【行政書士監修】不動産の相続による登記が義務化されます

2021年4月に成立した新しい法律により、2024年をめどに、相続による不動産登記が義務化されることになりました。

相続税の申告準備と相続によって生じた不動産登記は、相続に関わるさまざまな手続きの中でも、とくに面倒でハードルが高そう、と思われるものでしょう。現在、相続税の申告は、死亡日から10か月以内と期限が決まっていますが、不動産登記の期限は決まっていません。そのため、特に山林や貸地などの登記は、ついつい後回しにしがちです。今回は相続登記の義務化とは何か、なぜ、いつから義務化されるのか、罰則の有無などについて詳しく解説いたします。

本文中で何度も出てくる用語ですが、以下のように定義します。

用語の定義

被相続人:財産を残して亡くなった人。この人の財産を分けるのが遺産相続。
法定相続人:民法によって定められた被相続人の財産を相続する権利を持つ人。被相続人との婚姻関係や血縁によって決まる(例:配偶者や子どもなど)。詳しくはこちらの記事をご参考ください。
相続人:一般的には相続人=法定相続人と解釈されている。稀に相続人=法定相続人+法定相続人以外で財産を受け取ることになった人や団体、と何らかの形で遺産を受け取る人や団体全体をさす場合がある。
相続登記:相続による不動産等の所有者名義の変更について登記すること。
所有者不明土地:不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない,又は判明しても連絡がつかない土地のこと。

不動産の相続登記について、詳しくはこちらをご参照ください。
不動産の相続登記はいつする?誰がする?しないとどうなる?

index 目次
  1. 1. 「相続登記が義務化される」とは?
  2. 2. 相続登記の義務化の背景
  3. 3. 「相続人申告登記」(仮称)
  4. 4. 相続登記等をしない場合の罰則はどうなる?
  5. 5. まとめ

1. 「相続登記が義務化される」とは?

相続が発生すると様々な手続きが必要になります。その中でもとくに手間がかかり、かつ間違えないようにしなければならないのが、相続税の申告準備と相続登記だと言っても過言ではありません。

相続税の申告は、被相続人の死亡日から10か月以内に申告をするという締め切りがあります。この締め切りに間に合わない場合には罰則があり、最悪の場合、罰金のような課税がなされてしまいます。

ところが相続登記は、現在のところ期限が設けられていません。そのため、相続登記を後回しにしてしまうケースが多くあります。相続登記をしないままでいると、不動産登記簿からは所有者がわからない、または連絡がつかない、という土地が多くなってしまいます。こうした土地のことを法務省は「所有者不明土地」と名付けました。

この「所有者不明土地」をこれ以上生まないための予防措置として、不動産登記法を改正し、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化し、それらの手続の簡素化・合理化策をパッケージで盛り込む法律改正案が可決、成立しました。その中で、相続登記義務化関係の改正は、公布日(=2021年4月21日)の後3年以内の政令で定める日、ということに決まりました。相続登記の義務化に伴い、相続登記の手続きの簡素化も進められる予定です。

2. 相続登記の義務化の背景

この相続登記、なぜ義務化されることになったのでしょうか。

1. で述べた通り、現段階では不動産登記は任意であり、登記をしなかったからといって罰則規定がありません。

そのため相続人は、例えば自分が居住している土地の場合、住んでいる土地を引き続き利用したいということから、また、新たに相続した土地ですぐに利用したい場合などは、すぐに相続登記をする傾向にあります。

一方、例えば都市部から離れたところにある先祖代々の土地などについては、そもそも所有してもメリットがないし、すぐに利用する予定もないということから、相続登記を後回しにしがちです。

また、遺産分割をせずに共有名義のままで土地の相続登記が続くと、共有名義者が膨大な数になり、ますます相続登記の手続きを進めることが難しくなります。

このように、相続登記をしないままでいると、不動産登記簿からは所有者がわからず、または所有者がわかっても連絡がつかない「所有者不明土地」が生まれてしまうのです。この登記簿からでは所有者の所在が確認できない土地の割合が、なんと日本全国の私有地の20%に達しています(平成30年版土地白書114頁参照)。

このような「所有者不明土地」が多くなると、どのような問題が発生するでしょうか。

まずは「所有者不明土地」を活用したい自治体などが土地の所有者を探す際に、多大な時間と費用が必要になります。また、「所有者不明土地」は適切な管理がされずに、荒廃したままで放置されるケースが多く、近隣への悪影響が心配されます。

