遺産分割協議、丸わかり!

遺産分割協議とは、亡くなった人(以下、被相続人)が残した財産を、法定相続人が話し合い、「誰が、何を、どのくらい受け継ぐか」と遺産の分割方法や内容を決めることです。この遺産分割協議が必要なのはどんなケースでしょうか?また法定相続人以外の受遺者は遺産分割協議に参加できるのでしょうか?遺言があっても、遺産分割協議により遺言と違う内容で相続を決めることができるのでしょうか?今回は遺産分割協議について、まるっとわかりやすくまとめます。
index 目次
  1. 遺産分割協議とは?
  2. 遺産分割協議、遺言書、法定相続分、優先度が高いのはどれ?
  3. 遺産分割協議を始める前にしておきたい準備
  4. 遺言書の内容と違う遺産分割協議は可能?
  5. 遺産分割協議に応じない、または署名・押印しない法定相続人がいる場合
  6. 遺産分割協議が終わった後になって、遺言書が出てきた場合
  7. 法定相続人以外の受遺者が遺産を受け取る場合
  8. まとめ

本文中で何度も出てくる用語ですが、以下のように定義します。

被相続人:財産を残して亡くなった人。この人の財産を分けるのが遺産相続。

法定相続人:民法によって定められた被相続人の財産を相続する権利を持つ人。被相続人との婚姻関係や血縁によって決まる(例:配偶者や子どもなど)。詳しくはこちらの記事をご参考ください。

遺贈者:遺言により財産を与える人。ただし「遺贈者」と表現されるときは、法定相続人以外の人や団体(例:お世話になった医者や介護士、病院や大学など)に対して、遺言によって財産を贈る意思を表明した場合を指す。生前に遺贈することを受遺者に告げる必要はない。

受遺者:遺言により指名されて財産を受け取る法定相続人以外の人、団体。遺贈者の生前に、自分が受遺者となることは知らされていない。

共同相続人:法定相続人と受遺者をあわせた、遺産を受けつぐ権利のあるもの。

遺産分割協議とは?

被相続人が亡くなってから、遺産相続が始まります。遺産相続とは被相続人が生前作ったプラスとマイナスの遺産全部をどのように引き継ぐかを決めて手続きをすることです。その時にもし法的に有効な遺言があれば、その遺言に従って遺産を受け継ぎます。しかし遺言が見つからない、もともと無い、または遺言の内容が法的に有効でない場合は「遺産分割協議」を行います。
ただし遺言が見つからないまたは法的に有効でない場合でも、法定相続人が、配偶者だけまたは子どもが一人だけなどと、たった一人しかいない場合には、遺産を分割する必要がなくなります。そのため、遺産分割協議をする必要はありません。

遺産分割協議とは、「誰が、何を、どのくらい受け継ぐか」を法定相続人全員が参加して話し合うことです。そして遺産分割協議で決めた内容は「遺産分割協議書」として書き残し、法定相続人全員が署名、捺印をして有効になります。

遺産分割協議を行う際に重要なポイントが3つあります。
それは

  • 法定相続人「全員」で話し合うこと
  • 法定相続人「全員」が合意すること
  • 上記2つが満たされていれば、自由に配分を決められること

です。

遺産分割協議で決める遺産の分け方は、法定相続分が参考になります。しかし法定相続分はあくまで参考です。法定相続分どおりに遺産を分けなければならない、ということではありません。遺産分割協議で法定相続人全員が話し合いに参加して同意をすれば、自由に配分を決めることができます。

また、遺言によって財産を贈る(=遺贈する)と指定された、法定相続人以外の人や団体(法定相続人以外の受遺者)は遺産分割協議に加わることができません。

遺産分割協議で注意すべきは以下の2点です。

1点目は、いくら遺産分割協議で遺産の分け方を自由に配分できる、といっても、各法定相続人には「遺留分」という法律によって守られた最低限の遺産相続の権利があり、それより少なく配分してしまうと、後から面倒なことになる可能性があることです(ちなみに「遺留分」は法定相続分の半分です)。

