日本では人が亡くなったら、決められた期限内に市区町村役場へ「死亡届」を提出しなければなりません。「死亡届」は「死亡診断書 兼 死体検案書」と対になった書類です。今回は「死体検案書」についてくわしく説明します。「死体検案書」の提出方法や、どのような場合に「死亡診断書」でなく「死体検案書」が作成されるのかをチェックしましょう。

「死亡診断書」についてはこちらをご参照ください。

1.死体検案書について

死体検案書とは

病院で亡くなった場合は、正確な死亡時刻や死因を医師が把握することができます。しかし自宅など病院以外の場所で亡くなった場合は、死亡時刻や死因、事件性があるかどうかがわからないため、医師が遺体を調べなければなりません。これを「検案」といいます。

そして検案によりわかった死因や死亡推定時刻などを検案した医師がまとめた書類が「死体検案書」です。死体検案書は死亡した事実を証明する書類です。

「検案」と「検視」とのちがい

「検案」とよく似た言葉に「検視」があります。「検視」は「検案」で死因がはっきりしない場合や異状死の場合に、検察官や警察官により行われる状況捜査です。死体や周囲の状況を捜査し、犯罪性の有無を確認します。ここで犯罪性が無いと判断されれば検視に立ち会った医師または監察医により検案が行われ、死体検案書が作成されます。明らかに犯罪性がある場合はさらに捜査や司法解剖、DNA鑑定などが行われます。司法解剖は原則として裁判所から嘱託された大学の法医学教室で行われ、その後死体検案書が作成されます。検案、検視の流れについては後述の「検案・検視の流れ」をご参照ください。

死亡診断書との違い

「死体検案書」も「死亡診断書」も同一の用紙で、死亡届と対になっています。「死体検案書」と「死亡診断書」のどちらが採用されるかは、死因により異なります。

【死亡診断書が発行される場合】

死亡時に医師が容体の経過を把握していた場合は、「死亡診断書」が発行されます。

  • 診療中、入院中、自宅療養中の人で、生前に診療していた傷病に関連して死亡した場合
  • 病院で死亡し、事件性や異状性がない場合
【死体検案書が発行される場合】

生前に診療していた傷病以外の理由で亡くなった場合は、死体検案書が発行されます。事故死、自殺、他殺などの変死や突然死のケースです。

  • 普段医師の診療を受けていなかった人が病院以外の場所で亡くなった場合
  • 普段医師の診療を受けていたが、診療していた傷病以外が死因で亡くなった場合
  • 死体に何らかの異常があると認められた場合

検案・検視の流れ

  1. 1.治療中の持病が原因で死亡したかどうか
    1. 1-1.持病が死因の場合は医師により「死亡診断書」が作成される
    2. 1-2.持病がない場合や持病以外が死因の場合は2へ
  2. 2. 医師が遺体の「検案」を行う
    1. 2-1.遺体に異常がない場合は「死体検案書」が作成される
    2. 2-2.遺体に異状がある場合は24時間以内に所轄警察署へ医師が連絡をして3へ
  3. 3.犯罪の疑いがあるかどうか
    1. 3-1.明らかに犯罪の場合は4へ
    2. 3-2.犯罪の疑いがある場合は検察官や警察官が「検視」を行う
      1. 3-2-1.犯罪性がないと判断された場合は検視に立ち会った医師が「検案」を行い「死体検案書」を作成する
        ただし監察医制度(※)のある地域は監察医が検案・行政解剖を行い「死体検案書」を作成する
      2. 3-2-2.明らかに犯罪または犯罪の疑いがある場合は4へ
  4. 4.状況に応じて捜査や司法解剖、DAN鑑定などが行われる。結果が確認できたら「死体検案書」が作成される

※監察医制度とは
監察医とは自治体の知事により任命された、行政解剖を行う医者のことです。死因がはっきりしない遺体や犯罪性のない遺体を行政解剖して、病気の予防や犯罪の見落としを防ぐことが目的です。行政解剖をして犯罪の可能性がある場合は、司法解剖に切り替えられま す。現在は東京23区、大阪市、神戸市などの大都市で運用されています。

