家族の一員として共に過ごしてきたペットが亡くなった際、誰もができる限り手厚く葬りたいと思うことでしょう。しかし、これまでに経験がなかったり、身近に相談できる人がいなかったりする場合には、何から手を付けていいのかわからないものです。そこで今回は、葬儀・火葬・お墓などペットが亡くなったあとの一般的な流れや、葬儀、火葬、お墓にはどのような選択肢があるかについてご紹介したいと思います。
ペットの葬儀・火葬・お墓
1. 土葬も可能だが犬や猫は火葬が一般的
亡くなったペットの死亡届については、届け出が必要な動物と必要ではない動物がいます。ペットの種類や大きさによって火葬か土葬かという遺体の処理方法も変わってきます。
1-1. 死亡の届け出が必要なペット
ペットが息を引き取ったあと、その動物の種類によっては自治体などに死亡届を提出する必要があります。
まず代表的なペットとして、犬が挙げられます。犬を飼う際は、狂犬病予防の観点から自治体に登録する義務がありますが、死亡届を出すことで登録が抹消されます。死亡の届け出は亡くなった日から30日以内に行う必要があるので注意しましょう。
そのほかに死亡の届け出が必要なペットは、人に危害を加えるおそれのある危険な動物として特定動物に登録されている(トラ、クマ、ワニ、マムシなど、哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種)の場合です。詳細は各自治体に確認するようにしてください。
環境省「特定動物リスト」(外部リンク)
1-2. 土葬か火葬か
ペットの遺体をどうするか、については、大まかに「そのまま土葬する」「火葬する」という二つの選択肢があります。
ハムスターや小鳥など比較的小さなサイズのペットの場合は、自宅の庭などの自身が所有している土地に土葬することもあります。
しかし、犬や猫など比較的大型サイズのペットの場合は、多くの人はまず火葬することを選びます。火葬を選ぶ主な理由として、そのまま土葬すると骨化するまでに長い時間がかかったり、野生動物に掘り起こされたりする心配があるためです。また、ペットを庭などに土葬することを快く思わない人も近隣にいるかもしれません。こういった事情を踏まえると、小動物以外のペットの場合はまず火葬するのがベターだといえます。もし、火葬を選択するのであれば、火葬するまでは亡骸が傷まないように、濡らしたタオルや氷などを使ってお腹や頭を中心に冷やしておくようにしましょう。
2. ペットの火葬
ペットの火葬は自治体に依頼するケースと民間業者に依頼するケースがあります。火葬の方法も合同火葬と個別火葬の2種類があります。
2-1. どこに依頼するか
ペットの火葬を行う場合は、在住している自治体か民間業者のどちらかに依頼することになります。
自治体に依頼する場合、対応の細やかさは市区町村によってまちまちです。ペットの遺体を自身で持ち込むことを条件に、下記「2-2. 合同火葬と個別火葬」でご紹介する「個別火葬」に応じてくれるところもあれば、単なる焼却処分で済まされてしまうところもあります。基本的に在住している地域のルールに従わざるを得ず、希望する方法がとれないこともあるので注意してください。
民間の業者にはペット火葬の分野に特化した業者も多くあります。自身で火葬場へペットの遺体を持ち込む以外にも、業者が自宅に引き取りに来てから火葬場に移送して火葬したり、火葬用の炉を備えた自動車である移動火葬車で引き取りに来たあとに自宅前または自宅近くの安全な場所で火葬してくれる業者など、さまざまなスタイルやサービスが揃っています。
2-2. 合同火葬と個別火葬
ペットの火葬には大きく分けて「合同火葬」と「個別火葬」の2種類があります。
「合同火葬」は、「合同」という文字通り、ほかのペットと一緒に火葬するものです。火葬後は遺骨が混ざってしまうため、基本的に遺骨を引き取ることができません。火葬後も、ほかのペットと一緒のお墓に合祀することを前提とした火葬方法です。