例えばある法定相続人に対して、その人の相続分を「遺留分」より少なく配分した場合を考えてみましょう。「遺留分」より少なく遺産を配分された法定相続人が、一度はその分け方に合意して遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書を作成したとします。さらに他の法定相続人は遺産分割協議書に従って遺産相続の手続きを始めて、または終わってしまっている。

しかしそうなってからでも、遺産分割協議書を作成して1年以内であれば、配分が少なかった法定相続人が「やっぱり、自分だけ不公平な配分をされた」と思い直した場合には、「遺留分侵害額請求権」を行使できます。

これは自分が本来最低限受け取るはずだった遺留分よりも少ない分量で相続していることに気づいた人・不服をもった人が、不足分を他の法定相続人に請求できる、というものです。

このように遺留分を考慮せずに話し合いを進めてしまうと、せっかく遺産分割協議で合意した場合でも、後から法定相続人の間で争いになる可能性が高くなります。そこで遺産分割協議の際には、法定相続人全員が「遺留分」を下回らない分量で相続できるように注意が必要です。

なお参考までに「相続放棄」をした場合は「遺留分」を侵害された場合とは異なり、特定の場合を除き相続放棄を取り消して、再度法定相続人に加わることはできません。相続放棄を取り消すことができる特定の場合とは以下の3つの場合です。

  • 詐欺や強迫によって相続放棄をさせられた場合(民法第96条)
  • 未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄をした場合(民法第5条)
  • 成年被後見人自身が相続放棄をした場合(民法第9条)

2点目は、遺産分割協議は法定相続人全員が参加し、納得した協議結果でなければ法的には無効になってしまう点です。もし1人でも法定相続人が欠けた状態で話し合って合意しても、その結果は無効です。もう一度、法定相続人全員で話し合いをしなければなりません。そのために、後で述べるとおり法定相続人の特定を慎重に、かつ丁寧に行う必要があります。また遺産分割協議には法定相続人全員で話し合って合意することが必要、とはいえ遠方に住んでいる法定相続人の場合は、わざわざ集まることが難しい場合もありますね。そんな時は、電話で話し合いに参加することもできます。また一部の人が「こんな案で考えている」と遠方の法定相続人に手紙や電話で打診をして、それに対して意見を言うことができます。

このように法定相続人全員が参加して、全員が同意するまで話し合いをするのが「遺産分割協議」です。

遺産分割協議、遺言書、法定相続分、優先度が高いのはどれ?

相続で遺産の分け方については「遺言」「遺産分割協議」「法定相続分」ということばを耳にしたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。ではこの3つの中で一番効力がある、つまりそれに従って遺産を分けるべきなのはどれでしょうか?

これは遺言書が法的に認められる形で書かれているか、また法的に認められる内容で書かれているかによって決まります。もし遺言書が形式も内容も法的に有効であれば、遺言書の内容が最優先されます。一方で遺言書があっても、作成した日付が書いていない、連名で書かれているなど、書かれた形式で法的に有効でない場合にはその遺言は無効となります。そのため遺言があっても遺産分割協議をすることになります。

また先に書いた遺留分を考慮せず、特定の法定相続人に対して遺留分より少ない分量で相続するように遺言が書かれていた場合には、その部分は無効になります。こうなると、法定相続人の間で分け合う財産全体の配分を見直さなければなりません。そこで遺産分割協議が必要になります。

また遺言書に書かれた財産以外の財産が見つかった場合には、その財産についても遺産分割協議をしなければなりません。

法定相続分とは、民法で定められた相続順位ごとに相続する財産の分量です。これは遺産分割協議の際の目安となります。あくまで目安ですから、法定相続分どおりに分割しなければいけないということはありません。全法定相続人が納得すれば法定相続分と違った配分で相続できます。

このように遺言、遺産分割協議書、法定相続分については明確にどれに一番効力があるか、と決めることは難しいのですが、あえて単純化すると
法的に有効な形式と内容の遺言書>遺産分割協議>法定相続分
という関係になります。

