戸籍にこんなに種類があるなんて!~相続手続きに必要な戸籍関係書類~

戸籍にはたくさんの種類があることをご存知でしょうか?私は父が死亡して相続手続きをした時に相続人を確定するために、被相続人の誕生から死亡までの戸籍を集める必要があることを知りました。それまでは戸籍といえば「戸籍謄本」と「戸籍抄本」しか知らなかった私。けれども人の一生を遡るために必要な戸籍関係の書類はそれだけではありませんでした。似たような名前の複数の戸籍関係書類があり、必要とわかるたびに何度も役所に出向いたり、電話で問い合わせをしたり。1日に2回、同じ役所の窓口に行ったこともあります。とても効率が悪く、根気が要りました。「最初に誰か教えてくれていたら・・・」と何度思ったことか。今回は相続手続きに必要な戸籍の種類と、なぜそれが相続手続きに必要なのかをお伝えいたします。

index 目次
  1. 1. 戸籍にはたくさんの種類がある
    1. 1-1. 戸籍関係書類の種類とその内容
  2. 2. 戸籍の取り寄せは大変!
  3. 3. 戸籍の取り寄せ枚数はいくつ必要か?
    1. 3-1. 相続人の確定
    2. 3-2. 戸籍関係書類の取り寄せ実例
    3. 3-3. 遺言書の有り/無しにも注意
    4. 3-4. 遺言書を遺さなかった父、残した祖父
  4. 4. 戸籍をどうやって遡るか
  5. 5. 「除籍謄本を持ってきてください」の意味は?
  6. 6. まとめ

1 戸籍にはたくさんの種類がある

父の相続手続きをするまで、私にとって戸籍と聞くと思い浮かぶのは、戸籍に入っている人が全員書いてある「戸籍謄本」と、特定の人だけが書いてある「戸籍抄本」だけでした。多分、多くの方が同じような状況ではないでしょうか。

ところが戸籍関係の書類は戸籍謄本と戸籍抄本以外に、たくさんありました。そして1つの書類ごとにわかる情報が微妙に違うのです。そのため、いくつもの戸籍関係書類を取り寄せました。

1-1 戸籍関係書類の種類とその内容

相続手続きに関係のある戸籍関係の書類の名称と、その内容、またなぜ相続手続きに必要か、を下のとおりまとめました。

名称(別名) 内容 なぜ相続手続きに必要か 必要な人
戸籍謄本(全部事項証明書) 戸籍に入っている人全員の情報がある 相続人と被相続人の血縁関係を証明するため。相続人が結婚により新しい戸籍に移動している場合は、新しい戸籍に両親名が書いてあるので使用可能。
また被相続人が「死亡」と書かれた戸籍謄本も必要。(注:被相続人の死亡により、戸籍に誰もいなくなった場合には除籍謄本が必要)
被相続人
相続人
戸籍抄本(個人事項証明書) 戸籍中特定の人の情報だけがある
除籍謄本 戸籍に記載された人が、全員いないことを証明する 被相続人が以前に入っていた戸籍からいつ、どんな理由で抜けたかを把握するため。被相続人の死亡により戸籍に誰もいなくなった場合にも必要。 被相続人
改製原戸籍 戸籍法改正により戸籍様式が新しくなる前の戸籍情報がわかる 戸籍法が改正されると、離婚やこどもがいた情報が転記されない。相続人を漏れなく把握するために、それ以前の戸籍情報が必要なため。 被相続人
戸籍の附票 住所の異動が記録されている 被相続人が不動産登記簿に記載された住所から移転していた場合に、所有者の住所と氏名が一致する公的な書類が必要になるため。 被相続人
<用語の解説>
除籍:ある戸籍に記載されていた人全員が、死亡、結婚、転籍(=引っ越し先に本籍を変えた場合)などにより「戸籍の人が全員いない」状態。

上の一覧中のとくに耳慣れない、「除籍謄本」、「改製前原戸籍」、「戸籍の附票」について解説いたします。

除籍謄本

ある戸籍に記載されていた人全員が死亡、結婚、離婚、転籍(=引っ越し先に本籍を変えた場合)などにより「戸籍の人が全員いない情報」が記載されています。この書類から被相続人がその戸籍からいつ、どんな理由で(例:結婚、離婚、転籍など)抜けたのかがわかります。

