位牌には、故人様やご先祖様の戒名などを彫刻しますが、どのような形式・方法で刻印されるのでしょうか。普段はあまりなじみのない位牌の世界。この記事では位牌に彫刻する文字について、詳しく解説して参ります。

index 目次
  1. 位牌に入れる情報とは
  2. 位牌の文字の入れ方
  3. 宗派別による戒名の違い
  4. 位牌の文字入れの依頼方法
  5. 特殊な位牌
  6. クリスタル位牌の文字入れ

1 位牌に入れる情報とは

位牌は故人様やご先祖様の魂の依代(よりしろ:魂が寄り付く場所)です。故人様、ご先祖様そのものと言ってもよいでしょう。位牌には、お寺から授かった戒名、命日、俗名(生前の名前)、年齢を刻印します。

戒名

位牌には、故人様の戒名を彫刻します。戒名は寺院から授かります。葬儀の時には戒名が書かれた白木の「仮位牌」を祭壇前に安置して供養してもらいます。そして、葬儀を終えたあとに「本位牌」を作成し、以降末永く仏壇の中で祀るのですが、本位牌は白木の仮位牌に書かれている内容をもとに作成します。

しかし、仮位牌に書かれている通りを仏具店に注文しないように充分気をつけましょう。というのも、仮位牌で用いても本位牌では用いない文言があるからです。

たとえば、禅宗(臨済宗や曹洞宗)では、仮位牌の時には戒名の上に「新帰元」や「新円寂」という文字を記すことがあります。これは「新たに亡くなった」という意味で、四十九日以降の本位牌では記しません。また、戒名の下に書かれる「霊位」という言葉は、死者に対しての「様」や「殿」のような尊称を意味しますが、四十九日を超えることで霊は仏になると考えられているため、本位牌では「位」とのみ記します。

こうした彫刻文字の細かい部分も含めて、本位牌に彫刻する内容は必ず事前に寺院に確認するようにしておきましょう。

命日

位牌には故人様の命日も刻印します。命日とは故人様の亡くなった年月日のことです。「令和元年◯月◯日」と彫刻し、その下には「寂」「歿」「亡」などの文字が入ります。これも寺院に確認しましょう。

俗名(生前の名前)

俗名とは、故人様の生前の名前のことです。その戒名が誰のことを表しているのか、数世代先の子孫にも分かるよう、主に位牌の裏面に俗名を刻みます。

年齢

年齢は、故人様の「数え年」を刻むのが一般的です。仮位牌に書かれる年齢も数え年なのでそれに合わせましょう。

数え年とは、生まれた年を1歳とする数え方です。この世に命を授かった時から、つまり母体のおなかの中にいる期間も含めた年齢の数え方です。数え方は、満年齢に対して、誕生日を迎える前は+2歳、迎えたあとは+1歳となります。

2 位牌の文字の入れ方

位牌にはどのようにして文字を入れるのでしょうか。その方法や形式について詳しく解説していきます。

2−1 彫り方

位牌に文字を入れるには3つの方法があります。機械彫り、手書き、手彫りです。

機械彫り

現在はほとんどが機械彫りです。専用の機械を用いて、パソコンで文字原稿を作成し、位牌の札板に彫刻していきます。事前に原稿を作成するため、文字の間違いが少なく、均等な書体で彫刻するため、ズレもありません。加えて手彫り職人の手間やコストを削減できることから、現在は多くの仏具店が機械彫刻を導入しています。

手書き、手彫り

いまでもわずかではありますが、職人による手書きや手彫りが行われています。ただし、手書きや手彫りはどうしても費用がかさんでしまうこと、職人によって文字にクセが出てしまうこと、さらには職人の数自体が減少傾向にあることから、ほとんど選ばれなくなったというのが現状でしょう。

2−2 1人彫りと2人(夫婦)彫り

位牌の彫刻方法には主に2つあり、位牌1柱で1人の死者を祀る1人彫りと、位牌1柱で夫婦の名前を並べて刻む2人彫りとがあります。どちらを選ぶべきかの決まりはありません。

