土地に関わる相続税の特例

土地に対しては、相続人などの生活基盤となることなどの理由で、相続税の課税価格を計算する際に以下のような特例があります。

  1. 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法69-4)
  2. 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法69-5)

1.の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下、小規模宅地等の特例)とは、財産を残した人の住宅や事業用の宅地が対象です。これらの宅地は相続、または受贈した人にとって生活の基盤などになることが多いと考えられます。そのため一定の要件を満たす宅地はそのままの価格ではなく、減額してから相続税の課税対象価格とします。

2.の特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例(以下、特定山林の特例)とは、林業の継続を支援するためのものです。一定の森林経営計画の対象である山林については、財産の価格の一定割合を減額し課税を軽減します。

原則として、この2つの特例は併用できません。どちらか1つを納税者が選択します。ただし例外があります。小規模宅地等の特例を選んだ場合に、特例を使う宅地の面積が200平方メートル未満の場合です。この場合には下の計算式のように特定計画山林についての特例を受けることができます。

<特例併用の計算式>

A × 200平方メートル ― B 200平方メートル

A=特定森林経営計画対象山林及び特定受贈経営計画対象山林の価額
B=小規模宅地等の特例の適用を受けた宅地等の面積

小規模宅地等の特例

ここでは多くの方が利用する可能性がある前掲1の、「小規模宅地等についての特例」について詳しくお伝えします。この制度は被相続人が自宅、または事業用(店舗・事務所など)として使っていた宅地を取得する場合、宅地の価格を一定の面積までは最大80%減額して評価するというものです。

減額される割合など

小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとに一定の割合を減額します。

<被相続人等の事業の用に供されていた宅地等>
要件 限度面積
(平米)
減額される割合
貸付事業以外の事業用の宅地等 (1) 特定事業用宅地等に該当する宅地等 400 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 (2) 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 400 80%
(3) 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 (4) 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 (5) 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
<被相続人等の居住の用に供されていた宅地等>
要件 限度面積
(平米)
減額される割合
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 (6) 特定居住用宅地等に該当する宅地等 330 80%

限度面積について

特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。

特例の適用を選択する宅地等 限度面積
特定事業用等宅地等(1)又は(2)及び特定居住用 等宅地等(6)
(貸付事業用宅地等がない場合)
(1)+(2)≦400
(6)≦330
両方を選択する場合は、合計 730 ㎡
貸付事業用宅地等(3)、(4)又は(5)及びそれ以外の宅地等(1)、(2)又は(6)
(貸付事業用宅地等がある場合)
(1)+(2)×200/400+(6)×200/330 + (3)+(4)+(5)≦200㎡

なお、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、相続税の申告書を提出することが必要です。

参照
国税庁タックスアンサーNo.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm (外部リンク)
監修
アイリス綜合行政書士事務所
行政書士・FP 田中真作
早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
相続や離婚などの一般市民法務相談や各種許認可業務など幅広く対応。
田中真作のFacebookページ https://www.facebook.com/shinsaku.tanaka.9