引っ越しをしたり、ライフスタイルの変化で住まいの使い方が変わったりすることで、仏壇を替えたい、と考えるようになる人は少なからず存在します。今ある仏壇を手放して、新しい仏壇を買い替えるには、どのような点に気を付けなければならないのでしょうか。くわしく解説いたします。
仏壇を買い替える場合の7つのポイント
1 仏壇を買い替えるのはどんな時?
一般的に、どのような理由で仏壇は買い替えられているのでしょう。
1-1 新しい家に今ある仏壇が入らない
新しい家を建てる、引っ越す、あるいは親の家で祀られていた仏壇を子の家に移そうとした時に、仏壇がうまく納まらないというのが、仏壇の買い替えで最も多い理由でしょう。ひと昔前までの住宅では、仏間が当たり前のようにありましたが、現代では、マンションやアパートのような集合住宅に住む人も増え、また、一戸建てでも仏間のない家ばかりです。従来の仏壇はサイズとデザインの両面でも、新たな住空間に合わせづらいようです。
1-2 今ある仏壇が古くなった
長年祀ってきた仏壇が古くなってきたことにより、新しい仏壇の買い替えを検討する人も多くいます。仏壇の買い替え時期や消費期限にこれといった基準はありませんが、30年程度、つまり「一世代にひとつの仏壇」を目安に考えてみるのがよいでしょう。長年使用することで、ほこりやカビなどの汚れ、金箔の剥げや塗装の割れ、さらには障子の破れや建付けのずれなど、さまざまな不具合が出てくるものです。
1-3 お寺や宗派を変えたい
遠方への引っ越し、あるいはお寺との関係性の悪化などの理由で、これまで付き合いのあったお寺との関係を解消して新たなお寺とつながる機会に、仏壇の買い替える人もいます。この場合、必ずしも仏壇を新しくする必要はなく、中の仏具をその宗派に合わせて揃えなおすだけで済むこともあります。とはいえ、仏壇を新たにすることで、気分を一新して手を合わせられるでしょう。
もしも仏壇の汚れや破損が理由で仏壇を買い替えようとしているのであれば、リフォームという方法があることも念頭に入れておきましょう。リフォームには、完全修復、部分修繕、洗浄など、さまざまな方法がありますが、新しく仏壇を購入するより安く済むこともあります。
2 仏壇を買い替えるために事前に準備しておくこと
仏壇を買い換えるためには、事前にどのようなことを準備しておかなければならないのでしょうか。
2-1 置く場所を決める
まずはどこに仏壇を置くかを決めましょう。これが決まらないことにはどのような仏壇を買うべきかが決められません。居間やリビングなのか、床や畳の上なのか、それとも台や棚の上なのか。自分たちが手を合わせやすいだけでなく、寺院や親戚が来てお参りする時のことも考えておくことが大切です。
2-2 寺院に相談する
仏壇を買い替えたい旨を菩提寺に相談しましょう。なぜなら、古い仏壇を処分するには閉眼法要(魂抜き)をし、新しい仏壇をお祀りする時には開眼法要(魂入れ)をしなければならないからです。また、大切な仏さまやご先祖さまをどのように扱えば失礼にならないか、あわせて相談すると安心できます。
3 後悔なく仏壇を買い換えるための7つのポイント
大切なご先祖様をお祀りする仏壇。高額な買い物ですし、後悔することなく新しい仏壇をお迎えしたいものです。そのためには次の6つのポイントをおさえておきましょう。
3-1 様式は3種
まずは仏壇の種類について知っておきましょう。どのようなものがあるかを把握しておくことで、その中から自分たちにあった仏壇を選ぶことができます。宗派の違いなどによる様式としては大まかに次の3種類があります。
唐木仏壇
唐木仏壇とは、紫檀や黒檀などの銘木をもとにして作られた従来型のお仏壇のことです。主に、天台宗、真言宗、浄土宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗などで用いられます。銘木の美しい木目を活かすのが特徴です。
金仏壇
金仏壇とは、金箔や金粉や金具などの金の装飾をふんだんに施した仏壇のことです。金箔の手仕事には漆塗りも不可欠であることから、「塗仏壇」とも呼ばれます。主に浄土真宗で使われる仏壇ですが、一部浄土宗や日蓮宗仕様のものなどもあります。
家具調仏壇
家具調仏壇とは、文字通り、家具のようなデザインの仏壇で、「モダン仏壇」などとも呼ばれています。従来型の唐木仏壇や金仏壇のような伝統的な形式を取り払い、機能性とデザイン性を重視して作られています。中に並べる仏具をその宗派に合わせることで、宗派問わず、どのような人でも使用できます。仏間のない家に住む人たちに好まれており、材木にはウォールナットやタモやメープルなどの、洋風家具材として人気のあるものが使われているのが特徴です。
3-2 形状も3種
形状としては下記の3タイプが主流です。