改製原戸籍

戸籍法の改正(大正4年、昭和23年、平成6年)により、その都度戸籍の様式が変更されました。戸籍の様式が変わる際に、新しい戸籍にはその時点で戸籍に入っていた人の情報だけが移されました。例えば離婚した配偶者の情報などは転記されません。改製前の戸籍に記載されていた情報全部が転記されたわけではないのです。

離婚した配偶者の他にも、離婚した相手と一緒に戸籍から出た子ども、死亡、養子離縁などの事実は、新しい戸籍に記載されませんでした。そのため例えば改正前に離婚した相手との間の子が、相手と一緒に転籍した場合には、その子供の存在が新しい戸籍からはわかりません。そのため法改正前の戸籍、つまり改製原戸籍が必要になります。

大正4年以前に生まれた被相続人は3回、昭和23年以前に生まれた被相続人の場合は2回、平成6年以前に生まれた被相続人の場合は1回、戸籍様式が変更されていますので、その都度の改製原戸籍を取る必要があります。

戸籍の附票

当該する本籍地内においての住所異動の記録が「戸籍の附票」に残ります。本籍とセットで、本籍所在地の役所が保管しています。戸籍の附票には、本籍地、筆頭者名、そしてその戸籍に在籍している人の住所の異動が記録されます。戸籍の附票を交付申請する時には、現在の住所だけでなく、本籍地とその戸籍の筆頭者名が必要です。

2 戸籍の取り寄せは大変!

父の一生を遡るために取り寄せた戸籍関係の書類は、全部で7枚、3種類でした。そして取り寄せ先は3か所で、うち2か所は遠方なので事前に電話で問い合わせてから、郵送で戸籍関係の書類の交付申請をして、返送してもらいました。父の世代は住所が変わっても転籍をしなかった人が多いので、これでも少ない方だと言われました。転勤ごとに本籍地を変えた方は取り寄せ先が10か所近くになるケースもあるそうです。

3 戸籍の取り寄せ枚数はいくつ必要か?

3-1 相続人の確定

被相続人が死亡し、相続手続きをする際には被相続人の生誕から死亡までが辿れるすべての戸籍の写し、つまり戸籍謄本または除籍謄本が必要です。これは相続人を確定するためのものです。例えば現在の家族は知らないけれど、前婚歴があってその際に子どもがいたり、婚姻はしていないけれども認知をしている子どもがいたり、また誰も知らない間に養子縁組をしている可能性がないかを探すためです。相続人についてはこちらの記事もご参照ください。

もし戸籍を遡っていくことで、遺族は「知らなかった子ども」がいた場合、その子どもも相続人として、被相続人の遺産を相続する権利があります。もし既にその「知らなかった子ども」抜きで遺産分割協議をして合意をし「遺産分割協議書」を作っていても、相続人全員で協議したことにはならず協議内容も「遺産分割協議書」も無効になります。再度「知らなかった子ども」を加えて、相続人全員で遺産分割協議をしてその結果を「遺産分割協議書」に書かなければいけません。こうした二度手間を避けるために、被相続人の一生を戸籍上で把握し「知らなかった子ども」がいないかを確認する必要があります。

