死後、遺族は故人の持ち物を整理しなければなりません。全部残しておくわけにはいかず、だからといって何でも捨てていいわけではありません。ひとつひとつ整理していく必要があるため、何から手をつければいいのか困っている方もいることでしょう。今回は遺品整理の進め方についてくわしく説明します。整理の際のコツや、いつ行えばいいかについてもチェックしましょう。
遺品整理の進め方 行う時期やコツは?
1 遺品整理とは
亡くなった人が残した遺品を整理することを「遺品整理」といいます。「遺品」とは故人が日常的に使っていたものや身の回りのもの、家族のために残した遺産など、故人にゆかりのあるすべてのものです。
基本的に遺品整理は故人の家族や親族が行います。遺品整理することで住まいを掃除できるだけではなく、故人を失い悲しむ気持ちの整理にもつながります。不要なものを処分するだけではなく、思い出の品や故人の思い入れがあった品は形見として残しましょう。
また、遺品整理は「単純に処分してきれいに掃除すればいい」というわけではなく、ひとつひとつ適切に整理しなければなりません。相続手続きに必要な書類もありますし、資産価値のあるものを、他の相続人に無断で処分してしまうとあとで問題になりかねません。
ちなみに、亡くなったあとに遺族が行う「遺品整理」に対して、「生前整理」や「老前整理」は生前に本人や家族が行う整理です。
2 遺品整理を行う時期
遺品整理はいつから始めればいいのでしょうか。行う時期に決まりはありませんが、抑えておきたいポイントがいくつかあります。
2-1 親族が集まる四十九日などのタイミングで話し合う
勝手に一人で遺品整理をすると、後からトラブルに発展する恐れもあります。遺品整理は親族で話し合いながら行いましょう。親族が集まる四十九日や百日法要のタイミングでどのように遺品整理を行うか話しあうといいでしょう。
2-2 保険など手続きが必要なもの、納税に関するものは早めに
保険や金融資産など関係各所での手続きが必要なものや相続税がかかるものは、早めに整理しなければなりません。手続きの期日が決められているものがあるからです。たとえば相続税の申告期日は「死亡を知った翌日から10カ月以内」と定められています。故人の確定申告(準確定申告)が関わる場合は4ヶ月以内です。
相続税のかからない思い出の品は時間をかけて片付けても構いません。慌てて処分してしまい、後悔しないようにしましょう。
2-3 故人が賃貸物件に一人で住んでいた場合は早めに
故人が賃貸物件に一人で住んでいた場合は、死後部屋を明け渡さないと賃貸料金がかかり続けてしまいます。多少急いで遺品整理を行う必要があります。契約書で契約解除までの期間を確認し、退去日を決めたらその日までに整理を行いましょう。
3 遺品整理の行い方
遺品整理のくわしいやり方についてチェックしましょう。
3-1 遺言書の確認
まず遺品整理を始める前に、遺言書の有無を確認します。正式な書式によって作られた遺言書は相続の仕方に関して法的な効力を持ちます。遺品についての記述がある場合は、遺言書に従って処理しなければなりません。
3-2 業者に依頼する方法も
遺品整理を業者に依頼するという方法もあります。遺族が遺品を整理する場合は、遺品の仕分けや各種手続きまですべて自分たちで行う必要があり、非常に時間と労力がかかります。気持ちの整理がつかずに悲しみが増してしまうケースもあります。
業者に依頼する場合は体力も時間もかからずに済みますが、費用がかかります。また業者によっては遺品をぞんざいに扱ったり、大切なものを処分されたりする可能性もあります。ていねいな仕事をする信頼できる業者を選ぶことが重要です。
3-3 遺品整理の準備
自分で遺品を整理する場合はホコリやカビなど掃除しながら整理する必要があるでしょう。以下のような道具を用意すると便利です。段ボールごとに遺品を分類して入れ、箱に何が入っているか油性ペンで記入するといいでしょう。
- マスク
- 軍手
- 段ボール
- ゴミ袋
- ガムテープ
- 油性ペン
- 作業用のひも
- カッター
- 掃除道具
3-4 遺品を「分類」して整理する
遺品を以下のように分類しながら整理を進めると効率的に作業できるでしょう。
1.貴重品や書類
貴重品や重要な書類の整理にあたっては、関係各所での手続きが必要にもなります。手続きの期日が設けられているため、早めに整理しましょう。
貴重品や書類は以下のようなものです。
- 通帳
- キャッシュカード
- 印鑑
- クレジットカード
- 健康保険証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 年金手帳
- 運転免許証
- 貴金属や美術品など価値の高い物
- 不動産関係の書類
- 保険関係の書類
- 有価証券
- 電気・ガス・水道料金・NHK・携帯電話・ネット回線などの領収書、請求書
2.形見になるもの
故人との思い出の品や故人が大切にしていたものなどは、故人のことを思い出す「形見」になります。たとえばアルバムや日記、人形なども該当します。大切に保管して親族や故人と親しかった人と相談し、形見分けを行いましょう。
3.再利用できるもの
家電製品や衣類など、再利用できるものは利用しましょう。
「使わないけど捨てるのはもったいない」と処分をためらうものは、リサイクルショップの利用や必要な人に渡すのもおすすめです。
4.処分するもの
明らかに不要なものや今後使いそうにないものは思い切って処分します。粗大ごみや大量のゴミは捨て方が地方自治体により違うので、役所に問い合わせて方法を確認しましょう。
5.判断に迷うものは「保留ボックス」
遺品整理をすると判断に困るものがたくさん出てきます。効率よく作業を進めるためにも、判断できないものは一旦、「保留ボックス」にまとめておくことをおすすめします。
保留ボックスに分類した遺品は、時間が経ち、落ち着いてから再度遺品整理を行います。
遺品整理は悲しみが大きい中で行うため、冷静な判断力に欠けることもあるでしょう。「処分しなければよかった」と後悔しないようにしましょう。