今回は家族や親族が亡くなってからのおおよそ1年間、喪中の年末年始の過ごし方についてご説明します。例年であればお正月ならではの新年を祝う料理や風習を楽しみますが、身内が亡くなってから迎える最初のお正月は、お祝い事や派手なことを避けて控えめに過ごすことが多いでしょう。いつもと違う喪中の年末年始はどのように過ごせばいいのでしょうか、控えた方がいいことはあるのでしょうか。年末年始の食事(年越しそばやおせち料理)や新年の挨拶、初詣、お歳暮やお年玉はおくるのかどうかなど、くわしくチェックしてみましょう。
喪中の年末年始の過ごし方―年越しそば、おせち料理、初詣、お年玉
1. 年賀状ではなく喪中はがきを出す
年賀状は新年を祝う挨拶状です。喪中期間は新年の挨拶を控えるため、年賀状を出しません。例年年賀状のやり取りをしている人へは、年賀欠礼を伝えるため代わりに「喪中はがき」をおくります。喪中はがきを書くときにはいくつか注意点があり、おくる時期にも決まりがあります。年末に不幸があった場合や相手も喪中の場合など、ケースごとの対処法を知っておき送り先へ失礼のないようにしたいものです。
喪中はがきを出す時期や書き方、文例などは以下の記事でくわしくご紹介しています。
2. お歳暮
「お歳暮」は、お世話になった方へ感謝の気持ちを込めておくるもので、多くの場合12月上旬~20日頃に届くように手配します。
忌中であれば、お歳暮をおくるのは控えた方がいいでしょう。送り先の相手へ気を使わせてしまったり、忌中の人からの品は縁起が悪いと感じたりする人もいるからです。忌明けを待つ間にお歳暮の時期を過ぎた場合は、松の内(元旦から1月7日の期間)が明ける1月8日から立春(2月4日頃)の前日の期間に、「寒中御見舞い」の名目で品物をおくるといいでしょう。
忌明け(四十九日)を迎えれば、喪中でもお歳暮を贈っても問題ありません。むしろ故人がお世話になった方や、遺族がお世話になっている方へは、今後も変わらぬお付き合いをお願いするという意味でもおくった方がいいでしょう。喪中にお歳暮をおくる場合は熨斗(のし)を使わずに、弔事用の白無地の奉書紙や白い短冊を用いて、表書きは「お歳暮」とします。
3. お正月飾り
お正月には門松やしめ縄・鏡餅などの正月飾りをしますが、これらは神道の習わしです。神道では死を穢れ(けがれ)と考えるため、喪中の場合は正月飾りを控えます。ただし、忌明けの五十日以降であれば飾ってもいいという考え方もあります。
神棚がある家では例年、年末に神棚を掃除して、しめ縄やお札を新しいものと交換し、お正月飾りをする場合もあるでしょう。しかし、喪中には神棚のしめ縄やお札の交換は必要なく、喪中明けに交換すればいい、というのが一般的な考え方です。忌明けを迎えれば、しめ縄やお札の交換をしてもいいという意見もありますが、お正月飾りはしないようにしましょう。とくに忌中の場合は、五十日祭を過ぎるまで神棚に白い紙を貼って封印する「神棚封じ」を行うため、お正月のための準備はしません。
4. 新年の挨拶
お正月には親戚などの集まりなどさまざまな人と会う機会があり、例年であれば「あけましておめでとうございます」と新年の挨拶を交わします。喪中の場合は基本的にお祝いごとを控えるため、新年の挨拶をするときも「おめでとう」という言葉は使わず「昨年もお世話になりました」「本年もよろしくお願いします」などと挨拶するようにしましょう。「去年」という言葉は、「去る」という意味から忌み言葉といわれていますので避けた方がいいでしょう。
5. 年末年始の食事
年末年始は、ふだんは食べない特別な料理を食べる風習がいくつかあります。喪中の大晦日やお正月の食事についてくわしく確認しておきましょう。
年越しそば
年越しそばは、一年の厄落としと新しい年を健やかに過ごせるようにという願いを込めて大晦日(12月31日)に食べるものです。「お祝いごと」とは関係ないため、喪中であっても故人を偲びつつ、新しい年が皆にとって良い年になるように願いながら食べるといいでしょう。