「個別火葬」は、「個別」という文字通り、単独で火葬が行われるため、遺骨を引き取ることが可能です。「4. ペットの遺骨を身近に安置する」でご紹介する「手元供養」「自身の所有する土地に埋葬」「お墓や納骨堂に安置」など、飼い主の意向によって弔いの選択肢が残された火葬方法だといえます。費用面では「合同火葬」よりも「個別火葬」の方が、対応が細やかな分、高くなる傾向があります。
3. ペットの葬儀
家族の一員として過ごしてきたペットとのお別れの儀式として、ペットの葬儀を希望する人もいるかと思います。民間業者のなかには火葬からお墓の提供までトータルで面倒を見てくれるところもあり、そのような業者を利用すれば、火葬前にペットの葬儀を行うことも可能です。希望によってはその後の四十九日、一周忌、三回忌といった法要などに対応している業者もあります。また、数は多くありませんが、寺院のなかにもペットの葬儀や法要に対応してくれるところが見受けられます。
4. ペットの遺骨を身近に安置する
火葬後のペットの遺骨の扱いについてですが、自分の身近に安置したい場合は次のような選択肢があります。
4-1. 手元供養
ひとつめは、骨壺などに納められた遺骨を自宅に持ち帰り、身近なところに安置しておく「手元供養」です。生前のペットと同様、いつもそばにいるという安らぎが得られ、思い立ったらすぐにお線香をあげるなど慰霊することができます。「手元供養」の一環として、遺骨の一部をネックレスや小瓶に移して肌身離さず身に着けている人もみられます。
4-2. 自身の所有する土地に遺骨を埋葬
ふたつめは、自宅の庭など自身の所有する土地に遺骨を埋葬するケースです。身近な場所にペットが眠っているという点で「手元供養」に近い感覚が得られるでしょう。ただし、他人が所有する土地や公園、山林、河川敷といった公共の土地に勝手に埋めることは法に抵触する行為なので、決して行わないようにしてください。また、先述のように自分の所有する土地であっても、とくに住宅地では問題になる可能性もあります。
5. お墓や納骨堂に安置
そのほかに、人間の遺骨と同じように火葬後にお墓や納骨堂に安置する方法があります。ペット向けのお墓や納骨堂には運営形態やお墓の様式によってさまざまです。それぞれの特色は次のようになります。
5-1. ペット専用霊園・納骨堂
ペットだけが眠る個別のお墓や納骨棚、ほかのペットとともに眠る合祀墓などが用意された施設です。専門性が高く、火葬や葬儀、供養などトータルで相談に乗ってくれるところも多くみられます。利用者もペット愛好家だけなので、それほど気兼ねせず利用できる雰囲気も特色のひとつです。
5-2. 一般の霊園、墓地、納骨堂のペット専用区画やペットの合祀墓
人間のために造られた一般の霊園や墓地、納骨堂のなかには、ペット専用の個別墓だけの区画やペット専用の合祀墓、納骨堂などを備えたところもあります。飼い主の家族のお墓が建てられている霊園や墓地にペット用の区画やお墓がある場合、家族のお墓参りと一緒にペットのお墓参りもできるというメリットがあります。
一般的に霊園や墓地は運営形態によって「民営霊園」「寺院墓地」「公営霊園」と大きく3つに分類されますが、そのなかでは「民営霊園」がペットへの対応に充実しているところが多い印象です。
5-3. 一般の霊園、墓地、納骨堂のペットともに眠れる区画
こちらも民営霊園に数多くみられるスタイルです。故人の遺骨と一緒にペットの遺骨も安置できるタイプのお墓が全域または区画を制限して提供されているものです。一般向けの納骨堂にもこのタイプのものが多くみられます。亡くなったあとも家族の一員としてずっと一緒にいたいという人たちから選ばれており、近年特に人気が高まってきています。この場合、霊園内や区画内のお墓はすべて、ペットとともに眠れるという条件になってはいますが、あくまでもベースは人間用の霊園であり、ペットともに眠ることを想定せずに利用している人もいるので、お互いが気持ちよく利用できるよう気遣いたいものです。
各家庭によって異なってくると思いますが、安らかにペットが眠れるよう、それぞれの事情や条件に合わせて最適なプランを事前に考えておくことをおすすめします。