台付き仏壇
台付き仏壇とは、上下2段が一体になっている仏壇のことで、仏間や床の上に直に置きます。上段が仏壇スペースで、下段は収納として使用します。
上置き仏壇
上置き仏壇とは、台や棚の上に置く前提で作られた仏壇のことです。マンションや仏間のない家に住む人が多い昨今では、そのコンパクトさから人気を集めています。
壁掛け仏壇
壁掛け仏壇とは、室内の壁面に取り付けるタイプで、家具調仏壇の一種です。まだ一部のメーカーが取り扱っているにすぎませんが、省スペースをさらに突き詰めたモダンデザインとして注目を集めています。
3-3 仏壇の相場
仏壇の買い替えで後悔しないためには相場を知っておくことも大切です。仏壇の価格は大きさ、材木、工法などによって大きく左右されます。それぞれの仏壇の相場を下の表にまとめました。
台付仏壇 | 上置き仏壇 | 壁掛け仏壇 | |
---|---|---|---|
唐木仏壇 | 50万円~150万円 | 10万円~50万円 | |
金仏壇 | 70万円~200万円 | 30万円~100万円 | |
家具調仏壇 | 20万円~80万円 | 5万円~30万円 | 10万円~50万円 |
3-4 仏壇店やECサイトを見て回る
置く場所を決め、仏壇の種類や相場を把握したら、いよいよ仏壇店に足を運んでみましょう。店内にはさまざまな仏壇が展示されています。伝統的な仏壇であれば、ある程度形式が決まっているので、スタッフに専門的なアドバイスをもらいながら仏壇を決めていきしょう。家具調仏壇の場合は、どのような仏壇を選ぶかは家族の自由。自宅に置いてみたときのことを想像して、収まりがよいものを選びます。
仏壇店ではなく、ECサイトで仏壇を購入することもできます。価格は店舗販売のものよりも安価に設定されていますが、現物を見ることができないという不安があります。
また店舗で購入した場合、仏壇店のスタッフが設置に来てくれるだけでなく、あわせていまある仏壇を引き取ってくれことが多いでしょう。一方ECサイトで購入した場合は、スタッフが運搬と設置をしてくれるのか、それとも宅配業者による配達なのか、その場合は仏壇の引き取りをしてくれるのかなど、対応が業者によって異なりますのでよく確認するようにしましょう。
仏壇店とECサイト。どちらで買うのが安心か。両者の比較は、こちらの記事を参考にしてみてください。
3-5 仏壇の処分方法を考える
仏壇を買い換えるにあたり、新しい仏壇を選ぶだけでなく、いまある仏壇をどのように処分するか、その方法についても考えておかなければなりません。仏壇の処分には、主に次の方法があります。
仏壇店や専門業者に引き取ってもらう
多くの人は、仏壇店や専門業者に仏壇の処分を依頼します。新しく仏壇を購入する店舗であれば、引き取り価格を無料、あるい割引にしているところもあります。また、インターネット上では仏壇処分の専門業者もあるので、こうした複数の業者を比較検討することで費用を抑えられるかもしれません。
寺院に引き取ってもらう
寺院に引き取ってもらい「お焚き上げ」をしてもらいます。ただ最近では仏壇を引き取らない寺院が増えているのが実態です。ひと昔前までは許されていた焚き火や野焼きも、いまではほとんどの自治体が条例を作り、禁止にしているからです。
粗大ゴミに出す
個人で粗大ゴミとして出して回収してもらいます。ゴミの出し方は必ず各自治体のルールにのっとりましょう。とはいえ、仏壇をゴミとして出すことで近隣の人たちに不快な思いをさせることもあり、あまり現実的ではありません。あらかじめ仏壇を小さく分解しておくなどの配慮が求められるでしょう。
3-6 閉眼法要・引取処分
古い仏壇を処分する際には必ず寺院に閉眼法要(魂抜き)をしてもらいます。仏壇の中には大切な仏さまやご先祖様がおられますし、これまでお世話になった仏壇に感謝をこめて法要に臨みましょう。また、ほとんどの業者は閉眼法要をしていない仏壇の引き取りには応じてくれません。
寺院の閉眼供養が終わったら、業者に引き取ってもらいます。仏壇の奥には大切な仏具や形見、証書や金品などが入っていることがあります。必ず確認しておきましょう。
3-7 納品・開眼法要
新しい仏壇を自宅に迎えます。仏壇店や業者が配達と設置してくれます。ECサイトで購入した場合は、宅配業者が運び、家の人が設置しなければならないこともあるでしょう。
そして、寺院に開眼法要(魂入れ)をしてもらうことにより、はじめて仏壇としてお祀りできます。開眼法要当日にはどのようなものを準備しておかなければならないのか、事前に寺院に確認しておきましょう。
仏壇の買い替えは、新たな生活空間に祈りの場所を設けることです。納得の仏壇を置くことで、安心して仏さまやご先祖様に手を合わすことができるでしょう。この記事がその一助になれば幸いです。