遺産分割協議を始める前にしておきたい準備

1. 遺言書を探すこと

被相続人が亡くなったら、まず遺言書を探しましょう。生前に尋ねておけると良いのですが、なかなかそんな話ができない場合もありますね。被相続人の物入や机、大切なものを保管していた場所を丁寧に探しましょう。自宅の金庫や貸金庫を利用している場合は、その中も確認しましょう。また念のため、地域の公証役場に出向いて「公正証書遺言」を検索しましょう。遺産分割協議が整った後から、法的に有効な遺言書が発見された場合は遺言が優先されますので、遺言の存在を最初に確認しましょう。

2. 法定相続人を特定し、相続する意思があるか確認すること

遺言書が無かった場合には、法定相続人が相続することになります。そこで被相続人の現在の配偶者を始め、血縁関係を被相続人の戸籍をさかのぼって探し出します。特に被相続人に離婚経験がある場合には注意が必要です。離婚した配偶者には相続権はありませんが、その間に生まれた子供は法定相続人となるからです。また養子縁組した人や認知された子も法定相続人になりますので、こうしたケースが無いか、改製原戸籍までさかのぼり丁寧に確認をしましょう。

法定相続人を特定する理由は、遺産分割協議は法定相続人全員が参加して、合意しなければ無効となるからです。仮に遺産分割協議が整った場合でも、見落としていた法定相続人が名乗り出た場合には、その法定相続人を加えて再度遺産分割協議をやり直さなければいけません。こうした二度手間を省くためにも、法定相続人の特定は丁寧に、しっかりとやりましょう。

法定相続人を特定したら、次はそれぞれの法定相続人に遺産を相続する意思があるかを確認します。例えば長い間疎遠だったので相続したくない、という人には相続放棄の手続きをとってもらいましょう。また被相続人が残した財産がマイナスのものの方が多そうな場合には、やはり相続放棄を選ぶ法定相続人もいるでしょう。この場合も相続放棄の手続きをとります。

このように相続放棄をする人がいる場合には、相続順位が一段下位の人が法定相続人となります。それらの人にも相続する意思を確認して、「相続する意思のある法定相続人」を特定します。

3. 相続財産の全体像をつかむこと

2.の法定相続人の特定と並行して、相続財産の全体像をつかみましょう。相続財産の探し方は詳しくは以下の記事をご参考にしてください。

4. 遺産分割協議の対象とする財産を決めること(=分割する範囲の特定)

3.で相続財産の全体像をつかんだら、次には相続財産の中でどれを遺産分割協議の対象とするかを決めます。冒頭でお伝えしたとおり、遺産分割協議は各法定相続人の遺留分を侵害しない限り、法定相続人全員が同意すれば自由に決めることができます。

例えば被相続人が生前から「自宅は配偶者に」と口にしていたので、遺言はないけれど自宅は配偶者が相続し、それ以外の部分を法定相続人間で行う分割協議の対象とする、ということもできます。

このように遺産分割協議の対象となる財産を決めて、その範囲内についてのみ協議することができるので、3.の相続財産の全体像を把握することが重要になります。

5. 相続財産の金銭的価値を把握すること

相続財産の額がわかっていなければ遺産分割協議ができないわけではありません。しかし相続財産の額がわかっている方が円満な相続となります。相続財産は預金や保険のように金額がわかりやすいものだけでなく、不動産など実際に売買を前提とした査定をしなければ価値が把握できないものもあるからです。

遺産分割協議を終えてから「意外にあの建物の価値が高かった。相続した人が得をして不公平だ。」などと感情的なしこりが残る可能性を作らないためにも、できるだけ相続財産の金銭的価値を把握する方が良いでしょう。

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遺言書の内容と違う遺産分割協議は可能?

遺言書が形式も内容も法的に有効な場合でも、何らかの事情でそれに従わずに遺産分割協議をすることは可能でしょうか?答えは、条件がそろえばYesです。

遺言書があってもその内容と違う遺産分割協議を成立させるためには、以下の条件に合っている必要があります。

  1. 遺言によって遺言と異なる遺産分割協議を禁じられていない
  2. 法定相続人全員の同意がある
  3. 法定相続人以外の受遺者の同意がある
  4. 遺言執行者の職務を妨げない、または同意がある

