亡くなった方の公的医療保険の保険証は、死後すぐに返却しなければなりません。また遺族が故人の被扶養者であった場合、遺族は国民健康保険などへの加入手続きを新たに行わなければなりません。今回は故人の保険証の返却方法と、故人に扶養家族がいた場合の手続きについて説明します。保険といってもいくつか種類があり、種類に応じて保険証の返却場所や返却時の注意点、被扶養者の手続きが異なります。

1. 公的医療保険の種類

日本では全ての人が公的医療保険に加入する義務があります。病気やケガをして病院で治療する際に、治療費の一部を「保険者」が負担する保険です。医療保険の「保険者」は職業や年齢によって異なり、健康保険(社会保険)・国民健康保険・後期高齢者医療制度の3種類に分かれます。学生や主婦で働いていない場合は、家計を支えている他の家族の被扶養者としてなんらかの保険に加入していることがほとんどです。さらに介護が必要な方のために、介護保険制度も設けられています。

健康保険(社会保険)

会社に勤めるサラリーマンや公務員が加入する保険です。健康保険(社会保険)は保険者によって、さらに次のように分かれます。

組合健保:大・中規模企業のサラリーマンとその扶養家族を対象とした保険。保険者は企業が単独、あるいは共同して設立した組合。
協会けんぽ:中小企業のサラリーマンとその扶養家族を対象とした保険。保険者は全国健康保険協会。
共済組合:国家公務員、地方公務員、私立学校教員とその扶養家族を対象とした保険。保険者は各種共済組合。

国民健康保険

主に自営業者やフリーター、75歳未満の年金受給者などとその扶養家族を対象とした保険。保険者は全国健康保険協会。

後期高齢者医療制度

75歳以上の方、および65歳以上75歳未満で一定の障害があると認定を受けた方を対象とした保険。保険者は後期高齢者医療広域連合。

介護保険制度

65歳以上の方で介護が必要な方、もしくは40歳以上65歳未満で特定疾病により介護が必要であると認定された方を対象とした保険。保険者は全国の市町村および特別区(東京23区)。

2. 保険証の返却

公的医療保険の加入の証となる証明書が「保険証」です。死亡すると医療保険の資格は無くなり、保険証は無効となります。故人の保険証は、死後すみやかに返却しなければなりません。保険証の種類によって、返却する期日や場所は異なるので確認しましょう。手続きに必要なものは、市区町村の窓口ごとに異なります。心配な場合はホームページなどであらかじめ確認しましょう。

健康保険証の返却

健康保険証は、健康保険(社会保険)に加入している方の保険証です。健康保険証の返却手続きは、故人の勤め先が行います。会社ごとに手続きに必要なものなどは異なるため、不明な点は会社に問い合わせましょう。

返却期限:死後5日以内
返却先:勤めていた会社
必要なもの:手続きを行う会社に確認

保険料の未払いなど注意点
保険料の未払いがある場合は、相続人が支払います。

国民健康保険証の返却

国民健康保険証は、国民健康保険に加入している方の保険証です。

返却期限:死後14日以内
返却先:故人の住まいがあった市区町村役場
必要なもの:国民健康保険資格喪失届(市区町村役場の窓口に設置)、国民健康保険証、印鑑など

保険料の未払いなど注意点
保険料の未払いがある場合は、相続人が支払います。

後期高齢者医療被保険者証の返却

後期高齢者医療被保険者証は、後期高齢者医療制度に加入している方の保険証です。

返却期限:死後14日以内
返却先:故人の住まいがあった市区町村役場
必要なもの:後期高齢者医療資格喪失届(市区町村役場の窓口に設置)、後期高齢者医療被保険者証、印鑑など

保険料の未払い・還付など注意点
支払った保険料に応じて支払いや還付が発生します。また、医療費の自己負担が限度額を超えている場合は払い戻しされます。これらは相続人に対して行われます。手続きには相続人の預貯金通帳と印鑑が必要です。

葬祭費用がもらえる
葬儀から2年以内に葬祭費の手続きをすると、喪主は葬祭費用がもらえます。もらえる額は地域によって異なり、3万~7万円が目安です。受け取りには後期高齢者医療被保険者証、会葬礼状や葬儀の領収書など葬儀をしたことと喪主の氏名が確認できるもの、喪主の通帳、喪主の印鑑が必要です。

介護保険被保険者証

介護保険被保険者証は、介護保険制度の条件を満たしている方に発行される保険証です。

返却期限:死後14日以内
返却先:故人の住まいがあった市区町村役場
必要なもの:介護保険資格喪失届(市区町村役場の窓口に設置)、介護保険被保険者証、印鑑など

保険料の未払い・還付など注意点
相続人は支払った保険料に応じて、足りない場合は支払い、納めすぎている場合は返金されます。

3. 故人の医療保険に被扶養者として加入していた遺族の手続き(保険証の返却新たな保険加入)

故人の健康保険や国民健康保険に被扶養者として加入していた遺族も、死後は保険資格を喪失します。加入している保険の種類によって手続きは変わるので、詳しく確認しましょう。

被扶養者は手続きを行わないとどうなる?

故人の医療保険に被扶養者として加入していた場合、死後は遺族である被扶養者も資格を喪失します。手続きを行わないと無保険状態となるので、注意が必要です。無保険状態が長く続くと、病気になった際に治療費を全額負担することになります。さらに、無保険期間の保険料を追納しなければならない場合もあります。忘れないように、早めに手続きをしましょう。

故人の「健康保険」に被扶養者として加入していた場合

健康保険に加入していた方が亡くなると資格を喪失しますが、同時に被扶養者の資格も喪失します。そのため故人の健康保険に被扶養者として加入していた場合は、死後14日以内に被扶養者全員分の保険証を勤め先へ返却して「被扶養者資格喪失」の手続きをしなければなりません。資格喪失の手続きは勤め先が行ってくれます。

さらに無保険状態であるため、「被保険者資格取得」の手続きも必要です。すぐに仕事に就かない場合は、新たに国民健康保険に加入するか、または他の家族の被扶養者になる手続きを行う必要があります。

新たに国民健康保険へ加入する場合

死後14日以内に、住所地の市区町村の窓口で加入手続きを行います。必要書類は、故人の勤め先から発行される健康保険の資格喪失証明書、マイナンバーカード、本人確認書類(免許証、パスポートなど)などです。

他の家族の被扶養者となる場合

被扶養者が追加となる被保険者が、死後5日以内に勤め先へ「被扶養者(異動)届」を出します。 3親等以内の親族かどうか、年齢による収入限度額を超えていないかなどにより、被扶養者になれるかどうか判断されます。提出書類は勤め先ごとに異なるため、事前に確認しましょう。

故人の「国民健康保険」に被扶養者として加入していた場合

故人の国民健康保険に被扶養者として加入していた場合は、世帯主を書き換えて新しい健康保険証を発行する必要があります。家族全員分の保険証を忘れずに持っていきましょう。

保険料の納付が困難な場合は相談を

やむを得ない事情があり保険料の納付が困難な場合は、保険料の免除や減額、分割納付などできる制度があります。所得などの状況により判断されるので、納付が困難な場合はそのまま放置せずに、市区町村の保険の窓口で相談しましょう。