上品にして吸い込まれるような深みを持つ漆塗り。その漆の上に押されていくまばゆいばかりの金箔、そして金属粉や貝殻をちりばめて描かれる蒔絵。絢爛豪華な金仏壇が表現しているのは、西の彼方にあると言われている阿弥陀如来が作られた極楽浄土。古来より現代に至るまで、たくさんの人々が極楽浄土に想いを馳せ、「南無阿弥陀仏」の念仏の中に死後の往生を願いました。

金仏壇は主に浄土真宗専用の仏壇と思われていますが、他宗の人でも使える金仏壇もあります。宗派の教義を超え、日本の伝統工芸の技術の粋が集めて作り上げられる金仏壇のファンはたくさんいます。この記事では、追えば追うほど奥の深い金仏壇について、成り立ちや宗教的な意味、さらには仏壇の中で用いられる仏具に至るまで、徹底解説いたします。

index 目次
  1. 金仏壇の意味となりたち-漆や金で作られた極楽浄土を表すお仏壇
  2. 金仏壇の技術と構造
  3. 「お西」と「お東」の違い
  4. 金仏壇の産地
  5. まとめ

1 金仏壇の意味となりたち-漆や金で作られた極楽浄土を表すお仏壇

金仏壇とは、仏壇の種類の1つで、白木に漆を塗り、金箔や金粉や金具などを施して作られた仏壇のことです。「塗り仏壇」とも呼ばれます。唐木仏壇が銘木の木目の美しさを活かして作られるのに対し、漆や金の装飾で、豪華できらびやかであることが金仏壇の最大の特徴でしょう。

1-1 金仏壇は主に浄土真宗の仏壇とされている

金仏壇は、主に浄土真宗で推奨されます。一般にも「金仏壇=浄土真宗の仏壇」と認識されており、ほとんどの場合はそれがあてはまるのですが、一部に他宗派用の金仏壇もあります。あくまでも漆と金がほどこされたものを「金仏壇」と呼んでいるのです。

1-2 金仏壇は、極楽浄土を表している

浄土真宗は浄土信仰をベースとした宗派のうちのひとつですが(浄土信仰にはその他に、浄土宗、時宗、融通念仏宗などがある)、浄土真宗の教えと金仏壇にはどのような関係があるのでしょうか?

金仏壇は極楽浄土を表していると言われています。極楽浄土とは、阿弥陀如来が作られた仏国土のことです。悩みや苦しみが全く無く、楽のみがある世界とされています。『仏説阿弥陀経』の中で、お釈迦様は、弟子の舎利弗(シャーリプトラ)に向かって、極楽国土(=極楽浄土)の様子を次のように説いています。

シャーリプトラよ。極楽国土には、七宝(金・銀・青玉=瑠璃・水晶・赤真珠・碼碯・琥珀)の池がある。八功徳(澄浄・清冷・甘美・軽軟・潤沢・安和・飢渇を除く・健康増進)の水が、その中に充満している。池の底には純ら黄金の砂が布かれている。池の四辺の階段は、金・銀・瑠璃・玻瓈(水晶)からできている。階段の上には楼閣がある。また、金・銀・瑠璃(青玉)・玻瓈(水晶)・硨磲(琥珀)・赤珠(赤真珠)・碼碯で、これは厳飾している。池中の蓮華は、大きい車輪のようだ。その上、青色の蓮華には青光、黄色の蓮華には黄光、赤色の蓮華には赤光、白色の蓮華には白光があって、さまざまな色の蓮華はさまざまな色で輝き、さまざまな色に見えている。シャーリプトラよ。極楽国土には、このようにすぐれた性質の荘厳を成就する。

引用:

金仏壇は漆と金だけではなく、金色に輝く金具や、色とりどりの蒔絵や彩色を用いて、極楽浄土を再現しようとしています。絢爛豪華な金仏壇の中に、いかに人々が極楽浄土を思い描き、死後の往生を願っていたかが窺い知れます。

極楽浄土を説く浄土真宗についてはこちらの記事もCHECK!

2 金仏壇の技術と構造

2-1 8つの日本の伝統工芸技術が集結

金仏壇は分業制で作られます。あの絢爛豪華な装飾は、8つの伝統工芸の職人の技術が結集して、はじめて表現されるのです。

木地師

仏壇の骨組みに当たる「木地」を作ります。

宮殿師(くうでんし)

阿弥陀如来をご安置する「宮殿」を作ります。

彫師

彫刻で人物や花鳥などを表現します。

塗師(ぬし)

漆を塗る工程は金仏壇ではとても大切な工程です。塗りの部分だけでなく、金箔の下地にも漆が用いられます。

箔押師

金箔を押します。

蒔絵師

蒔絵を描いたり、彩色を施したりします。

錺金具師(かざりかなぐし)

