葬儀と聞くと、多くの人が通夜と葬儀の2日間を連想するのではないでしょうか。しかし、この通夜。考えてみればいろいろと不思議なことばかりです。たとえば、亡くなった人を送り出す儀式をどうして2日に渡って執り行わなければならないのでしょうか。一日ではだめなのでしょうか?また、どうして通夜は夜に行われて、葬儀は昼に行われるのでしょうか。夜に行うことにどんな意味があるのでしょうか。

インターネットで「通夜」と検索すると、参列のマナーや衣装についてなどの記事が多く見つかりますがこの記事では、通夜は何のために行うのかという本質的なお話しをしたいと思います。その意味を確認し、執り行うための基礎知識を分かりやすく解説します。

1. 通夜の意味-通夜の過ごし方は時代とともに変化した

まずは、通夜がどのように行われていたのか、その変化をたどってみましょう。

もともと通夜式という儀式はなかった

いまでこそ通夜とは、通夜式という儀式のことを指しますが昔から通夜式という儀式があったわけではありません。通夜が儀式化されたのはここ3~40年前頃からだと言われています。通夜とは「夜を通す」と書きます。昔は葬儀の日まで、故人の遺体を寝ずに番をして、つまり夜を通して守り、それ全体を通夜と呼んだのです。

現代の通夜式は一般会葬者の参列の場

現代では、通夜式は一般会葬者の参列の場として捉えられています。日中は、仕事などで忙しくしている人たちが多いため、葬儀前日の夕刻に通夜式を設け、それに合わせて参列してもらうのです。もちろん、通夜に間に合わなくて翌日の葬儀に参列するという人もいるでしょうし、両日ともに参列する人もいます。

葬儀を夜に行えないのか、という素朴な疑問がわき起こりますが、葬送ジャーナリストの碑文谷創さんは通夜を「夜間告別式」と称したそうで、とても分かりやすい表現です。単に故人と遺された人の最期の別れの場に限定するのであれば、夜の葬儀は可能です。しかし実際には火葬場が夜に稼働していないために、続いて行う出棺・火葬をその日のうちに行うことはできず、したがって夜の葬儀というのは実際にはほとんど行われていません。

通夜は不要という考え方 一日葬の登場

時代が平成に入ると、「家族葬」が葬儀のスタンダードとなっていきますが、それにともない通夜は不要という考えも広まってきました。というのは、家族葬では、家族親族以外の、一般会葬者の参列は原則として行われません。そうすると、通夜式も、翌日の葬儀式も、同じ面々だけが集まることになり、「どうして同じ儀式を2回行わなければならないのだろうか」という疑問が出てきます。通夜式が一般会葬者の参列の場という意味合いが強い以上、一般会葬者がいないのなら、通夜式は不要だと考えるのは、自然な流れだと言えるでしょう。

家族葬ではなくとも、通夜を行わず一日ですませる「一日葬」と呼ばれるものも登場しています。地域のつながりや会社のつながりが希薄化し、景気低迷からも、簡素な葬儀が求められているという時代的な背景があります。

時間と「プロセス」の経過の中で死を受け入れる それでも通夜が必要な理由

しかし通夜はとても大切な時間だとも考えられます。私たちは、時間や数々の儀式を執り行うその「プロセス」の中で、死を受け入れていくものだからです。現代の社会状況や人々のライフスタイルを考えた時に、経済性や合理性の面から、たしかに通夜は不要かもしれません。しかし、通夜や葬儀は遺された家族が悲しい死を受け入れ、乗り越えるためのものでもあります。手間と暇をかけて一つ一つの儀式を執り行うことで、気持ちを整理したり、納得のいく見送りができるのではないでしょうか。私たちは、死を点で受け入れることなんてできません。供養の一つ一つのプロセスは、大切な家族を失った心の痛みを、手間暇の積み重ねの中で癒やすそのためのものでもあるといえるでしょう。

日本で長く続く仏教における死者供養のシステムは、枕経に始まり、通夜、葬儀、初七日、二七日、三七日、四七日、五七日、六七日、七七日(四十九日)、百か日、一周忌、三回忌と続いていって、三十三回忌まで行われます。通夜・葬儀だけでなくこれらすべては、時間と手間をかけて、ゆっくりと故人の死を受け入れる過程ともいえます。

ご逝去、火葬、通夜、葬儀、法要。たとえ限られた慌ただしい時間だとしても、こうした一連の流れの中で、遺族は懸命に故人の死を受け入れます。寺院による読経、参列者による焼香や慰めの声、語り合う故人の思い出。死と向き合うためプロセスの「1つ」として、通夜式もその意味でとても意義深いものなのです。

2. 通夜式の流れ

葬儀社、式場の手配など含め、お通夜の準備については葬儀の基礎知識(仏式)1:ご逝去からお通夜の準備まで、また、​通夜までにしておかなければならない10の準備事項を参照してください。 ここでは通夜式の式次第、流れをご説明いたします。

故人を偲び、参列者が遺族を慰めるためにも集まる通夜式。通夜式は、次のように執り行われます。

導師入場・開式

導師(僧侶)が入場する際は、合掌礼拝で迎えます。司会者の指示に倣って行いましょう。

読経・焼香

寺院が読経している中で、通夜に参列したもの全員が霊前まで進み出て、焼香をします。焼香は、喪主、遺族、親族、そして会葬者の順に行います。順番やタイミングはスタッフが案内してくれます。また、焼香の回数や方法は宗派によってそれぞれ異なりますが、心を込めた焼香であれば、作法はそこまで気にしなくてよいでしょう。

導師による言葉・退場

全員の焼香が済み、導師の読経が終わると、5分程度の法話があります。普段なかなか死に接することがないため、通夜式で語られる導師の一言一言が心に響くことでしょう。導師の法話を聴く機会があれば、ぜひとも耳を傾けてみましょう。

通夜ぶるまいと、終了後の夜の過ごし方

通夜式が終わると通夜ぶるまいの席で飲食します。通夜ぶるまいは地域によって行い方が異なります。家族や親族だけが飲食し、会葬者は閉式後に帰宅する地域もあれば、焼香後に参列者に通夜ぶるまいへと案内する地域もあります。

式場に宿泊する人以外は一旦帰宅します。通夜といえば、寝ずにお線香の番をするものでしたが、最近では火事の危険性から夜間は火の使用を禁止されていることも多いでしょう。また、中には宿泊ができない式場もあるので、事前に確認しておきましょう。