おせち料理
おせち料理は新年を迎えたことを祝う料理なので、喪中は食べるのを控えることが多いでしょう。ただし、忌明けであれば構わないと考える家庭も増えています。
もしも喪中におせち料理を食べる場合は、お祝いを表す鯛や伊勢海老、紅白の食べ物は用意せず、ふだんの食べ物として黒豆やきんとんなどを準備します。また、縁起物である重箱や両側の先端が細くなったお祝い箸を使わない、お酒は控え目にするなどの配慮をするといいでしょう。
お雑煮
稲作を行ってきた日本人にとって、餅は元々、ハレの日に食べる特別な食べ物でした。新年を迎えるために餅をついて神様にお供えをし、そのお供えの餅を神様の「お下がり」としてお雑煮に入れ、元旦に食べてきました。
この「ハレの日」の食べ物という意味を踏まえると、厳密にいえば喪中のお正月にお雑煮を食べるのは控えた方がいいといえます。しかし、現在の一般家庭では喪中であってもお雑煮を食べることはあるでしょうし、お正月のお祝いというよりもふだんの食事として、紅白のかまぼこや飾り切りの野菜などを入れずに、シンプルなお雑煮を用意するといいでしょう。
6. 初詣
一年の無病息災を願いお参りする初詣ですが、忌中の場合は神社への参拝を控えましょう。神道では「死は穢れ」と考えられており、神社の中へ穢れを持ち込むことを避けてきたためです。神道の忌明けである死後50日を過ぎるまでは、初詣などの参拝や祭事への参加は控えるようにします。仏教の場合は死を穢れと考えないので、忌中・喪中であってもお寺にお参りすることは問題ありません。
7. お墓参り
忌中・喪中に関係なく、年末年始にお墓参りすることは問題ありません。喪中だからこそ行っておきたいという方もいるでしょう。年末にお墓の掃除を済ませて供花を飾れば、故人もお墓で迎える初めての新年を清々しい気持ちで迎えられるでしょう。お寺や霊園によってはお正月には閉園していたり、開園時間を変更したりする場合もあるので、事前に開園日や時間を確認しておきましょう。
8. 親戚同士の集まり
お正月は親戚同士で集まる家庭が多いものです。喪中でも親戚で集まることは問題ありません。ただし、新年を祝うために集まるのではなく、故人を偲ぶために集まります。自分自身や親戚がまだ悲しみの最中で、皆で集まる気持ちになれない可能性もあります。喪中のお正月に集まるかどうかは自分や相手の気持ちに沿ってよく相談して決めましょう。自分の親族が亡くなり、義理の親族を訪問するかどうか迷う場合も同様です。家族、親戚同士でまだ集まる気持ちになれない場合は、お正月が明けてから改めて挨拶に行くといいでしょう。
9. お年玉
お年玉は新年を祝うもの、神様からの授かりものという意味合いがあり、本来であれば喪中には控えた方がいいことになります。しかし近年は、親戚からお小遣いの意味合いで渡されることが多く、喪中に関わらずお年玉を渡す家庭が増えています。お年玉を渡す場合は、華やかな柄ではなく、地味な柄のポチ袋に「お小遣い」と書いて渡すと無難でしょう。
10. 旅行・イベント
年末年始には旅行をしたり、カウントダウンイベントや初売りに出かけたりする方もいます。喪中は派手なことやぜいたくは避けるべきと考えられてきましたが、現代はすべてのレジャーを避けて生活することは難しいケースもあります。忌中の間は控える、節度のある振る舞いをする、など心がけて行動するといいでしょう。また中には、自宅にいるよりも外出をして楽しんだ方が故人を亡くしたさびしさが癒されるという方もいるかもしれませんので、必ずしも控えた方がいいとは言い切れません。故人との思い出の地を訪れて過去を振り返りながら、思いをはせるのもいいでしょう。もちろん、まだ悲しみの最中で素直に楽しめそうにないという場合は無理をせずに、故人を偲びながら静かなお正月を過ごすといいでしょう。