このように、相続登記をしないことで「所有者不明土地」が多くなると、土地の有効活用をしにくくなったり、隣接する土地に悪影響を与えたりする問題が既に発生しています。今後の日本は、まずます高齢化および人口減少が進むため、こうした傾向に拍車がかかることが予想されます。そこでまずは、「所有者不明土地」をこれ以上生まないために、相続登記を義務化することになったのです。

3. 「相続人申告登記」(仮称)

この相続登記義務化関連の法改正によって、新たに「相続人申告登記」(仮称)が創設されます。現在は相続登記をするためには、相続人全員の同意である遺産分割協議書と戸籍が必要ですが、これは相続が始まったことや、自分が登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、相続の義務を履行したものとして認められる制度です。

この新しい「相続人申告登記」(仮称)には、まだ遺産分割協議が終わっていないので、実際に自分がその土地を相続するかはわからないが、少なくとも自分が被相続人の遺産を引き継ぐ相続人の一人であることを事前に申請し、登記簿に記載しておく、という意味があります。この申告登記をしておけば、下記4.にある被相続人の死亡から3年が経っても遺産分割協議がまとまらない場合に、罰則を免れることができるというメリットがあります。

また国としても、たくさんいるはずの相続人全員がわからないまま「所有者不明土地」が増えるよりも、少なくとも数名「相続人申告登記」(仮称)をしている相続人がいれば「所有者不明土地」の増加を防ぐことができます。

このように「相続人申告登記」(仮称)は、相続人と国の両方にとってメリットがある制度なのです。

また、土地の管理が難しい場合は、相続した土地を手放して国庫に納められる制度が新設される予定です。

4. 相続登記等をしない場合の罰則はどうなる?

相続登記は、相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内に相続登記(=所有権移転の登記)を申請しなければならなくなります。また、遺産分割で所有権を取得した際は、分割の日から3年以内の登記が義務づけられます。例えば、遺産分割協議が被相続人の死亡から3年後にまとまった場合、その日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない、ということです。

そして、もしも正当な理由がないにも関わらず、上記の申請を怠った時は、10万円以下の過料(=罰則金)を求められることになります。

一方、相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらず、相続登記ができない場合は、法定相続分による相続登記をするか、期間内に自分が相続人であることを3. の「相続人申告登記」(仮称)をしなければなりません。

こちらについても、正当な理由がないのに法定相続による相続登記をしない、または「相続人申告登記」(仮称)を申請していない場合は、5万円以下の過料(=罰則金)を求められます。

なお、法定相続分による相続登記や、相続人申告登記をした後に、遺産分割協議がまとまって、自らが不動産を取得した場合は、それから3年以内に相続登記をしなければいけません。正当な理由がないまま、この手続きをしない場合には、やはり10万円以下の過料(=罰則金)の対象になります。

5. まとめ

大都市圏に人口が集中する傾向はますます強くなり、地方にある先祖代々の宅地や山林などの権利を保有するメリットが低くなっている現在、相続登記をしないケースが増加しています。そのため、気がついたらお祖父さん(2世代前)の名義のままだった、というケースも少なくありません。そうなってしまうと、2世代前から1世代前への相続登記と、1世代前の被相続人から新しい所有者への相続登記と、2回の登記をしなければなりません。そうすると負担が大きくなり、ますます手続きに取り掛かりづらくなってしまいます。

さらに、「分割するのも面倒だから、兄弟全員の共有名義にしておこう」と安易に共有化すると、世代が下るに従って、法定相続人の数が膨大になってしまいます。そうなってしまうと、誰が相続人なのかを探り当てるだけでも大変な時間と労力が必要になります。こうして「所有者不明土地」が国土の私有地全体の約2割にも達してしまったのが、現在の日本です。

今回の法改正は、土地を有効活用し、また、荒廃を防ぐために行われました。2024年をめどに導入される予定ですが、わざわざそれを待つ必要はありません。もし、相続登記をしていない土地があれば、すぐにでも登記申請をしましょう。それが、あなたができる上の世代への感謝であり、下の世代への義務だからです。

監修
アイリス綜合行政書士事務所
行政書士・FP 田中真作
早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
相続や離婚などの一般市民法務相談や各種許認可業務など幅広く対応。
田中真作のFacebookページ
Text by:西山千登勢
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