位牌は世代が下るごとにどんどん増えていくため、2人彫りにしていた方が仏壇の中のスペースを取らずにお祀りができます。ただし、配偶者を亡くした年齢が若いなどの場合は、あえて1人彫りにしておくのもよいでしょう。遺された方の人生も長いはずですし、もし、ゆくゆくその位牌に追加彫りしようとしても、年月が経って劣化している可能性もあるからです。

1人彫り(西日本)
例)(西日本)
2人彫り
例)
真裏彫り

2人彫りにする場合、通常は表裏ともに、右に男性、左に女性の名前を刻みます。しかし、地域によっては「真裏彫り」と言って、戒名の真裏にその人の俗名や年齢を刻むこともあります。この場合、表面は右が男性で左が女性ですが、裏面は右が女性で左が男性になります。

真裏彫り

2−3 東日本と西日本による彫り方の違い

位牌は、表面と裏面の両方に文字を彫刻しますが、東日本と西日本で彫刻の仕方が違いがあると言われています。

東日本では、表面に戒名と命日を、裏面に俗名と年齢を刻みます。西日本では、表面に戒名を刻み、裏面に命日と俗名と年齢を刻みます。

東日本
例)
西日本
例)

2−4 位牌の色の入れ方

位牌は、彫刻した箇所に色を入れます。黒や溜(ため)などの塗り位牌の場合は、金を入れます(裏面を白にすることもある)。総金や総粉などと呼ばれる札板全体に金箔や金粉が施されている位牌の場合は、青色を入れます。

もしも生前戒名を授かり、元気なうちに位牌を作っておく場合、戒名の2字は朱色にし、裏面に彫刻する俗名も名前の部分は朱色にします。その方が亡くなってしまったら、命日と年齢を追加で彫刻し、朱色を金や白などに着色します。

例)

3 宗派別による戒名の違い

位牌には戒名を彫刻しますが、各宗派によって特徴が異なります。戒名は基本的には「院号」「道号」「戒名」「位号」で構成されていますが、それ以外にどのような特徴があるのか、の宗派別にまとめました。詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

3−1 天台宗

天台宗の位牌の場合、これといった特徴はありません。「院号」「道号」「戒名」「位号」の基本形であることが多いのですが、寺院によっては戒名の上に大日如来を表す梵字の「ア」を刻印します。

3−2 真言宗

真言宗では、戒名の上に梵字の「ア」を刻みます。「ア」は真言宗の本尊である大日如来を一字で表しています。

3−3 浄土宗

浄土宗では、道号に「誉」の一字を用います。これを「誉号」と呼びます。また、西山派では道号に「空」の一字を用いることから、これを「空号」と呼びます。

3−4 浄土真宗

浄土真宗は戒名がなく、死者や先祖の依代となる位牌を不要としています。代わりに、先祖の法名を記す過去帳を仏壇の中に置きます。過去帳は、魂の込められるものではありませんが、先祖や死者の記録の帳面として大切に飾られます。

また、真宗高田派や、大陸文化の影響を強く受けて先祖祭祀を日常的に行う九州や中四国地方では、浄土真宗であっても位牌を作る慣習があります。

3−5 臨済宗

臨済宗の位牌の場合は特にこれといった特徴はなく、「院号」「道号」「戒名」「位号」の基本形で示されます。

3−6 曹洞宗

曹洞宗の位牌では、戒名の頭に「空」や「◯」(=円相)を刻みます。

3−7 日蓮宗

日蓮宗では、冠字に「妙法」、道号に「日」の一字が入ります(これを「日号」と呼びます)。また、道号には男性の場合は「法」、女性の場合は「妙」の一字が入ります。

3−8 無宗教で位牌を作成する

無宗教でも故人様を偲ぶ対象として位牌を作成したいという声はよく聞かれます。

この場合、俗名(生前の名前)を表面中央に刻むことが多く、その他の命日や俗名や年齢は裏に彫刻しましょう。

また、無宗教であれば仏具の自由度が高いために、さまざまなモダンな位牌を選べます。故人様の生前の写真をクリスタルガラスにレーザー彫刻したり、故人様を表す象徴的な一字を刻むこともできます。