3-2 戸籍関係書類の取り寄せ実例

私の父を例にすると、以下の書類を用意しました。父は昭和四年、今の港区にあたる東京府芝区で生まれ、78歳で本籍地である東京都府中市で死亡しました。

  1. 父の出生が記載された除籍謄本。 → これは祖父が本籍を置いていた大分県の小さな村で作られましたが、その村は合併により現在は大分県豊後高田市が所管していましたので、豊後高田市から取り寄せました。戸籍に記載された人全員が昭和20年代までに転籍していたため除籍謄本でした。
  2. 祖父が昭和18年に転入籍手続きをした芝区(現在の港区が管轄)の除籍謄本。 → 大正の終わりから既に芝区に住んでいた祖父ですが、本籍地を移すことに抵抗があったようで、転入籍手続きをしたのは昭和18年でした。こちらも転入籍をしたのは東京府芝区でしたが、現在は港区が所管していたので、港区から取り寄せました。戸籍に記載されていた人が全員昭和30年代に転出籍したため全員が除籍となった除籍謄本でした。除籍になった時期は昭和30年代です。
  3. 昭和23年芝区(現在の港区が所管)の改製原戸籍の除籍謄本 → 昭和18年に祖父一家が芝区に転入籍してから、昭和30年代に家族がそれぞれ転出籍する間に昭和23年の改製がありました。2. の除籍謄本は昭和23年の改製後の情報しかありません。そこで昭和23年以前の家族の異動を確認するために改製原戸籍を取り寄せました。
  4. 父が昭和30年代に結婚をして作った戸籍の除籍謄本(港区) → 父の結婚により、港区に新しく戸籍を作りました。その後一家で昭和40年代に府中市に引っ越しをしたため、戸籍に記載の全員が転籍したので除籍謄本でした。
  5. 父が転入籍をして最後まで住んだ東京都府中市の戸籍謄本(「死亡」と書かれているもの) → 我が家の場合は母がまだ存命なので、除籍謄本ではなく戸籍謄本でした。
  6. 戸籍の附票(東京都府中市) → 父が本籍地は変えずに昭和60年代に府中市内で引っ越したため、死亡時の住所が本籍地の住所と違うことを証明するために必要でした。
  7. 平成6年の改製原戸籍籍(東京都府中市)→ 5. の戸籍謄本には平成6年の改製以後の情報しかありません。そこで昭和40年代に東京都府中市に転籍してから平成6年までの家族の異動を確認するために改製原戸籍をとりました。

3-3 遺言書の有り/無しにも注意

さて戸籍関係書類を取り寄せる数を考える場合に、一つの目安となるのが遺言書の有無です。遺言書がある場合、被相続人の出生から死亡までを全て把握できる戸籍謄本や除籍謄本一揃いと被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本または除籍謄本1通だけでも、上手に証明書類を使いまわせば手続きは可能です。なぜなら遺言書に「誰にどの財産をどのくらい相続させる」と指示されているからです。

あとは相続人が遺言書に書かれた人以外はいないかを確認するために、上記のように戸籍関係書類一揃いと被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本1通が必要です。金融機関では原本を使いまわす、またはコピーでも対応してくれます。不動産登記では原本を使いまわせます。相続税の申告については平成30年4月1日以降から戸籍関係書類はコピーでも良いことになりました。

一方遺言書が無い、または存在が不明な場合には、不動産の名義変更のために不動産の数だけ被相続人の出生から死亡までを全て把握できる戸籍や除籍謄本一揃いと被相続人が死亡したことがわかる書類が必要です。遺言書が無いということは、どの不動産を誰が相続することになったかは相続人全員で協議した結果の「遺産分割協議書」が証拠になります。

「遺産分割協議書」には、例えば相続人A、B、C、Dがこの協議内容で合意した、という署名と捺印をします。そして「相続人はA、B、C、Dだけ」を証明するために、被相続人の出生から死亡までを全て把握できる戸籍謄本や除籍謄本一揃いと、被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本1通が必要になります。ここまでは遺言書があった場合と全く同じです。

しかし不動産の名義変更には、遺言書が無い場合には、その不動産(家屋付き土地は1つとして数える)ごとに「遺産分割協議書」の原本と相続人の証明書類の原本をつけます。そのため名義変更をする不動産の数だけ、戸籍関係の書類が必要になります。

3-4 遺言書を遺さなかった父、残した祖父

ちなみに父は昭和一桁生まれ、「死」ということばを口にすることすら「縁起でもない」という世代。遺言書の作成など全く頭にありませんでした。「そういうことは考えたくないっ!」と言ったきり、結局、自分の死後の葬儀も相続もどうして欲しいかの希望一つ残さずに寿命を迎えました。「死」を考えるのが怖かったのだと思います。明治生まれの祖父が、元気なうちから理路整然とした遺言書を作成し、かつ必要書類を自分で用意していたのと好対照でした。

