1. 数珠についての基本知識

仏式の通夜や葬儀、法要に参列する際やお墓参りをする際に必要な仏具、数珠(念珠)。数珠は本来お経を読む回数を数える道具、「数を念ずる」「数を記す」という意味で数珠(念珠)とよばれるようになったと言われています。

数珠には大きく分けて「略式の数珠」と「宗派別の本式数珠」があります。また、「女性用」と「男性用」があります。数珠の様式は基本的には女性用は八寸(約24cm)、男性用は尺二寸(一尺二寸のことで約36cm)を使うことが多くなっています。また、女性用の数珠は男性用に比べて珠や輪の大きさが小さく作られています。数珠の珠の数は正式には108玉が多いですが、宗派によっても異なります。最近では54個、36個、27個と珠の数が少ないものもあります。どの宗派でも利用できる略式数珠は基本的に片手用の一連タイプです。

自分の宗派や自分の家の宗派がある場合は、自分の宗派の数珠を持ちます。他派の葬儀や法要に出かけるときも自分の宗派の数珠を使います。略式の数珠と本式数珠の両方を持っていて場面によって使い分けている方もいます。また、数珠の貸し借りはしないようにしましょう。

ところでパワーストーンブレスレットは数珠ではありません。数珠は玉の数や付き方、房の付き方など、各宗派ごとに複雑な様式が決まっています。アクセサリーとして販売されているパワーストーンやブレスレットは、通夜や葬儀、法要の場では使わないようにしましょう。

2. 数珠の選び方、買い方

数珠の値段は、玉の種類や材質、グレード、房のタイプ、デザイン等によって異なります。材質は、木の実や天然石である水晶(すいしょう)・瑪瑙(めのう)・翡翠(ひすい)、木(桜・紫檀(したん)・黒檀(こくたん)・縞黒檀など、最近はガラスやプラスチックの玉のものもあります。数珠の玉の材質や色については、基本的には自分の宗派の数珠であれば好みで選ぶことができます。

ただし、東海地方や北陸地方(特に名古屋、金沢周辺)では、女性用の数珠は用途によって使い分けられています。葬儀では水晶や白珊瑚など無色の玉と白い房の二輪数珠(振分)が使われ、法事やお墓参りでは白以外の玉や房を使った数珠が使われます。

価格はおおよそ2,000円~50,000円程度が一般的ですが、上を見るともっと高価なものもあります。仏具店やデパートの仏具コーナー、寺院、ネットショップ等で購入することができます。急な通夜などの場合はコンビニや100円均一ショップで入手する方法もあります。数珠は数珠袋(数珠入れ)に入れてからバッグに入れると玉や房が傷みません。金封(不祝儀袋)と数珠の両方を入れられる大きめの袋もあります。

3. 基本的な数珠の持ち方・作法

通夜、葬儀、法要の最中は基本的に数珠を出しておきます。焼香のときにあわててポケットやバッグから取り出すことのないようにしましょう。

使わないとき(立っているとき、歩くとき)
房を下にして左手で持ちます。

座っているとき
左手にかけておきます。

席を離れるとき
椅子や畳の上に置くのは×。必ずバッグやポケットの中にしまいましょう。

合掌するとき(宗派に寄らない略式)
左手にかけて右手を添えるように合わせるか(図1)、合わせた両手に数珠をかけ親指で軽く押さえて(図2)合掌します。宗派ごとの合掌のときの持ち方は4-2以降に解説します。

(図1)

(図2)

焼香するとき
数珠を左手にかけ、左手を軽く添えて右手で抹香をつまみます。

4. 略式数珠と宗派ごとの数珠(本式数珠)の種類と持ち方

数珠は宗派によって形や玉の数が異なります。自分の宗派や自分の家の宗派がある場合は、故人の宗派に関わらず自分の宗派の数珠を持っていきます。まず宗派にかかわらず利用できる略式数珠を解説、以降宗派ごとに解説いたします。

4-1. 宗派に関わらず利用できる略式数珠

どの宗派でも利用できる略式数珠は基本的に片手用の一連タイプです。各宗派の本式数珠より小さく、玉の数は20~40個程度であることが多いようです。数珠は左手にかけ、輪の中に右手を入れ、合掌します。座って読経などを聞いているときは左手首にかけ、焼香などで歩く必要がある時は房を下にして左手で持ちます。焼香の際には、左手にかけて右手を添えるように合わせるか、合わせた両手に数珠をかけ親指で軽く押さえて合掌します。