4 位牌の文字入れの依頼方法

位牌の用意、文字入れは仏具店に依頼します。依頼する際は次に挙げる点に注意しましょう。

4−1 四十九日法要に間に合うよう手配する

四十九日法要は、仏教的には故人様が成仏して忌が明けますし、日本の民俗的には死者の霊が祖霊となる、まさに区切りの法要なのです。

葬儀の時に寺院によって用意された白木の仮位牌に込められた亡き人の性根は、四十九日法要で本位牌に移され、以降仏壇で大切に祀られるべきものです。そのため四十九日法要に必ず間に合うように手配しましょう。

4-2 すでに位牌がある場合は先祖の位牌に合わせる

すでに自宅に位牌がある場合は、位牌の種類や大きさなど、先祖の位牌に合わせて位牌を選びます。位牌を選ぶポイントは、台座の種類と札板の高さです。これらがすぐに分かるように、予め写真やメモをとって仏具店に出向くと、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

また、文字の彫刻内容もご先祖様の位牌に合わせることがあります。たとえば、命日のあとにつける文字を「寂」「歿」「亡」のどれにするか、年齢の後ろは「才」か「歳」かなど、判断に困る時はご先祖様の位牌に合わせます。

4-3 はじめて位牌を用意する時は仏壇も一緒に購入する

もしも自宅にご先祖様の位牌がなく、はじめて位牌を用意する時は、仏壇も一緒に購入します。位牌は基本的に仏壇の中で祀ります。ですから、まずは仏壇を選んで、その仏壇に合うデザインや大きさの位牌を選んでいきます。

最近は、伝統的な仏壇だけではなく、機能性やデザイン性を重視した家具調仏壇も選ばれており、それに合わせてモダンな位牌もたくさん販売されています。自分たちの好みの仏壇を、そしてそれによく合う位牌を選びましょう。

4-4 夫婦彫りにする場合は魂抜きをして位牌を仏壇店に預ける

夫婦の2人彫りの位牌の場合、先に亡くなった方の戒名を片側に寄せて彫刻し、もう半分を空けておきます。そして配偶者の方が亡くなられたら、空白の部分に追加で彫刻をします。

もしもいま現在自宅に祀られている位牌が夫婦の2人彫りで、追加彫刻をするのであれば、位牌をそのまま持参して仏具店に預けましょう。ただしその際は、必ず寺院に魂抜きをしてもらわなければなりません。位牌には亡き人の魂が込められています。魂抜きのされていない位牌だと、仏具店も位牌を預かってくれないでしょう。

5 特殊な位牌

これまで位牌の文字の入れ方について詳しく解説してきましたが、これらほとんどの場合は、一般的な「板位牌」への彫刻についてです。板位牌以外のさまざまな特殊な位牌の場合、どのように文字が入れられるのかをご紹介します。


一般的な板位牌

5−1 繰り出し位牌

繰り出し位牌とは、1つの位牌の中に木札が約10枚納められるタイプのものです。複数人の位牌を1つにまとめられるもので、スペースをとらないことで選ばれています。

表面には扉が付いており、それを開くと一番前面に置かれた木札が見える仕組みになっています。祥月命日や法事の時には、該当するご先祖様の木札を一番前に置き、これに向かって礼拝します。

繰り出し位牌の中に納める木札は、白木、塗り板、唐木の板などさまざまで、それぞれ表面に戒名や命日、裏面に俗名や年齢を記します。白木の場合は筆で手書きにし、塗り板や唐木の板の場合は文字彫刻をします。手書きの場合は寺院に、彫刻の場合は仏具店に依頼しましょう。


繰り出し位牌

5−2 過去帳位牌

過去帳位牌とは、位牌の中に過去帳が納められるものです。繰り出し位牌と同じような構造ですが、中に納めるのが過去帳であるため、よりたくさんのご先祖様を祀れます。過去帳の中には故人様の戒名などを筆で書き、これは寺院に依頼します。