条件を一つずつ詳しく解説してまいりましょう。

1. 遺言によって遺言と異なる遺産分割協議が禁じられていない

遺言は被相続人の最後の意思表示です。そのため遺言の形式・内容が法的に有効である場合には、全受遺者(=共同相続人)は遺言を最大限尊重しなければなりません。もし被相続人が遺言で「遺言と異なる遺産分割を認めない」としている場合には、全受遺者(=共同相続人)はその意思に従い、遺言と異なる遺産分割をすることができません。しかし遺言で遺言と異なる遺産分割協議について何も言及されていない場合には、遺産分割協議をすることができます。

民法(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

2. 法定相続人全員の同意がある

1. のとおり被相続人の遺言によって、遺言の内容と異なる遺産分割協議が禁じられていない場合には、法定相続人全員が遺言の内容を知ったうえで、法定相続人全員が同意すれば遺言とは違う内容で遺産分割をするための協議ができます。遺産分割協議自体が法定相続人全員の同意を必要としているので、その話し合いを始める際にも、法定相続人全員が同意している必要があります。

3. 相続人以外の受遺者の同意がある

受遺者とは遺言によって何らかの財産を贈る(=遺贈)と指定された人や団体のことです。例えばお世話になった医師や介護士、または団体も受遺者になることができます。法定相続人以外の受遺者が遺産分割協議を行うことに同意する、というのは、言い換えれば遺言によって遺贈される財産についての権利をいったん放棄する意思表示をしてもらう、ということです。なぜなら遺産分割協議ができるのは法定相続人だけだからです。

法定相続人以外の受遺者が、遺言による遺贈を受ける権利を放棄することで、全ての遺産はいったん該当する法定相続人全員の共同所有となり、これより遺言と異なる遺産分割協議をすることが可能になります。

ただし法定相続人以外の受遺者に、手ぶらで放棄してもらうことは難しいかもしれません。遺産分割協議に参加できない受遺者の方としては、せっかくもらえるはずだったのに、と、放棄しっぱなしにされてしまうリスクを感じて、同意してくれないかもしれません。その場合は、口約束ではなく「遺産分割協議の際には、被相続人の遺言による意思を尊重して、受遺者への遺贈を最大限考慮する」などの覚書文書を取り交わすようにするとよいでしょう。

遺産分割協議では、法定相続人以外の受遺者への遺贈の分には変更を加えないこともあるでしょうし、たとえば「遺言ではAを遺贈することになっていたが、事情があるのでAは遺贈できない。申し訳ないが、Bを遺贈することにする」などという変更も可能です。

遺贈の場合の注意点については、後述の「法定相続人以外の受遺者が遺産を受け取る場合」の章をご覧ください。

ちなみに、被相続人から、法定相続人以外の受遺者へ確実に遺贈できるようしたい場合は、被相続人が亡くなる前に「死因贈与」の契約を交わすことも一つの方法です。

「特定遺贈」の放棄と「包括遺贈」の放棄

遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があり、権利の放棄にあたってはそれぞれ手続きが異なります。

「特定遺贈」とは、「XXさんに○○を残す」といったように、特定の財産を特定の人に遺贈する場合です。この場合には指定された人が法定相続人または遺言執行者に意思表示をすることで遺贈を放棄することができます。

注意が必要なのは、「包括遺贈」の場合です。包括遺贈とは、相続分の指定と同様に遺贈する財産の割合だけが遺言に書かれている場合です。包括受遺者の遺贈の放棄は、相続放棄と同様に自分が関係する相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内に包括遺贈の放棄の申述を家庭裁判所にしなければなりません。(民法938条、915条)。また、相続が開始されて位から3か月以内であっても、相続財産の全部または一部を処分した場合には、相続を承認(=単純承認)したとみなされ、遺贈の放棄を行うことができなくなります(民法921条)。

4. 遺言執行者の職務を妨げない、または同意がある

遺言執行者は遺言の執行に関する行為について民法で定められた権利義務を有しています。そのため全ての法定相続人も受遺者も遺言執行人の職務を妨げる行為ができません。

民法(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

そこでもし遺言の内容と異なる遺産分割をしたい、そのために遺産分割協議をしたいという場合には、その趣旨について事前に遺言執行者に告げて話し合い、同意をとっておくことが重要になります。

遺産分割協議に応じない、または署名・押印しない法定相続人がいる場合

遺産分割協議を始めたくても、話し合いに応じない法定相続人がいる場合、どうしたらいいのでしょうか?またせっかく遺産分割協議がまとまった段階になって署名・押印を拒む法定相続人がいる場合はどうなるのでしょうか?