女性用略式数珠


略式念珠 水晶 尺二 共仕立 特上正絹房

男性用略式数珠


略式念珠 ビルマ本翡翠 22玉 共仕立 正絹房

合掌する時の持ち方

3章でも解説したとおり、左手にかけて右手を添えるように合わせるか(図1)、合わせた両手に数珠をかけ親指で軽く押さえて(図2)合掌します。

(図1)

(図2)

4-2. 浄土宗

浄土宗の正式な数珠は「日課数珠」とよぶもので、2つの輪をつなげた形が特徴です。

浄土宗女性用


浄土宗 紫壇八寸浄土 共正菊

浄土宗男性用


浄土宗 柘植 三万浄土 瑪瑙仕立

合掌する時の持ち方

親玉をそろえて親指にかけ、房は手の平の間から下に下ろします。

4-3. 浄土真宗

浄土真宗の男性用数珠は、基本的には略式と同様の片手数珠(一連の数珠)を使いますが、以下の浄土心中男性用の数珠のような、門徒数珠という二連の数珠もあります。一方女性用の数珠は、基本的には門徒数珠(二連の数珠)ですが、略式の片手数珠(一連の数珠)を使う方もいます。房の形状は紐房です。

浄土真宗女性用


浄土真宗 シャム柿 尺丸 茶水晶仕立 正絹房

浄土真宗男性用


浄土真宗 紫檀 尺二 共仕立 正絹房

合掌する時の持ち方

男性用の西本願寺(本願寺派、お西)、東本願寺(真宗大谷派、お東)、女性用の西本願寺(本願寺派、お西)、は同じ持ち方です。女性用の東本願寺派(真宗大谷派、お東)のみ、少し持ち方が異なります。

男性用西本願寺(本願寺派、お西)、男性用東本願寺(真宗大谷派、お東)、女性用西本願寺(本願寺派、お西)
数珠を両手にかけ、親玉を下に、房はそのまま下に垂らします。

女性用東本願寺派(真宗大谷派、お東)
数珠を両手にかけ、親玉を上にして親指で挟み、房は上から左側に垂らします。

4-4. 真言宗

真言宗の数珠は表裏2本ずつの房がついています。振分数珠(ふりわけじゅず)ともよばれます。

真言宗女性用


真言宗 白檀 八寸 共手毬

真言宗男性用


真言宗 黒檀(ミカン玉) 尺二 共仕立 正絹菊房

合掌する時の持ち方

両手の中指に数珠をかけてそのまま手を合わせて合掌します。

4-5. 天台宗

一般的に天台宗の数珠の玉は平たいのが特徴です。

天台宗女性用


天台宗 水晶 大平 手毬

天台宗男性用


天台宗 黒檀 大平天台 共仕立 正絹菊房

合掌する時の持ち方

人差し指と中指の間にかけて手の中に包むようにそのまま手を合わせます。

4-6. 日蓮宗

日蓮宗の数珠は2個の親玉に房がついていて、片方に2本、もう片方に3本、合計5本の房がついているのが特徴です。

日蓮宗女性用


日蓮宗 屋久杉 八寸 インド翡翠仕立 手毬梵天

日蓮宗男性用


日蓮宗念珠 黒檀素挽 尺二 虎目石仕立 手毬梵天

合掌する時の持ち方

読経の時の持ち方

両手の中指に数珠をかけて、3本の房の方を左側にして外にたらします。そのまま合掌します。

4-7. 臨済宗・曹洞宗の本式の数珠

禅宗では他の宗派のような作法や規定がありません。禅宗の曹洞宗には銀輪(または冠、銀冠)と呼ばれる、金属製の輪が入るのが特徴です。臨済宗には銀輪が入りません。

曹洞宗女性用


曹洞宗 星月菩提樹 八寸 瑪瑙

曹洞宗男性用


曹洞宗縞黒壇尺二共仕立正紐

臨済宗男性用


臨済宗檜尺丸共仕立正絹房(男性用)

合掌する時の持ち方

もともと一連の数珠を2連にして房を下に左手にかけます。そのまま合掌します。

取材協力・写真提供

京都・亀山にて代々受け継いできた技と謙虚な姿勢で数珠職人が、一つ一つ丹精込めて数珠をつくっているネットショップ。数珠の種類は200種類以上。各宗派本式お数珠、略式お数珠、ブレスレット、念珠腕輪、携帯ストラップ、アクセサリー等を販売。オーダーメイドも可能。