死体検案書の記載内容

死体検案書には以下の項目が記載されています。

  1. 故人の氏名・性別・生年月日
  2. 死亡した日時:不明な場合は「不詳」と記載されます。
  3. 死亡した場所
  4. 死亡の原因:死因に関する手術の有無や解剖の有無が記載されます。
  5. 死亡の種類:「病死及び自然死」「外因死」「不詳の死」から選択されます。
  6. 外因死の追加事項:外因死の場合、傷害が発生した日時や場所などが記載されます。
  7. 生後1年未満で病死した場合の追加事項
  8. その他特に付言すべきことがら:補足がある場合に記入されます。
  9. 「診断(検案)年月日」等:検案した年月日や発行年月日、医師の署名が記入されます。
(参考)

2.死体検案書の発行

死体検案書を発行する人

死体検案書は検案をした医師により発行されます。

死体検案書を受け取ることができる人

死体検案書を受け取ることができるのは、死亡した人の配偶者もしくは3親等以内の親族に限られます。代理人が受け取る場合は、委任状と本人確認ができる運転免許証や健康保険証などの書類の提示が必要です。

死体検案書を受け取るまでの日数

死亡診断書は死後速やかに医師により作成されるため、死亡した当日または翌日には書類を受け取ることができます。

しかし死体検案書の場合は、検案を行う必要があります。事件性がないと判断された場合は半日~数日で受け取ることができますが、異状死の可能性がある場合は司法解剖を行うため、書類を受け取るまでの日数が長くなります。遺体の状態が悪くDNA鑑定が必要な場合は、10日から1か月以上かかる可能性もあります。遺体はずっと警察に預けられたままなので、その間火葬をすることも死亡届を提出することもできません。

再発行について

死亡診断書または死体検案書は、死亡判定をした病院で再発行してもらうことができます。
ただし再発行は有料で、再発行にかかる時間や料金もそれぞれの施設ごとに異なります。また事前に電話連絡が必要な場合もあるので、時間にゆとりを持って手続きをしましょう。
郵送に対応している施設もあるので、ホームページや電話で事前に確認をするといいでしょう。

死体検案書の発行料金

「死亡診断書」の相場は3,000~10,000円程ですが、「死体検案書」の発行料金は地域や医療機関・施設、医師により金額が大きく異なります。死体検案書の平均額は7,000円程ですが、1,000円~60,000円程と幅があります。さらに死体検案書代とは別に、遺体の損傷がある場合は納体袋代6,000~30,000円程も必要です。ただし検案や納体袋に関する費用が公費で賄われる地域もあります。一部だけ負担してくれる地域や、東京都のように検案代や納体袋代がほぼ無料になるケースもあります。

コピーをとっておく

必要な死体検案書は役場に提出する1通ですが、葬儀の手続きや生命保険の手続きなどで死体検案書のコピーが役立つこともあります。
役場に提出した死体検案書は返還されず、再発行にも料金がかかります。10枚ほどコピーしておくといいでしょう。

3.死体検案書の提出方法

死体検案書を受け取ったら、対になった死亡届に必要事項を記入して期限内に市区町村役場へ提出しなければなりません。

提出方法

死体検案書は死亡届と対になったA3用紙で、亡くなった事実を知った日から7日以内に役場へ提出しなければなりません。手続きは無料で行うことができます。死亡届が受理され、火葬許可申請書を提出すると、遺体の火葬や埋葬に必要な「死体火葬許可書」が発行されます。

  • 提出場所:故人が死亡した場所、故人の本籍地、届出人の住所地のいずれかの市区町村役場の戸籍係
  • 提出できる人:親族、同居人、家主、地主、後継人など。
    業務上、忙しい遺族に代わって葬儀会社が代理で提出するケースも多い。
  • 提出時間:365日24時間、提出可能
  • 提出期限: 死亡を知った日から7日以内、国外で死亡した場合は死亡から3ヶ月以内
  • 必要なもの:死体検案書、印鑑

死体検案書の作成に1週間以上かかってしまった場合は?

原則として死亡届は、死亡を知った日から7日以内に役場へ提出しなければなりません。戸籍法137条により、正当な理由なく届出が遅れた場合は5万円以下の罰金が課されます。

参考:
(戸籍法137条)正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。

ただし死亡届と対になった死体検案書の作成が1週間以上遅れた場合は、「正当な理由」に当たります。死体検案書が発行されたら速やかに届出を行いましょう。