通夜や葬式、法要においては服装のマナーがあり、遺族に失礼のないようにしなければなりません。今回は葬儀で身に着ける真珠の基礎知識、マナーについてご説明します。洋装の場合と和装の場合、パールの大きさや色、形、ネックレスの長さやピアス、イヤリング、指輪の種類に加えて、真珠がもつ意味や身に着ける必要性についてもご紹介します。これから真珠を購入する方は真珠選びのポイントを、すでに真珠を持っている方はお手持ちの真珠が葬儀で身につけられるかどうかを確認しておきましょう。
もう迷わない、通夜・葬儀・法要で長く使える真珠の選び方
1. モーニングジュエリーとしての真珠
真珠は丸く光沢ある色あいから「月のしずく」「人魚の涙」とも呼ばれ、神秘的で上品な輝きが魅力の宝石です。葬儀では遺族へお悔やみや悲しみを表す宝石として、身に着けられるようになりました。
葬儀で身に着けるジュエリーは、「喪に服す」という意味で「モーニングジュエリー(mourning jewelry)」といいます。モーニングジュエリーには以前から流木が化石化した「ジェット」(和名は黒玉、こくぎょく)が用いられてきました。黒色で軽く、柔らかな輝きを放つ宝石で、最近ではパワーストーンとしての知名度が高いものです。真珠がモーニングジュエリーとして世間に広まったのは1965年、ウィンストン・チャーチル元イギリス首相の葬儀の際です。イギリスのエリザベス女王が真珠のネックレスをつけて参列したことをきっかけに、喪に服すときのアクセサリーとして世界に広まり、日本でも一般的に着けられるようになっていきました。
2. 和装・洋装で変わる真珠の着け方
喪服には和装と洋装がありますが、それぞれアクセサリーの着け方のマナーが異なります。真珠を身に着けるかどうか、どのような真珠を選んだらいいかは服装や身に着ける人の世代、地域の風習によっても変わってきます。
2-1. 和装
一般的に和装の喪服の場合は、結婚指輪以外のアクセサリーは着けないのがマナーです。本来、和服の文化ではアクセサリーを着けずに質素で控えめであることが重んじられてきました。葬儀は故人を偲ぶ場であり、参列者は自らを装飾する必要がないという考え方です。ネックレスだけではなく、イヤリング・ピアスなども身に着けません。結婚指輪の場合も、もしエタニティリングのようにダイヤが並んでいるような華美な素材やデザインであれば外したり、宝石がついていれば石が付いている方を手のひら側に隠したりしましょう。
2-2. 洋装
一般的に洋装の場合は、ネックレスを身に着けるのがマナーですが、葬儀の場合は洋装でもネックレスを「必ず身に着けなければならない」という決まりはありません。モーニングジュエリーを身に着けるかどうかは世代や地域の風習により異なります。和装と同じように不要な装飾は控えるべきという考え方やネックレスだけを身に着けるのがマナー、ネックレスに加えてイヤリングまたはピアスも身に着けた方がいいという考え方などがあります。基本的には3. 葬儀で身に着ける真珠の選び方、でご紹介するタイプのネックレス、指輪、ピアス・イヤリングであれば通夜、葬儀、法要に身に着けるのにふさわしいものだといえます。葬儀に参列する人の多くは洋装なので、もし判断に迷う場合はバッグにアクセサリーを入れて行って、会場に着いてから周囲の様子を見ながら着用するかどうか決めてもいいでしょう。
3. 葬儀で身に着ける真珠の選び方
葬儀では故人を敬い偲ぶ気持ちを表すために、清楚で控えめな服装をします。服装やアクセサリーのマナーに気をつけて遺族に対して失礼がないようにしたいものです。葬儀で真珠のネックレスやピアス・イヤリングを身に着ける場合は、以下のポイントを参考にしてください。
3-1. 大きさ
9mm以上の大珠は華やかに見えてしまいますので、7~8mm程度の中粒程度の大きさの真珠を選びましょう。
3-2. 形
真珠には本真珠や淡水パール、イミテーションパール(プラスチックやコットン)などがありますが、形が不ぞろいな真珠だとカジュアルな印象を与えます。できれば本真珠の真円で珠の形がきれいなものを選びましょう。
3-3. 色
葬儀ではアコヤ真珠(アコヤ貝から採取できる真珠)など、白色の真珠を着けるのが主流です。黒真珠など黒色や黒色に近いグレーの真珠も着用して良いとされていますが、中には色付き真珠がぜいたく品、華美と考える人もいます。華やかなピンクやゴールドの真珠は避けましょう。
3-4. デザイン
3-4-1. ネックレスの長さ
ネックレスの長さは非常に重要なポイントです。冠婚葬祭のフォーマルな場面では40~42cm程の長さのネックレスを選びましょう。鎖骨のラインにかかるくらいの長さはプリンセスサイズと呼ばれ、もっとも格式が高いとされています。
50㎝以上のロングタイプのネックレスは、揺れがカジュアルな印象を与える上に「悲しみが長引く」という意味にもなってしまうために着けてはいけないとされています。また、真珠のネックレスは必ず一連で着けましょう。二連や三連のネックレスは「悲しみが重なる」「不幸が繰り返される」を連想させるため厳禁です。
3-4-2. 金具部分は光りすぎないものを
弔事ではゴールドのものを着けないのがマナーです。アクセサリーの金具部分はプラチナやゴールドでもコーティングしてあるホワイトゴールドなど目立ちにくいものを選びましょう。
3-4-3. 一粒真珠のネックレスはNG
弔事ではゴールドやシルバーなど輝きのあるアクセサリーは身に着けません。一粒真珠のネックレスには、チェーン部分にゴールドやシルバーが用いられているため避けるようにしましょう。
3-4-4. イヤリング・ピアスのデザイン
イヤリングやピアスは台座に真珠一粒が固定されているタイプで、小さく目立たないサイズのものにしましょう。真珠がぶら下がって揺れるタイプはカジュアルで華やかな印象を与えてしまいますし、ダイヤモンドなど他の装飾が付いている場合も華美になりますので避けるようにしましょう。
まとめ
もし通夜や葬儀で真珠を身に着けるのであれば、次のようなものを準備しておくといいでしょう。
- ネックレスは7~8mm程度の中粒程度のアコヤ真珠、長さは40~42cm程度
- ピアス・イヤリングは台座に一粒が固定されているタイプ
- 指輪は基本的に結婚指輪のみ