過去帳位牌

5−3 巾広位牌

巾広位牌とは、一般的な位牌よりも幅が広く作られている位牌です。通常は位牌の札板の幅は2寸(約6cm)前後ですが、夫婦の2人彫りの場合は2.5寸(約7.5cm)の巾の少し広い位牌を用いることもあります。

巾広位牌はさらに大きいものがあり、10cmを超えるようなものもざらにあり、これは三十三回忌を終えた古いご先祖様をまとめて祀るために用いられています。彫刻する人数も文字の大きさによって調整ができ、多ければ30名や50名の戒名を刻む巾広位牌もあります。どのような位牌にするか、どのような順番で戒名を彫刻するかなどは寺院と相談し、位牌は仏具店に依頼します。

5−4 古い先祖を1つにまとめる位牌

巾広位牌を仏壇の中に置こうとするとそれなりのスペースが必要となります。三十三回忌を超えたご先祖様をまとめる位牌として、一回り大きい板位牌を用いるのがよいでしょう。札板の正面には「◯◯家先祖代々之霊位」などと彫刻します。

古いご先祖様はこの位牌にひとまとめにし、もしも戒名などの記録を残しておきたいということであれば、過去帳を併用すればよいでしょう。

6 クリスタル位牌の文字入れ

モダンな仏壇や仏具が選ばれている中で人気なのがクリスタル位牌です。クリスタル位牌の文字入れには、主に3つの方法があります。表面彫刻とレーザー彫刻と、木札を納めるタイプのものです。それぞれを分かりやすくご説明いたします。

6−1 クリスタル位牌 表面彫刻

クリスタルガラスの表面に文字を彫刻します。クリスタルガラスの場合は位牌そのものが透明なので、塗り位牌のように表面と裏面に分けて彫刻しません。それぞれ裏面に反転した文字が見えてしまい、見栄えがおかしくなってしまうからです。

クリスタルガラスの表面彫刻では、片面に戒名、命日、俗名、年齢を刻むのが一般的です。色入れは、白が多く用いられていますが、施主の希望に合わせてくれるでしょう。

6−2 クリスタル位牌 レーザー彫刻

クリスタルガラスの内部にレーザー彫刻をします。ガラスの中に文字が浮かび上がるように刻印されます。

さらに、レーザー彫刻のため、文字だけでなく、花柄や写真なども彫刻可能であるため、戒名とともに、故人様の写真などを刻印する人も多くいます。

6−3 クリスタル位牌 木札を納めるタイプ

クリスタルガラスの位牌には、ガラスそのものに彫刻するのではなく、木札を納めるタイプのものもあります。木札の表面に戒名や命日、裏面に俗名や年齢などを彫刻し、それをはめこむことでガラスを透かして文字を見ることができます。木札の材質には黒檀や紫檀が選ばれています。

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位牌は、日本人が心の拠りどころとしてきた「ご先祖様」がおられる場所です。私たちのライフスタイルが変化しても、それにあわせる形でご先祖様がいられるよう、新しい供養の仕方が提案されてきています。

どんな位牌でも、変わらずに刻まれるのが、故人様の戒名、命日、俗名、年齢。位牌に刻み込むことで、私たちは故人様の在りし日を偲び、死後の安寧を祈ることができるのかもしれません。

写真提供:
仏壇・墓石の素心 姫路店

仏壇・墓石の素心は、兵庫県下の3店舗(加古川本店・姫路店・高砂店)を拠点に日本全国に展開する仏壇・墓石・寺院仏具の専門店。伝統様式からモダンまで、あらゆるタイプの仏壇仏具が取りそろう。各店舗ではさまざまなセミナ-や教室も開催され、地域の人たちの”祈り”を支える仏壇店としても親しまれている。インタ-ネット販売にも注力。遠方であれば楽天市場店でのオンライン購入も可能。

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