繊細に作り上げられた金具が取り付けられます。

組立師

さまざまな職人の手によってできあがった部材を最終的に組み立てて仕上げます。

2-2 金仏壇の基本構造-お寺を自宅用に小さくしたもの

金仏壇の内部はどのような構造になっているのでしょうか。

まず、基本的な考え方として、「仏壇はお寺を自宅用に小さくしたもの」と理解すれば分かりやすくなります。なんでこんなものがあるのだろうかと、首を傾げたくなるような飾りも、仏具も、それら全てはお寺にあるものを自宅の仏壇用に「ぎゅっ」と小さくしたものだからなのです。まずはそのことを念頭に入れておいてください。

浄土真宗用は位牌段がなく、他宗派用には位牌段がある

金仏壇は、そのほとんどが浄土真宗で多く用いられますが、一部他の宗派でも使えるものもあります。これらは、内部構造が決定的に異なり、位牌を置く段があるか、ないか、の違いが見られます。

位牌壇のない金仏壇

日本では古来より祖先崇拝の文化が根付いていましたが、浄土真宗では阿弥陀如来のみを礼拝するため、固有の先祖を表す位牌を用いません。

位牌壇のある唐木仏壇

浄土真宗の金仏壇

浄土真宗の金仏壇には、位牌を置くための段がありません。その代わりに特徴的なのが、「上卓(うわじょく)」や「前卓(まえじょく)」と呼ばれる机が用いられている点です。これは、真宗寺院の本堂でも用いられており、上卓は四具足を、前卓は五具足を並べるためのものです。法要の際には三角形の「内敷(うちしき)」と呼ばれる金襴製の布を掛けるのが特徴です。ただし、上卓や前卓を用いない略式の金仏壇もあります。

他宗派の金仏壇

浄土真宗のものと異なり、位牌を置くための段が設けられているものは他宗派用と考えればよいでしょう。上卓や前卓がなく、単純な4段構造となっています。上から順番に仏様の段、ご先祖様の段、五具足の段、お供え物などの段で、位牌は上から2段目に置くのが一般的です。

3 「お西」と「お東」の違い

浄土真宗が他の宗派と比べても独特な教義を持つため、仏壇やその中で用いられる仏具も独特です。浄土真宗には主要な10の諸派がありますが、その中でも2つの最大勢力である本願寺派(西本願寺を本山とする。通称「お西」)と大谷派(東本願寺を本山とする。通称「お東」)では、それぞれ仏壇も仏具も、細かい点で異なります。この章では、他宗派とは異なる浄土真宗の仏具、それらが東西によってどのように異なるのかを見ていきたいと思います。

3-1 西と東「仏壇」の違い

浄土真宗本願寺派(西本願寺、お西)と真宗大谷派(東本願寺、お東)では、本山寺院の造りや、本堂内部の造りも異なり、それに合わせて仏壇も異なります。代表的な違いをまとめました。

宮殿(くうでん)

宮殿とは、本尊である阿弥陀如来を安置する楼閣です。

西:屋根が一重、柱が金箔塗り
東:屋根が二重、柱が黒塗りと金具打ち

欄間(らんま)

日本建築に用いられる欄間。寺院の本堂でも取り付けられていることから、仏壇の扉の上部にも欄間が設えられます。

西:金箔押し
東:金箔と淡い彩色

3-2 西と東「仏具」の違い

本願寺派と大谷派では、本堂で使う仏具の形状も異なります。代表的な違いをまとめました。

仏像

ご本尊である阿弥陀如来の仏像。特徴的なのは、阿弥陀如来の背中から放射状に広がる48本の後光で、阿弥陀如来自身が誓われた48の本願にちなんでいます。西と東では、この光背の形が異なります。

西:後光の下に舟後光がある
東:後光の下に舟後光がなく、蓮があしらってある

掛軸

ご本尊の阿弥陀如来を表すものとして、掛軸があります。浄土真宗ではご本尊の掛軸をとても大切に考えており、本願寺派大谷派問わず、本来は菩提寺と通して本山から授かるべきものです。ただし、予算の都合から仏壇店で市販されているものを飾っても構いません。

西:阿弥陀如来の後光が8本。脇仏が親鸞聖人(右)と蓮如上人(左)の絵像。
東:阿弥陀如来の後光が6本。脇仏が十字名号(右:帰命尽十方無碍光如来)と九字名号(左:南無不可思議光如来)