その祖父の際のおぼろげな記憶から「そんなに大変じゃなかったような・・・」と相続手続きを自分で始めてから、「『知らなかった子』がいない」という、「いないことを証明する」必要があることを知りました。「いないことを証明する」ためには「いたことを証明する書類が存在しない」という事実を積み上げるしかありません。外堀から埋めていくような地道な方法です。一つ一つ書類を集めている間に、何度も「戸籍の改製なんてしないでくれたらいいものを」、「改製した時に、なぜ前の記録を全部コピーしなかったのだ?」、「自分の時は人に迷惑をかけないように、生前に自分で戸籍類を取り寄せておこう」などと思いました。

このように戸籍関係の書類を遠方で郵送による取り寄せの場合、追加になると手間と時間、さらに費用がかかるので、相続する不動産の数より少し多めに用意することをおすすめします。私の場合は、1揃い余ってしまいましたが、父の生前を知る資料として、大切に保管しています。

4 戸籍をどうやって遡るか

まず被相続人の最後の戸籍謄本(まだ被相続人の入っていた戸籍に誰かがいる場合)か、除籍謄本(被相続人の死亡により、その戸籍に誰もいなくなった場合)を取ります。被相続人が「死亡」となっていることを確認しましょう。そしてその戸籍情報から「転籍日」「従前本籍XXXX」を探しましょう。転籍以外に結婚によって新しく戸籍を作った場合でも、「従前本籍」が記載されています。これで被相続人がいつ、どこから転籍してきたかがわかります。

次はその「従前本籍XXXXX」を所管する役所が近い場合は出向き、また遠い場合には電話をして、戸籍の取り寄せをしたい旨問い合わせをします。

郵送で請求する場合には、だいたいの自治体で以下が必要書類となります。

  • 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に記載、または電話で指示された内容を手紙に書き、印鑑を押す)
  • 交付請求者本人確認書類のコピー(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー)
  • 手数料に相当する定額小為替
  • 返信用封筒と切手

1~2週間以内に送ってくれます。

平成の市町村大合併により、従前本籍にかかれた当時の名称とは違う名称になっている自治体もたくさんあります。その場合にはインターネットで古い自治体名が、現在はどの自治体の所管になっているかを確認してから連絡をしてください。

5 「除籍謄本を持ってきてください」の意味は?

私が相続手続きをしている時に、銀行などから「除籍謄本を持ってきてください」と言われることがありました。除籍謄本?祖父の時代のもう誰もいない除籍謄本かな?と思ったのですが、違いました。相手が欲しいものは「父が死亡したことが証明できる書類」のことでした。

除籍謄本というのは先の章の説明の通り「誰もいなくなった戸籍」の謄本です。我が家の場合、まだ母が健在でそのままの戸籍におりますので、正確に言うと銀行が求めているものは「父が『除籍』となっている戸籍謄本」で除籍謄本ではありません。しかし便宜上このような言い方はよくされるようです。この場合、役所の窓口で「亡くなった父が『除籍』となっている戸籍謄本を取りたいのですが、申請書はどれですか?」と確認してから取っていました。受け取ってから「違う!」となると二度手間になりますので、押さえておきたいポイントです。

6 まとめ

パスポートの申請などでおなじみだと思っていた戸籍関係の書類ですが、実際に自分が相続手続きをすると、様々な種類があって驚かされました。そして最初から知っていたら「戸籍謄本と戸籍の附票もください」と1回で済んだことを「あれ、現住所と登記簿上の住所が違う。どうしたらいいの?」と調べ、また役所に出向く、という非効率的な作業をしていました。

「根気」の2文字を頭に思い浮かべながら、諦めずにやり遂げた時には大きな達成感がありました。そして、父のことを生前よりもよく知ることができ、祖父母も身近に感じることができました。

戸籍関係の書類を取得するのはクリック一つでできる簡単なものではありませんが、これをお読みの皆様も、ぜひご自身でやってみることをおすすめします。この段階が相続手続きで最も手がかかり、面倒くさいものです。でもこれを越えたら、ゴールはもうすぐです。ぜひ諦めずにチャレンジしてください

Text by:西山千登勢
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