼にならないよう心がければ大丈夫です。お墓に供える花と線香(ろうそく、ライターやマッチ)、数珠を持っていきます。お花については「3. お墓に供える花の選び方・種類」を参照してください。

親族ではないので掃除用具は必要ありませんが、ごみ袋や新聞紙程度はあると便利です。飲み物や食べ物などのお供えは帰りに持ち帰らなければならないですし、常温のものでも遺族の方が後で片付けなければならなくなります。また墓地や霊園によっては食べ物と飲み物のお供えが禁止されているところもありますので、お供えは花と線香だけで十分でしょう。

7-4. お墓参りの手順

手を洗い、手桶に水をくんで墓前に向かいます。手桶とひしゃくはたいていの墓地や霊園で借りることができます。お墓の前についたら一礼、両手を合わせて合掌します。

友人や知人であれば、遺族ではないので掃除をする必要はありませんが目立つごみがあれば拾っておきましょう。またもしあれば枯れた花を処分し、花入れを簡単にすすぎ、きれいな水を入れて花を供えます。ロウソクやライターを用いて線香に火をつけます。炎が出てしまったら口で吹き消すのではなく、手であおいで炎だけを消します。線香立てに線香をお供えします。両手を合わせて故人のために祈ります。線香が消えていることを確認し、バケツやひしゃくなどをもとの場所に戻します。「5. お墓参りの手順」も参考にしてください。