遺産分割協議では、話し合いに応じない法定相続人、署名・押印に応じない法定相続人が出る可能性があります。こうした法定相続人を除外して遺産分割協議をすることができるのでしょうか?残念ながら、それはできません。

遺産分割協議は

  • 法定相続人が全員参加した
  • 法定相続人が全員同意し、その証拠である遺産分割協議書に署名・捺印をした

の2点を満たさないと有効ではないからです。

遺産分割調停の制度を利用する

遺産分割協議に応じない法定相続人がいる場合にはどうしたらいいのでしょうか。長い間疎遠だった法定相続人や、被相続人に対する複雑な感情を持っている場合、また相続人間で気まずい関係がある場合には「会いたくない」「話したくない」などの理由で話し合いに応じてくれないこともあります。

このように、故意に遺産分割協議を妨害する人に、他の法定相続人はどのような対処ができるでしょうか。残念ながら現在はよほど悪質なケースでない限り、遺産分割協議を妨害する人を罪に問うことも、また法定相続人から除外することもできません。

そこでこのような場合は、法定相続人からの申し立てにより、家庭裁判所で遺産分割調停をすることができます。これは法定相続人の間で遺産をどのように分けるかを、家事審判官(裁判官)と調停委員で作る調停委員会が中立公正な立場で調整して、申立人、相手方それぞれから言い分を聞き、話し合いで円満に解決できるように斡旋をする制度です。もしこれでも話し合いができない場合は、審判手続きへ進むことになります。

遺産分割協議ができたのに、署名・押印をしてくれない法定相続人がいる場合

この場合には、署名・押印を拒否している法定相続人が「この遺産分割協議には合意できない」という意思の表れと考えられます。逆に言えば、納得できない内容で遺産分割協議が進められたら、署名・押印をせずに抗議することができます。

本来であれば話し合いの間にお互いが納得のいくような結論を導きだせればよいのですが、法定相続人どうしの関係で立場が強い人と弱い人がいる場合に、立場が弱い人の意見に耳を貸さずに結論を出してしまうこともあり得ます。

こうした場合には、署名・押印を拒否している法定相続人にどのような点で納得ができず、署名・押印を拒否しているかを聞いてみましょう。遺産分割協議は法定相続人のうち1人でも遺産分割協議書に署名・押印を拒否した場合には、遺産分割を実行することができません。これは、他の法定相続人にとっても得なことではありません。そこで全員が納得できるように再び話し合うことが必要です。納得できない理由が正当なものである場合は、他の法定相続人が譲歩することも必要になるでしょう。

遺産分割協議が終わった後になって、遺言書が出てきた場合

何回もかけて遺産分割協議を終えて、その内容を遺産分割協議書にまとめてから、なんと遺言がでてきてしまった。しかも形式も内容も法的に有効な遺言書が。こんな場合はどうなるのでしょうか?せっかく話し合った遺産分割協議の内容と遺言書の内容、どちらが優先されるのでしょうか?

この場合は遺言の内容が優先されます。遺言は被相続人の最後の意思表示だからです。けれども遺言書の内容と違う遺産分割協議は可能?で書いたとおりに、ある一定の条件を満たせば遺言書の内容と違う遺産分割協議が可能になります。

法定相続人以外の受遺者が遺産を受け取る場合

受遺者とは被相続人の財産を引き継ぐ人、全員をさすことばです。法定相続人も、法定相続人以外で、遺言書によって財産を贈ることを指名・指定された人や団体(=受遺者)も含まれます。

遺言により法定相続人以外の受遺者に財産を贈る(=遺贈する)場合に、その財産を受け取る相手は「受遺者」と呼ばれます。受遺者はお世話になった特定の人や、団体の場合もあります。