仏飯の供え方

ご本尊に供えるご飯の盛り方も異なります。

西:丸く盛る
東:盛曹(もっそう)という仏具を用いて筒状に盛る。蓮の実をイメージしています。

上卓

上卓とは、阿弥陀如来の目の前に置かれる机のことです。

西:足が内側に曲がっていて、上には四具足(華鋲×2、火舎香炉、燭台)を並べる
東:足が外側に曲がっていて、上には三具足(華鋲×2、火舎香炉)を並べる

前卓

前卓とは一段降りた段に置かれる五具足を並べるための机です。

西:足が内側に曲がっている
東:足が外側に曲がっている

五具足

五具足とは、灯、香、華のお供えを並べるための仏具です。香炉、燭台(1対)、花立(1対)で一組と考えられています。

西:真鍮や銅に漆で色付けしたもの。黒っぽい
東:真鍮の地金。金色っぽい。そして、燭台が鶴と亀でできていて、木蝋(木製で朱塗りのロウソク)を立てる。

土香炉

土香炉とは、お線香を供えるための青磁製の香炉です。

西:外側の正面に宗門(下り藤)が入る
東:透かし彫りでできていて、中にオトシを差し込む

供笥(くげ)

供笥は、法要などでお餅を供えるための仏具です。お供え物と供笥とをあわせて「御華束(おけそく)」とも呼びます。

西:六角形
東:八角形

御文

御文とは蓮如上人が、全国の人々に布教のために用いた法語です。東西それぞれで呼び名が異なります。

西:御文章(ごぶんしょう)。本は御文章箱に入れる
東:御文(おふみ)本は御文箱に入れる。

灯篭(とうろう)

灯篭とは天井から吊るされる灯りのための仏具です。火袋の中の灯りがご本尊を照らします。

西:猫足(足が内側に曲がっている)
東:丁足(足が外側に張り出している)

瓔珞(ようらく)

瓔珞とは、宮殿や天蓋から吊るして荘厳する仏具です。本願寺派と大谷派の仏壇では、瓔珞を吊るす場所が異なります。

西:宮殿の屋根の隅に吊るす(隅瓔珞)
東:輪灯の笠の上に取り付けて飾る(輪灯瓔珞)

輪灯(りんとう)

輪灯とは、仏壇の中を照らす灯火具です。元来はお皿に油を浸し、い草の灯芯に点火していましたが、いまでは電球を灯します。

西:菊輪灯。菊の紋様がある
東:紋様のないシンプルな造り

りん布団とりん台

りんとは礼拝の前に「ちーん」と音を立てて鳴らす仏具です。りんそのものに東西の違いはありませんが、りんを乗せる台や布団には宗派別の差があります。

西:六角形のりん台に丸布団
東:四角形のりん台に金襴地の輪っか

4 金仏壇の産地

金仏壇は、どこで作られているのでしょうか。伝統的な産地と、現代の生産地についてご説明いたします。

4-1 真宗地帯の伝統工芸として発展した金仏壇

金仏壇は浄土真宗が盛んな地域の伝統工芸として発展してきた経緯があります。経済産業大臣が「伝統工芸品」として指定している産地は15にも及び(山形、新潟・白根、三条、長岡、飯山、三河、名古屋、金沢、七尾、彦根、京都、大阪、広島、八女、川辺)、その他にも、小樽、高岡、姫路など、産地は全国各地に点在します。本山寺院の荘厳の再現という点ではどの産地で作られようと姿や形は変わりませんが、細かい装飾や仕様など、産地ごとに性格が異なるのは大変興味深いものがあります。

4-2 現代では、7割近くが海外製品

平成に入るとコスト削減の目的から、中国やベトナムでの生産が始まります。現在では金仏壇全体の約7割が海外製品だと言われており、上海が一大産地となっています。

5 まとめ

最近では、寺離れが進んだり、仏間のない家が増えたりして、浄土真宗の門徒であっても金仏壇を持たない人が増えています。しかし、日本の伝統工芸の技術が集結してでき上がった金仏壇には、他の仏壇にはない奥深い美しさがあります。その上、金仏壇そのものが宗教的な意味や物語を細部にまで宿しているという意味では、本来のあるべき仏壇の形を体現しているといえるかもしれません。「高価だ」「掃除がしづらい」などの金仏壇を敬遠する人もいますが、まずは仏壇店に足を運んで、金仏壇の美しさを目にしてみてはいかがでしょうか?

写真提供:
仏壇・墓石の素心 姫路店

仏壇・墓石の素心は、兵庫県下の3店舗(加古川本店・姫路店・高砂店)を拠点に日本全国に展開する仏壇・墓石・寺院仏具の専門店。伝統様式からモダンまで、あらゆるタイプの仏壇仏具が取りそろう。各店舗ではさまざまなセミナ-や教室も開催され、地域の人たちの”祈り”を支える仏壇店としても親しまれている。インタ-ネット販売にも注力。遠方であれば楽天市場店でのオンライン購入も可能。

お問い合わせ先:0120-20-9987(姫路店)
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