遺産分割協議は法定相続人しか参加できないため、遺産分割協議を始める前に受遺者はその権利を放棄することが求められます。多くの受遺者は「まさか被相続人が自分に財産をくれるとは知らなかった」という場合が多いので、受遺者としての権利を放棄することがほとんどです。

遺贈は相続税の対象になる

相続税額の2割加算

受遺者は遺産分割協議に参加できません。遺産分割協議は法定相続人で相続する意思を表明した人だけが参加できるからです。この遺産分割協議の間に法定相続人たちが遺言に書かれていた被相続人の意思を少しでも汲み取って、法定相続人以外で指名された人や団体に財産を贈りたい、となる場合もあるでしょう。

この時に注意しなければいけない点は、受遺者には相続税がかかる、という点です。さらにたとえ家族であっても、法定相続人以外の人や団体の場合には、贈られた財産の金銭的価値に対する相続税額を2割加増した相続税を支払わなければなりません。これを「2割増し」と呼びます。また法定相続人ではない人や団体には、相続税を算出する際に各種の控除や特例が使えません。例えば遺贈を受ける人は、基礎控除の人数に算入できません。

参考

不動産に関する、不動産取得税と登録免許税

遺贈のうち、「全財産の〇割をXXさんに遺贈する」と、割合だけを指定したものを「包括遺贈」と呼びます。これに対して「自宅はXXさんに、A社の株式は△△さんに」と贈るモノと受け取る人を遺言で指定する方式を「特定遺贈」と呼びます。この「特定遺贈」で、贈るモノが不動産で、法定相続人以外の第三者が遺贈を受ける場合は、不動産取得税がかかります。「包括遺贈」の場合は不動産取得税がかかりません。

また不動産を遺贈された場合には、登録免許税という不動産の名義変更の際にかかる手数料のような税金がかかります。登録免許税は法定相続人でも支払いますが、遺贈を受けた人が相続人以外の場合は税率が高くなります。

このように遺産分割協議の結果、遺言の一部を生かして遺贈をすることに決める前に、受遺者に状況を説明し、相続税の対象となること、自分で相続税の申告をして納税する義務が生じることや、贈るモノが不動産の場合は、特定遺贈であれば「不動産取得税」がかかること、「包括遺贈」の場合でも登録免許税がかかることを説明し、同意を得てから遺産分割協議書に記載するようにしましょう。

受遺者によっては「もともともらえるとは思っていなかったし、相続税の申告・納税などしたくない」という人もいる可能性があります。被相続人の最後の意思を生かし、また受遺者のためと思っても、親切の押し売りにならないように事前に受遺者に相談しておく方が良いでしょう。

まとめ

近年では遺言書の作成が奨励され、自筆証書遺言でも登記所が保管してくれるようになるなど、遺言書を作成する動きがゆるやかに始まっています。しかし現段階では遺言書を作成している人が大多数、とまではなっていません。そのため、遺産分割協議は多くの相続手続きで必要となる話し合いです。この話し合いには法定相続人で相続する意思がある人全員が参加して話し合い、納得して合意しなければなりません。生前の被相続人との関係や、法定相続人どうしの人間関係、力関係などがあるとは思いますが、まず全員が納得するような、公平な結果となるように話し合いをする心構えが大切です。そうでないと遺産相続そのものに全く手をつけられない、という法定相続人全員が困ってしまうことになるからです。

また被相続人も、遺産を巡っていがみ合いになることは決して望んでいないでしょう。法定相続人とは、言い換えれば近い血縁関係の人たちです。これまでの関係も大切ですが、これからの関係も大切です。これからの関係を大切にし、また被相続人の思いも大切にするために、法定相続人全員が納得するような話し合いをしましょう。その過程で折れるべきところは折れ、また主張すべきところは主張して、お互いをよりよくわかることができたら、それが遺産分割協議の一番の成果かもしれません。

監修
アイリス綜合行政書士事務所
行政書士・FP 田中真作
早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
相続や離婚などの一般市民法務相談や各種許認可業務など幅広く対応。
田中真作のFacebookページ https://www.facebook.com/shinsaku.tanaka.9
Text by:西山千登勢
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